岸辺露伴は動かない

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岸辺露伴は動かない』(きしべろはんはうごかない)は、荒木飛呂彦による日本の短編漫画作品集。

本短編集の発刊後に発表された未収録の『岸辺露伴は動かない』シリーズについても本項で併せて解説する。

概要[編集]

荒木飛呂彦単独のものとしては、三冊目となる短編集。

収録作品は表題作の『岸辺露伴は動かない』シリーズなど、『ダイヤモンドは砕けない』の登場人物、岸辺露伴を中心として展開するスピンオフ作品で統一されている。

短編集が単行本の形式で出版されるのは『ゴージャス☆アイリン』以来であり、収録作品のカラーページは全てモノクロに変更されている。

2016年に、テレビアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』のBlu-rayまたはDVDの全巻購入者特典として『エピソード5:富豪村』がOVA化されることが発表された[1][2]

収録作品[編集]

エピソード16:懺悔室[編集]

週刊少年ジャンプ』1997年30号に、当時連載中のジャンプ作家10名がそれぞれ読切を描く「ジャンプリーダーズカップ」の1つとして掲載された49ページの短編作品。『死刑執行中脱獄進行中 荒木飛呂彦短編集』からの再録。

タイトルの「動かない」も、「露伴は主人公ではなく、あくまで物語のナビゲーターである」という意味である[3]

荒木飛呂彦によれば、編集部からは「スピンオフ・外伝は絶対禁止」という条件で執筆依頼を受けており、最初は露伴を登場させずに描いていたが、「狂言回しとしてのキャラクターがいないと話がしっくり来ない」との理由で露伴を登場させる事を決めたという[3]。また、この時の禁止令が無ければ露伴のスピンオフ作品は以後書かなかっただろうと述べている[4]

なお、設定上は「原作:岸辺露伴 作画:荒木飛呂彦」となっており、巻末コメントも露伴のキャラクターで書かれていた。

また、再録にあたって露伴の一人称が「わたし」から「ぼく」に変更された箇所がある。

あらすじ
漫画家、岸辺露伴は東方仗助に怪我を負わされ、漫画をひと夏ほど休載していた。その間にイタリアへ旅行に行き、ストーリーの新展開のための取材を行っていたのだが、懺悔室の内部を調べていたときに偶然一人の男が懺悔に現れる。「体験は作品にリアリティを生む。」そう考えた露伴は自分が神父ではないことを打ち明けず、男の懺悔に耳を貸す事にしたのだが…。
登場人物
岸辺 露伴(きしべ ろはん)
本編のナビゲーター。イタリアで懺悔室の取材をしていたところ、偶然から怨霊に取り付かれた男の懺悔を聞くこととなる。
懺悔に訪れた男
本編の主人公。下働きをしていた24歳の時に浮浪者を自らの非道な行いから死なせてしまっており、その直後浮浪者の霊に「幸福の絶頂を迎えた時に迎えに来る」と言われ、その後様々な幸運に恵まれるも素直に喜ぶ事は出来なかった。そんなある日、「幸福の絶頂」を迎えたとして約束通り浮浪者の霊が迎えに現れる。
この設定は、荒木が父や祖父に「普段、人をあざむいて生活していると一番幸福な時にバチがあたるぞ」という諌めの言葉が参考になっており、荒木はこの主人公について「それでもヘコたれない本作の主人公は好き」と述べている[3]
浮浪者の霊
東洋風の浮浪者の男。餓死寸前の状態で男に食べ物を懇願するも、男から「自分の代わりにトウモロコシの袋を全て運び終えたら」という条件を出され、食べ物を与えられる事も無いまま袋を運んでいる最中にその下敷きとなって死亡する。そのとき味わった深い絶望を男にも味わわせる為、男を陰ながら手助けして幸運を与え、その絶頂を迎えた時点で殺害するつもりだったが、男に「逆恨み」であると言われ、そう思われながら死なれるのを避ける為に「運命に決めてもらう」として男に一度だけチャンスを与える。

