アシタバ
アシタバ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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![]() アシタバ
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分類(APG III) | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Angelica keiskei (Miq.) Koidz. (1930) [3][4] | ||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
アシタバ |
アシタバ(明日葉、Angelica keiskei)はセリ科シシウド属の植物。日本原産で、房総半島から紀伊半島と伊豆諸島の太平洋岸に自生する[5]。伊豆諸島・伊豆半島・三浦半島および房総半島の個体は、古くから自生している個体であるが、紀伊半島の個体は近年紀伊大島に移植された株である。種小名は、明治時代の植物学者伊藤圭介(1803年 - 1901年)への献名。
別名八丈草(ハチジョウソウ)、明日草(あしたぐさ)、明日穂(あしたぼ)。春の季語[6]。
名称[編集]
和名アシタバ(明日葉)の名は、強靱で発育が早く、「今日、葉を摘んでも明日には芽が出る」と形容されるほど生命力が旺盛であることに由来する[5][7]。野菜としてアシタバが常食される八丈島は、産地として有名なことから八丈草の名でも呼ばれている[5]。
形状及び性質[編集]
草丈1メートル前後に育つ。多年草であるが、2-3年で黄色の傘形花序をつけ、その後に扁平な楕円形の果実をつける。開花結実すると枯れてしまう。冬にも緑色を保つが、寒さにやや弱い。葉は2回3出羽状複葉で、根生して大きく、鋸歯がある(写真参照)。茎を切ると淡い黄色の汁が出る。根は地上部に比すると太く、旺盛に伸張する。
伊豆大島系と八丈島系の系統が存在しており、伊豆諸島でも島毎に多少形状が異なるとされる。茎の色で伊豆大島産のものを「赤茎」、八丈島産のものを「青茎」と呼ぶ。また、御蔵島産のものは他の島に比べ、茎が太いとされる。
野菜としてのアシタバ[編集]
葉と茎は食用にされ、主に若葉を食べる[8]。香りと味に独特のクセがあるため[8]、天ぷらやバター炒め、おひたし、マヨネーズ和え等、多少クセを抑える調理法がとられる。特に伊豆大島では、アシタバを椿油で揚げた天ぷらが名物料理になっている。塩茹でして水にさらしてから調理に使うことによって強いクセは和らぎ、調味料もなじみやすくなる[8]。β-カロテンが豊富な健康増進野菜として知られ、油を使った調理法は、β-カロテンが体内でビタミンAに変わって油に溶けて吸収されることで、ビタミンAを効率よく摂ることができアクも消えて食べやすくなる[8]。
伊豆諸島では農協やスーパーの店頭で野菜として通年販売されている。また、伊豆諸島では多くの土産品などに明日葉の粉末が使用され、[要出典]いわゆる健康食品だけでなく、ケーキ、蕎麦、焼酎、茶、こんにゃく、アイスクリーム、アシタバの根入りドリンク等が販売されている。伊豆諸島の属する東京都がアシタバ生産高全国第1位となっている[9]。2005年(平成17年)の日本のアシタバの市場流通量は1,500tと推定されるが、うち約9割はサプリメントなどの加工用に用いられ、野菜として流通するのは約170tである[9]。2006年(平成18年)現在、野菜としてのアシタバの生産量は東京都が88.9%を占め、新興産地の茨城県が9.9%でこれに次ぐ[9]。
100 gあたりの栄養価 | |
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エネルギー | 138 kJ (33 kcal) |
6.7 g | |
食物繊維 | 5.6 g |
0.1 g | |
3.3 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(55%) 440 µg(49%) 5300 µg |
チアミン (B1) |
(9%) 0.10 mg |
リボフラビン (B2) |
(20%) 0.24 mg |
ナイアシン (B3) |
(9%) 1.4 mg |
パントテン酸 (B5) |
(18%) 0.92 mg |
ビタミンB6 |
(12%) 0.16 mg |
葉酸 (B9) |
(25%) 100 µg |
ビタミンC |
(49%) 41 mg |
ビタミンE |
(17%) 2.6 mg |
ビタミンK |
(476%) 500 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(4%) 60 mg |
