食物アレルギー

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食物アレルギー(しょくもつアレルギー)は、原因食物を摂取した後に免疫学的機序を介して起こる生体にとって不利益な症状(皮膚、粘膜、消化器、呼吸器、アナフィラキシー反応など)と定義されている。

食品によっては、アナフィラキシーショックを発生して命にかかわることもある(そばが有名)。

乳幼児から幼児期にかけては食物アレルギーの主要な原因として鶏卵牛乳がその半数以上を占める。青年期になるにつれて甲殻類が原因の事例が増え、牛乳が減る。成人期以降では、甲殻類小麦果物魚介類といったものが主要なアレルギーの原因食品となる。

日本では食品衛生法第19条に基づき「食品衛生法第十九条第一項の規定に基づく表示の基準に関する内閣府令」別表第四で「特定原材料」として指定する品目について表示の義務づけがなされており、また、その他の一定の品目について「特定原材料に準ずるもの」として通知により表示することが奨励されている。なお、かつては「特定原材料」については食品衛生法施行規則で定められていた。

診断と治療[編集]

診断[編集]

食べた後にアレルギー反応と思われる症状があるだけでは、食物アレルギーとは診断することはできない。実際に食物アレルギーは酵素不全による不耐症や食品に含まれる物質の薬理作用による反応と混同されることが多い。食物アレルギーには摂取後すぐに発症するⅠ型アレルギーによるものと数時間以上経ってから症状が出現する非Ⅰ型アレルギーによるものが存在する。

RAST、ブリックテストといった検査はⅠ型アレルギーと考えられる症例に対してのみ使用する。これらの検査は偽陽性が多いので病歴から判断し、必要なもののみを検査する。またRASTの結果は食物抗原や患者の年齢によって、同じ値であっても臨床的な意義が異なる。例えば、乳児においては小麦でRAST陽性がでることは多いので、卵白低値陽性は小麦中程度陽性よりも臨床的な意義が高いと考えられる。

花粉症の季節に悪化する場合は口腔アレルギー症候群の可能性がある。特に成人の場合は可能性が高い。

治療[編集]

アナフィラキシーショックを起こした場合はアナフィラキシーショックの治療を行う。魚介類、ナッツピーナッツソバは重篤なアナフィラキシーを起こすことが多いことが知られている。また喘息の既往がある患者も重篤なアナフィラキシーを起こす可能性が高いといわれている。

治療は原因食物の除去が原則であるが、食物アレルギーの患者は小児に多く、厳しい除去食は栄養に悪影響を及ぼす恐れがある。原因が特定できなければアレルギー専門医の受診が望ましい。

近年ではアレルギー反応を起こさない量の原因食物を摂取することによって体を慣れさせるアレルゲン免疫療法(減感作療法)も専用機関(病院など)で行われている。

原因食物[編集]

アレルゲン検査などの対象となる食物アレルギーの原因食物には以下のようなものがあり、このうち法令上で表示対象となる食品は一般に発症数や重篤度から勘案して定められている。

アレルギーの原因食物
食品名 備考
全卵ではなく卵黄アレルギーや卵白アレルギーもある。
日本では法令により「特定原材料」として表示義務がある。
小麦 日本では法令により「特定原材料」として表示義務がある。
えび かにアレルギーなどとともに「甲殻類アレルギー」と呼ばれることもある。
日本では法令により「特定原材料」として表示義務がある(平成20年に「特定原材料に準ずるもの」から「特定原材料」に変更)。
かに えびアレルギーなどとともに「甲殻類アレルギー」と呼ばれることもある。
日本では法令により「特定原材料」として表示義務がある(平成20年に「特定原材料に準ずるもの」から「特定原材料」に変更)。
そば 蕎麦#そばアレルギーも参照。
日本では法令により「特定原材料」として表示義務がある。
落花生 ラッカセイ#ピーナッツアレルギーも参照。
日本では法令により「特定原材料」として表示義務がある。
日本では法令により「特定原材料」として表示義務がある。
あわび 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
いか 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
いくら 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
オレンジ 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
キウイフルーツ 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
牛肉 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
くるみ 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
さけ 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
さば 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
大豆 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
鶏肉 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
バナナ 日本では通知により「特定原材料に準じるもの」として表示が奨励されている(平成16年追加)。
豚肉 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
まつたけ 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
もも 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
やまいも 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
りんご 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
ゼラチン 日本では通知により「特定原材料に準ずるもの」として表示が奨励されている。
オオムギ(大麦)
アワ(粟)
ヒエ(稗)
キビ(黍)
トウモロコシ
インゲン
エンドウ
アーモンド
カシューナッツ
ココナッツ
クリ(栗) 類似の分子構造と独特な臭気を持つ主成分(ゴムタンパク)が含まれるゴムも同様のアレルギーが起こるとされている。
イチゴ
メロン
マンゴー
アボカド
洋ナシ
トマト
セロリ
パセリ
タマネギ
スイカ
ニンジン
ジャガイモ
サツマイモ
カボチャ
ホウレンソウ
タケノコ
ニンニク
ゴマ
カラシ
ワサビ
カカオ チョコレート(日本でいう準チョコレート・チョコレート菓子含む)・ココアなど。チョコレートアレルギーの項目も参照。
アサリ
カキ
ホタテ
イカ
タコ
サバ
アジ
イワシ
タラ
サケ
マグロ
イクラ
タラコ

