プライム

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′ ″

プライム (英: prime) (  )は、約物のひとつで、対象となる文字の右肩に右上から打つ点である(例:x′)。2つ重ねたものをダブルプライム )、3つ重ねたものをトリプルプライム )と呼ぶ。類似の記号としてアポストロフィークォーテーションマークアキュート・アクセントなどがあるが、それぞれ別のものである。

なおイギリスの古い影響を受けた国(日本インドなど)ではダッシュと呼ぶことも多い[1]。日本では2つ重ねたものをツーダッシュと呼ぶこともある[要出典]

起源[編集]

プライムは prima minuta「第1の小部分」というフレーズに由来する(ここではラテン語で示したが、非常に古い起源をもった表現である)。60進法の慣習で、ある単位(たとえば1時間)の60分の1を"prime minute"、さらに60分の1を"second minute"、さらに60分の1を"third minute"の様に表現していた。除数は60に限らず、物によっては24分の1や12分の1を意味する場合もあった。

これに対応して、数の右肩に点(  )を1つ、2つと打つ表記がされるようになる。したがって本来この記号は"minute"に対応しているのであり、プライムと呼ぶのはふさわしくない。 20世紀前半まではx′を「エックス・プライム」、x″を「エックス・セカンド」のように読んでいた。しかし次第にこの記号そのものがプライムだと認識されるようになったため、現在ではx″を「エックス・ダブルプライム」と読むようになっている。

単位記号[編集]

プライムおよびダブルプライムは、時間角度ヤード・ポンド法における長さなど、単位を表すのに用いられる。

腕時計メーカにおいてはトリプルプライムを使ってリーニュ(1インチの12分の1)を表している。

数学表記[編集]

数学では、一般に類似したものを表すのに使われる。A′はAに類似しているもの、A″はAとA′に類似しているもの、といった具合である。例えば直交座標系で(xy)と表記される点に対し、回転や変換を施した点を(xy)と表記したりする。こうしたプライムの意味は使う度に定義するものであるが、しばしば定義なしに用いられる場合がある。なおいずれも他の表記法もある。

  • 微分導関数: f(x)およびf(x)は、f(x)をxについて微分した1階および2階の導関数を意味する。またy = f(x)の時に、yyxについて微分した1階の導関数を意味する。
  • 補集合: Aは集合Aの補集合である。
  • 余事象: Aは事象Aに対してAが起こらない事象。

なお素数のことを prime number というが、これとは何の関係もない。

物理学[編集]

物理学では、事象の後の変数を記すのに使われる。例えばvA′はある事象が起きた後の物体Aの速度を示す。また相対的な関係を示すのにも用いられる。つまり、ある慣性系Sでの座標(x, y, z, t)は、別の慣性系Sでの座標(x, y, z, t)に対応する。

化学[編集]

化学では、官能基を区別するために用いられる。たとえば、R-CO-Rという化学式は、2つの官能基(RとR)に挟まれた構造のケトンを表現している。

またIUPAC命名法において、環集合に位置番号を付ける際に複数の環を区別するために用いられる。具体例としては核酸の構成要素であるヌクレオシドが挙げられる。ヌクレオシドでは核酸塩基にプライムなしの位置番号を、リボースにプライム付きの位置番号を振る。

分子生物学において核酸分子の向きを示すのに5'・3'という表記が用いられるが、これはリボース環での位置番号に由来している。核酸はヌクレオシドの5'位の炭素と隣のヌクレオシドの3'位の炭素の間がリン酸で結びつけられた構造をしており、そのためこの2つの表記で向きを示すことができるのである。

言語学[編集]

ロシア語などの言語をローマ字翻字する際に、口蓋化の表記として用いる場合がある。 Xバー理論では、版組が難しくなるオーバーライン(バー)の代わりにプライムを使って表記することが一般的になっている。

符号位置[編集]

記号 Unicode JIS X 0213 文字参照 名称
U+2032 1-1-76 ′
′
′
U+2033 1-1-77 ″
″
″
U+2034 - ‴
‴
Triple Prime
U+2057 - ⁗
⁗
Quadruple Prime
ʹ U+02B9 - ʹ
ʹ
Modifier Letter Prime
ʺ U+02BA - ʺ
ʺ
Modifier Letter Double Prime

ここで"Modifier Letter"とあるのは強勢口蓋化を表記するような言語学的な用途のための文字である。

文字コードとしてプライムを使えない場合には、代わりにアポストロフィーを(可能ならイタリック体で)用いることがある。LaTeXでは、f'f'と描画され、f^\primeとすればf^\primeと描画される。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 現在のイギリスでは、ダッシュという読み方は今や死語と化しており、プライムと読んでいる[要出典]