サタニック・マジェスティーズ
『サタニック・マジェスティーズ』 | ||||
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ローリング・ストーンズ の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 | 1967年2月9日 - 10月23日 | |||
ジャンル | サイケデリック・ロック | |||
時間 | ||||
レーベル |
Decca/ABKCO (UK) ABKCO (US) | |||
プロデュース | ローリング・ストーンズ | |||
専門評論家によるレビュー | ||||
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ローリング・ストーンズ アルバム 年表 | ||||
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『サタニック・マジェスティーズ』(Their Satanic Majesties Request)は、1967年にリリースされたローリング・ストーンズのオリジナルアルバム。
解説
前々作『アフターマス』、前作『ビトウィーン・ザ・バトンズ』から続いてきた実験的な作風の極地とも言えるアルバム。ストーンズの作品中、最もサイケデリックな仕上がりとなった。その内容やアルバム・ジャケットのデザインから、同年に発表されたビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の模倣とも評された[1]。本作はストーンズのオリジナルアルバムで初めて収録曲が全世界で統一されたものとなった。また彼等にとって初のセルフ・プロデュース作品でもある。それまでストーンズの全作品をプロデュースしてきたアンドリュー・ルーグ・オールダムは、本作の製作中に録音、リリースされたシングル『この世界に愛を』を最後に、彼らとの関係に終止符を打った。
製作は前作『ビトウィーン・ザ・バトンズ』のリリースから間もない1967年2月から開始された。だがそれからすぐの2月12日、ミック・ジャガーとキース・リチャーズが警察の手入れを受け、大麻所持の容疑で立件された。5月にはブライアン・ジョーンズが同じく大麻所持の現行犯で逮捕されている。裁判では、7月31日にジャガーが12ヶ月の条件付で釈放、リチャーズは無罪となった。ジョーンズは12月に1000ポンドの罰金と3年間の保護観察処分となった。このように麻薬がらみの問題に苛まれたお陰で、レコーディングは散発的なものになり長期化を余儀なくされた。そんな彼らの救援名目で、ザ・フーがストーンズの「ラスト・タイム/アンダー・マイ・サム」をレコーディングし、シングルカットしたこともあった。
ジャガー、リチャーズ、ジョーンズの3人は製作中も麻薬を使用し、高揚した気分でいることがしばしばであった。ジャガーは麻薬が本作の作風に大きな影響を与えた事を認めている[2]。ジョーンズは本作にはほとんど参加しなかったという噂があったが、実際には全曲に参加しており、メロトロンやシタール、さらに全管楽器を一手に引き受け、本作のサウンド面に大きく貢献している。また、ビル・ワイマンの自作曲が初めて採用されている。
本作からは、イギリスでは一枚もシングルを切らなかったが、アメリカおよび数カ国で「イン・アナザー・ランド/ランターン」と「シーズ・ア・レインボー/2000光年のかなたに」がシングルカットされている。ステージでの再現が難しい曲が多く、収録曲のほとんどがコンサートで披露された事がないが、「2000光年のかなたに」が1989年の「スティール・ホイールズ・ツアー」で初披露された。これはリチャーズが本作で唯一評価していた曲でもある。また「シーズ・ア・レインボー」が1997年の「ブリッジズ・トゥ・バビロン・ツアー」で披露されている。「シーズ・ア・レインボー」は、1990年代後半にiMacのCMに使用されたり、また日本では2015年から進研ゼミのCMにも使用されるなど、メディアでの使用が目立っている。
2002年8月にアブコ・レコードよりリマスターされた上で、SACDとのハイブリッドCDとしてデジパック仕様で再発された。
アートワーク
ジャケットのデザインも、サウンド同様にサイケデリックなものとなっている。オリジナル盤のジャケットには3D写真(レンチキュラー)が用いられ、見る角度によって絵柄が動くようになっていた。撮影はマイケル・クーパーで、日本製の高価な3Dポラロイドカメラが使用された。背景のセットは組み上げるのに3日もかかったという。また、表ジャケットの中にビートルズのメンバーの顔が紛れ込んでいる。ジャガーは、このジャケットの撮影中も麻薬をやっていた事を後に打ち明けている[2]。
