土星
土星 Saturn | |||||||
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仮符号・別名 | 鎮星、填星 | ||||||
分類 | 木星型惑星 | ||||||
軌道の種類 | 外惑星 | ||||||
発見 | |||||||
発見方法 | 目視 | ||||||
軌道要素と性質 元期:2008年1月1日[1] | |||||||
太陽からの平均距離 | 9.55491 AU | ||||||
平均公転半径 | 1,426,725,400 km | ||||||
近日点距離 (q) | 9.021 AU | ||||||
遠日点距離 (Q) | 10.054 AU | ||||||
離心率 (e) | 0.05552 | ||||||
公転周期 (P) | 29.53216 年 | ||||||
会合周期 | 378.09 日 | ||||||
平均軌道速度 | 9.6724 km/s | ||||||
軌道傾斜角 (i) | 2.4886 度 | ||||||
近日点引数 (ω) | 93.2143 度 | ||||||
昇交点黄経 (Ω) | 113.7357 度 | ||||||
平均近点角 (M) | 147.9416 度 | ||||||
太陽の惑星 | |||||||
衛星の数 | 61 (64) | ||||||
物理的性質 | |||||||
赤道面での直径 | 120,536 km | ||||||
表面積 | 4.38 ×1010 km2 | ||||||
質量 | 5.688 ×1026 kg | ||||||
地球との相対質量 | 95.162 | ||||||
平均密度 | 0.70 g/cm3 | ||||||
表面重力 | 8.96 m/s2 | ||||||
脱出速度 | 35.49 km/s | ||||||
自転周期 | 10時間 13分 59秒 (赤道面) 10時間 39分 25秒 (極) | ||||||
アルベド(反射能) | 0.47 | ||||||
赤道傾斜角 | 25.33 度 | ||||||
表面温度 | 93K(雲の最上層) | ||||||
表面温度 |
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大気の性質 | |||||||
大気圧 | 140 kPa | ||||||
水素 | >93% | ||||||
ヘリウム | >5% | ||||||
メタン | 0.2% | ||||||
水蒸気 | 0.1% | ||||||
アンモニア | 0.01% | ||||||
エタン | 0.0005% | ||||||
ホスフィン | 0.0001% | ||||||
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土星(どせい、Saturn、ラテン語: Saturnus、ギリシア語: Κρόνος)は太陽系の太陽に近い方から6番目の惑星である。太陽系内の惑星では木星に次いで大きい、ガスを主成分とする惑星(ガス惑星)である。見た目の大きな特徴として、惑星の周りに明確に見える輪(環)がある。
物理的性質
木星に次いで太陽系で2番目に大きな惑星であり、直径は地球の約9.4倍、質量は約95倍である。しかし、土星は太陽系の中で一番密度が低く、平均密度は水よりも低い約0.68 g/cm3となっている。このため、「もし土星を水に入れることができれば、水に浮く」と説明されることも多い。なお、太陽系の中で最も密度の高い惑星は地球である。
土星は明らかに上下に潰れて見え、扁平である(扁平率は0.108)。赤道と極では、直径が約10%も異なっている(120,536 km と 108,728 km)。これは土星の高速な自転と密度の低さのためである。他のガス惑星も扁平ではあるが、土星ほどではない。
土星の内部は木星と似ている。中心に岩石の核があり、その上に液体金属水素の層、水素分子の層がある。様々な氷も存在している。土星の内部は高温であり、核では12,000K に達し、土星が太陽から受けているよりも多くのエネルギーを放出している。このエネルギーのほとんどは、ケルビン・ヘルムホルツ不安定(重力によるゆっくりとした圧縮)により生成されていると考えられているが、それだけで熱生成の全てが説明できているわけではない。
