BMW・M3

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M3セダン(F80)

M3(エムスリー)はドイツの自動車メーカー・BMWが製造・販売しているスポーツセダンである。開発はBMWのレース部門、モータースポーツ関連研究開発子会社であるBMW Mによって行われる。

同車は3シリーズをベースにBMW Mがチューニングした高性能スポーツモデル(兼ツーリングカーレース用ベース車両モデル)として生産される。

初代(E30型M3)はツーリングカーレースに出場するためのベース車両として製造された。

初代(1985年 - 1990年)E30

E30型M3 ドイツツーリングカー選手権(DTM) 1989年シリーズチャンピオンマシン
E30型M3
E30型M3 カブリオレ

ドイツ本国で1985年に発表。1986年3月から1991年6月にかけて17,086台の2ドア・セダンと786台の2ドア・カブリオレが生産された。生産は左ハンドルのみで、右ハンドルは存在しない。

E30型M3は、BMW 3シリーズ(2ドアセダン)をベースとしながらもボディ剛性や空力性能を高めるため大幅な変更をしており、12箇所のボディパネルが専用品で、より大きく太いホイールを装着するためにブリスターフェンダーを採用し、結果、ボディパネルで標準型3シリーズと共通なのはボンネット、ルーフパネル、サンルーフそしてドア内部パネルのみとなった。ホイールベアリングとフロントブレーキキャリパーを上級の5シリーズ(E28型)と共用しており、標準型の3倍ものキャスター角がつけられている。このためホイールは標準型の4穴・PCD100タイプから5穴・PCD120タイプに変更されている。その他、空力改善のためCピラーやリヤウインドウ角度が見直され、トランクをハイデッキ化し、大型のリアウイングなどを標準装備としている[1]

エンジンはM1M635CSiなどに搭載されたM88型 3.5LDOHC直列6気筒エンジンから2気筒を切り取ってつくられた2.3L直列4気筒エンジンで、それにZF製ノーマルパターンもしくはゲトラグ製レーシングパターンの5速MTが組み合わせられている。

E30型M3で特筆すべき点は、レース界の血統が息づいていることである。これは当時ラリー、ツーリングカーレースなどで台頭してきたプロドライブシュニッツァーへのBMWからの回答とも言える。レースに勝つために設計されたM3は彼らの期待に応え、欧州各地のツーリングカー選手権で数多くのタイトルを獲得した。BMWがM3を販売した理由は、第一にグループAレースへのホモロゲーション取得のためであったが、もう一つの理由として、同じくグループAレースへのホモロゲーション取得のため1983年に登場したスポーツセダン、メルセデス・ベンツ190E 2.3-16への対抗意識があった。M3と190E 2.3-16は1980年代後期から1990年代初頭にかけて、ドイツツーリングカー選手権(DTM)において両者一歩も譲らない激闘を繰り広げた。