エピソード2:六壁坂[編集]

ジャンプスクエア2008年1月号に、創刊記念特別読み切り第2弾として掲載された61ページの短編作品。連載当時のタイトルは『岸辺露伴は動かない 〜六壁坂〜』であったが、本短編集の刊行時に「エピソード2」の表記が追加された。

同誌掲載のインタビューで荒木飛呂彦はこの作品について、今作の10年前に描いた『エピソード16:懺悔室』をシリーズとして何作か描きたいと考えており、『ジャンプスクエア』から短編の依頼が来た際、そのアイデアがあったことからこの話になったと説明している。

『六壁坂』のタイトルについて、荒木は「それにしても、『六壁坂』というネーミングはなぜ『六壁坂』にしたのだろうか?全然記憶が無いんです。スミマセン。本当にヤバイ。」と述べている[5]

2009年10月23日に発売された『ジャンプSQ.M(ジャンプスクエア マスターピース)』Vol.002へ初出時同時掲載のインタビューを再編集したものと共に再掲載された。

あらすじ
漫画家・岸辺露伴は読み切りの打ち合わせにきた漫画編集者の貝森稔に原稿料の前借りを申し出る。妖怪伝説の漫画を描くために取材を行っていたところ、その土地に開発業者がリゾート道路を通そうとしていたため、周囲の山を6つ買って阻止したらリゾート計画で高騰していた地価が暴落、破産したと言うのだ。あまりの内容に貝森は呆気にとられるが露伴は「ちゃんといたんだから取材の価値は十分にあった」「『六壁坂』の妖怪は今もそこにいる」と続け、彼が取材で訪れた六壁坂村で数年前に起こったある事件と取材時に起きたある出来事を語り出す。
登場人物
岸辺 露伴(きしべ ろはん)
スタンド名:ヘブンズ・ドアー(天国の扉)
杜王町に住む人気漫画家。27歳。デビュー11年目。作品のリアリティを何よりも重要視しており、妖怪伝説の取材の為だけに山を6つ買い、破産した。借金こそしていないものの財産も家も失い、現在は広瀬康一の家に厄介になっている。
貝森 稔(かいがもり みのる)
漫画編集者。23歳。入社1年目で既婚子供無し。61ページの読み切りの打ち合わせをするために露伴のもとを訪れるが、そこで露伴に原稿料の前借りを相談される。
小林 玉美(こばやし たまみ)、音石 明(おといし あきら)
露伴にサインをねだりに来た2人組。どちらも『ダイヤモンドは砕けない』にスタンド使いとして登場している。なお、玉美とは『ダイヤモンドは砕けない』において対面しているはずだが、本作では初対面のような態度である。
大郷 楠宝子(おおさと なおこ)
六壁坂村で300年続く味噌作りで成功した一族の一人娘。庭師の釜房郡平と関係を持っていたが、大学卒業後に許嫁との結婚する事が決まっていたため、郡平に対し手切れ金とともに別れ話を切り出すが、ふとした拍子に郡平を死なせてしまう。しかし、その事実を隠して修一と結婚、子供を一男一女の2人儲ける。
釜房 郡平(かまふさ ぐんぺい)
大郷家で働くバイトの庭師。そこの一人娘、楠宝子と関係を持っていたが別れ話を切り出される。それでも食い下がるが楠宝子に突き飛ばされ、その拍子にゴルフクラブが後頭部に刺さって死亡する。遺体は楠宝子の寝室のクローゼット天井裏に隠され、その後も楠宝子によって管理され続けた。
修一(しゅういち)
楠宝子の許嫁。楠宝子の大学卒業後に結婚し、大郷家の養子に入る。
楠宝子の娘
楠宝子の娘。楠宝子の記憶から釜房郡平の存在を知り、大郷家の周囲を嗅ぎ回っていた露伴に声をかける。実は郡平との間にできた子供であり、露伴に声をかけた後石につまずいて転び死亡するが、楠宝子の記憶から彼女が自分にとりつこうとしている事を察知した露伴によって完全に死亡する前に露伴に関する記憶を消され、自分に気付かないようにされた事でとりつくのをやめて生き返る。
用語
妖怪六壁坂(ようかい むつかべざか)
露伴が六壁坂村で発見した妖怪。普段の外見は人間と全く同じだが、露伴の前に現れた個体はとりつこうとした際に妖怪としての本性を見せている。
愛する者の前で些細なことをきっかけに死亡し、その死体を管理しなければ相手が社会的に破滅する状況に追い込む。遺体は死亡後も血が止まることなく流れ続けたり、いつまでも腐らない、霧吹きで水を吹きかけると一瞬だけ生前の姿に戻るなど、明らかに普通とは違う特徴が存在している。また、遺体には生殖能力も残っており、管理する相手の間に子供が生まれた場合、その子供も妖怪六壁坂となる。
その生態から露伴は「子孫だけを残すのを目的とした妖怪」と評し、「妖怪というよりも、有史以前よりこの地に棲息している生物と呼んでもいいかもしれない」と述べている。

