リーダー (記号)
リーダー(leader;lead(導く)から派生)は約物のひとつである。点々や点線などと呼ばれることもある。JIS規格では「リーダ」と表記されている。
日本語では多くの場合、文章中では無音の状態もしくは文の省略を表す。古来の日本語文書にはなく、欧文の翻訳文において三点リーダー( ... )の代わりとして使用され始め、純粋な日本語文書にも定着した約物であり、分離禁止文字の1種である。[1]。
文章中では、2マス分使ってリーダーを2個つなげる二倍リーダー(二倍三点リーダー、二倍二点リーダー)の使用を推奨する者もいる。ただし、日本産業標準調査会やW3Cなどの組版ルールでは必ず2個つなげなければならないというルールは無い。[2][3]。なお、分割禁止ルールの対象であり、二倍リーダー以上に連続する場合は分離できず、1行内に収めて記号を一体として扱う必要がある。[4]
数学においては、継続を示す目的で使用される。また、図表中では項目同士をつなげる記号として使われる場合がある。
JIS X 0208では二点リーダ(‥)と三点リーダ(…)のみが規定されており、JIS X 0208に対応したフォントを搭載した現代の一般的なコンピューターにおいても二点リーダー(‥)と三点リーダー(…)のみが利用可能となっているが、昔の活字や写植等のシステムでは二点・三点以外のリーダー(五点リーダーなど)も利用されていた。新聞では四点リーダーが使用されている例もある。意図的に使い分ける人もおり、例えば新井素子の小説『・・・・・絶句』(1987年)ではタイトルに「五点リーダー」、『あたしの中の……』(1977年)では「六点リーダー」(1マスに6つの点があるリーダ。1977年刊行の奇想天外社版。1981年刊行の集英社コバルト文庫版以降では三点リーダが2つで代用されている)の使用が指定されている。
用法[編集]
主な用法は以下の通り。一部はダッシュと同じような機能である。
- 余韻、感情
-
- 文の末尾で余韻を感じさせる。
- (例)そして、山へ向かった……。
- 省略
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- 引用で文の一部を省略していることを示す。
- (例)書籍には「彼女が……考えた」とある。
- 記号
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- 図や表で項目をつなぐ記号として使う。
- (例)バナナ………2本/リンゴ………5個/ブドウ………1房
表記方法[編集]
縦書きでは縦に点が並び、横書きでは横に点が並ぶように記す。日本語表記やマルチバイト文字のコードでは、原稿用紙マスの真中を通るように点を並べる。多くの欧文フォント、マルチバイト文字のコードであってもスマートフォンやタブレットのOSにおける描画では、ベースライン上に点が並ぶ(例としてiOSのメモ機能で入力したリーダーはInDesignなどのレイアウトソフトにペーストすると仮想ボディの中央に配置される)。
Unicodeには数学記号領域にU+22EF ⋯ midline horizontal ellipsisがあり、こちらはフォントによらず点が中央を通るが、句読点ではなく数学記号としての文字プロパティを持っているため、本文での使用は望ましくない[5]。
「など」の2文字を略記する目的で、二点リーダーが使用されることもある。
- 紙媒体
- 原稿用紙で手書きをするときには、三点リーダーを2マス続けて書き入れるのが一般的だが、1946年(昭和21年)に文部省教科書局調査課国語調査室が作成した『くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)』のテンテンの用例『(5)テンテン ……または… テンセン ………』と書かれていることから広まった可能性がある。なお、テンセンについては点9つで会話の無言の表現や、項目のつなぎに使うとされる。それ以前から植字の現場において、「ミ」等と誤植しないために複数マスにわたって書かれていればリーダーと判断が可能であることから、出版業界の慣習であったとする説もある。
- デジタル媒体
- コンピュータでも原稿用紙と同じく、三点リーダーを2文字分続けて表記する用法があるが、必ずしも徹底されているとは言えない。Web上においては、二点リーダーが使われたり、中黒("・" 特に半角の"・")や読点("、")を並べてあったり、中には句点("。")を並べる人もいる。
PC・スマートフォン等における入力時に、中黒3つによる表記が散見される(紙媒体においても)。
数学における用法[編集]
- あまりのあるわり算の「あまり」を表記する場合に三点リーダーが使用される。
- 14 ÷ 3 = 4 ⋯ 2
継続することを示す目的で、三点リーダーか二倍三点リーダーが使用される。
- 小数以下が継続する場合に任意の桁の後に三点リーダーか二倍三点リーダーが使用される。
- π = 3.141592653589793238462643383279……
- 数式において継続する中間を省略することを示す場合は、演算子を書いた上で、三点リーダーか二倍三点リーダーを書き、演算子を書く
- 100! = 1 × 2 × ⋯ × 100
- 行列において中間を省略する場合に三点リーダーを書く。(行の省略は左端のみ縦三点リーダーを引くこともあるが、すべておよび斜め三点リーダーも引かれることもある)
欧文における類似の記号[編集]
欧文における類似の記号として「dot-dot-dot」が存在する。これは「...」と言う形でピリオドを3つ連ねて省略を表すもので、「ellipses」とも通称される。欧文における「leader」は、本来は目次の項目とページ数を結ぶ際に用いられるような視線を誘導する記号を指し、点の数は3つに限らない。
符号位置[編集]
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
---|---|---|---|---|
… | U+2026 |
1-1-36 |
… … … |
三点リーダ HORIZONTAL ELLIPSIS |
‥ | U+2025 |
1-1-37 |
‥ ‥ |
二点リーダ TWO DOT LEADER |
⋮ | U+22EE |
- |
⋮ ⋮ |
VERTICAL ELLIPSIS |
⋯ | U+22EF |
- |
⋯ ⋯ |
MIDLINE HORIZONTAL ELLIPSIS |
⋰ | U+22F0 |
- |
⋰ ⋰ |
UP RIGHT DIAGONAL ELLIPSIS |
⋱ | U+22F1 |
- |
⋱ ⋱ |
DOWN RIGHT DIAGONAL ELLIPSIS |
︙ | U+FE19 |
1-1-36 包摂 |
︙ ︙ |
三点リーダ PRESENTATION FORM FOR VERTICAL HORIZONTAL ELLIPSIS |
︰ | U+FE30 |
1-1-37 包摂 |
︰ ︰ |
二点リーダ PRESENTATION FORM FOR VERTICAL TWO DOT LEADER |
脚注[編集]
- ^ 日本語組版処理の要件 cl-08 分離禁止文字
- ^ JISC 日本産業標準調査会 2004年 JIS X 4051 日本語文書の組版方法(要アカウント・ログイン)
- ^ W3C 2020年8月11日 日本語組版処理の要件(日本語版)
- ^ W3C 日本語組版処理の要件 3.1.10 分割禁止
- ^ general categoryはhorizontal ellipsisがPo (punctuation, other)、midline horizontal ellipsisがSm (symbol, math)。
外部リンク[編集]
- 文化庁 表記の基準に関する参考資料 - 『くぎり符号の使ひ方』などがある。
- W3C 日本語組版処理の要件(日本語版) - JIS X 4051(日本語組版規則)を基にした日本語組版の要件が記載されている。