トレーディングカードアーケードゲーム

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トレーディングカードアーケードゲームの一つである、『Fate/Grand Order Arcade』

トレーディングカードアーケードゲーム(TCAG)とは、トレーディングカードゲームのうち、ゲームセンター等に設置されているアーケードゲームにコインを投入することで払い出されるカードを用いて競技を行うカードゲームの総称。

概略[編集]

トレーディングカードゲームでの対戦を、カードのデータ読み取り機能を持つゲームの筐体に代替させることで、対戦のルール処理を自動化し、さらに映像・音声を付加することで対戦のリアルタイム化や臨場感をより高めている。

「デッキの構築およびルールの理解が難しい」とされがちなトレーディングカードゲームを、盤面上でカードそのものを動かすという直感的なスタイルを用いるなどでハードルを下げている。また、「対戦者が身近に存在しない」という問題を、ゲームセンターという人の集いやすい場で運営し、さらには各店舗間をオンラインで繋ぐなどして解決している。

子供向けに展開されている機種の場合、ゲームの性質上ゲームセンターに設置されることは少なく、玩具店やスーパーマーケットデパート旅館ヘルスセンターなど児童や家族でも入りやすい店舗のコーナーに設置されることが多い。これにより「平日の昼間および18時以降の入店は不可」など、風営法の規制にとらわれなくなる。

子供向け機種の場合、タイトルごとのゲームシステムに差はあるが、全タイトルで「ゲームを1回行うと規定の枚数のカードが得られる」システムが採用されている。これは、ゲーム結果によって払い出される枚数が変動すると、それはプライズゲームとみなされ、カードは「商品」ではなく「景品」となり、内容のわからないトレーディングカードを景品として提供するとJAMMA / AOUのガイドラインに抵触するという理由からである。「商品」として扱われるものであれば、カードの内容がわからなくても問題はない。そのため、これらの筐体は「ゲーム機」ではなく「カードの自動販売機」という扱いになり、カードは必ずゲームの前後に払い出され、一部の機種ではゲームをせずにカードだけ購入することができる。

なお、技術的進歩により、プレイ毎のステータス強化などをカードそのものに絵柄や数値を印字し描き変える技術を採用し、自分だけのオリジナルカードを作れるようになった作品も存在する。

歴史[編集]

トレーディングカードアーケードゲームの誕生[編集]

2002年6月、アーケードゲームとしては初めて、本格的にトレーディングカードを組みこんだサッカーゲーム『WORLD CLUB Champion Football(WCCF)』(セガ)が発売された。従来のトレーディングカードゲームでは実現できない、アーケードならではの動的なシステムが注目を集めた。

その後、WCCFのヒットを皮切りに、多種多様のトレーディングカードアーケードゲームが発売されることになる。オンライン通信対戦機能を兼ね揃えた機種が登場するなど、さまざまな進化を遂げている。これらの隆盛はソーシャルゲームにも引き継がれた[1]。また『拡散性ミリオンアーサー』のプロデューサーの一人である安藤武博は「ここ10年のアーケードゲームや現在携帯電話を席巻中の“カードバトル系ゲーム”の始祖は、セガアーケードゲームである『ダービーオーナーズクラブ』『WORLD CLUB Champion Football』『甲虫王者ムシキング』『三国志大戦』で、これらがなければ市場の様相は変わっていたんじゃないか」と語っている[2]

子供向けのトレーディングカードアーケードゲーム[編集]

2003年1月にはセガより、低年齢層の子供たちを対象としたトレーディングカードアーケードゲームとしては初の、『甲虫王者ムシキング』がリリースされた。「バーコードスキャンでカードのキャラが出現」「ジャンケンをモチーフにした簡単なルール」、「1コインで遊べる手軽さ」、「相手がいない場合でもコンピューター相手に対戦できる」というゲームシステムが功を奏し、低年齢層の子供たちを中心に大ヒットした。

広いスペースを必要とするアーケードゲームとは異なり、「カード払い出し型遊具」などと同程度の大きさの筐体であることが多い。このため、ゲームセンター以外にもスーパーマーケットデパートなど、比較的親子で来店することが多い施設に設置されている。現在では各社より様々なタイプの子供向けトレーディングカードアーケードゲームが発売されており、スーパーマーケット前に並ぶ筐体の前に列を作る親子の姿がたびたび見られる。

主なトレーディングカードアーケードゲーム[編集]

タイトル名(メーカー、稼動開始時期)の順。

アーケード設置型のゲーム[編集]

子供向けのゲーム[編集]