1987年からBMW JAPANを通じて日本にも正規輸入された。日本での新車当時販売価格は658万円。

1991年、生産終了。

主なモデル

  • M3(1985年 - 1990年)
ドイツツーリングカー選手権(DTM)をはじめとする欧州のツーリングカー選手権で勝つことを目的に開発されたスポーツセダン(レースへの投入は1987年シーズンから)。専用エンジン、ブリスターフェンダー、空力性能を高めるための専用スポイラー、ボディ剛性の強化等、ベースモデルとなるBMW 3シリーズにチューニングを施したモデル。2.3L 直列4気筒DOHC4バルブエンジン(195PS/23.4kgf·m)、5速MT。全長4,360mm、全幅1,675mm、全高1365mm、ホイールベース2,562mm、1,200kg。欧州では1989年まで触媒なし仕様(200PS)も併売され、触媒なし仕様の廃止と同時に改良を施しチェコット仕様と同じ215PSエンジンへ変更した。なお、日本に正規輸入されたE30型M3はこのモデルが唯一である。
  • M3カブリオレ(1988年 - 1991年)
機構的にはM3と同様。カブリオレという構造上、幌の収納のためトランクリッドのみE30型3シリーズ・カブリオレと同様のものを採用している(そのためリアスポイラーは非装着)。生産台数は786台。M3の豪華版と位置づけられていたため、オールレザー内装や油圧電動ソフトトップを標準装備している。
  • M3ヨーロッパマイスター (1988年)
ヨーロッパ・ツーリングカー選手権制覇を記念して製作された限定モデル。生産台数は148台。レザー内装を装備し、ロベルト・ラバーリアのサインが入ったコーションプレートが与えられた。
  • M3エボリューション(1987年)
E30型M3 Sport Evolution
1987年に発売されたホモロゲーションモデル。生産台数は505台。大型フロントスポイラーやリアウイング下にリップスポイラーが付加されている。エンジンにも改良がおよび210PSを発生。
  • M3エボリューションII(1988年)
1988年に発売されたホモロゲーションモデル。生産台数は500台。220PSまでチューンアップされ、エンジンは白をベースに3色のMストライプを配した専用結晶塗装が施される。
  • M3チェコット/M3ラバーリア(1989年)
BMWのツーリングカーレーサー、ジョニー・チェコットもしくはロベルト・ラバーリアの名を冠した限定モデル。生産台数は505台。215PSのエンジンを先行採用し、専用ボディカラー、サイン入りコーションプレートなどが与えられた。外装はエボリューションIIに準ずる。ラバーリア仕様は基本的にチェコット仕様と同一であるが、505台の内25台がイギリスで販売されたのみである。
  • M3スポーツエボリューション(1989年 - 1990年)
DTMのレギュレーション変更(排気量2.3L→2.5L)に合わせて生産されたホモロゲーションモデル(レースへの投入は1990年シーズンから)。エンジンブロックに手が加えられ2.3Lから2.5Lへとスープアップされた。外装はフロント/リアスポイラーが専用品となる。601台(2ドアセダン 600台、カブリオレ 1台)が生産された。[2]

第2世代(1993年 - 1998年)E36

E36型M3
E36型M3 Limousine(4ドアセダン)

初代の生産が終了した1990年以降、M3はラインナップから消えていたが、新たにE36をベースとするM3が1992年に発表される。初代とは異なり、S50B30型 3.0L直列6気筒エンジンを搭載した。 当初は2ドアクーペのみの設定であったが、1994年より4ドアセダン(Limousine)とカブリオレが追加される。4ドアモデルは1995年から1998年までベースモデルのフルモデルチェンジに伴う生産休止をしていたM5サルーンの代替モデルとしての役割も与えられていた。

先代では派手なエアロパーツを身に纏い、一目で「M3」とわかるルックスを持っていたのと対照的に、E36型M3の外装は極めておとなしいものであり、一見するとノーマルの3シリーズクーペと見分けがつかないほどである(これを逆手に取り、BMWジャパンで販売された最終型の3シリーズクーペは全車にM3と共通のエアロパーツを装着し販売していた)。

1995年、クーペとセダンがマイナーチェンジ。新たに3.2LのS50B32型直列6気筒エンジンを搭載し、100PS/Lを超える321PSを達成。トランスミッションも6速となる。同時に前後のウインカーレンズがホワイト化された。なお、カブリオレは1996年に3.2L化される。

1997年、トランスミッションに6速SMG(セミAT)を追加。SMGはBMWF1で培った技術をフィードバックしたトランスミッション。市販車種への搭載はM3Cが初めてであり、故障が頻発した。

1998年、生産終了。

主なモデル

日本導入モデル
グレード 製造年 車両形式 排気量 エンジン 最高出力/最大トルク 変速機 駆動方式 備考
M3 1993年-1995年 E-M3B 2,990cc 直列6気筒DOHC 286PS/32.7kgf·m 5速MT FR 日本発表当初の価格は730万円であった。
M3 1995年-1998年 E-M3C 3,201cc 321PS/35.7kgf·m 6速MTまたは6速セミAT 日本での価格は733万円。
1997年に追加されたSMGは通常モデルより40万円高の773万円であった。

