HAPSモバイル
![]() 本社が入居する東京ポートシティ竹芝オフィスタワー | |
種類 | 株式会社 |
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市場情報 | Private |
本社所在地 |
![]() 〒1057529 東京都港区海岸一丁目7番1号 東京ポートシティ竹芝オフィスタワー |
設立 | 2017年12月21日 |
業種 | 機械 |
法人番号 | 6010401135751 |
事業内容 | Solar HAPS及びネットワーク機器の研究、開発、製造、運用、管理 |
代表者 | 代表取締役社長 兼 CEO 宮川 潤一 |
資本金 | 120億円 |
純利益 | -64億9600万円(2019年3月期) |
主要株主 |
SoftBank 90% AeroVironment 10% |
外部リンク | https://www.hapsmobile.com/ |
HAPSモバイル株式会社(英: HAPSMobile Inc.)は、東京都港区に本社を置く高高度長時間滞空(HALE:high-altitude long-endurance)無人航空機、高高度擬似衛星(HAPS:High-altitude platform station)を開発する企業である。無人航空機メーカーのAeroVironmentと日本の通信会社ソフトバンクの合弁で設立された。AeroVironmentは2017年12月時点では5%の議決権を保有していたが追加出資で19%まで議決権を増やすオプションを持ち、2019年4月現在では10%の議決権を保有している[1]。
概要[編集]
AeroVironmentはパスファインダープラス、ヘリオスプロトタイプ、グローバルオブザーバー、スイッチブレードといった無人航空機の開発を専門としている。
HAPSモバイルはAeroVironmentの知的財産権を利用し、太陽光発電による動力を用いた高度60,000フィート(約23,000m)以上で飛行するHALEもしくはHAPSを開発し通信に活用することを目指している[2]。
2019年4月気球を使ったインターネット接続サービスを計画しているAlphabet傘下のLoonとの提携と1億2500万ドル(約140億円)出資を発表した。これはLoon側も同条件で出資する権利を持つ[3][4]。この提携によりホールセール事業の協業、地上ゲートウェイの統合、機体管理システムの最適化、HAPSアライアンスの形成などを予定している[5]。
HAWK30[編集]
2019年4月UAV「HAWK30」を用いたHAPS事業の展開が発表された。これは通信基地局としたUAV「HAWK30」を高度20キロメートルの成層圏まで飛行させ、成層圏から直径200キロの範囲に通信を提供する計画である。UAV「HAWK30」は全長約78mで10個のプロペラを備えており成層圏を時速約110kmで8の字旋回や円旋回する。ソーラーパネルと蓄電池を搭載し太陽光発電した電気を動力として1度のフライトで6カ月の連続稼働が可能とされている。機体にはカーボンパイプを用いて軽量化とコストダウンが行われており1機あたりの製造費は「フェラーリ10台分くらい」と紹介されている。ユーザーへのサービスリンクは2.1GHz(Band1)を用いるがWRC-23に向けて450MHz~2.6GHzまで標準化活動を行い、地上からのフィーダリンクはWRC-19に向けて6.5GHz・28GHz/31GHz・47GHzの全世界拡張、21GHz・26GHz・38GHz追加の標準化活動を行っている。この標準化活動にはFacebookやAirbusも参加している。UAV「HAWK30」は太陽光の発電角度の都合上、赤道から緯度±30度まで飛行可能という制約があるため当初は赤道付近の国々を対象に2023年頃のサービス提供開始を予定している。また、バックアップにOneWebのLEO衛星の活用も想定している[5]。
UAV「HAWK30」は日本全体を40機程度でカバーできるが、前述の緯度の制約により「日本上空では日照時間が長い8月の1カ月前後のみ飛行可能」という限られた運用しかできない。通年で利用するため発電能力を向上させ北緯50度まで飛行可能にする次世代機UAV「HAWK50」を計画している[6][7]。また、日本では航空機として扱われるため航空法により型式証明など国土交通省の認証が必要であったり、地上ゲートウェイからUAVまでの通信帯域利用のため総務省との調整や法整備が必要とされている[5]。これらの理由により日本向けは2025年頃のサービス提供開始を予定している。
