エリス (準惑星)

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エリス
136199 Eris
Eris and dysnomia2.jpg
仮符号・別名 2003 UB313
分類 準惑星
冥王星型天体
軌道の種類 散乱円盤
発見
発見日 2003年10月21日
発見者 M. E. ブラウン
C. A. トルヒージョ
D. ラビノウィッツ
軌道要素と性質
元期:2010年7月23日 (JD 2,455,400.5)
軌道長半径 (a) 68.048 AU
近日点距離 (q) 38.540 AU
遠日点距離 (Q) 97.557 AU
離心率 (e) 0.434
公転周期 (P) 561.35
平均軌道速度 3.436 km/s
軌道傾斜角 (i) 43.87
近日点引数 (ω) 151.21 度
昇交点黄経 (Ω) 36.04 度
平均近点角 (M) 200.38 度
前回近日点通過 1698年頃
次回近日点通過 2259年頃
衛星の数 1
物理的性質
直径 2,400 ± 100 or
2,661 ± 212 or
3,000 ± 400 km[1]
質量 (1.66 ± 0.02)
×1022 kg ?
平均密度 2.26 ± 0.25 g/cm3 ?
表面重力 約 0.7 m/s2 ?
脱出速度 約 1.3 km/s ?
自転周期 1.08 ± 0.02 日
絶対等級 (H) -1.1731
アルベド(反射能) 0.88
表面温度 約 30 K
色指数 (B-V) 0.71
色指数 (V-R) 0.45
色指数 (R-I) 0.33
色指数 (R-J) 0.56
色指数 (J-H) -0.29
色指数 (H-K) -0.40
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エリス136199 Eris)は、太陽系外縁天体のサブグループである冥王星型天体の1つ。準惑星に分類され、冥王星と同じくらいの大きさと考えられている。

2003年10月21日に撮影された画像に写っているところを、マイケル・ブラウンチャドウィック・トルヒージョデイヴィッド・ラビノウィッツにより2005年1月5日に発見され、同年7月29日に発表された。発見当時は太陽から97天文単位離れたところにあり、黄道面からかなり傾いた楕円軌道を約560年かけて公転していると考えられている。

なお、日本語表記が同じで紛らわしいが、ラテン文字で“Ellis”と綴られる小惑星エリスとは別の天体である。

発見[編集]

エリスを発見したグループは系統的に太陽系外周部にある天体を探索しており、それまでにもクワオアーセドナなど大型の外縁天体を発見するなど成果を挙げてきた。エリスも、パロマー天文台のサミュエル・オースチン反射望遠鏡によって2003年の10月に普段と同じように撮影されたが、同じ場所を写した別の写真と比較され、背景の星空に対してゆっくりと移動していることが判明したのは2005年の1月である。その後追加の観測が行われ、おおよその軌道とサイズが見積もられた。

命名[編集]

2006年9月に正式に命名された[2]。それ以前は仮符号である2003 UB313という名前で呼ばれていた。

発見者チームは仮符号が付けられる前から、米国のTVドラマ『ジーナ』の主人公の名であるXena(ゼナまたはジーナ)というコードネームでこの天体を呼んできた。そのためにこの名称がかなり広まったが、正式名称とはならなかった。

発見者の1人ブラウンが発見を公表したウェブページURIに "planetlila" という文字列が含まれていたため、「2003 UB313の名称はライラ (Lila) だ」という噂が立ったこともある。しかし、Lila はブラウンの娘の名前 Lilah に由来する冗談で、ブラウンはただちにライラは2003 UB313の名称ではないと否定した。

発見者チームはこの天体が惑星である可能性を考慮したが、惑星の命名規則は存在しなかった。そのため、太陽系外縁天体に属する冥王星族以外の小惑星の命名規則に従い、創世神話に由来する名前を提案した。提案名は正式決定まで非公開とされたが、XenaでもLilaでもないことは明言された。また、ブラウンはギリシア・ローマ神話の神が残り少ないことを指摘し、以前に命名提案したセドナなどと同様に「別の伝承 (different tradition)」の名前を提案したと述べているため、エリスではなかった可能性が高い。

国際天文学連合 (IAU) は、2003 UB313が惑星かどうかはっきりするまで命名はしないと発表した。そして2006年8月24日、IAUで惑星の定義が決定され、2003 UB313は惑星ではなく、外縁天体かつ準惑星 (dwarf planet) である新しいグループの天体(この時点では名称未定)に分類されることになった。その直後の9月8日小惑星センターにより小惑星番号 (136199) が付けられた[3]

パロマー天文台のサミュエル・オースチン望遠鏡による (136199) エリスの低速度撮影画像

それに先立つ9月6日、発見者グループは2003 UB313を「エリス (Eris)」と名づけることを提案した。IAUの小天体命名委員会と惑星系命名ワーキンググループはこれを認め、9月13日天文電報中央局 (CBAT) により正式に発表された。エリストロイア戦争の遠因となったギリシア神話の不和と争いの女神であり、ブラウンは神話でエリスが引き起こした争いを、エリスが天文学にもたらした惑星の定義をめぐる論争に喩えている。

性質[編集]

(136199) エリスの軌道

軌道[編集]

エリスの軌道は、離心率がかなり大きい楕円を描いていると考えられている。発見当時は太陽から 97 AUの距離にあったが、近日点は 35 AUと考えられている(冥王星は 29 AUから 49.5 AUの距離を公転している)。また他の惑星とは違い、軌道傾斜角44°という、かなり傾いた軌道を持つ。