以下の車両は日本に正規輸入はされていない。

  • M3 GT(1994年)3.0L 直列6気筒DOHCエンジン(295PS)、5速MT、FR駆動。
E36型M3 GT
FIA GT2、IMSA GTレースのホモロゲーション取得のために生産された限定車(356台)。ボディカラーはブリティッシュ・レーシング・グリーンに塗装され、専用フロントスポイラーとリアスポイラーが与えられた。
  • M3 GT2(イモラ・インディビデュアル)(1998年)
イモラ・レッドボディカラーを与えられた最終限定車。機構的には3.2LのM3後期型を踏襲するが外装は前記GTと同様のエアロパーツが与えられた。
  • M3 コンパクト(1996年)
ドイツの老舗自動車雑誌「アウト・モトール・ウント・シュポルト」の創刊50周年を記念してワンオフで製作された。コンパクト(E36/5ボディ)に3.2LのM3エンジンを搭載するスポーツ・コンパクト。ボディカラーは赤であった。
  • M3 USスペック(1994年-1995年)3.0L 直列6気筒DOHCエンジン(243PS/31.1kgf·m)、5速MTまたは5速AT、FR駆動。
北米では1994年より販売が開始された。現地の嗜好やガソリン事情を配慮して出力が大幅に落とされている。また特筆すべき点として5速オートマティック・トランスミッションが選択できることが挙げられる。クーペ/セダン/カブリオレいずれも用意された。
  • M3 USスペック(1995年-1999年)3.2L 直列6気筒DOHCエンジン(243PS/32.6kgf·m)、6速MTまたは5速AT、FR駆動。
北米向けモデルも1995年にマイナーチェンジでエンジン換装を行うが、排気量が欧州向けと若干異なっているのが特徴。クーペ/セダン/カブリオレが設定され、ATも引き続き選べた。

第3世代(2000年 - 2006年)E46

E46型M3
E46型M3 CSL
S54B32型エンジン

1999年8月、フランクフルトモーターショーで発表[3]。2000年から欧州で販売が始まった。ドイツ本国ではカブリオレも販売された。搭載されるエンジンは6連スロットルを備えたS54型 3.2L直列6気筒エンジンで、先代から出力、トルクともに向上した[3]。トランスミッションはゲトラグ社製の6速マニュアルと6速シングルクラッチのセミオートマ(SMGⅡ)の2種類が準備された[3]。SMGIIは先代の失敗を受け、かなりの改良が加えられた(信頼性が上がって故障が少なくなった)。インマニの形状にはF1で培った技術が使用された[3]。排気系はダブルフロー構造のオールステンレス製であった[3]。前後のトレッド幅もベースモデルから大幅に拡大され[3]、シャシーには追加の補強が行われた[3]。フロントサスペンションはシングルジョイントのストラット式ながら、鍛造アルミ製コントロールアームや新規開発の入力分散式アスクスサポートベアリングが投入された[3]。ジオメトリーの見直しも行われた[3]。リヤサスペンションには、改良されたセントラルアーム式サスペンションが採用され[3]、こちらでもアーム類のアルミ化が図られた[3]。ボンネットはアルミ製が使用されパワーバルジが設けられた[3]。LSDにも効果が変化するバリアブルMディファレンシアルロックが投入された[3]。アルミホイールやドアミラーも空力的な考慮がなされた製品が使用された[3]。フロントタイヤ後方の車体側面にはエンジンの熱気を排出するエアアウトレットが設けられた[3]。2001年1月、日本での発売開始(価格は893万円)、左右ハンドルの選択が可能であり、車両重量は1,560kgであった。

2003年-2004年にかけて、外装の一部変更、SMGのコンピューター変更、フォグランプの意匠変更、キーレスが赤外線式から電波式に変更、フロントタワーバーの標準化、ドライカーボン製のフロントレインフォースメントの採用といった改良が順次導入され、大きく前期型・後期型に分けられる。2006年に生産終了した。

E46 M3 CSL

2001年9月、フランクフルトモーターショーで軽量化モデル「CSL」が発表される(CSL:Coupe Sport Lightweight)[4]。CSLは2003年に1383台のみ販売され、装備の簡素化、遮音材・サイドエアバックの廃止、カーボン製ルーフパネルの採用(ルーフパネルだけで6.8kgの軽量化)、電動シートの廃止、フォグランプの廃止などにより約110kgの軽量化がなされた[4][5]。軽量化のため、ナビゲーションやオーディオ、エアコンは未装着であったが、希望すれば無料でオーディオとエアコンは装備されて出荷された[4]。リヤウインドウもガラスの薄い製品が採用された[4]。また、強化ブレーキ(フロントはローターをM5に使用されているフローティングタイプの345mmに変更、リヤは大径ピストンに変更)、専用サスペンション、専用前後スポイラー、専用19インチホイール、中空スタビライザー、バケットシートも装備していた[4][5]。リアディフューザー、リアスポイラー、インナードアパネル、センターコンソールにもカーボン素材が使用され[5]、トランクルームの底にはハニカム構造の複合材が使用された[5]。ステアリングのギヤレシオはよりクイックに変更され、ステアリングホイール自体もクルーズコントロール機能を廃止するなどして軽量化されている[5]。エンジンは、標準モデルの343馬力から17馬力増となる360馬力のS54B32HP型エンジンが搭載された(エンジンの変更部分についてはBMW S54B32エンジンを参照のこと)[4]。エンジンのECUユニットは、記憶容量が2倍となり処理速度が3割増のユニットに変更された。SMGⅡ自体は同じであるが、専用プログラムが搭載され、シフトスピードが改善されている[5]。姿勢安定制御機能も、ソフトウエアが変更されて姿勢制御の介入が遅くなるように変更された[5]。日本でのCSLの価格は1,150万円。ボディーカラーはシルバーグレーメタリックとブラックサファイアメタリックの2種類のみの設定だった[4]。北米へは輸出されなかった。ドイツ国内で1,000台販売され、残りが欧州と日本で販売された。ミッションはSMGⅡのみの設定。