この差を説明する説の一つに、ヘリウムの雨によるという説がある。その説では、土星中心部の金属水素の中をヘリウムの液滴が落ちる際に生じる摩擦で、いくらかの熱が生成されると考えられている。木星も土星と同様の金属水素の層を持っているが、木星は内部がより高温でヘリウムの水素への溶解度が高いこと・対流が活発であることから、この現象はあまり有効に働かないと推定されている。実際に土星の大気中に含まれるヘリウムの割合は、太陽や4つの木星型惑星のどれよりも低く(体積比で9.9%)、土星内部でヘリウムの分離が起きていることを示唆している[2]。
土星の大気には木星と同じような帯が存在しているが、木星よりもぼんやりしており、赤道面でより太い。雲のパターンの観測は地上の望遠鏡からは困難だったので、ボイジャーにより初めて観測された。その後、地上の望遠鏡の性能は常に土星の大気を観測できる程度に向上した。土星の大気は、楕円形をしている以外は木星とよく似ている。1990年にハッブル宇宙望遠鏡が、土星の赤道付近に大きな白い雲を観測した。それはボイジャーが観測した時点では見られなかったもので、1994年には、小さいものが、もう一度観測されている。また、赤外線写真の解析より、土星で温度が最も高いのは極であることが分かっている。この特徴は太陽系内で唯一のものである。
赤外線天文衛星ハーシェルによって、エンケラドゥスが噴き出す水が巨大な水蒸気のリングとなって、土星をとりまいている様子が観測された[3]。また、カッシーニなどによって、土星の嵐などの気象現象が観測されている[4][5]。
土星の環
土星の環は惑星の環としては最もよく知られているものといえる。土星の衛星と環に土星の環の一覧がある。
歴史
土星の環は1610年にガリレオ・ガリレイによって初めて観測された。しかし、望遠鏡の性能が良くなかったために、ガリレオは輪になっている事を把握出来なかった。その様子をトスカーナ大公コジモ2世(在位:1609年 - 1621年)へ書き送っている。
「土星は一つではなく3つの星の集まったものです。それらはお互いに結合しており、動いたり変化したりすることはありません。これらは黄道上を同様に行き来し、中心になる土星と、その横にリングのようにくっついた構造をしています。」
彼はまた、土星には耳があるとも書いている。地球から見た土星の向きは土星が公転するにつれて変わるため、1612年には環を観測出来なくなった。しかし、1613年に見えなくなった環が再び見えるようになりガリレオをさらに悩ませた。
この土星の環の謎は1655年にクリスティアーン・ホイヘンスがガリレオよりも数段優れた望遠鏡で観測するまで解けなかった。1675年にジョヴァンニ・カッシーニは土星の環は間をあけた複数の輪で構成されている事を発見した。彼の名に因んでA環とB環の隙間はカッシーニの間隙と名付けられている。またA環内にはエンケの間隙と呼ばれるカッシーニの間隙よりも細い隙間が存在する。これはドイツの天文学者フランツ・エンケにちなんでつけられたものだが、現在のエンケの間隙はジェームズ・キーラーによって発見されたものである。A環にはキーラーの空隙と呼ばれる隙間も存在する。
物理的特徴
最近の望遠鏡や性能のよい双眼鏡を使えば土星の環は容易に観測することができる。環は土星の赤道から 6,630 km の距離から 120,700 km の距離まで広がっており、シリカや酸化鉄、氷の粒子などで構成されている。粒子は細かい塵状のものから、小さな自動車程度の物まで様々である。土星の環の起源については有力な説が2つある。一つは19世紀にエドゥアール・ロシュが唱えた説で、土星の衛星が土星に近づきすぎて潮汐力によって破壊されたというものである。この前提として、破壊された衛星に彗星や小惑星が衝突したとされている。もう一つはリングの構成物は元々衛星ではなく、土星形成時の星雲の成分がそのまま外に残った物という説である。後者で形成された場合、土星の環は数百万年も形状を維持できるほど安定していないため、この説は今日ではそれほど広くは受け入れられていない。