食品に対する表示[編集]

日本[編集]

日本では食品衛生法健康増進法の規定に基づく食品表示等に関する業務について、かつては厚生労働省が担っていたが平成21年9月1日より内閣府外局である消費者庁へ移管され引き継がれた[1]

食品衛生法第19条第1項は「内閣総理大臣は、一般消費者に対する食品、添加物、器具又は容器包装に関する公衆衛生上必要な情報の正確な伝達の見地から、消費者委員会の意見を聴いて、販売の用に供する食品若しくは添加物又は前条第一項の規定により規格若しくは基準が定められた器具若しくは容器包装に関する表示につき、必要な基準を定めることができる」とし、同条第2項は「前項の規定により表示につき基準が定められた食品、添加物、器具又は容器包装は、その基準に合う表示がなければ、これを販売し、販売の用に供するために陳列し、又は営業上使用してはならない」としている。

この規定に基づき、現在、発症数や重篤度から勘案して「食品衛生法第十九条第一項の規定に基づく表示の基準に関する内閣府令」で7品目について「特定原材料」として表示を義務づけるとともに、通知で「特定原材料に準じるもの」として18品目の表示を奨励している(特定原材料と特定原材料に準じるものをあわせて「特定原材料等」として扱われる)。

アレルギー患者の商品選択に資するように、食品メーカーが特定原材料等を使用しないで食品を製造した場合には「使用していない」旨の表示を行うことが勧められている[2]

また、企業防衛や原材料調査の負担回避を狙いとして「入っているかもしれない」等の可能性表示がなされると結果的に消費者の商品選択の幅を狭めるおそれがあるため、このような可能性表示は認められていない[3][4]

なお、特定原材料等の表示についてアレルギー物質を含んでいることを容易に判別することができる食品については表示を省略できる[5]

特定原材料[編集]

まだ5品目のみだった頃(2007年)の表示の例。現在はこれにえび、かにが加わり7品目となっている

「食品衛生法第十九条第一項の規定に基づく表示の基準に関する内閣府令」別表第四により特定原材料として定義される(かつては食品衛生法施行規則で定められていた)。現在は7品目[6]。【 】内は認められる代替表記等の例[7]

  1. 【玉子、たまご、鶏卵、うずら卵、マヨネーズ、オムレツ、目玉焼、かに玉、オムライス、親子丼など】
  2. 小麦【コムギ、小麦粉、パンうどん、焼きうどんなど】
  3. えび【海老、エビ、海老フライ、えび天ぷら、サクラエビなど】
  4. かに【カニ、蟹、上海がに、マツバガニ、カニシューマイなど】
  5. そば【ソバ、そばがきなど】
  6. 落花生【ピーナッツ、ピーナッツバター、ピーナッツクリームなど】
  7. 牛乳、加工乳、乳飲料など】

※「えび」及び「かに」は平成20年度に追加され、2010年6月4日より表示が義務化された。

特定原材料に準ずるもの[編集]

通知により特定原材料に準ずるものとして表示が推奨されるもの(任意表示)で、現在、18品目が定められている[8]。【 】内は認められる代替表記等の例[9]

  1. あわび【アワビなど】
  2. いか【イカ、スルメなど】
  3. いくら【イクラ、すじこなど】
  4. オレンジ【オレンジジュースなど】
  5. キウイフルーツ【キウイなど】
  6. 牛肉【ビーフなど】
  7. くるみ【クルミなど】
  8. さけ【サーモン、しゃけなど】
  9. さば【サバなど】
  10. 大豆【ダイズ、豆腐、豆腐ハンバーグなど】
  11. 鶏肉【チキン、焼き鳥など】
  12. バナナ【バナナジュースなど】
  13. 豚肉【ポーク、豚生姜焼など】
  14. まつたけ【松茸など】
  15. もも【桃、ピーチ、ピーチペーストなど】
  16. やまいも【ヤマイモ、とろろなど】
  17. りんご【リンゴ、アップル、アップルパイ、りんご飴など】
  18. ゼラチン【板ゼラチン、粉ゼラチンなど】

※バナナは平成16年度に追加された。

※「えび」及び「かに」は平成20年度に「特定原材料」となったため「特定原材料に準ずるもの」から外された。

脚注[編集]

  1. ^ 消費者庁への食品表示等業務の移管について”. 厚生労働省. 2012年9月10日閲覧。
  2. ^ アレルギー表示について”. 消費者庁. 2012年9月10日閲覧。
  3. ^ アレルギー物質を含む食品の表示についての考え方”. 日本食品化学研究振興財団. 2012年9月10日閲覧。
  4. ^ アレルギー表示について”. 消費者庁. 2012年9月10日閲覧。
  5. ^ アレルギー表示について”. 消費者庁. 2012年9月10日閲覧。
  6. ^ アレルギー表示について”. 消費者庁. 2012年9月10日閲覧。
  7. ^ 特定原材料等の代替表記方法リスト”. 消費者庁. 2012年9月10日閲覧。
  8. ^ アレルギー表示について”. 消費者庁. 2012年9月10日閲覧。
  9. ^ 特定原材料等の代替表記方法リスト”. 消費者庁. 2012年9月10日閲覧。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]