主なモデル

グレード 製造年 排気量 エンジン 最高出力/最大トルク 変速機 駆動方式
M3 2000年-2006年 3.2L 直列6気筒DOHC 343PS/37.2kgf·m 6速MTまたは6速セミAT FR
M3 CSL 2003年 360PS/37.7kgf·m 6速セミAT
M3 GTR 2001年 4.0L V型8気筒DOHC 380PS/39.8kgf·m 6速MT
  • M3 GTR
「M3 GTR」はBMWアメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS)に参戦する際、ホモロゲーションを取得するため、車両をデチューンして公道を走行できるようにしたモデルである。通常モデルとは違い、4.0L V8のP60B40エンジンを搭載する。欧州で2001年に10台限定で販売された。価格は250,000 ユーロ。エンジンはドライサンプ仕様で、レースバージョンの449馬力から387馬力に出力制限されて販売された。ミッションは6速マニュアルミッションのみ。屋根、リアウィング、フロントバンパーとリアバンパーはカーボン複合材製で、車重は1,350kgであった。

第4世代(2007年 - 2014年)E90/E92/E93

BMW・M3(第4世代)
E90/E92/E93
E92型M3 クーペ
E90型M3 セダン
E93型M3 カブリオレ
概要
販売期間 2007年3月 -
ボディ
乗車定員 クーペ・カブリオレ4名/セダン5名
ボディタイプ セダン
2ドアクーペ、2ドアカブリオレ
駆動方式 FR
パワートレイン
エンジン 4.0L BMW S65B40A V8
最高出力 420PS/8,300rpm
最大トルク 40.79kgf·m/3,900rpm
変速機 7速AT、6速MT、7速DCT
車両寸法
ホイールベース 2,760mm
全長 クーペ、カブリオレ:4,620mm
セダン:4,585mm
全幅 クーペ、カブリオレ:1,805mm
セダン:1,815mm
全高 クーペ:1,425mm
セダン:1,435mm
カブリオレ:1,397mm
車両重量 1,630kg
系譜
先代 BMW・M3 E46
後継 M4(クーペ)
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クーペ

2007年3月、サロン・アンテルナショナル・ド・ロトで量産型に近い「M3 コンセプト」を発表。同年4月、ドイツでM3 クーペ(E92型M3)が発売された。

先代よりも一回りボディが大きくなったが、第2世代M6(クーペ)と同様のカーボンファイバールーフを採用し、各パーツにアルミニウムを使用するなど軽量化が図られ、車両重量は先代の80kg増の1,630kgに抑えられている。0-100km加速は4.8秒となっている。サイズは全長4,620mm×全幅1,805mm×全高1,425mm、ホイールベース2,760mm。

またエンジンは先代までとは異なり、排気量を4.0Lまで拡大したV型8気筒エンジン(S65B40型)である[6]。M3にV型エンジンが採用されるのはE46型M3 GTRなどがあるが全車搭載はこれが初めて[6]。組み合わせられるトランスミッションは6速MTまたは7速DCT。M3へのV8エンジン搭載は賛否が分かれたが[7]、3L-4Lクラスのインターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーを2008年から5年連続で受賞したエンジンであり、その性能は高く評価されている[6]。V8とはいえ、軽量化されており、E46型M3の直6エンジンと比較しても15kg軽量である[6]。圧縮比は12.0、レブリミットは8,400回転、92mmのボアと75.2mmのショートストローク設定で、高回転型の設計がなされている[6]。ダブルVANOS 可変バルブタイミングシステムが採用され、各気筒独立の8連スロットル仕様となっている[6]。基本的な構造は同時期のM5、M6用のV10エンジンと共通である[6]。エンジンブロックはアルミ鋳造で、シリンダー壁は結晶化シリコンで強化されている[6]。加速時にはオルタネーター(発電機)の電磁クラッチが切られるなど、エンジン性能を高めるために様々な工夫がなされている[6]