2019年8月南アフリカ共和国オーツホーンでFacebookが行った成層圏通信プラットフォーム「HAPS」の実証飛行デモンストレーションに参加。Facebookの通信システムを搭載したHAPSを高度4キロメートルで飛行させ、地上のゲートウェイから26GHzおよび38GHz帯の電波を発信してペイロードを経由して地上の端末で電波を受信する実証実験を行った[8]。
2020年2月通信用の成層圏気球で実績があるLoonと共同でHAWK30用の通信機器を開発した。ミリ波を使用する通信システムで機体と地上の通信を確立するだけでなく、HAWK30間の通信機能として最大700kmの距離を最大1Gbpsのデータ通信が可能とされている[9]。
HAPSアライアンス[編集]
2020年2月HAPSの普及と関連技術を開発する企業連合が設立された。参加するのはHAPSMobile、AeroVironment、Loon、Airbus Defence and Space、バーティ・エアテル、中国電信、ドイツテレコム、エリクソン、インテルサット、ノキア、ソフトバンク、テレフォニカの12社[10]。
沿革[編集]
- 1994年後半 - 太陽光電力駆動のパスファインダーがNASAのEnvironmental Research Aircraft and Sensor Technology(ERAST)プロジェクトに採用[11]
- 1995年9月11日 - パスファインダーが高度50,500フィートに到達
- 1998年8月6日 - パスファインダープラスに改修
- 1999年9月8日 - NASA ERASTプログラムによる電池駆動無人航空機ヘリオスプロトタイプ初飛行[12]
- 2001年8月13日 - ヘリオスプロトタイプ高度96,863フィート(約29,500m)に到達
- 2003年6月26日 - ヘリオスプロトタイプが太平洋に墜落[13]
- 2005年5月 - 水素燃料電池駆動のグローバルオブザーバー試作機が試験飛行に成功[14]
- 2007年9月 - グローバルオブザーバーがアメリカ国防総省、アメリカ合衆国国土安全保障省のJCTDプログラムに採用[15]
- 2010年8月5日 - グローバルオブザーバーがバッテリー駆動の初飛行に成功[16]
- 2011年1月11日 - グローバルオブザーバーが水素燃料電池駆動の初飛行に成功[17]
- 2011年4月5日 - グローバルオブザーバーが墜落しJCTDプログラム終了[18]
- 2014年2月6日 - グローバルオブザーバーの海外顧客開発のためロッキード・マーティンと提携[19]
- 2017年12月1日 - AeroVironmentとソフトバンクによりHAPS事業の提携合意[20]
- 2017年12月21日 - HAPSモバイル株式会社設立
- 2019年4月25日 - UAV「HAWK30」を用いたHAPS事業展開およびLoonとの資本提携を発表
- 2019年8月8日 - 「HAWK30」について連邦航空局(FAA)からハワイ州ラナイ島周辺の成層圏空域における無人航空機飛行許可証(COA2、Certificarte of Authorization)を取得[21]
- 2019年8月8日 - Facebookと南アフリカのHAPSの実証飛行[22]
- 2019年9月10日 - NASAのAFSRBからアームストロング飛行研究センター(AFRC)におけるテストフライトの実施に関する承認を取得[23]
- 2019年9月11日 - AFRCでHAWK30の初テストフライトに成功[24]
- 2019年10月23日 - AFRCでHAWK30の2度目のテストフライトに成功[25]
- 2020年2月21日 - HAPSアライアンス設立
出典[編集]
- ^ “SoftBank Backs New High Altitude Pseudo-Satellite Venture”. via satellite (2018年1月4日). 2018年9月10日閲覧。
- ^ “Solar Drones Take a Step Towards Commercial Flight”. The Motley Fool (2018年1月11日). 2018年9月10日閲覧。
- ^ “ソフトバンク子会社、140億円を「気球インターネット」に出資”. forbes (2019年4月26日). 2019年4月28日閲覧。
- ^ “ソフトバンクが無人航空機通信 グーグル系と提携発表”. 日本経済新聞 (2019年4月25日). 2019年4月28日閲覧。
