富裕層

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100万米ドル(約1億)の豪邸)、米国カリフォルニア州サリナス(2006年)

富裕層(ふゆうそう)とは、一定以上の比較的大きな経済力購買力を有する個人・世帯。又は、より広く捉え直した上で細分化して、富裕層(High-net-worth individuals, HNWIとも表記され、保有資産額は100万ドルあるいは1億円以上)若しくは超富裕層Ultra-HNWIとも表記され、保有資産額は3000万ドルあるいは5億円以上) などの用語が使用される。

World Ultra Wealth Report 2021によれば、世界の超富裕層人口は295,450人、アメリカ合衆国が101,240人と最も多く、次いで、中国29,815人、日本21,300人、ドイツ15,435人、カナダ11,010人、フランス9,810人、香港9,435人、イギリス8,765人、スイス7,320人、インド6,380人(上位10カ国)となったが[1]、フランス(-10.8%)・イギリス(-9.5%)・香港(-5.1%)・ドイツ(-3.3%)・カナダ(-2.4%)・インド(-2.0%)は、減少したのに対して、アメリカ合衆国(+8.0%)・中国(+8.0%)・日本(+7.5%)は強い伸びを示した[1]。スイスは、+1.9%の増加となった[1]

用語[編集]

財産家、大持ち、億万長者、素封家などと呼ばれる。

長者の中でも特に代表的な存在は「億万長者」とも呼ばれ、日本で過去行われた高額納税者公示制度は「長者番付」とも呼ばれた。

素封」とは『史記‐貨殖伝』の「今有下無二秩祿之奉、爵邑之入一而楽与レ之比者上、命曰二素封一」による語である[2]。「」は、もともとで、つけ加えるもののないこと。「」は封祿(ほうろく)、封土の意。領地(日本の場合、領地とは封建領主の私有財産ではなく、基本的には、その領地・住人に及ぼし得た権限は、租税徴収権・行政権・司法権などに限られた)がなくても諸侯に等しい富を持っていること。大きな資産を持っていること。また、その人。金持、金満家、財産家、資産家[2][3]素封」のみで「大金持ちの"人"」を意味し、本来「家」を付ける必要はない。しかし、「資産家」や「金満家」などに寄せたのか、明治以降、「大金持ちの"人"」を表す際には、「家」を付けて「素封家」というようになった[4]

英語では、西洋の命数法ミリオンshort scaleでは百万)から「ミリオネア」(millionaire)、ビリオン(short scaleでは十億)から「ビリオネア」(billionaire)、ガジリオン英語版(とても大きな数)から「ガジリオネアGazillionaire)」と呼ばれる[5]。またプライベートジェットを個人で所有している層としてジェット族(Jet Setter)とも呼ばれる。

概要[編集]

RBCウェルス・マネジメント[編集]

RBCウェルス・マネジメント(日本語英語)などの調査による富裕層の定義は、主な居住用不動産、収集品、消費財、および耐久消費財を除き、100万ドル以上投資可能資産を所有する世帯としている[6]。英語ではHNWI (high-net-worth individual)と表記する。2012年の統計によると、世界に約1100万世帯の富裕層が存在し、世界で最も富裕層人口を持つ国がアメリカで約306万世帯、2位は日本で約182万世帯である。また、3000万ドル以上の投資可能資産を所有する世帯を超富裕層(Ultra-HNWI)と定義している。

野村総合研究所[編集]

野村総合研究所は、「超富裕層(世帯の純金融資産・5億円以上)」「富裕層(同・1億円以上5億円未満)」に分類した調査を報告している。直近の報告[7]によると、2019年は、純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」、および同5億円以上の「超富裕層」を合わせると132.7万世帯で、内訳は、富裕層が124.0万世帯、超富裕層が8.7万世帯であった。

富裕層と超富裕層をあわせた2019年の世帯数は、2005年以降最も多かった2017年の合計世帯数126.7万世帯から6.0万世帯増加した。富裕層・超富裕層の世帯数はいずれも、安倍政権の経済政策(「アベノミクス」)が始まった後の2013年以降一貫して増加を続けている[7]

なお、2019(令和元)年6月6日現在における全国の世帯総数は、5178万5千世帯である[8]。従って、2019年においては、富裕層の割合は約2.4%、超富裕層の割合は約0.16%となる。

新富裕層[編集]

近年、情報通信技術の発達、金融規制緩和により、従来とは異なる考えを持つ新たな富裕層財が登場している[9]

富裕層調査[編集]

ワールド・ウェルス・レポート[編集]

フランスのコンサルティングファームのキャップジェミニが発表した2019年世界の富裕層数ランキングである。主な居住用不動産、収集品、消費財、および耐久消費財を除き、100万米ドル(約1億)以上投資可能資産を所有する世帯を富裕層(HNWI、High-Net-Worth Individual)と定義している[10]。世界の富裕層人口の上位25か国は以下の通りである。

富裕層
順位 国/地域 人口
1 アメリカ合衆国の旗 アメリカ 5,909,000
2 日本の旗 日本 3,387,000
3 ドイツの旗 ドイツ 1,466,000
4 中華人民共和国の旗 中国 1,317,000
5 フランスの旗 フランス 702,000
6 イギリスの旗 イギリス 591,000
7 スイスの旗 スイス 438,000
8 カナダの旗 カナダ 392,000
9 イタリアの旗 イタリア 298,000
10 オランダの旗 オランダ 287,000
11 オーストラリアの旗 オーストラリア 284,000
12 インドの旗 インド 263,000
13 大韓民国の旗 韓国 243,000
14 スペインの旗 スペイン 235,000
15 ロシアの旗 ロシア 215,000
16 クウェートの旗 クウェート 207,000
17 サウジアラビアの旗 サウジアラビア 203,000
18 ブラジルの旗 ブラジル 199,000
19 ノルウェーの旗 ノルウェー 182,000
20 中華民国の旗 台湾 178,000
21 香港の旗 香港 172,000
22 オーストリアの旗 オーストリア 155,000
23 スウェーデンの旗 スウェーデン 142,000
24 タイ王国の旗 タイ 134,000
25 インドネシアの旗 インドネシア 134,000