3Dジャケットは、リイシュー版では廃され固定写真となっているが、2010年に日本版のSHM-CDで、この3Dジャケットが再現された。
評価
チャートでは全英3位[3]、全米2位[4]まで上昇しゴールド・アルバムを獲得したが、売り上げはすぐに減少した。リリース当初の評価は悪くなく、レコード・ミラー誌は本作を「これはストーンズの出したレコードの中では飛びぬけたベストアルバムだ」と絶賛した。だが次作の『ベガーズ・バンケット』以降の傑作と評される作品群と比較されるようになると、相対的に評価は下がっていき、結局ストーンズのコンセプト・アルバムへの試みは徒労であると見なされた。
ストーンズ自身の本作への自己評価も低く、ジョーンズは当時、このアルバムをストーンズのブルージーな方向性とはかけ離れていると猛反対し、リチャーズも「クソの塊」とけなしている。ジャガーも1995年のインタビューで「曲を体験するというより、音を体験するアルバムだ」とし、本作を「一つの段階、つかの間の幻想」と表現している[5]。だが1974年には「またこういうのをやってもいい」と肯定的な意見を述べていた[6]。
曲目
特筆無い限り、作詞・作曲はジャガー/リチャーズ。
- A面
- 魔王讃歌 - Sing This All Together 3:47
- 魔王のお城 - Citadel 2:51
- イン・アナザー・ランド - In Another Land (Bill Wyman) 3:14
- 作詞・作曲、リードボーカルはビル・ワイマン。アメリカではワイマンのソロ名義でシングルリリースされた。エンディングで聴こえるいびきも彼のもの(シングルでは削除された)。
- 2000マン - 2000 Man 3:08
- 魔王讃歌(二部) - Sing This All Together (See What Happens) 8:34
- 終わりの部分に「Cosmic Christmas」と名付けられたコーダが含まれる。
- B面
- シーズ・ア・レインボー - She's a Rainbow 4:35
- 後にレッド・ツェッペリンのベーシスト/キーボーディストとなるジョン・ポール・ジョーンズがストリングス編曲を担当。
- ランターン - The Lantern 4:23
- ゴンパー - Gomper 5:09
- 2000光年のかなたに - 2000 Light Years From Home 4:45
- オン・ウィズ・ザ・ショウ - On With the Show 3:39
参加ミュージシャン
ローリング・ストーンズ
- ミック・ジャガー/リード・ヴォーカル、バッキング・ヴォーカル、パーカッション
- キース・リチャーズ/エレキギター、アコースティックギター、バッキング・ボーカル
- ブライアン・ジョーンズ/メロトロン、ブラス、フルート、リコーダー、サックス、アコースティックギター(A-4)、エレクトリックダルシマー(B-3)
- ビル・ワイマン/ベース、パーカッション、バッキング・ヴォーカル、リード・ヴォーカル&ピアノ(A-3)
- チャーリー・ワッツ/ドラムス、パーカッション、タブラ
ゲストミュージシャン
- ニッキー・ホプキンス/ピアノ、オルガン、ハープシコード
- ジョン・ポール・ジョーンズ/ストリングス編曲(B-1)
- ジョン・レノン、ポール・マッカートニー/バッキング・ヴォーカル(A-1)
- ロニー・レイン/アコースティックギター&バッキング・ヴォーカル(A-3)
- スティーブ・マリオット/バッキング・ヴォーカル(A-3)
- ノン・クレジット/ストリングス(B-1)
脚注
- ^ Their Satanic Majesties Request - The Rolling Stones | Songs, Reviews, Credits, Awards | AllMusic:
- ^ a b SIGHT VOL.14 特集「ロックの正義!!ストーンズ全100ページ」株式会社ロッキング・オン(2003年)、50頁
- ^ Official Charts Company:
- ^ The Rolling Stones | Awards | AllMusic:
- ^ SIGHT VOL.14 特集「ロックの正義!!ストーンズ全100ページ」株式会社ロッキング・オン(2003年)、52頁
- ^ a b Their Satanic Majesties Request:
参考文献
- 『ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』 (テリー・ロウリングス/アンドリュー・ネイル/キース・バッドマン著、 筌尾正訳、シンコーミュージック刊、2000年)ISBN 978-4401616541