ピノキオ (1940年の映画)

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ピノキオ
Pinocchio
監督 ベン・シャープスティーン
ハミルトン・ラスク
脚本 テッド・シアーズ
オットー・イングランダー
ウェッブ・スミス
ウィリアム・コトレル
ジョゼフ・サボ
アードマン・ペナー
オーレリアス・バタグリア
製作 ウォルト・ディズニー
出演者 ディッキー・ジョーンズ
クリフ・エドワーズ
音楽 ネッド・ワシントン
リー・ハーライン
ポール・J・スミス
主題歌 星に願いを
撮影 ボブ・ブロートン
編集 ロイド・L・リチャードソン
配給 RKO Radio Pictures
公開 アメリカ合衆国の旗 1940年2月7日
日本の旗 1952年5月17日
上映時間 88分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
前作 白雪姫
次作 ファンタジア
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ピノキオ』(原題:Pinocchio)は、1940年2月7日に公開されたディズニーによるアニメーション映画

カルロ・コッローディ作の童話『ピノッキオの冒険』を原作とする。

概要

前作『白雪姫』が大ヒットをした後、「再び同じような映画を」という依頼がウォルトに多数寄せられたが彼はそれを拒否し、前作とは異なる冒険物語である「ピノキオ」を選んだ。

しかし、原作は社会風刺小説であり、ピノキオは悪戯っ子で、子供っぽい性格がみられ、白雪姫のような華がなかったため、夢のある物語にするのは容易ではなかった。ウォルトはストーリー作りに数ヶ月も悩み、すでにアーティストたちは作業に入っていたにもかかわらず制作を一時中断する。その間にピノキオは無邪気な性格に変更され、さらに原作ではピノキオにハンマーをぶつけられすぐに死んでしまうコオロギをピノキオの良心、そしてストーリーテラーとしての役割も持つ重要なキャラクター、ジミニー・クリケットとして登場させる事になった。制作が再開された後も熟考を重ね、2年の歳月を経てついにテンポのよい夢と希望にあふれた冒険物語が完成した。

前作『白雪姫』のように大ヒットには至らならなかったが、劇中でジミニー・クリケットが歌った『星に願いを(When You Wish Upon a Star)』は第13回アカデミー賞歌曲賞を受賞し、アメリカ映画協会による、「映画史における偉大な歌100選」でも第7位に入るなど、古典アニメーションの傑作として今日も愛され続けている。日本でのセルビデオ出荷本数は100万本[1]

原作とは異なる場面が多い。ゼペットとピノキオを呑みこむのが鯨ではなく巨大なサメであることや、ものをいうコオロギが洒落ていない、ブルー・フェアリー(仙女)の性格だけでなく、原作がかなり残酷でするどい皮肉に満ちていることなどがあげられる[2]

(世界各国の公開年については、シンプル英文版「Pinocchio (1940 movie)」も参照)

ストーリー

時計職人のゼペットが作った人形ピノキオ。子供のいないゼペットはピノキオが「自分の子供だったら」と、星に願いをかける。すると皆が寝静まった頃、ブルー・フェアリーが現れ、ピノキオに生命を授けるとコオロギのジミニー・クリケットを良心役に任命し「正直で優しい性格になれば人間になれる」と言い残し去った。

生命を授かったピノキオを見て大喜びのゼペットは、翌日ピノキオを学校へ送り出すが、J・ワシントン・ファウルフェローとギデオンの「スターの暮らし」の甘言に乗せられ、ストロンボリ一座に売り飛ばされる。糸の無い人形ということで一座のスターになったが、何も知らないピノキオが帰ろうとした矢先ストロンボリに鳥籠に閉じ込められてしまう。そこへブルー・フェアリーが現れてピノキオを問いただすが、をついたピノキオの鼻は伸びはじめてしまう。ジミニーの説得もあり、ブルー・フェアリーの手助けでピノキオはストロンボリ一座を逃げ出して家に帰ろうとする。