セダン

2007年10月には東京モーターショーでM3 セダン(E90型M3)が発表された。M3セダンは基本的にノーマルの3シリーズセダンと共通のエクステリアを持つが、M3クーペと同じV型8気筒エンジンが搭載され、基本的なメカニズムもM3クーペのそれに準ずるため、フロントノーズはクーペと同様のものが採用されている。またM3クーペに搭載されているカーボンファイバールーフの採用は見送られている。車両重量はクーペよりわずかに重い1,640kgで、0-100km加速は4.9秒である。

サイズは全長4,585mm×全幅1,815mm×全高1,435mm、ホイールベース2,760mm。

M3セダンは、ドイツツーリングカー選手権(DTM)のレギュレーションにほぼ合致していたことから(2011年シーズンまで参加車両は4ドアセダンに限定されていた)、発売当初よりBMWはDTMへこのモデルで参戦するのではないかと噂された。しかし、たびたび参戦を噂されながらもなかなか参戦に踏み切らないまま、DTMのレギュレーションがGrand-AMやSUPER GTと歩調を合わせる方向で変更され、2012年シーズンよりDTMの参加車両は再び2ドアクーペに統一されることになった。BMWはM3 クーペ(レース用車両E92型M3 GT4)をベースマシンとして、2012年シーズンからDTMに参戦している[8]

カブリオレ

2008年1月、M3カブリオレ(E93型M3)を発表、3月のジュネーブショーで初公開された。M3カブリオレは3シリーズカブリオレにも搭載された電動油圧式リトラクタブル・ハードトップを備えており、クーペとカブリオレを融合したスタイルとなるクーペカブリオレ方式のリトラクタブル式ルーフを採用した。車両重量は1,885kgとクーペやセダンより重くなるが、0-100km加速は5.3秒でクーペ+0.5秒に留まり、ソフトトップだったE46型M3(カブリオレ)よりも高性能である。

サイズは全長4,620mm×全幅1,805mm×全高1,397mm、ホイールベース2,760mm。

さらにM3カブリオレの発表と同時に、従来型の6速セミATであるSMG IIに代わり、7速のM・DCT(ダブル・クラッチ・トランスミッション)が発表された。このM・DCTは1,3,5,7の奇数段と2,4,6の偶数段の2つのクラッチを持つ変速機で、変速スピードは非常に速い。同様の機構としてはフォルクスワーゲングループが採用しているDSGがある。このM・DCTはドイツ本国ではクーペ、セダン、カブリオレの全車種で選ぶことができるようになった。

M3カブリオレは日本市場へは未導入である。

E92 M3 GTS

2009年11月に発表された特別使用車[9]。エンジンは4.0Lから4.4Lに拡大され450馬力を発揮した[9]。樹脂製リアウインドウを採用するとともに、エアコン、オーディオ、ナビゲーション、リアシートを省略することにより140kg軽量化して1,490kgの車重を達成した[9]。チタン製エグゾーストシステムやロールバー、消火器が装備された[9]。ブレーキは前6ピストン、後ろ4ピストンの大型のものが採用された[9]。トランスミッションは7速DCTのみ[9]。2010年5月からドイツでの販売が開始され、同年夏頃には他国への出荷が始まった[9]。ドイツでの価格は11万5,000ユーロ。合計135台生産された。

日本市場での歴史

  • 2007年9月15日、M3クーペがBMW JAPANにより販売開始[10]
  • 2008年3月18日、M3セダンが発売された[11]
  • 2008年6月16日、7速M・DCTの選択が可能となる[12]
  • 2010年4月15日、M3クーペの特別仕様車「Special Edition(スペシャルエディション)」発売。12台限定[13]
  • 2010年10月7日、M3の誕生25周年記念モデル「M3クーペコンペティション」発売[14]
  • 2011年11月1日、M3クーペの特別仕様車「Frozen Silver Edition(フローズン・シルバー・エディション)」発売。30台限定[15]
  • 2013年4月28日、M3クーペの特別仕様車「DTMチャンピオンエディション」発売。世界限定54台。うち日本市場は右ハンドル5台、左ハンドル5台の10台限定[16]

