旧支配者

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旧支配者(きゅうしはいしゃ、Great Old OneGreat Old Ones)は、創作ジャンルクトゥルフ神話に登場する架空の神々。クトゥルフ神話の邪神の別名。

グレート・オールド・ワン。古き神々(ふるきかみがみ)、古き者ども(ふるきものども)とも訳される。

逆に、クトゥルフ神話における「Great Old One」などの邦訳語。

外なる神(そとなるかみ、The Outer GODS)についても述べる。

概説[編集]

小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの作品をもとに、彼のファン兼自身も小説家であるオーガスト・ダーレスが、世界観を体系化したものがクトゥルフ神話であり、設定が共有されて複数の作家によって書き継がれている。旧支配者は、クトゥルフ神話の作品群に登場する。人類史以前に地球を支配していたとされている存在(神々)である。

当初のラヴクラフト作品において、これらは、善悪で把握できる存在として描かれていなかったが(ラヴクラフト神話を参照)、ラヴクラフトの死後、その設定を引き継いだダーレスにより、善の旧神と対立する邪神のカテゴリとして設定された。

ダーレスらによる設定では[注 1]、旧支配者は四大霊(火、水、大地、大気)の勢力・派閥があり、結託や対立が存在する。人類史西暦現代では活動が制限されているが、これも星辰の移り変わりによるものとも、旧神との戦いに敗れて幽閉されたためともいう。いずれにせよ、眷属や信者が主の復活を画策しており、仮に旧支配者が復活すれば、人類の文明など、あっけなく滅ぼされてしまうだろうとされている。

ラヴクラフトは神々として、蕃神(万物の王アザトース、神々の使者ナイアーラトテップ)と旧支配者(外のヨグ=ソトース、大祭司クトゥルフ)の2タイプを書いた。その後に、ダーレスらが邪神の総称としての「旧支配者/グレート・オールド・ワン」の呼称を定着させた。結果、もとの設定を継承しつつも、アザトースは邪神の最高位に位置付けられ、ナイアーラトテップは旧支配者たちの使者という側面が強くなる。後にさらなる上位カテゴリとして、外なる神という区分が登場する。[注 2]

なお、英語の“Great Old Ones”という語は、ラヴクラフト自身の著作による小説『クトゥルフの呼び声』で言及されている呼び名であるが[1]、これを日本語訳で旧支配者としたのは、後にダーレスによって創作された「これらの神性が、かつて宇宙を支配していたが失権した」という設定を踏まえた意訳であり、ラヴクラフトの意図に基づく正確な訳とは言えない面もある。今日、英語ではGreat Old OnesOld Onesthe ancient onesだが、他にelder godsthe elder godsElder GodsThe Elder Gods等の名でも呼ばれたことがある。

分類法[編集]

四大霊(精霊説)
ダーレス神話にて顕著にみられる分類法であり、オーガスト・ダーレスフランシス・レイニーリン・カーターなどが整理した。水と風、地と火は敵対する。
カーターの1976年作品『陳列室の恐怖』では、16世紀頃にダレット伯爵が分類した区分ということになっている[注 3]。しかしカーターは後に設定をアップデートして、カーター版『ネクロノミコン』では、8世紀のアルハザードが既に四大霊区分を用いた上で、新たに「第五元」を追加して、アザトース、ヨグ=ソトース、ナイアーラトテップを第五元の存在とした。
ダーレス神話の欠点として、善悪二元論と共に、ラヴクラフト神話を矮小化したと、批判に晒されることが多い分類法である。また「クトゥルフが海底に封じ込められているというのは矛盾する」「クトゥルフのテレパシーは海水で遮られている」「あらゆる時空と場所に存在するヨグ=ソトースがなぜ地の精霊に結びつくのか」「なぜ水/火、風/地ではないのか」など指摘を受けることもある[2]
レッサー・オールド・ワン
リン・カーターが提唱した。グレート・オールド・ワンに対比した名称であり、より格の劣る、奉仕種族長老クラスの小神カテゴリ。小物ゆえに、幽閉されていないというメリットがある。
クトゥルフ眷属邪神群(CCD)
ブライアン・ラムレイの世界観における、旧支配者の呼称。邪神の王がクトゥルフであるためである。人類の対邪神組織であるウィルマース・ファウンデーションが用いる。
外なる神
1980年代に、ケイオシアム社のTRPGクトゥルフの呼び声』にて用いられ始めた。魔王アザトース、副王ヨグ=ソトース、使者ナイアーラトテップなどという顔ぶれ。ダーレスらによって体系化された旧支配者カテゴリから、再び蕃神を切り離したものに近い。
旧支配者の七帝
ドナルド・タイスン版『ネクロノミコン』の分類。アザトース、ダゴン、ナイアーラトテップ、イグ、シュブ=ニグラス、ヨグ=ソトース、クトゥルフ。七神全てラヴクラフトが創造した神であり、スミス神話の要素が入っていない。
ゾティークの神
クラーク・アシュトン・スミスによる、終末大陸ゾティークにおける神々・魔神。設定上は、古代ハイパーボリアなどで信仰された神々が名前を変えて戻ってきたとされている[3]
クトゥルフ神話との関連度合はあまり高くない。ニオス・コルガイモルディギアンがクトゥルフ神話に組み込まれ、またタサイドンはゾティークの複数作品に頻出する。
ルー=クトゥの魔神たち
「大いなる力の渦」ルー=クトゥから産まれた魔神たち。ジェームズ・アンビュール独自の神性カテゴリ。日本では未訳。
ルー=クトゥ、三柱の主神、および多数の魔神たちで構成される。魔神の一柱がバイアグーナ(Byagoona)である。

主な旧支配者[編集]

以下に、主な旧支配者の名前を挙げる。ただし、人間には正確な発音は不可能なものと設定されており、これらはあくまで仮のものとされる。日本語訳ではカタカナ表記の統一されていないものが多い。括弧内は主な表記。

主な外なる神[編集]

日本人作家が創造した邪神[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 中心人物であったダーレスに加えて、設定辞典を書いたフランシス・レイニーとリン・カーターの影響も大きい。
  2. ^ 旧支配者の定義は、1943年レイニーの『小辞典』では「外宇宙から飛来したアザトース以下の神々」(=最初から地球にいたやつらは違う)、1957年カーターの『神神』では「ウボ=サスラが地球上で産み出した神々」(=地球外から来たやつらは違う)となっており、最初の2事典の時点で既に別物である。そこから続いて、外宇宙から飛来したクトゥルフやツァトゥグァは外なる神なのかといえば、そうもならなかった。
  3. ^ ダレット伯爵=ダーレスという、内輪ネタである。
  4. ^ リン・カーターによる、ヨグ=ソトースの異母子たちをクトゥルフハスターツァトゥグァヴルトゥームとする系譜をベースとする。
  5. ^ クラーク・アシュトン・スミスによる神々の系譜をベースとする。別の系譜としては、リン・カーターによる系譜が有名で、そちらではヨグ=ソトースの異母子たちをクトゥルフ、ハスター、ツァトゥグァ、ヴルトゥームとしている。

出典[編集]

  1. ^ Wikisource reference Howard Phillips Lovecraft. The Call of Cthulhu/Chapter II. - ウィキソース. 
  2. ^ 新紀元社『エンサイクロペディア・クトゥルフ』【精霊説】149ページ。
  3. ^ 暗黒の魔像』クラーク・アシュトン・スミス

関連項目[編集]