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『'''ピーバディ家の遺産'''』(原題:{{lang-en-short|''The Peabody Heritage''}})は、[[アメリカ合衆国]]のホラー小説家[[オーガスト・ダーレス]]による短編ホラー小説。[[クトゥルフ神話]]の1つ。
『'''ピーバディ家の遺産'''』(ピーバディけのいさん、原題:{{lang-en-short|''The Peabody Heritage''}})は、[[アメリカ合衆国]]のホラー小説家[[オーガスト・ダーレス]]による短編ホラー小説。[[クトゥルフ神話]]の1つ。


[[ハワード・フィリップス・ラヴクラフト]]との死後合作というスタイルをとっている。1957年の{{仮リンク|アーカムハウス|en|Arkham House}}の単行本『[[生きながらえるもの]]その他』に収録された。
[[ハワード・フィリップス・ラヴクラフト]]との死後合作というスタイルをとっている。1957年の{{仮リンク|アーカムハウス|en|Arkham House}}の単行本『[[生きながらえるもの]]その他』に収録された。

2021年11月27日 (土) 13:53時点における版

ピーバディ家の遺産』(ピーバディけのいさん、原題:: The Peabody Heritage)は、アメリカ合衆国のホラー小説家オーガスト・ダーレスによる短編ホラー小説。クトゥルフ神話の1つ。

ハワード・フィリップス・ラヴクラフトとの死後合作というスタイルをとっている。1957年のアーカムハウスの単行本『生きながらえるものその他』に収録された。

典型的な妖術師物語であり[1]、ラヴクラフトの『魔女の家の夢』の模倣作。

あらすじ

マサチューセッツの町ウィルブラハム英語版に1787年に建てられたピーバディ屋敷は、改装と増築をくり返した結果、複雑怪奇な巨大建造物と化しており、アサフ・ピーバディが1907年に死去した後には住む者はおらず放置されていた。1929年、突然の事故で両親を亡くしたわたしは、遺産と屋敷を相続する。同年に起こった大恐慌で不動産価格が落ち込んんだこともあり、働かなくても生活できる資産を得たわたしは、ボストンの地所を処分して、自分が住むためにウィルブラハムの屋敷を改装しようと考える。

荒れ果てた屋敷に部屋は27個もあった。生活用に一角を作り直して移住したわたしは、屋敷を気に入り、ボストンに埋葬されている両親の遺骨を先祖代々の納骨所に移すことを思いつく。1930年3月、わたしは納骨所の鍵を開け、初代ジュデディア以降の一族37人分の棺と対面する。長年を経て初期の先祖の遺体はは皆朽ち果てており、また曾祖父アサフの遺体は、どのような手違いによるものか、うつ伏せに横たえられていた。わたしは、まさか棺の中で息を吹き返して出られずに息絶えたのではあるまいかと不吉に思い、曾祖父の白骨の向きを仰向けに直す。また建築家の調査により、隠し部屋が存在したことが判明する。そこは狭苦しい部屋であり、狭苦しい部屋で、机と椅子、本や書類が出てきた。

近隣に住むテイラー家の2歳の子供がさらわれて行方不明になるという事件が発生する。弁護士は、曾祖父アサフの時代には何人か幼児が姿を消したことがあったことをわたしに伝え、続けてアサフが疑われていたと言う。アサフの血縁であるわたしは迷信深い近隣住民たちからは快く思われておらず、屋敷には「出ていけ」という張り紙が張られる。こうした出来事に意気消沈したわたしの夢には、曾祖父アサフと黒猫が現れ、背後には黒い男が影のようにつきまとっていた。

やがて工事が始まるも、大工たちはいきなり仕事を投げ出して逃げ出す。何事かと思ったわたしがその場所を調べてみると「子供の頭蓋骨と骨」が発見される。アサフが幼児を生贄にしていたという、動かぬ証拠である。とても近隣住民に知られるわけにはいかないと判断したわたしは、骨を回収して一族の納骨所に隠す。わたしが隠し部屋を再び調べると、机が汚れ、新しい血の跡が増えていた。わたしは書物から「魔法使いは、顔を下に向けて棺に横たえ、納棺後は火葬する以外で棺を乱してはならない」という言い伝えがあることを知る。また祖父の日記には「Jに肉がついている」「夢の中で、黒猫に導かれて黒の書に署名をした」「小鬼バロールは、Jに仕えていたときも黒猫の姿をしていた」などと記されていた。そしてわたしも夢の中で、黒の書に血で署名を行う。

わたしが再び曾祖父の棺を調べると、アサフの白骨に肉がついており、ひからびた幼児の死体が一緒に入っていた。わたしは、かつてアサフがジュデディアの遺体に対して行ったのと同じように、アサフの遺体を燃やし尽くす。だが黒猫はやって来た。既に血で署名してしまった今はもう手遅れ。わたしは、ピーバディ家の遺産とは、屋敷や地所や林といった表面的な物などではなく、そこに接した異次元と黒魔術のことであると悟り、自分が死んだ後の亡骸の向きについて思いを馳せる。

主な登場人物

ウィルブラハムの住人

  • ピーバディ - 弁護士見習い。1930年に28歳(曾祖父が死んだ1907年に5歳)。ボストンからウィルブラハムに引っ越してきた。
  • エイハブ・ホプキンス - ピーバディ家の地所を管理する弁護士。
  • 建築家 - 迷信を信じない近代人。隠し部屋を発見する
  • ジョン・シエシオルカ - 大工の親方。ポーランド人。改装工事中に子供の骨を見つけて逃げ出す。
  • ジョージ・テイラー - 近所に住む男。10人子供がおり、2歳の第9子が行方不明となる。

妖術関係者

  • アサフ・ピーバディ - 曾祖父。1907年に死去。ウィルブラハムに代々住んでいる。うつ伏せで埋葬された。
  • 黒猫バロール - ピーバディ家の妖術師に仕える使い魔。黒猫の姿をした小鬼。
  • 黒い男 - 燃え上がる目をした、闇よりも黒い男。
  • ジュデディア・ピーバディ - 屋敷の初代。セイレム出身の妖術師。

収録

脚注

注釈

出典

  1. ^ 学研『クトゥルー神話事典 第四版』454ページ。