打順

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打順(だじゅん)とは、野球ソフトボールゲートボールクリケットにおいて選手が打撃・攻撃を行う順番のことである。

野球

概要

野球やソフトボールでは、試合を始める前に、両チームでそれぞれ、9人の攻撃時の打順と、守備時の守備位置を決定しておく。投手の代わりに指名された選手が打撃を行う指名打者(DH)ルールを使用する場合には、投手の打順の代わりに指名打者とその打順を決定しておく。試合開始時における9人の選手及び指名打者はスターティングメンバー(スタメン)と呼ばれる。また、選手は、チーム内で打順が早いほうから順に、一番打者、二番打者というように呼ばれる。

打順を誤った場合の規定

打者が打順表の通りに打撃を行わなかった場合、誤った打順で打席に入った打者(不正位打者)が打撃を完了する(走者として一塁に達するかアウトになるか)以前であれば、正規の打順の打者(正位打者)と交替し、ストライクボールのカウントをそのまま受け継いで打撃を継続することができる。

誤った打順の打者が打撃を完了した場合は、相手側がこの誤りを発見してアピールすれば、正規の打順にあたる打者がアウトとなる。このとき、誤った打順の打者の打撃によって起こったプレイは全て無効になる(打席中に起こった盗塁暴投などによる走者の進塁は、打撃とは関係ないので無効にならない)。そして、正規の打順にあたる打者の次の打順の打者が正しい次打者となる。

打順の間違いを指摘するアピールは、次の打席に立った打者に対して投球したり、走者に対して牽制球を投げたりするプレイ(ただし、これ以外にアピールプレイがある場合、アピールプレイのための送球などはここでいうプレイには含まない)の前までに行わなければならない。1つでもプレイが行われると打順を誤った打者の打撃は正当化されてプレイが続行される。アピールがなく打順を誤った打者の打撃が正当化された場合、その正当化された打者が位置している打順の次の打順の打者が正しい次打者となる。

打順に対する考え方

日本のプロ野球における考え方

日本においては、各打順について理想の選手像があり、それにチーム内の選手を当てはめるという起用が好まれる。一般的には、一・二番でチャンスを作り、三・四・五番で返すという日本で理想とされる攻撃パターンを実現することを目的として、それに求められる能力を有した選手が当てはめられる。もっとも、これには例外もあり、特に外国人監督の場合には、こういった日本独特の起用法を用いないことが多々ある。なお、ほかのアジア諸国でもこのような考え方が好まれるようである。以下では、一般的な各打順の選手像を述べるが、監督ごとに異なった考えがある上に、必ずしも理想に合致した選手がチーム内に在籍しているとは限らないため、一概にこのとおりの起用になるとは限らない。

一・二番打者

一番打者はトップバッター[1](和製英語)、あるいはリードオフ・マン、リードオフ・ヒッターleadoff man, leadoff hitter)とも呼ばれる[2]出塁して、盗塁を決め、そして本塁に生還することが最重要視される[2][3][4]。そのため、高い走力と打撃技術、四球を選ぶ選球眼が求められる[3][4]。その役割から「切り込み隊長」「核弾頭」といった比喩がメディアで使用される。二番打者も同様の傾向があるが、近年の日本のプロ野球ではバントが多用される傾向にあるため、長打はないがバントが上手い技巧派の打者が多く用いられる。

一方、一番打者は試合で最も多く打席が回ってくるので、チームの中で一番の強打者をあてるべきだとの意見もある。また、恐怖の二番打者として、二番打者をクリーンアップのように強打者を当てる場合もある。

三・四・五番打者

日本では普通、三・四・五番をクリーンナップ(Clean up)と呼ぶ。この語は、走者を一掃する(本塁に返し得点をあげる)ことを意味し、チームの主力となる打者がこれらの打順を任されることが一般的である。特に四番打者はそのチームでもっとも本塁打を打てる強打者であることが多い。日本では、五番までの打順が重要視されるため、一番から五番を上位打線という。

六・七・八・九番打者

基本的に一番打者から五番打者のように明確な選手像はないが、九番打者は第二の一番打者であり、六番打者は第二の五番打者であるというように、上位打線のある打順の能力を若干弱めたものを求めるということも多いようである。優秀な打者の多いチームではこの限りではないが、投手・捕手・遊撃手など、打撃よりも守備が優先されるポジションの選手が入ることが多い打順である。そのため、一般的に下位打線と呼ばれる。中でも八番は草野球ライトを守り八番に入る選手がライパチと呼ばれるように長い間もっとも打撃力のない選手が打つ打順とされてきたが、近年ではDHを入れない場合、打撃力に関わらず投手が九番を打つようになったため、九番打者がもっとも打撃力のない選手とされている。

六番打者は、筑波大学の研究データによれば[出典無効]四番の次にチャンスで打順が回る確率が高く、打ち損じの少ない打者を入れるのが最適と考え実践する方法もある。

投手の打順

草創期のプロ野球では、投打に秀でた投手が五番などを任されることもあったが、通常は下位打線、とりわけ打撃力のない投手の場合は八番に入っていた。しかし、投手は守備で最も体力を使うため、打席数を減らして負担を軽くしようという意図から、徐々に九番で起用されることが増えた。近年では、投手が九番以外を打つことはほとんどなく、その理由としては、打撃力のない投手の打席数が増えるのは不利であるからとされることが多い。一方で、八番に投手を置き九番に野手を入れることで、一番打者とのつながりを重視する戦法も存在し、川上哲治監督がしばしば導入していた。現在でもたまに見られる戦法である。

アメリカにおける考え方

メジャーリーグなどでは、打順ごとの特定の印象は薄く、チームの選手構成に応じて最適と考えられる打順を組むことが多い。そのため、チームによって強打の長距離打者が三番であったり四番や二番であったりする。もっとも、日本に比べれば弱いながらも、やはり打順ごとのイメージは存在するようであり、一番や二番には出塁率の高い選手やときには足の速い選手が起用され[2][3][4]、三番に最強打者が置かれることが多い。実際に、メジャーリーグでの通算本塁打上位5人は3番打者としての出場がもっとも多いという数字が残っている。ただ、アメリカでは統計的に最適な打順を研究する学者も数多くいるため、最強の打者の最適な配置は選手構成によって異なり、通常は三番打者、偏った選手構成の場合には二番や四番になることもあるという結論が得られている。すべての監督がこの結論を信用しているわけではないが、こういった統計的な結果を采配に反映させるチームは増えているため、打順に対するこだわりはなくなりつつあるとする意見もある。

脚注

  1. ^ トップバッターは、転じて、物事を最初に始める人に使用されることもある。日本放送協会の『紅白歌合戦』では、紅組・白組の最初に歌を披露する歌手を「トップバッター」と表現することがある。
  2. ^ a b c lead-off batter” (英語). Baseball Dictionary and Research Guide. 2009年1月4日閲覧。
  3. ^ a b c 谷口輝世子 「First Impact ― リードオフマンのお仕事」『月刊スラッガー No.22 , 2000年2月号』日本スポーツ企画出版社、6-13頁頁。 
  4. ^ a b c スラッガー編集部 「Top of the World ― 1番打者タイプ別徹底分析」『月刊スラッガー No.62 , 2003年6月号』日本スポーツ企画出版社、36-39頁頁。 

ゲートボール

ゲートボール#戦術を参照。

関連項目