第5世代(2014年 - 2020年)F80

BMW・M3
F80
F80 M3 Sedan
概要
販売期間 2014年 - 2020年
ボディ
乗車定員 5(F80)
ボディタイプ 4ドアセダン
駆動方式 FR
パワートレイン
エンジン 3.0L直列6気筒ガソリン
変速機 7DCT
車両寸法
ホイールベース 2,810mm
全長 4,685mm
全幅 1,875mm
全高 1,430mm(ベースモデル)
車両重量 1640kg
系譜
先代 M3(E92/E93)
後継 M3セダン(G80)、M4クーペ(G82)
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2013年12月発表[17]。賛否が分かれた第4世代のV8エンジンから[7]第5世代では直列6気筒エンジンに回帰し、またM3としては初めてターボエンジンが搭載された[17]。直列6気筒エンジン(S55B30A)は2つのターボチャージャーが装備され、最高出力431馬力、最大トルク56.1kgmを発揮し前モデルと比較して燃費も大幅に改善された[17]。ターボ化により最大トルクは第4世代と比較して5割増しとなる一方[7]、燃費は排気量の縮小により25-30%改善し、ユーロ6排ガス規制をクリアしている[7]。軽量化のためにカーボン製のルーフやタワーバー、プロペラシャフトが採用された[17][7]

4ドアセダン型のみの発売[17]。クーペ、カブリオレは3シリーズベースの2ドアモデルが「4シリーズ」と改称して再編されたことにより、BMW・M4に移行した[17]

第5世代の開発として、強く意識されたのは『サーキットでの走行性能の向上』であった[7]。そのため、開発には2012年DTMチャンピオン、ブルーノ・シュペングラーら、BMWのワークスドライバーが深く関与している[7]。サーキット走行に耐えるために、メインラジエーターとは別にサイドラジエーターが装備され[7]、ターボチャージャーの軸受けには電動クーラントポンプで冷却液が循環されている[7]

ホイールは標準が18インチであるが、オプションで19インチホイール(+278,000円)も設定された[7]。また+110万円でカーボンセラミック製ブレーキシステムを搭載できた[7]

2017年11月生産分から、車体フロア下面への排気微粒子除去装置の装着のために、カーボン製プロペラシャフトがスチール製に変更となる[18]

日本での販売

  • 2014年2月19日、M3セダンがBMW JAPANにより発売開始[19]
  • 2016年4月18日、Competition Packageを設定。[20]
  • 2016年9月30日、初代BMW M3の登場から30年を記念した特別限定車 「30 Jahre M3」を導入[21]
  • 2017年5月9日、4シリーズのLCIに伴いM3/M4もLCIを実施。ヘッドライトデザイン等を一新。[22] テールランプは3シリーズのLCIが実施された際に後期仕様が装着される形となったため、一時的にヘッドライトが前期・リアテールが後期という仕様が存在する。(2015年7月-2017年3月生産分が該当)
  • 2017年12月25日、M3セダン/M4クーペCompetitionの限定モデル「M Heat Edition」を発表[23]
  • 2018年2月20日、M3 CSを発表。日本国内は限定30台での販売[24]
グレード 製造年 エンジン型式 エンジン 排気量 最高出力/最大トルク 変速機 駆動方式 ハンドル位置
M3 セダン(7DCT) 2014年2月 - S55B30A 直列6気筒 ツインターボ 2,979cc 431ps/56.1kgm 7速 M DCT Drivelogic 後輪駆動
M3 セダン
Competition(7DCT)
2016年4月 - 450ps/56.1kgm
M3 セダン CS(7DCT) 2017年 直列6気筒 ツインターボ
(ウォーターインジェクション)
460ps/61.1kgm

第6世代(2021年 - )

BMW・M3
G80
G80 M3 セダン
概要
販売期間 2021年 -
ボディ
乗車定員 5(G80)
ボディタイプ 4ドアセダン
駆動方式 FR/AWD
パワートレイン
エンジン 3.0L直列6気筒ガソリン
変速機 8AT
車両寸法
ホイールベース 2,855mm
全長 4,805mm
全幅 1,905mm
全高 1,435mm
車両重量 1740kg
その他
最小回転半径 5.2m
系譜
先代 M3(F80)
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本国仕様