土星の環は内側から順にD環、C環、B環、A環、F環、G環、E環があり、F環、G環はよじれた構造をしている。地球から観察した場合、環の間隙は最も大きなカッシーニの間隙とエンケの間隙のみ見ることができるが、ボイジャーは土星の環に何千もの空白区間があることを発見した。この構造は土星にある多くの衛星の副産物と考えられる。また、衛星の運動以外では粒子同士の重力的共鳴現象によって環を形作っていると考えられる。
環の厚さはその大きさに比べて非常に薄く、特に内側ほど薄い。各環の中央部の厚さは不明であるが、端部ではC環が約5m、B環が5~20m、A環が10~30mである。仮に土星本体の直径を10mとして模型を作ったとすると、環の厚さは数μm程度となる。なお、G環の厚さは100km、E環は1万kmと推定されている。
F環は、羊飼い衛星のパンドラとプロメテウスの二つの衛星によって形を維持していると考えられており、物質密度の高いコアという部分と淡いストランドという部分で構成され、形状は常に変化している。2005年9月のカッシーニの観測により、F環のストランドが螺旋状であることが発見された[1]。螺旋構造の成因はF環とS/2004 S 6の衝突によると推測されている。
2006年3月、カッシーニによってエンケラドゥス南極付近に噴出孔が発見され、E環はここから放出された物質によって形成されたと考えられている。
環の夜側
太陽から照らされた面と、その反対(夜側)とでは環は全く異なったように見える。 夜側から見る環はかなり暗く、特にB環はほとんど黒に見える。地球からは土星の夜側を見ることができないので、宇宙探査機のみがこれを観測することができる。カッシーニはボイジャー以来25年ぶりに土星の夜側を撮影した。
環のスポーク
1980年まで、土星の環の構造は土星の重力のみによって形作られると説明されてきた。しかし、ボイジャーはB環のなかに暗い放射状の構造を発見した。これはスポークと呼ばれ、重力による環の軌道運動だけでは説明できない物だった。この現象は土星の環がほぼ土星の磁気圏内を運動しているため、環を構成している粒子の電磁相互作用によって生じていると考えられている。しかしスポークが形成される原因ははっきりと分ってはいない。
カッシーニは2004年7月の土星到着以来、ボイジャーと同等以上の精度で環を撮影したが、しばらくの間スポークは認められなかった。2005年9月に、スポークの写真が得られ、四半世紀を経てその存在があらためて確認された。スポークは、環の平面が太陽と大きな角度をなす土星の夏・冬には消失し、環の平面が公転面と重なる土星の春・秋に姿を現わすと考えられている。
土星の衛星
土星には多くの衛星が発見されており、2009年5月現在、64個の衛星が発見されている。うち3個が確認中であるが、既に53個には名前が付けられている。土星の環はこれらの衛星と深く関係があり、大きな環と比べてこれらの小さな衛星の軌道を正確に知ることは困難である。土星で最も大きな衛星であるタイタンは太陽系にある衛星の中で唯一濃い大気を持つ。
土星の潮汐力により、これらの衛星は元々あった場所とは異なる軌道を描いていると考えられている。
北極の六角形構造
1980年、ボイジャー1号の観測により、北極上空に地球四個分に相当する大きさの正六角形に近似した渦状の構造を発見した。2007年のカッシーニでの赤外線観測でも継続して確認されており、2009年には可視光での観測が期待されている。幅約2万5千km、高さ100kmのこの構造は、自転方向と同じ反時計回りの回転を行っている。現在のところ生成のメカニズムや存在の期間は解明されていない。ただし、たとえばバケツに水を入れてバケツを単に高速回転させたときにも正多角形の渦が生成されることが流体力学などではよく知られており[2]、ほぼ同様の生成メカニズムである可能性もある。地球上でもたとえばハリケーン・イザベルなどにおいて、多角形渦をなすハリケーンや台風の目が観測されている。
土星探査
パイオニア11号
土星に初めて接近した宇宙探査機はアメリカ航空宇宙局 (NASA) のパイオニア11号である。1979年9月1日に、20,000kmの距離から土星と、いくつかの衛星についてあまり解像度の高くない写真を撮影した。解像度は表面の大気を識別できる程鮮明ではなかった。しかし、太陽側から見たときには薄いF環と暗い間隙が明るく見えることを発見した。これは間隙は何もないのではなく、何かがあることを示している。また、タイタンの温度を測定した。