カリウム |
(11%) 540 mg |
カルシウム |
(7%) 65 mg |
マグネシウム |
(7%) 26 mg |
リン |
(9%) 65 mg |
鉄分 |
(8%) 1.0 mg |
亜鉛 |
(6%) 0.6 mg |
銅 |
(8%) 0.16 mg |
他の成分 | |
水分 | 88.6 g |
水溶性食物繊維 | 1.5 g |
不溶性食物繊維 | 4.1 g |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[11]。別名: あしたぐさ、はちじょうそう。
廃棄部位: 基部 | |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
便秘防止や利尿・高血圧予防・強壮作用があるとされ、緑黄色野菜としてミネラルやビタミンも豊富に含まれる。特に、塩分を体外に排出する作用があるカリウムと、がん予防に役立つと考えられているβ-カロテンが多く含まれているのが特徴である[5]。豊富な食物繊維はアシタバ100グラム (g) 中に約5 gほど含まれ、食物繊維が不足がちな現代人に役立つ野菜として注目され、さらに茎を切ったときに出る黄色い汁に含まれる成分はフラボノイドで、便通を整える作用がある[8]。
その他の利用法[編集]
特徴的な成分としては、カルコン類(キサントアンゲロール)やクマリン類を含み、これらは抗菌作用を持つ。中国でも薬用に用いられており、古くは明の時代に編纂された薬草辞典『本草綱目』にその名が見られる[7]。日本では江戸時代中期に貝原益軒の『大和本草』で八丈島の滋養強壮によい薬草として紹介されている[7]。また、枯れる前に掘り起した根は薬用として朝鮮人参の代用品に利用されている。[要出典]収穫時期及び生育年数や系統により、含有している成分や構成比には差異がある。
万能薬のように言われることもあるが、俗信の域を出ないものも多い[7]。
雑知識[編集]
なお、近縁種のハマウド (A. japonica) は、関東および中部地方以西の海岸に分布し、アシタバとよく似ているが茎を切ったときに出る汁の色が薄いので区別できる。ハマウドは有毒植物ではないが、普通は食用にはされない。
脚注[編集]
- ^ 米倉浩司『高等植物分類表』北隆館、2010年、重版。ISBN 978-4-8326-0838-2。
- ^ 大場秀章(編著)『植物分類表』アボック社、2010年、第2刷。ISBN 978-4-900358-61-4。
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Angelica keiskei (Miq.) Koidz.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2015年5月16日閲覧。
- ^ "'Angelica keiskei Koidz.". Tropicos. Missouri Botanical Garden. 1702369. 2012年8月4日閲覧。
- ^ a b c d 小池すみこ 1998, p. 14.
- ^ 広辞苑第5版
- ^ a b c d 永田純一 (2004年12月9日). “アシタバについて”. 食品成分有効性評価及び健康影響評価プロジェクト解説集. 国立健康・栄養研究所. 2015年5月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月15日閲覧。
- ^ a b c d e 小池すみこ 1998, p. 15.
- ^ a b c 馬場ほか(2009):32ページ
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
参考文献[編集]
- 小池すみこ 『体に効く野菜』 法研、1998年4月23日、14 - 15頁。ISBN 4-87954-228-8。
- 馬場きみ江・谷口雅彦・芝野真喜雄・南晴文・白井靖子・大澤良(2009)"高カルコンアシタバの系統育成"薬用植物研究(新日本製薬薬用植物研究所)31(1):30-35.
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- アシタバの栽培風景(三宅支庁・三宅島の農業)
- アシタバ、明日葉(俗名:ハチジョウソウ(八丈草)) - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)
- アシタバについて (国立健康・栄養研究所)
- 宮崎県産および韓国産のアシタバ (Angelica keiskei Koidzumi)葉の成分の分離および分析 宮崎大学
- 青汁の原料「明日葉」の効果・効能
- "Angelica keiskei" - Encyclopedia of Life