BMW AGはG80型M3を2020年9月23日に発表し、納入時期を2021年3月とした。[25]

日本仕様

BMW JAPANはG80型M3の日本正規導入モデルを、G82型M4と併せて2021年1月26日に発表した。[26]

G80型M3の日本導入モデルとしての特徴は下記の通り。

駆動方式

  • 駆動方式は全車FR(後輪駆動)となっている。また4輪駆動(xDrive)モデルについては2021年9月3日に追加導入を発表。同年9月末以降順次納車としている。[27]

トランスミッション

  • トランスミッションは8速ステップトロニック(トルクコンバータ式オートマチック)のみとなるが、上記の通りステップトロニック仕様にもFRが導入される。 なお、日本仕様のM3には6速マニュアルトランスミッションは導入されない。

グレード構成

  • サーキット走行などを見据え、一部の運転支援装備を非装着とし、代わりにMカーボン・セラミック・ブレーキ、Mカーボン・バケット・シートなどを装備する、トラック・パッケージが用意される。

タイヤ・ホイール

  • フロントとリヤのタイヤ及びホイールは異径サイズが設定される。フロント18インチに対してリヤ19インチ、フロント19インチに対してリヤ20インチと、フロントに対して1インチ大きいサイズのホイール及びタイヤがリヤに設定される。

その他

  • B58B30Aエンジン
    ステアリングは右のみとなる。

日本での販売

  • 2021年1月26日 Mハイ・パフォーマンス・モデル「BMW M3」および「BMW M4」が誕生[28]
  • 2021年9月3日 Mハイ・パフォーマンス・モデル「BMW M3セダン」および「BMW M4クーペ」に4輪駆動モデルが誕生[29]
  • 2022年5月24日からBMWオンラインストア限定で、BMW Mの50周年記念限定モデルとして、M3の6速マニュアルトランスミッション仕様車に特別装備を施した「M3 M 50th Anniversary Limited」が50台限定で抽選販売された。

スペック(日本仕様)

グレード 製造年 エンジン型式 エンジン 排気量 最高出力/最大トルク 変速機 駆動方式 ハンドル位置
M3 Competition 2021年3月- S58B30A 直列6気筒 ツインターボ 2,993cc 510ps/650Nm 8速 M Steptronic 後輪駆動
M3 Competition Track Package
M3 Competition M xDrive 2021年9月- 四輪駆動
M3 Competition M xDrive Track Package

レース

  • 日本ではスーパー耐久などに出走。E46型が2007年のスーパー耐久第2戦鈴鹿にて優勝するなどの成績を納めている。
  • 欧州ではDTMなどでの活躍があるほか、ニュルブルクリンク24時間レースでE46 M3 GTRが、2004年および2005年に連続優勝している。アメリカルマンシリーズ(ALMS)でもE46 M3 GTRが2001年のGTタイトルを獲得している。E92型は、「M3 GTR ALMS」がアメリカンルマンシリーズに、欧州では「M3 GT4」がニュルブルクリンク24時間などの耐久レースに参加している[9]
  • 2021年のMotoGPでは、M3コンペティションがセーフティカーに使われている[30]

脚注

[31]