男児向け
女児向け
  • プリティーシリーズ(タカラトミーアーツ、シンソフィア)
  • ディズニー ツムツム(コナミ、2015年3月)専用ストラップ「ツムマスコット」(カプセルトイ)を使用
乳幼児向け
  • いっしょにシリーズ(セガ、2007年
    • いっしょにワンワン
    • いっしょにターボドライブ
    • いっしょにブンブン
  • たまごシリーズ(セガ)
    • えほんのたまご(2009年7月)専用絵本を使用
    • ずかんのたまご(2013年11月)専用ミニ図鑑を使用

サービスが終了したタイトル[編集]


問題点[編集]

トレーディングカードアーケードゲームは、トレーディングカードゲームのように店頭でカードを追加購入することができず、必ずゲームを1度プレイしなければ新たにカードを入手することができないため、短期間でカードを集めることが難しくなっている。 そのため、一部のカードコレクターによる迷惑行為が問題となっている。

店舗による違法行為
何らかの方法で袋を開封する前に中身を探り、筐体に補充する前のカードの山から抜き出して売却する行為(通称「サーチング」)が問題となることがある。抜き出されるカードは高額で取引されるレアカードであることがほとんどで、正規のプレイヤーの手にレアカードが渡らないことが問題に挙げられることがある。
また、インターネットオークションや一部のカードショップで補充前のカードが箱ごと販売されていることがある。基本的にメーカー側は、このような形での販売を認めていないのが普通である。パッケージに盗品等関与罪に抵触する可能性があるという趣旨の警告文を記載しているメーカーもある。
本違法行為に対するメーカー側の対策として、筐体にオンデマンド印刷機を搭載しカードをその場で印刷することで解決したり、紙製カードを廃して専用デジタルカード化するなどの方法が取られている。
「掘り師」による問題
短時間で大量に排出カードを集めることを目的とし、ゲームをゲームセンターが定めた交代制などのルールを守らずに遊ぶプレイヤー(通称「掘り師」)がたびたび現れ、普通にゲームを楽しみたいプレイヤーの妨げになっていることが問題となっている。
ただし、自動販売機型の筐体では、ゲームをせずにカードを購入できるものもある。

稼動終了後の問題[編集]

TCAGではあるタイトルの稼動が終了した場合、ゲーム筐体を使用しないアナログTCGとしての遊び方や副次的な用法が確立されていないタイトルでは集めたカードの使い道は途絶し、プレイヤーが集めていたカードが(個人的な収集やイラストレーターの人気、数量や特別寄稿等の希少性などを除き)全く価値のないものになってしまうにもかかわらず、メーカーからのサポートが全くないという問題がある。また、一部のゲームでは続編においてバランス調整や契約問題のため前作に使用されていたカードの一部が使用できず、ゲーム上で無価値となるカードが発生する場合もある。不人気タイトルは早期撤去されることが多く、この問題に直面しやすいこともあり、これが新規タイトルへのプレイヤー参入を妨げる障壁となっている可能性も指摘されている。さらに、シリーズの終了を公式に発表しないメーカーもあり、ユーザー不在の運営が不評を買う場合もある。

自動販売機型の筐体における諸問題[編集]

子供向けに展開されている機種は前述の通り、自動販売機の扱いを受けるために店舗には販売されず、メーカーから無料で店舗にレンタルされ、カードの売上代金でコストを回収するシステムとなっている。設置に際し店舗側は数十万円単位もする筐体を購入するための大きな投資が必要ないことが、設置台数の多さにつながっている。GMSなどのショッピングセンターや個人営業の店舗など、地元の子供たちが気軽に立ち寄れる身近な場所に置いてあることが多い。

甲虫王者ムシキング』の成功から、子供向けカードゲームのビジネスモデルとして定着した。

しかし、このビジネスモデルには、カードの供給が止まった際、店はゲームの営業が不可能になるという問題がある。法律上では自動販売機の扱いとなるため、カードの供給終了が決まった場合カードのない状態での営業継続は(契約および法律上で)認められておらず、またゲームだけを無料で遊ばせるなどの措置も取れない。

また筐体はレンタルのため、供給終了が決まるとメーカーに回収されることでカードの使い道がなくなり、遊ぶことができなくなってしまう。「終わった商材」であるゲームの家庭用への移植とカードリーダーの販売などの救済措置はメーカーが消極的で、苦情や要望があっても対応はまずされない。 タカラトミー(筐体販売はタイトー)が2006年から2007年末まで女児向けに稼動していた『キラキラ♥アイドル リカちゃん』ではカード単体で楽しめるような工夫がなされていない仕様だったため、カード供給終了が発表された後にファンから悲鳴が上がったこともあり、コンテンツを終息させるときの処置が今後の課題とされる。

脚注[編集]

関連項目[編集]