南極条約
南極条約 | |
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発効 | 1961年6月23日 |
締約国 | 12[1] |
当事国 | 54[1] |
寄託者 | アメリカ合衆国政府 |
言語 | 英語、フランス語、ロシア語、スペイン語 |
主な内容 | 南極の軍事的利用の禁止と科学的調査の自由および国際協力を定める |
条文リンク | 南極条約 (PDF) - 外務省 |
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南極条約(なんきょくじょうやく The Antarctic Treaty)は、南極地域の平和的利用や領有権凍結等を定めた多国間条約である[2][3][4]。
概要[編集]
南極は気象条件が厳しいため人の定住が困難であり、長い間未踏の地であった。1957年から1958年の国際地球観測年で、南極における調査研究に国際協力体制を築いていた日本・アメリカ合衆国・イギリス・フランス・ソビエト連邦(継承国の現ロシア)・アルゼンチン・オーストラリア・ベルギー・チリ・ニュージーランド・ノルウェー・南アフリカの12か国が、南極の平和的目的利用のため、1959年12月1日に南極条約を採択した[5]。南極大陸(全ての氷棚を含む南緯60度以南の地域)が条約の対象地域となっている。条約の概要は下記のとおり。
- 南極地域の平和的利用(軍事的利用の禁止)
- 科学的調査の自由と国際協力
- 南極地域における領土主権、請求権の凍結
- 核爆発、放射性廃棄物の処分の禁止
- 条約の遵守を確保するための監視員の設置
- 南極地域に関する共通の利害関係のある事項についての協議の実施
- 条約の原則および目的を促進するための措置を立案する会合の開催
それまで、南極の領有権については、1908年にイギリスが南緯50度以南、西経20度から80度に至る範囲の諸島の領有を主張したのをきっかけに、他の国も南極の一定区画の地域の領有を主張を行っていた。国際法における国家領域取得根拠としては先占 (occupation) があるが、南極はその気象などのため実効的支配が困難であり先占の法理をそのまま適用するのは無理があるとして、先占がなくても一定の範囲で領域の取得を認めるとするセクター主義が主張された。セクター主義には反対する国家も多く、国際法として確立しているわけではなかったが、科学技術の進歩によって実効的支配の可能性も否定できなくなってきていた。本条約の第4条において、領有権主張は、締約国の新規や拡大の主張は禁止されるが、同時に領有権主張の放棄は意味しないとも明記されており、各国の主張は凍結状態とされる。
また、南極が、もっぱら平和的目的にのみ利用されるべきと定め、一切の軍事利用を禁止するとともに、その実施を確保するため、地上および空中の自由な査察制度を設けることとした。平和利用では、将来、国際協定で認められない限り、すべての核爆発と放射性廃棄物の処分を禁止している。この平和利用のための核爆発をどうするか最後まで揉めたが、結局日本の斡旋により、将来一般協定ができれば、南極にも適用するが、それまで一切禁止するという線でまとまった[5]。
南極における科学観測を行っている国家は、南極条約協議国会議に参加ができ、そこでは情報交換や様々な条約をはじめ南極に関する各種の協議を行っている[2]。また、南極の自然保護に関する追加の条約も結ばれてきており、1972年には南極のあざらしの保存に関する条約、1980年には南極の海洋生物資源の保存に関する条約、1991年には環境保護に関する南極条約議定書等が採択されている[2][4]。2004年9月1日にはブエノスアイレスに南極条約事務局(The Secretariat of the Antarctic Treaty)が設置された[6]。
南極条約締約国一覧[編集]
2019年7月現在の加盟国を以下に示す。
- 南極条約協議国(29か国)[7]
- 南極において観測基地の設営や学術調査を継続的に実施している国
- アメリカ合衆国、アルゼンチン、イギリス、イタリア、インド、ウクライナ、ウルグアイ、エクアドル、オーストラリア、オランダ、スウェーデン、スペイン、大韓民国、チェコ、中華人民共和国、チリ、ドイツ、日本、ニュージーランド、ノルウェー、フィンランド、ブラジル、フランス、ブルガリア、ペルー、ベルギー、ポーランド、南アフリカ共和国、ロシア
- その他の条約締約国(25か国)[7]
- アイスランド、エストニア、オーストリア、カザフスタン、カナダ、キューバ、ギリシア、グアテマラ、コロンビア、スイス、スロバキア、スロベニア、朝鮮民主主義人民共和国、デンマーク、トルコ、パキスタン、パプアニューギニア、ハンガリー、ベネズエラ、ベラルーシ、ポルトガル、マレーシア、モナコ、モンゴル、ルーマニア
脚注[編集]
- ^ a b “Antarctic Treaty”. United States Department of State (2019年4月22日). 2019年6月30日閲覧。
- ^ a b c 日本国外務省 (2016年3月17日). “南極条約・環境保護に関する南極条約議定書”. 2019年7月7日閲覧。
- ^ 日本国外務省 (2009年3月25日). “外務省: わかる!国際情勢 Vol.31 南極をめぐる課題と南極条約”. 2019年7月7日閲覧。
- ^ a b 国立極地研究所. “南極条約体制(Antarctic Treaty System)”. 2019年7月7日閲覧。
- ^ a b 1959年(昭和34年)12月21日官報第9900号付録資料版14ページ「南極条約」
- ^ “About us”. The Secretariat of the Antarctic Treaty(南極条約事務局). 2019年7月7日閲覧。
- ^ a b “Antarctic Treaty > Parties”. The Secretariat of the Antarctic Treaty(南極条約事務局). 2017年11月10日閲覧。
関連項目[編集]
- 南極地域の環境の保護に関する法律 - 環境保護に関する南極条約議定書の実施を確保するための日本国内法
- 南極における領有権主張の一覧
- 宇宙条約 - 条約の作成過程で南極条約が参照された
- スヴァールバル条約 - 同じく極域にあるスヴァールバル諸島の取り扱いに関する多国間の条約
外部リンク[編集]
- 地球環境-南極条約(外務省)
- 南極条約(データベース『世界と日本』)
- 「南極条約(原子力百科事典 ATOMIKA」
- The Secretariat of the Antarctic Treaty(南極条約事務局)
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