- ^ a b c “ソフトバンク、無人航空機で「成層圏携帯ネットワーク」 Google系企業Loonと提携”. engadget (2019年4月25日). 2019年4月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月28日閲覧。
- ^ “ソフトバンク、成層圏から基地局のように運用できる航空機を開発”. ITmedia Mobile (2019年4月25日). 2019年4月28日閲覧。
- ^ “成層圏から通信を提供、ソフトバンクが基地局になる航空機を開発”. ケータイ Watch (2019年4月25日). 2019年4月28日閲覧。
- ^ “HAPSモバイル、Facebookの南アフリカ実証飛行デモンストレーションに参加”. ITmedia Mobile (2019年8月15日). 2019年8月15日閲覧。
- ^ “HAPSモバイル、成層圏を飛行する無人航空機「HAWK30」に搭載する通信機器を開発”. トラベル Watch (2020年2月6日). 2020年2月6日閲覧。
- ^ “AlphabetのLoonとソフトバンクのHAPSMobileによる成層圏ネットワーク構想に世界的大企業が続々参加”. techcrunch (2020年2月22日). 2020年2月23日閲覧。
- ^ “Pathfinder Solar-Powered Aircraft”. NASA (2012年11月1日). 2018年9月10日閲覧。
- ^ “Helios Prototype”. NASA (2003年1月19日). 2018年9月10日閲覧。
- ^ “Helios Prototype Solar Aircraft Lost In Flight Mishap”. sciencedaily (2013年7月1日). 2018年9月10日閲覧。
- ^ “Aerovironment Global Observer”. PopularScience (2005年11月8日). 2018年9月10日閲覧。
- ^ “AeroVironment Global Observer long endurance UAS completes wing load tests”. new atlas (2010年8月12日). 2018年9月10日閲覧。
- ^ “Global Observer successfully completes first flight”. new atlas (2010年8月17日). 2018年9月10日閲覧。
- ^ “Global Observer, AeroVironment’s Extreme Endurance Unmanned Aircraft System, Achieves Historic First Hydrogen-Powered Flight”. businesswire (2011年1月11日). 2018年9月10日閲覧。
- ^ “Global Observer UAS crashes during flight-testing”. new atlas (2011年4月5日). 2018年9月10日閲覧。
- ^ “AeroVironment teams with Lockheed Martin on Global Observer”. FlightGlobal (2014年2月7日). 2018年9月10日閲覧。
- ^ “NTELLECTUAL PROPERTY LICENSE AGREEMENT”. SEC.gov (2018年1月27日). 2018年9月10日閲覧。
- ^ “HAPSモバイル、ハワイで「HAWK30」の成層圏空域の飛行許可を取得”. ケータイ Watch (2019年8月8日). 2019年8月8日閲覧。
- ^ “HAPSモバイル、南アフリカでFacebookと実証飛行デモを実施”. ケータイ Watch (2019年8月15日). 2019年8月15日閲覧。
- ^ “HAPSモバイル、近日中に「HAWK30」の初テストフライトへ”. ケータイ Watch (2019年9月10日). 2019年9月10日閲覧。
- ^ “HAPSモバイル、通信用無人航空機「HAWK30」の初テストフライトに成功”. トラベル Watch (2019年9月13日). 2019年9月21日閲覧。
- ^ “成層圏通信プラットフォーム向け無人航空機のテストフライト成功”. マイナビニュース (2019年11月8日). 2019年11月8日閲覧。