エピソード5:富豪村[編集]

『週刊少年ジャンプ』2012年45号に、『ジョジョの奇妙な冒険』25周年記念&原画展開催記念読み切りとして掲載された、センターカラー46ページの短編作品。マナー監修は西出ひろ子 。雑誌掲載時のキャッチコピーは「ようこそ、奇妙――!!」

物語の時系列上は『エピソード2:六壁坂』の後になる。荒木飛呂彦の漫画が『週刊少年ジャンプ』に掲載されるのは、2004年47号の『ウルトラジャンプ』移籍前の『スティール・ボール・ラン』以来であり、同誌掲載の作者コメント欄で「久しぶりの週刊少年ジャンプ執筆させて頂きお邪魔致しまぁ~す。嬉しいなぁ」とコメントしているが、『エピソード16:懺悔室』とは違いコメント欄は露伴のキャラクターで書かれていない。

あらすじ
漫画家・岸辺露伴は、漫画編集者の泉京香との読み切りの打ち合わせの際、山奥の別荘を買う話を漫画にしないかと提案される。『六壁坂』の一件で破産している露伴は反対したが、実際に別荘を買うのは泉であり、購入までの過程を取材してアイデアに繋げてはどうかと言う。
その別荘地のある村は杜王町から北西へ80数キロの山奥に位置しているが、そこに向かうための道路は一切なく、住人はヘリコプターを利用している。また、送電線の1本も引かれておらず、周囲の深い森に遮断されている独立した群(むら)になっている。たまたま地図でその特異な村を見つけた泉が興味を持ち調べると、村には11軒の豪邸が建っており、所有者全てが世界屈指の大富豪であることが分かった。彼らはごく普通の一般的な生活を送っていた若者であったが、「25歳の時にこの別荘地を購入したことを転機に、成功を収めて大富豪になっていった」という。
今回、その別荘地の1区画が800坪・300万円という破格の値段で売りに出されたことを知った泉は、自身が25歳ということもあり、11人の大富豪達が土地を所有することで人生の成功者になれたのか、それとも偶然なのかを立証してみたいと考え、まず購入の意思を示すために売り主に会いに行くという。泉の話を訝しく聞いていた露伴だったが、好奇心と興味に背中を押されて、彼女の付き添いという名目で同行取材することにした。
登場人物
声はOVAのもの。
岸辺 露伴(きしべ ろはん)
声 - 櫻井孝宏
スタンド名:ヘブンズ・ドアー(天国の扉)
杜王町に住む人気漫画家。27歳。デビュー11年目。『六壁坂』の一件で山を6つ買い、破産している。今回は編集者の泉京香が別荘を購入する話を聞き、その過程を取材するために富豪村に同行する。性格は「自分が一番」で「オレ様」と泉に評価されている(露伴は嫌な顔で否定しているが)。
泉 京香(いずみ きょうか)
声 - 中原麻衣
漫画編集者。25歳。富豪村の別荘の一区画が800坪・300万円で売りに出されていると知り、自分が別荘を購入する過程を取材して読み切り漫画のアイデアにしてはどうかと露伴に提案した。富豪村の主に会って土地の購入をしようとするもマナー違反を理由に断られ、再トライを挑んだ為にペナルティとして母親と婚約者を失う。自身も露伴のマナー違反のペナルティとして命を失いかけるが、露伴の機転と再挑戦を成功させた事により命を取り留めた。
荒木は彼女を「ムカつきながら描いた」としているが、キャラとしては大好きで傑作の出来と自負しているという[6]
一究(いっきゅう)
声 - 水橋かおり
富豪村の案内人。別荘地の購入に訪れた客をもてなすが、マナー違反をしないか監視している。主にただ使われているだけの案内人の子どもで、本人は特別な能力はない。
主(あるじ)
富豪村の別荘の売り主。物語には直接登場しない。富豪村では何よりもマナー(礼儀)を重んじており、それらを守った者のみがこの別荘地に相応しい人間であると見做して売買の契約を交わす。マナー違反をした者の一切の理由には耳を傾けることも受け付けることもなく、一究を通して早々の引き取りを通達する。ただし、再トライは可能であるが、その場合、自身の大切なものを前回違反した回数分失わせる。反面、一究がマナー違反をした場合、その回数分だけ失ったモノを返す。その正体は山の神