しかし、家に帰る途中で再びファウルフェローとギデオンに呼び止められ、今度は、遊びの島「プレジャー・アイランド」へ行こうと誘われる[3]。またしても誘惑に乗ってしまったピノキオは馬車に乗り、島へ向かう。ジミニーはプレジャー・アイランドにいる子供がロバになっていき、最後にはロバとして町に売り飛ばされることを知ると、ピノキオの救出に向かった。仲良くなっていた悪童ランプウィックが既にロバになってしまい、ピノキオにもロバの耳としっぽが生えていたことから、ピノキオはジミニーの説得を受け入れ、プレジャー・アイランドを脱出し、家へと帰っていった。

ところが、いつまで経っても帰って来ないピノキオを心配して探しに行ったゼペットが、クジラの王様・モンストロに飲み込まれてしまっていたのだ。ピノキオとジミニーはゼペットを救出しようと尻尾に石を縛り付けて海に飛び込むも、モンストロに飲み込まれ、腹の中で再会を果たす。ピノキオの知恵と勇気でゼペットといっしょにモンストロの腹の中から脱出することに成功するが、怒ったモンストロに追いかけられることになる。ピノキオは、モンストロからゼペットをかばって死んでしまう。

動かなくなったピノキオを前にゼペットとジミニーは悲しみにくれる。そこへブルー・フェアリーが現れピノキオの行動を讃えると、本当の人間の子にする。ピノキオは目を覚まし、ゼペットと喜びを分かち合う。

キャラクター

ピノキオ(Pinocchio)
物語の主人公。ゼベットが作った人形の男の子。ブルー・フェアリーによって命を与えられて様々な冒険をする。好奇心旺盛な上に人形のため世間知らずで人を疑うことを知らない。楽しい事が好きで、ファウルフェローたちに騙されてゼベットを無意識に裏切ってしまう。しかし、ジミニーやフェアリーの教えを受けながらあらゆる経験を積み成長していく。ゼベットを「お父さん」と呼び、慕っている。モンストロからゼペットをかばい死ぬが、本当の正しく優しい子になったためブルーフェアリーの力で人間となって生き返る。
ジミニー・クリケット(Jiminy Cricket)
ゼペットの家にもぐりこんだ貧乏コオロギ。真面目な性格を買われ、ブルー・フェアリーの命でピノキオの良心になる。その後、手柄が認められ、ご褒美のバッジをもらった。ディズニー映画にもよくちょい役で登場する。歌が上手で主題歌の星に願いをはジミニーが歌っている。
ゼペット(Mister Geppetto)
ピノキオの生みの親で人形職人でもあるおもちゃ屋の主人。おもちゃの他にもからくり時計やオルゴールなども作っている。眼鏡をかけて口ひげをはやしている。ピノキオを人間の子供と同じように学校へ通わせる。登校初日に綺麗な服を着せて、リンゴを渡して教師にあげるようアドバイスしたが、登校途中でピノキオはファウルフェローに騙されて帰って来なくなり、雨の夜でもピノキオを捜し廻った。ついには旅に出てピノキオを捜すが船ごとクジラに飲み込まれてしまう。クジラの胃の中で生活しており、クジラが食べる魚を釣って飢えを凌いでいた。クジラの胃の中でピノキオとジミニーに再会する。
ブルー・フェアリー(The Blue Fairy)
ゼペットの願いでピノキオに命を吹き込む金髪の妖精。 普段は優しいが、ピノキオのウソを決して見逃さない厳しくて鋭い一面もあった。 エピローグではピノキオとジミニーの奮闘を認め、ピノキオを人間に変え、ジミニーには最も名誉ある金バッジを授けた。
J・ワシントン・ファウルフェロー ("Honest" John Worthington Foulfellow)
キツネの詐欺師でピノキオを騙してストロンボリやコーチマンの元に届ける。ボロボロだがスーツやマント、ハットを着用しており、葉巻を吸う。作中では正直ジョン(オネスト・ジョン、旧吹き替え版では正直者のジョン)と名乗る。
ギデオン(Gideon)
ファウルフェローの相棒のネコ。かなりのドジ。ファウルフェローより小さく、子供のようだが、葉巻を吸ったり、ビールを飲んでいる。しかし酒は弱いようで飲むとしゃっくりが止まらない。台詞はないが、しゃっくりの音をメル・ブランクが担当している。
ランプウィック(Lampwick)
怠け者の子供。島の遊園地でピノキオと仲良くなるが、彼がロバに変わっていく様を見てピノキオは自分の過ちに気づく。旧吹き替え版ではランピーと呼ばれる。
ストロンボリ(Stromboli)
人形一座の親方。太っており、ラテン系。頭は禿げており、もみあげと長く黒い髪が特徴的。よく歌を歌ったり、踊ったりと陽気である。糸なしで動く人形のピノキオを使って世界中を回り儲けようとするが、ピノキオがゼペットの家に帰ろうとすることに怒って、ピノキオを鳥かごに閉じ込める。人形に愛情がなく、をこき使う。その後、を歌うのに夢中で、ピノキオたちが逃亡したことを知らなかった。
コーチマン(The Coachman)
馬車屋。身なりは良いがいつも怖い顔をしている。怠け者の子供たちに甘い言葉で巧みに騙し島の遊園地に連れて行って、ロバにしてひと儲けする悪徳業者[4]。作中では馬車屋と呼ばれる。ロバになる原理は不明だが、無料で売られている島の食べ物や葉巻や酒に時間が経過するとロバに変化する成分が含まれていると思われる。
フィガロ(Figaro)
ゼペットの飼い猫。黒猫だが手と足は靴下を履いたように白く、顔とお腹と尻尾の先も白い。まだ完全に大人ではなく、体が小さい。ピノキオの作品外でミニーマウスの飼い猫になっている事もある。
クレオ(Cleo)
ゼペットの飼っている金魚。女の子と思われる[5]。フィガロと仲良し。
モンストロ(Monstro)
クジラの王様。ピノキオを探すゼペットの船をも呑み込む程の大きさである。ピノキオを呑み込んだ後に腹中で焚き火をされ、煙に耐えかね彼らを吐き出す。怒って彼らを追い回すが、岸壁の狭い洞窟に逃げ込まれ、自分は入れず激突してしまった。その体躯はディズニー製作の長編アニメ映画での登場キャラクターでは最大だが、アニメ短編映画作品の『ミッキーの捕鯨船』に登場した鯨は、それ以上の体躯。