ボイジャー計画
1980年11月にNASAのボイジャー1号が土星に接近した。この時初めてこの惑星、衛星、環の高解像度の写真が得られた。特に多くの衛星について地表の画像が初めて得られた。また、タイタンに接近したことによりこの衛星の大気についての多くの情報を得た。しかし、タイタンの大気は可視光を通さない物であったため、地形についての詳細なデータは得られなかった。また、この接近の後、ボイジャー1号は太陽系を離れた。
約1年後の1981年10月、ボイジャー2号が土星に接近した。大気や環の変化が分る程より拡大した衛星の画像が得られた。接近中にカメラの不良が起こり、計画していたいくつかの画像を撮影できなかった。これは土星の重力が天王星に向けて航行するボイジャーの軌道に影響を及ぼしたためである。
ボイジャー探査機は環の内部や近辺に多くの衛星を発見した。また、新たに環に二つの隙間が発見され、それぞれマックスウェルの空隙、キーラーの空隙と名付けられた。
カッシーニ
NASAと欧州宇宙機関 (ESA) 共同の探査機カッシーニは1997年に打ち上げられた。カッシーニは探査機本体をNASA、ホイヘンス・プローブをESAが担当した。2004年6月、土星に接近し、高解像度の画像を送ってきた。同年7月1日、土星周回軌道に乗り長期間探査 (SOI, Saturn Orbit Insertion) を開始した。タイタンに2度接近した後、12月25日にホイヘンスを分離した。2005年1月25日、ホイヘンスはタイタンの大気圏に突入し、降下中や着陸後に数多くの画像を送ってきた。実は観測機器の電源をオフにしたまま打ち上げていたことが後に判明したが、あらゆる方法を使って回復を試み、データを直接受信することに成功するという失敗からの復帰も成し遂げている。
2008年にミッションを終了する予定だったが、さらに2年間延長された。また2010年には2017年5月までのミッション延長が決まっている。
今後の探査構想
2007年には、ESAが将来の宇宙探査ミッションの候補の一つとして、NASAとの共同による土星圏探査ミッション「タンデム計画」を選定した。土星本体とタイタン、エンケラドゥスが主目標であり、タイタンの大気中に気球を送り込むことも計画されている。
人類と土星
歴史と神話
英名サターンはローマ神話の農耕神サトゥルヌスに由来。太陽から遠く運行が遅いことから年老いた神の名が付けられた。習合されるギリシャ神話の農耕神はクロノス。クロノスは大神ゼウス(木星)の父で、ゼウスに殺されたとする説もある。
占星術
西洋占星術では、磨羯宮の支配星で、宝瓶宮の副支配星で、凶星である。制限を示し、規律、教育、安定、不動産に当てはまる[6]。
惑星記号
土星の惑星記号は、天動説時代に第五惑星とされたため、アラビア数字「5」を図案化したものが、占星術・天文学を通して用いられる。数字「5」に農耕神の持ち物である鎌の意匠が付与された記号デザインが一般的である。
家紋
「土星に天体」という家紋が存在する。
土星を扱った作品
土星またはその周辺が主な舞台となる作品等。
音楽
- グスターヴ・ホルストの組曲『惑星』の第5曲「土星、老いをもたらす者」
小説
- 『2001年宇宙の旅』(アーサー・C・クラーク) - 映画版では木星までしか行かない。
- 『サターン・デッドヒート』(グラント・キャリン)
- 『8ガールズ オデッセイ』(吉田親司)
脚注
- ^ 天文年鑑2008年版より
- ^ 渡部潤一、井田茂、佐々木晶『太陽系と惑星』日本評論社〈シリーズ現代の天文学〉、2008年、p.70-頁。ISBN 978-4-535-60729-3。
- ^ AstroArts 土星大気の水はエンケラドスから
- ^ AstroArts カッシーニと大型望遠鏡で土星の嵐を同時観測
- ^ AstroArts 土星の両極で猛烈な渦を観測
- ^ 石川源晃『【実習】占星学入門』ISBN 4-89203-153-4
外部リンク
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