コールド・プリント

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コールド・プリント(原題:: Cold Print)は、イギリスのホラー小説家ラムジー・キャンベルが1969年に発表した短編ホラー小説。クトゥルフ神話の1つ。

1964年に書かれた短編『継承者』が原型となっており、1967年に書き直して完成した[1]。1969年にアーカムハウスの単行本『クトゥルー神話作品集』に収録され発表された[2]。後に1985年の短編集『Cold Print』の表題作となる。この短編集は1993年に増補版が刊行されており、増補版は2022年に『グラーキの黙示』全2巻として邦訳刊行されている。

邪神イゴーロナクが登場する。変態がポルノを探していたらグラーキ12巻に遭遇するというストーリーである。執筆当時の現代ものであり、実在のエロ本タイトル[3]と架空のエロ本タイトルに、グラーキの黙示録が入り混じる。

東雅夫はキャンベル初期短編の中でも傑出した作品と高評価している[2]

あらすじ[編集]

ある雪の日。ブリチェスターにて。ストラットは浮浪者に案内された古書店で掘出物を手に入れる。

翌日、ストラットは再び書店を訪れる。すると店主はボロボロの帳面を取り出して見せ、これは「グラーキの黙示録」の12巻であると言い、ページをめくって奇怪な説明を始める。店主の口調は常軌を逸したものになっていき、あまりの電波っぷりにドン引きしたストラットは場を離れようとするが、逃げられない。ストラットはマッチを取り、黙示録を燃やすぞと脅迫し、あっさりと燃え尽きた。

店主の肉体が膨張し、掌についた口がストラットの顔面に迫り、終幕する。

登場人物・用語[編集]

サム・ストラット
教師。サディストの性倒錯者。反抗する子供に体罰を与えるのが好き。エログロ小説を愛好する。
浮浪者
不潔な男。官能小説にかなり詳しい。店では挙動不審な素振りを見せる。
書店主
皺だらけで肥満体の男。アルティメット・プレス社[3]の刊行物を扱っている。
言動は支離滅裂で意味不明。「私は書店主を殺した」と言っており、彼が友人を殺したともとれるが、書店主の彼はイゴーロナクに殺されており今の彼は書店主に成り代わったイゴーロナクともとれる。
イゴーロナク
邪神。地の底の、煉瓦の壁の奥にいるという。無頭肥満体全裸の人の姿をしており、両掌には口がついている。グラーキの黙示録12巻と、ネクロノミコンに記載がある。
名を呼んだり、書かれたものを読んだとき、姿を現す。そのため、邪な書物を好む人間を探すという手口で罠を張る。目を付けた者には、邪神復活後の世界での栄光をちらつかせて、信徒になることを迫る。拒否した者は喰い殺して成り代わる。
名前の初出は1964年作品『ユゴスの坑』または『継承者』[3]
「グラーキの黙示録」12巻
邪神グラーキの信徒が記した11巻までしか存在しないはずの書物の、12巻。外見はただの古い帳面。
ある男が、夢で啓示を受け取り、マーシー・ヒルの丘で書き上げた。その後いかなる経緯を経てか、古書店に持ち込まれる。

収録[編集]

  • 竹岡啓の私訳(WEB公開)
  • 『ナイトランド 創刊号』トライデント・ハウス、野村芳夫訳、2013年
  • 『グラーキの黙示2』サウザンブックス社、森瀬繚訳、2022年

関連作品[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ a b 2022年邦訳版『グラーキの黙示2』でのタイトル。

出典[編集]

  1. ^ 『グラーキの黙示2』作品解題、328-329ページ。
  2. ^ a b 学研『クトゥルー神話事典第四版』「コールド・プリント」、378ページ。
  3. ^ a b c 『グラーキの黙示2』「コールド・プリント」用語解題、71-74ページ。