声の出演

  • 1940年公開、日本での公開は1952年(吹き替えでの初公開は1958年※初公開版、次の吹替え公開は1983年※再公開版)
キャラクター名 原語版声優 日本語吹き替え
初公開版 再公開版 新吹替版 旧吹替版
ピノキオ ディッキー・ジョーンズ 佐々木清和 初沢亜利 辻治樹 後藤真寿美
アレキサンダー ? 宮川陽介 ? 下川久美子
ジミニー・クリケット クリフ・エドワーズ 坊屋三郎 肝付兼太 江原正士
ゼペット クリスチャン・ラブ 三津田健 熊倉一雄 内田稔
ブルー・フェアリー イヴリン・ヴェナブル 松田トシ 一城みゆ希 小沢寿美恵
J・ワシントン・ファウルフェロー ウォルター・キャトレット 三升家小勝 山田康雄 関時男
ランプウィック フランキー・ダーロ 畑爽 新井昌和 内田崇吉 牛山茂
ストロンボリ チャールズ・ジューデルス 中村哲 大塚周夫 遠藤征慈
コーチマン 古今亭今輔 辻村真人 金尾哲夫
フィガロ メル・ブランク[6] 原語版流用
ギデオン
モンストロ サール・レイブンズクロフト
カモメ ジム・マクドナルド
  • 旧吹替版(ポニー版・バンダイ版)は、1984年にVHS・レーザーディスク(SF088-1051)を販売、またバンダイ版でのTHE CLASSICSでは、二か国語版で聴くことができる
  • 新吹替版(ブエナ・ビスタ版)は、1983年再公開版に一部追録、声優を変更して1995年に販売