ワールド・ウルトラ・ウェルス・レポート[編集]

スイスの金融大手UBSなどの集計による2019年世界の超富裕層数ランキングである。超富裕層(UHNWI, Ultra HNWI)を純資産3000万ドル以上所有する者と定義しており、世界に29万720人いるとされる。最多国はアメリカ合衆国、最多都市はニューヨーク(東京は3位)[11]。世界の超富裕層人口の上位10か国は以下の通りである。

超富裕層
順位 国/地域 人口
1 アメリカ合衆国の旗 アメリカ 93,790
2 中華人民共和国の旗 中国 27,755
3 日本の旗 日本 19,820
4 ドイツの旗 ドイツ 15,960
5 カナダの旗 カナダ 11,285
6 フランスの旗 フランス 11,000
7 香港の旗 香港 9,955
8 イギリスの旗 イギリス 9,690
9 スイスの旗 スイス 7,200
10 インドの旗 インド 6,515

アメリカ合衆国の状況[編集]

世界一、富裕層が多い国であるアメリカ[12]。そのアメリカのネット証券会社の大手チャールズ・シュワブが2022年2月に21〜75歳のアメリカ人1,000人を対象に行ったモダン・ウエルス・サーベイ2022によると、アメリカ人は、220万ドル=2億2,000万円(分かりやすい換算のため、1ドル=100円を前提とする)の純資産キャッシュ預貯金不動産株式投資信託などの総資産から、住宅ローン自動車ローンクレジットカードの未払い分などの負債を差し引いた額)を保有すれば、お金持ちであり、77万4,000ドル=7,740万円(同様に、1ドル=100円を前提とする)の純資産を保有していれば経済的に安心であるとみなしているようである[13]

2020年9月にFRB(米連邦準備理事会)が発表したデータによると、アメリカの世帯の純資産額の平均値は、2019年で74万8,800ドル=7,488万円(同様に、1ドル=100円を前提とする)であり、上記の2つの金額に近い[13]

反対に、貯金が殆どない世帯も多く、Bankrateが2021年7月に行った世論調査によると、緊急用の貯金額(普通預金口座、当座預金口座、短期金融勘定にあるお金)は3ヶ月分の生活費未満かゼロと回答した人々が51%もいた[13]

純資産額の中央値を見てみると、それは12万1,700ドル=1,217万円(同様に、1ドル=100円を前提とする)[13]

このように、経済格差が大きいアメリカ、平均値は超富裕層に大きく引き上げられていることから、現実を反映している数字とは言えない。実際、アメリカで純資産のトップ1%に入るには11ミリオンドル超(同様に、1ドル=100円を前提とすると、11億円超)、トップ0.5%に入るには17ミリオンドル超(同様に、1ドル=100円を前提とすると、17億円超)、トップ0.1%に入るには43ミリオンドル超(同様に、1ドル=100円を前提とすると、43億円超)が必要とされている[13]

日本と比較してみると、総務省統計局が2021年5月に発表した「2019年全国家計構造調査」によると、2019年10月末の家計純資産の平均値は2,834万円と、同様に、1ドル=100円を前提とした場合、アメリカの4割弱しかないものの、中央値は1,422万円で、アメリカとは大きな差はない[13]

脚注[編集]

  1. ^ a b c WEALTH X APPLIED WEALTH INTELLIGENCE WORLD ULTRA WEALTH REPORT 2021 2022年11月閲覧
  2. ^ a b コトバンク 精選版 日本国語大辞典「素封」の解説
  3. ^ 素封家 精選版 日本国語大辞典「素封家」の解説 コトバンク
  4. ^ 素封家/そほうか 語源由来辞典
  5. ^ "将軍と金融、富豪の「3G」=史上最も裕福なトランプ次期政権-米". 時事ドットコムニュース時事通信. 14 December 2016. 2016年12月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年1月28日閲覧
  6. ^ World Wealth Report 2012
  7. ^ a b 野村総合研究所、日本の富裕層は133万世帯、純金融資産総額は333兆円と推計 2023年2月閲覧
  8. ^ 結果の概要 厚生労働省 2023年2月閲覧
  9. ^ NHKスペシャル "新富裕層" vs 国家 〜富をめぐる攻防〜(2013年8月18日、NHK)
  10. ^ World Wealth Report 2020 2021年2月16日閲覧。
  11. ^ WEALTH-X AND UBS WORLD ULTRA WEALTH REPORT 2020 2021年3月07日閲覧。
  12. ^ HNWI人口・資産総額で北米が1位を維持:World Wealth Report 2022|沖縄タイムス 2022年7月11日 16:00 2023年2月閲覧
  13. ^ a b c d e f アメリカ人はいくらの純資産を持っている人をお金持ちとみなしているのか? 日本とはどれだけ違う?|飯塚真紀子在米ジャーナリスト 2022/6/7(火) 7:41 2023年2月閲覧

関連項目[編集]

外部リンク[編集]