エピソード6:密漁海岸[編集]

週刊少年ジャンプ』(集英社2013年46号に掲載されたセンターカラー47ページの短編作品。料理監修は森崎友紀

雑誌掲載時のキャッチコピーは「好奇心は、漫画家を殺す Curiosity killed the MANGA Artist.

本作はこれまでの作品と違って「原作:岸辺露伴」の表記がなされていない。物語の時系列上はpart4の時期とほぼ同時期と思われるが、スマートフォンなど2000年代以降に普及したものも登場する。また、登場人物であるトニオ・トラザルディーが、来日し、杜王町で店を出した理由が本編と異なっている。なお、本作発表と同時に短編集『岸辺露伴は動かない』の発売も発表された[7]

あらすじ
漫画家・岸辺露伴は、イタリアンレストラン「トラサルディー」にて食事をした際、その店の料理人トニオ・トラサルディーにクロアワビの入手を手伝ってほしいと頼まれる。トニオによると杜王町のヒョウガラ列岩という場所で採れるアワビは世界中のどこにもない特別なアワビであり、それさえあれば自身の生涯で最高の特別料理を作ることができるのだという。
しかし、あまりに貴重であるため地元の漁師からもアワビを売ってもらえず、それでも入手したいトニオは杜王町の歴史書から「芸術」とも評される密漁の手法を発見し、それを露伴とともに実行しようと持ちかける。露伴は好奇心からそれを了承し、トニオと共にヒョウガラ列岩へと密漁に向かう。
登場人物
岸辺 露伴(きしべ ろはん)
スタンド名:ヘブンズ・ドアー(天国の扉)
杜王町に住む人気漫画家。イタリア料理店「トラサルディー」へと食事に来た際にトニオから密漁の協力を頼まれ、その際に「少年誌で連載している健全な漫画家」と言いながらも、トニオの覚悟を気に入り協力する事にした。
トニオ・トラサルディー
スタンド名:パール・ジャム
杜王町でイタリア料理店「トラサルディー」を営むイタリア人の男性。29歳。露伴は「本国のイタリアで店を開かないのは気に入らないが、日本の食材でここまで美味しい料理を作るのには感心する」とトニオの腕を高く評価している。自身の生涯で最高の特別料理を作るため、杜王町のヒョウガラ列岩という場所で採れるクロアワビの密漁の手伝いを露伴に持ちかける。
しかし、露伴から単に料理を作る為だけにアワビを求めているのではないことを見抜かれ、本当の目的がここのクロアワビを用いた新しい料理で恋人のヴェルジーナの脳腫瘍を治療するためであり、故郷を離れて杜王町に来たのも彼女の治療に有効な食材を手に入れる為であった事を打ち明けた。
密漁をする際、ウエットスーツを着ていながらも承太郎同様シェフハットを脱がない事を露伴にツッコまれた。
ヴェルジーナ
トニオの恋人。脳腫瘍を患っており、グレープフルーツ大まで大きくなった腫瘍はトニオの料理とパールジャムの力をもってしても治すことができず、それを屈辱と感じたトニオはより優れた食材を求め、彼女を故郷のアマルフィーに残して杜王町へとやって来た。