スタッフ

製作 ウォルト・ディズニー
原作 カルロ・コッローディ
脚本 テッド・シアーズオットー・イングランダーウェッブ・スミスウィリアム・コトレルジョゼフ・サボアードマン・ペナーオーレリアス・バタグリア
音楽 ネッド・ワシントンリー・ハーラインポール・J・スミス
キャラクター・デザイン ジョー・グラントアルバート・ハータージョン・P・ミラーキャンベル・グラントマーティン・プロヴェンセンジョン・ウォルブリッジ
イメージボード ドン・クリステンセン
ピノキオ(人形)担当作画監督 フランク・トーマス
ピノキオ(人間)担当作画監督 ミルト・カール
ゼベット担当作画監督 アート・バビット
ジミニークリケット担当作画監督 ウォード・キンボール
フィガロ、クレオ担当作画監督 エリック・ラーソン
ランプウィック担当作画監督 フレッド・ムーア
ストロンボリ担当作画監督 ビル・ティトラ
モンストロ担当作画監督 ウォルフガング・ライザーマン
レイアウトチャック チャールズ・フィリッピヒュー・ヘネシーケンドール・オコーナーテレル・スタップソー・パットナムマクラーレン・スチュワートアル・ジンネンブルース・ブッシュマンアーサー・ハイネマンチャールズ・ペイザント
ピノキオ(人形)担当原画 オリー・ジョンストン
J・ワシントン・ファウルフェロー、ギデオン担当原画 ジョン・ラウンズベリー
原画 レス・クラークチャールズ・オーガスト・ニコルズジャック・キャンベルバーニー・ウルフドン・ダグラディドン・ラスクノーマン・テイトジョン・ブラッドベリーリン・カープアート・パーマー
ジョシュア・メダードン・トービンロバート・マーシュジョージ・ローリージョン・マクマナスドン・パターソンプレストン・ブレアマーヴィン・ウッドワードヒュー・フレイザージョン・エリオット
ウォルト・ケリーケン・オブライエン
美術監督 ケン・アンダーソンディック・ケルシージョン・ハブリー
背景 クロード・コーツマール・コックスエド・スターレイ・ハッファイン
仕上 マーセリット・ガーナー
撮影 ボブ・ブロートン
録音 ウィリアム・E・ギャリティ
音響効果 ジム・マクドナルド
編集 ロイド・L・リチャードソン
助監督 フォード・ビービルー・デブニージム・ハンドレグラハム・ヘイドマイク・ホロボッフラリー・ランズバーグ
キャラクター彫刻制作 ワウ・チャン
コンセプトデザイン グスタフ・テングレン
J・ワシントン・ファウルフェロー、ギデオン担当演出 ノーム・ファーガソンT・ヒー
演出 ビル・ロバーツジャック・キニーウィルフレッド・ジャクソン
監督 ベン・シャープスティーンハミルトン・ラスク
制作 ウォルト・ディズニー・プロダクション

キャラクターとしてのピノキオ

原作におけるピノキオ(ピノッキオ)に関しては『ピノッキオの冒険』参照。

テレビでの放送

出演作品

挿入歌

  • 星に願いを(When You Wish Upon a Star)
  • リトル・ウッドゥン・ヘッド(Little Wooden Head)
  • 困ったときには口笛を(Give a little Whistle)
  • ハイ・ディドゥル・ディー・ディー(Hi-Diddle-Dee-Dee)
  • もう糸はいらない(I've Got No Strings)

2003年6月6日発売の『ピノキオ -スペシャル・エディション-』DVDのPRソングとして『星に願いを』を矢沢永吉がカバーしたものが使用された。

脚注

  1. ^ 日経BP社技術研究部 『進化するアニメ・ビジネス―世界に羽ばたく日本のアニメとキャラクター』日経BP社、2000年、42頁。ISBN 4822225542
  2. ^ 大岡玲(『新訳・ピノッキオの冒険』角川文庫 2003年)訳者あとがきによる。
  3. ^ 理由はファウル曰く「君は病気だから遊園地に行って元気になるといい」とのこと。このときピノキオは家に帰ろうとするが強引に乗せられた。
  4. ^ 売り飛ばす際に、「お前の名前は?」と質問し、ロバの鳴き声がするかどうかで決めている。
  5. ^ ゼペットが「娘みたいなもんだ」といっていることから。
  6. ^ フィガロは鳴き声、ギデオンはしゃっくりの音のみ。

関連項目

外部リンク