  1. ^ 80年代輸入車のすべて- 魅惑の先鋭 輸入車の大攻勢時代. 三栄書房. (2013). pp. 73. ISBN 9784779617232 
  2. ^ BMW M3 specs”. www.auto-data.net. 2019年1月22日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o BMW mag Vol.1 辰巳出版 (2001/8/1) ISBN 978-4886416360
  4. ^ a b c d e f g BMW「E46型 M3 CSL」今後の値上がりは必至か!? Carnnyマガジン 2017年9月5日閲覧
  5. ^ a b c d e f g BMW M3 CSL Performance”. Automobile Magazine. 2009年6月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年7月10日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i なぜM3(E92型)のエンジンは8,400回転も回るのか? CarMe 2017年8月31日閲覧
  7. ^ a b c d e f g h i j k BMW M3セダン(FR/7AT)【試乗記】 2017年9月8日閲覧
  8. ^ BMW M3に DTMレーサー…第1号車を公開 - response.jp・2012年2月3日
  9. ^ a b c d e f g h BMW M3 GTS 発表…4.4リットルV8は450ps Responsejp 2017年9月8日閲覧
  10. ^ 新型「BMW M3」は4リッターV8で、996万円”. 2013年5月5日閲覧。
  11. ^ 420psの「BMW M3セダン」、販売開始”. 2013年5月5日閲覧。
  12. ^ 「BMW M3」にツインクラッチ式トランスミッション搭載”. 2013年5月5日閲覧。
  13. ^ 「BMW M3クーペ」に12台限定の特別仕様車”. 2013年5月5日閲覧。
  14. ^ 「BMW M3」誕生25周年記念モデル「M3クーペコンペティション」の受注を開始”. 2013年5月5日閲覧。
  15. ^ 「BMW M3クーペ」に30台限定の特別仕様車”. 2013年5月5日閲覧。
  16. ^ 「BMW M3クーペ」に10台限定のDTM優勝記念モデルが登場”. 2013年5月5日閲覧。
  17. ^ a b c d e f BMWが新型「M3」「M4」を世界初公開”. 2014年2月20日閲覧。
  18. ^ BMW、「M3」と「M4」のカーボンファイバー製ドライブシャフトを間もなく廃止 2017年9月8日閲覧
  19. ^ BMW、新型「M3セダン」「M4クーペ」を受注開始”. 2014年2月20日閲覧。
  20. ^ BMW M3セダンおよびM4クーペの圧倒的なパフォーマンスを更に引き上げる「コンペティション・パッケージ」をオプション設定”. www.press.bmwgroup.com. 2021年9月3日閲覧。
  21. ^ 初代BMW M3の登場から30年を記念した特別限定車 「30 Jahre M3」を導入”. www.press.bmwgroup.com. 2021年9月3日閲覧。
  22. ^ 新型BMW M3ならびに新型BMW M4を発表”. www.press.bmwgroup.com. 2021年9月3日閲覧。
  23. ^ サーキットで卓越した走行性能を発揮するBMW M3セダン/M4クーペCompetitionの限定モデル「M Heat Edition」を発表”. www.press.bmwgroup.com. 2021年9月3日閲覧。
  24. ^ 圧倒的なサーキット・パフォーマンスと、4ドア・モデルとして日常走行への適合を高次元で両立させたBMW M3 CSを発表”. www.press.bmwgroup.com. 2021年9月3日閲覧。
  25. ^ The new BMW M3 Sedan and BMW M3 Competition Sedan. The new BMW M4 Coupé and BMW M4 Competition Coupé.” (英語). www.press.bmwgroup.com. 2021年1月28日閲覧。
  26. ^ Mハイ・パフォーマンス・モデル「BMW M3」および「BMW M4」が誕生”. www.press.bmwgroup.com. 2021年1月28日閲覧。
  27. ^ Mハイ・パフォーマンス・モデル「BMW M3セダン」および「BMW M4クーペ」に4輪駆動モデルが誕生”. www.press.bmwgroup.com. 2021年9月3日閲覧。
  28. ^ Mハイ・パフォーマンス・モデル「BMW M3」および「BMW M4」が誕生”. www.press.bmwgroup.com. 2021年9月3日閲覧。
  29. ^ Mハイ・パフォーマンス・モデル「BMW M3セダン」および「BMW M4クーペ」に4輪駆動モデルが誕生”. www.press.bmwgroup.com. 2021年9月3日閲覧。
  30. ^ BMW M3 セダン新型、MotoGPのセーフティカーに…510馬力ツインターボ搭載”. レスポンス(Response.jp). 2021年12月14日閲覧。
  31. ^ Bmw 325is hp EVO II 2021年3月26日取得.

関連項目

  • BMW
  • 3シリーズ
  • M4
  • BMW M
  • ウサイン・ボルト - 本人の身長(196cm)に合わせて改造した特別仕様車を贈呈された。このことから身長が190cm後半の人が快適に乗るには、メーカー側での調整が必要と思われる。後に事故を起こし廃車となった。
  • 加藤大治郎 - 全日本ロードレース参戦時代にE36型を愛用していた。
  • Need For Speed: Most Wanted(2005及び2012) - E46型のM3 GTRがストーリー序盤と終盤に登場する。カバーにも出ている同作を代表する車両。2012のリブート版のDLCにも収録されている
  • Need For Speed: Carbon(2006) - 上記の作品の終盤で取り返すがストーリー序盤で事故に逢い大破してしまう
  • Need For Speed: Shift(2009) - E92型M3クーペが収録されている

外部リンク