トニオによって日本に連れてこられた時点では立って歩くことすらできない状態に陥っていたが、トニオのアワビ料理によって立ち上がれるまでに回復した。
東方 仗助(ひがしかた じょうすけ)、広瀬 康一(ひろせ こういち)、虹村 億泰(にじむら おくやす)
Part4の主人公とその友人たち。杜王町に住む、露伴の数少ない理解者。物語のラストで露伴と共に「トラサルディー」でタコのトマトソース煮を食べていた。
用語
ヒョウガラ列岩
杜王町の北西部に位置する岩礁群。東方家(仗助の一族と同一かは不明)の私有地で禁漁区に指定されており、そこから南側の入り江一帯がアワビの漁場となっている。禁漁区な上、潮の影響でアワビの主食である海藻類が豊富で、タコ以外の天敵がいない状況下で生息しているため、25cm前後の大型のアワビが多く生息している。
この地域では年に一度、天気の良い八月のお盆前後の満月の夜に数時間だけ月の引力の影響で潮の流れが変わり、そこに生息しているクロアワビは上下の感覚を失って岩から離れ、潮の流れに乗って海中を漂うようになる。
それを列岩の外で待ち構え、手で捕まえて持ち帰る密漁法が古文書に伝わっているが、実際にはこれは密漁者に対する罠であり、うかつに行えば海中に漂うアワビが体に貼りつき、その重さによって海中に引き込まれて溺死してしまう。

岸辺露伴 グッチへ行く[編集]

『SPUR』2011年10月号の別冊付録である小冊子に掲載されたフルカラー16ページの短編作品。グッチ設立90周年を迎えるにあたり、その記念として『SPUR』編集部より「グッチの職人とものづくりの伝統をテーマに作品を描いてほしい」と荒木飛呂彦に依頼が舞い込み、同年が荒木の執筆30周年でもあることからその記念も兼ねて執筆が決定した[8]

『SPUR』からの依頼では『ジョジョの奇妙な冒険』とのコラボレーションについて特に指定を受けていなかったが、荒木は自身の判断で露伴を登場させる事を決めたという[9](下記コメント参照)。

普通だと職人や工房を紹介するマンガで、こういうところで、こんな風に職人さんが働いているんだよとか、そういうものがSPUR編集部もグッチも欲しかったんだと思うんですね。でももう少しマンガのキャラクターと融合したいと思ったんです。ストーリーがあれば登場するのは誰でも良いという感じではなくて、ジョジョと融合したいなと。[9]

なお、本作に関する複数のインタビューで露伴がPart4劇中でグッチの時計を身に着けている点についても指摘を受けている[8][9]が、荒木によればこれは自身の所有している時計をモデルにしただけ[8]で露伴が特にグッチを好んでいるという設定はなく[9]、荒木自身も指摘を受けるまで忘れていたという[9]。一方で下記の通り、グッチと露伴に偶然にも接点があった事についてコメントを残している。