この天体は視等級にして19等と、さほど高性能でない望遠鏡でも観測可能な明るさであるが、軌道傾斜角が大きいために発見が遅れたと考えられる。太陽系の質量の大部分が黄道面上に見出されるため、探査の目もその方向に向いているからである。

大きさ[編集]

太陽系の天体の明るさは、サイズとアルベド(反射率)から決定される。もし天体のアルベドが大きければ、つまり天体が白に近いほど、小さい半径でも明るく見える。エリスのアルベドは知られていないため、正確なサイズを決定することはできない。しかし、もしアルベドが1で太陽の光を100%反射すると考えても、冥王星と同等のサイズ(直径 2,390 km)があるだろうと考えられている。実際にはアルベドは1よりも小さい値になるので、天体のサイズはそれより大きいということになる。

発見当初、スピッツァー宇宙望遠鏡で検出することができなかったため、天体の直径は 3,000 km未満と考えられていた。しかし、この観測では望遠鏡が天体とは別の方向を向いていたことが指摘されており、この上限の値は否定されている。その後2005年8月23日および25日に改めてスピッツァー宇宙望遠鏡により観測が行われ、冥王星より20%ほど大きい 2,700 kmという結果が出た。

また、直径を割り出すためにハッブル宇宙望遠鏡での観測も行われることになった。97 AU先にある直径 3,000 km程度の天体なら、画像処理により直径を割り出すに十分な解像度を得ることが可能である。

2006年2月2日、ドイツ・ボン大学などによるIRAM30m望遠鏡を用いた波長1.2ミリの電波観測により、直径約 3,000 km(誤差は 400 km以下)であることが確認できた旨の論文がネイチャーに掲載された。だが、4月11日アメリカ航空宇宙局 (NASA) は、ハッブル宇宙望遠鏡の観測結果として直径約 2,400 kmで冥王星よりもやや大きい程度であるとの見解を発表した。

2010年10月チリでエリスによる恒星の掩蔽が観測されたが、その結果、エリスは2340km未満で冥王星とほぼ同じ大きさだという見解が発表された[4]。エリスの質量は確定していることから、冥王星と違ってエリスは岩石が主成分だという説が浮上している。

表面[編集]

エリスは、マウナケア天文台群ジェミニ北望遠鏡により分光分析が行われている。赤外線による観測では、天体表面にメタンの氷が存在し、冥王星とよく似た性質であることを示している。太陽系外縁天体でメタンの存在が知られていたのはそれまで冥王星のみであった。海王星の衛星で、エッジワース・カイパーベルト出身と考えられているトリトンにもメタンがあることが分かっている。

メタンは揮発性が高いため、エリスはこれまでずっと太陽から遠方に存在していたことを示している。これと対照的なのが、同時期に発見されたハウメアであり、こちらはメタンではなくの氷が存在する。これは冥王星の衛星カロンにも見られる特徴である。

衛星[編集]

エリスとディスノミアの想像図
エリスとディスノミア

2005年9月10日、マウナケア天文台群のケックIIで撮影された画像から、エリスに衛星の存在が確認されて10月2日に発表され、仮符号S/2005 (2003 UB313) 1がつけられた。それによると、S/2005 (2003 UB313) 1の大きさは約350km、公転軌道は14日。

エリスの命名と同時に、この衛星には確定符号 (136199) ERIS I が与えられ、ディスノミア (Dysnomia) と命名された。この名は、不和の女神エリスの娘である不法の女神デュスノミアにちなんでいる。

分類[編集]

エリスは散乱円盤天体 (Scattered Disk Object, SDO) の一種である。これは太陽系外縁天体のうち、海王星など他の惑星の影響で軌道の離心率が大きくなったものをさす。発見当時は、太陽の周りを公転する知られている天体の中で太陽から最遠のものだったが、太陽からの平均距離は必ずしも最大ではなかった。

天体が冥王星より大きいため、当初NASAは第十惑星発見と発表し、各メディアもそれにならっていた。一方、これまでと同じように、この天体が惑星に分類されることはないだろうと見る天文学者もいた。

発見当時の惑星の定義は、「太陽を周り、ある程度の大きさを持ち、軌道を占有している天体」というものが一般的であったが、これは定義としては曖昧であり、より厳密な定義を求めて活発に意見が交わされていた。歴史的な経緯から惑星として扱われていた冥王星についても、同じような軌道上には冥王星に匹敵する質量の天体が多数発見されているため、惑星と見なすのはおかしいのではないかと主張する天文学者は増えつつあった。IAUは1999年に「冥王星が惑星から降格されることはない」という声明を出していたが、この場合は以下の2つの可能性があった。

  • 冥王星の大きさを閾値として、それより大きいものを惑星と定義する。
  • 冥王星だけ特例として惑星と認め、それより大きいものが見つかっても惑星とはされない。

発見者のマイケル・ブラウンは、「前者はまだ新惑星発見の可能性が残されており夢があるが、後者ではそれがない」として、新天体が惑星に分類されるべきだと主張していた。

2006年8月16日のIAU総会で惑星の定義の草案が発表された。ここで提案された定義に従えば、ケレス及びカロンと共に、2003 UB313も太陽系の惑星として追加されることになっていた。しかし8月24日に議決された修正案のもとで、2003 UB313(エリス)は他の惑星候補だった天体や冥王星などとともに、dwarf planet(準惑星)に分類されることになった。

2008年6月11日、ノルウェー・オスロで開いたIAUの執行委員会で海王星の外側にある準惑星を「冥王星型天体(プルートイド)」(plutoid) とすると決定したとの発表があった[5]。現在、冥王星型天体に分類されるのは冥王星とエリス、それに後に追加されたマケマケハウメアの4つである。

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]