何年も前に描いたシーンですが、露伴がグッチの時計をしていたのは、すでに露伴のセンスがもの選びに反映されていたということでしょう。だからグッチのオファーがあったのかもしれませんね。偶然か予知能力か。不思議な因縁を感じます。運命だったのかも[8]

本作はその特性上、グッチというブランドのヒストリーにいかに荒木飛呂彦的な要素を入れるかに重点を置いており、登場人物は全てグッチの服を身に着けている。また、ミラノでコレクションを見た『SPUR』編集者から「秋冬のグッチは色使いが荒木先生向き」と教えられたことから、1ページを丸々使用してカラーブロッキングされた背景に露伴とグッチの服を身にまとった通訳の女性がポーズをとる大胆な構成をいくつも用いるなど、掲載される『SPUR』がモード誌である事を強く意識した内容となっている[8]。劇中に登場する衣服は全てフリーダ・ジャンニーニがデザインしたもの可能な限り正確に着せ[10]、小物も全て荒木が実物を実際に手にした上で細部まで忠実に描かれている[8]が、露伴のパンツやジャケットなど、衣服の色には漫画の配色に合わないとの理由から一部変更が行われているものも存在する[8][9]

あらすじ
漫画家・岸辺露伴は、イタリアのフィレンツェにあるグッチの工房を訪れる。祖母の形見のバッグに金目の物を入れると消えてしまう謎の現象を直してもらう為だ。グッチの職人は難色を示すが修理を引き受け、露伴は修理されたバッグを持って帰るが、後になってそのバッグに隠された秘密を知ることになる。
登場人物
岸辺 露伴(きしべ ろはん)
杜王町に住む人気漫画家。祖母の形見のバッグが起こす謎の現象を直してもらう為に、フィレンツェにあるグッチの工房を訪れる。対象を本にして、記憶を読んだり命令したりできるスタンド「ヘブンズ・ドアー」を持つが、今作には登場しない。その理由について荒木飛呂彦は「バッグ自体がスタンドという設定だし、『ジョジョの奇妙な冒険』を知らない読者も多い女性誌なので、あえて今回は露伴のスタンドは描かなかった」と説明している[8]
通訳の女性
露伴がイタリアを旅行するにあたり、通訳として雇った女性。露伴とともにトスカーナを旅行し、フィレンツェのグッチの工房に同行した後露伴をワイナリーへと案内し、隙を見せた露伴の貴重品を全て持ち去った。なお、彼女が着ている衣装は全てグッチの2011-2012の秋冬新作を基に描かれている[8]
グッチの職人
グッチのレザー製品を担当する職人。露伴からバッグの修理を依頼され、そのバッグの成り立ちを説明するが露伴は聞く耳を持たなかった事から言われた通りにバッグを修理した。
用語
露伴の祖母のバッグ
露伴の祖母の形見である、ウェブをあしらった70年代製のボストンバッグ。グッチの職人によれば、かつて天才的な職人の一人が全世界に3個だけ特別に作ったものであるという。金目の物を入れて口を閉じるとそれが消えてしまう為、露伴はグッチの工房へ修理を依頼した。この現象はバッグに宿ったスタンド能力によるものであり、持ち主が危機に陥った時に消えた金品と等価の物を出して持ち主を助けるというものであったが、金品が消えないように修理された事により能力は消失した。
なお、構想時点では祖母の形見が財布となる予定だったのだが、グッチからの強い要請でバッグに変更されたという[9]

短編集未収録の『岸辺露伴は動かない』シリーズ[編集]

エピソード4:望月家のお月見[編集]

岸辺露伴は動かないシリーズの第五弾。スマートフォン・PC用アプリ『少年ジャンプ+』で2014年9月22日にアプリのスタートを記念して無料公開された[11]47ページの短編作品。

あらすじ
杜王町に住む人気漫画家、岸辺露伴。彼は最近取材に行けてないとして、自宅の近所に住む望月家について語りだす。
この家は直系の先祖全員の命日が必ず中秋の名月であるという奇妙な宿命を持っており、死を逃れるには中秋の名月に家族揃って月見をする必要があった。
そして今年の中秋の名月である9月8日、家長である望月昇の主導のもと、例年のように月見が行われるのだが…。
登場人物
作中に登場する望月家は露伴が付けた仮名という設定になっている。
岸辺 露伴(きしべ ろはん)
本作のナビゲーター。杜王町に住む人気漫画家。最近は予定が一杯で取材旅行に行ってない模様。レストラン「トラサルディー」で食事をしながら、近所に住む望月家とその奇妙な宿命について語りだす。
望月 昇(もちづき のぼる)
望月家の16代目家長。50歳会社員。死ぬのは必ず中秋の名月の日であるという望月家の宿命を誰よりも理解しており、死の宿命を逃れる為に家族全員を月見に参加させようと奔走する。
望月 晴瑠子(もちづき はるこ)
望月昇の妻。46歳専業主婦。子宮頸がんの検査で陽性反応が出ており、夫の昇から「望月家は中秋の名月の日以外は不死身」「月見が無事に終われば回復に向かう」と教えられて月見に参加する。
望月 亜貴(もちづき あき)
望月家の長女。21歳の大学生。彼氏のもとへ外出しようとしていたが、昇によって制止され、しぶしぶ月見に参加する。深夜に彼氏の電話がかかってきた事から言いつけを破って外出し、望月家の死の運命に襲われそうになるが、偶然にもその直前に彼氏からのプロポーズを受けて望月家の人間ではなくなった事から命を取り留める。
望月 猛(もちづき たける)
望月家の長男。15歳の中学生。野球の特待生での進学を目指しており、9月8日も本来は試合に行かないといけない状況だったのだが、昇によって強引に引き止められた。
望月 ミツ(もちづき みつ)
望月家の祖母。78歳。月見の最中に偶然から金魚をのどに詰まらせて死にかけるが、月見に参加していたためか死なずに済んだ。
月の兎
望月家の死の宿命を管理する存在。を擬人化したような姿をしており、網目模様の入ったスーツとマスクを着用している。人の目には見えない。
毎年中秋の名月の日に現れ、この日に月見をする決まりを破った望月家の人間を事故に見せかけて殺害する。なぜそのような事をするのかについては劇中で一切語られていない。
月見を抜け出し、彼氏に会いに行った亜貴を「望月家に決められた事」として殺そうとするが、彼女が彼氏からのプロポーズを受けて望月家の人間ではなくなった事から殺害を中止し、たまたま付近を通りかかったライダーを数合わせと称して殺し、天に帰っていった。

エピソード7:月曜日-天気雨[編集]

『岸辺露伴は動かない』シリーズの第六弾。『ジャンプスクエア』創刊8周年を記念して『ジャンプスクエア』2016年1月号に掲載された50ページの短編作品。

キャッチコピーは「時代が変われば、すべてが変わる。すこしずつ。」

あらすじ
編集者との打ち合わせのため、雨の中駅を訪れた漫画家・岸辺露伴。駅の構内では歩きスマホをする人であふれかえり、前方不注意な通行人がたびたびぶつかってくる事に露伴は憤るが、あまりにも周りが見えていない人間が多いため次第に違和感を覚える。
そこで、ホームで電車を待っている際にぶつかりそうになった肥満の男に問いただすが、その最中に別の通行人が露伴に激突し、露伴は線路に落ちてしまう。
露伴とそれを助けようとした肥満の男は線路と線路の間に退避して事なきを得たが、男は「昼過ぎから携帯をもった人間が次々に自分にぶつかってくる」と述べ、駅員が救助しようとしているのにも警戒する。
次の列車が到着しようとしている中、露伴はヘブンズ・ドアーで駅員を確認した上で男をホームへ上げようとするが、今度はホームにいた人間が次々と線路へと押し出されるように落ちていった。
登場人物
岸辺 露伴(きしべ ろはん)
スタンド名:ヘブンズ・ドアー(天国の扉)
杜王町に住む人気漫画家。スタンドは対象を本にして、文字と化した記憶を読んだり、加筆して記憶の改ざんや命令することも可能な「ヘブンズ・ドアー」。本作では無生物であるローストチキンにも使用できるようになっている。
編集者との打ち合わせに向かうため駅を訪れるが、そこで歩きスマホをめぐる奇妙な現象に見舞われる。
肥満の男
露伴が駅のホームで出会った男。ヘブンズ・ドアーによって知った情報によると、普通の会社員で二人の子持ちであり、心臓の持病がある。
線路に転落した露伴を助けようとして共に助かった後、歩きスマホをする人間が次々に自分に向かってくる事を露伴に語る。
この現象は携帯の回路に住み着いていた新種の昆虫「ロレンチーニャ」の仕業であり、周囲に集まってきた通行人の携帯から抜け出たロレンチーニャの群れに生命電気を喰われて死亡した。
用語
ロレンチーニャ
露伴の巻き込まれた事件の元凶である、事件後に香港や上海の都市部で発見された新種の昆虫。学名は「コーイレ・エリクトリカス・ロレンチーニャ」。
電子回路の配線のような腹部を持つ細長い虫で、電子機器の集積回路の中に住み着いてそこで繁殖する。
主食は電磁波であり、一匹二匹ならば携帯の電気を盗み食いするぐらいで大した害はないのだが、たくさん集まると外部の生物へ攻撃する習性を持つ。
標的となりやすいのは心臓が弱った生物であり、獲物を見つけると電磁波で寄生している携帯の所有者を無意識に接近させ、携帯のイヤホンジャックから出て標的に乗り移り心臓の生命電気を奪い死亡させる。

エピソード#9 D・N・A[編集]

『岸辺露伴は動かない』シリーズの第七弾。『別冊マーガレット』2017年9月号に掲載された50ページの短編作品[12]

短編小説集[編集]

『ウルトラジャンプ』2017年8月号・9月号の付録として掲載されたノベライズ。

書誌情報[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 「岸辺露伴は動かない」がアニメ化! ジョジョ4部BD/DVDの全巻購入特典で”. コミックナタリー. 株式会社ナターシャ (2016年4月16日). 2016年4月16日閲覧。
  2. ^ Blu-ray/DVD”. TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』公式サイト. 2016年6月18日閲覧。
  3. ^ a b c 死刑執行中脱獄進行中 荒木飛呂彦短編集』229~231ページ あとがき
  4. ^ 『岸辺露伴は動かない』56ページ エピソード16:懺悔室 解説
  5. ^ 『岸辺露伴は動かない』120ページ エピソード2:六壁坂 解説
  6. ^ 『岸辺露伴は動かない』168ページ エピソード5:富豪村 解説
  7. ^ 「岸辺露伴は動かない」新作がジャンプに、単行本化も決定 - コミックナタリー
  8. ^ a b c d e f g h i 『SPUR』2011年10月号 172・173ページ 「GUCCI meets Hirohiko Araki 『岸辺露伴 グッチへ行く』作者・荒木飛呂彦インタビュー」
  9. ^ a b c d e f g HOUYHNHNM 「『岸辺露伴 グッチへ行く』の作者、漫画家・荒木飛呂彦インタビュー」
  10. ^ 『岸辺露伴は動かない』233ページ 岸辺露伴 グッチへ行く 解説
  11. ^ 『少年ジャンプ』の新アプリ『少年ジャンプ+』、本誌全編&オリジナル作&過去作配信
  12. ^ 露伴のもとに舞い込んだ依頼とは?「岸辺露伴は動かない」が別マに登場”. コミックナタリー. 株式会社ナターシャ (2017年8月12日). 2017年8月12日閲覧。

以下の出典は『集英社BOOK NAVI』(集英社)内のページ。書誌情報の発売日の出典としている。

外部リンク[編集]