コンピュータ将棋

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コンピュータ将棋(コンピュータしょうぎ)は、コンピュータによる将棋の対戦、また将棋を指すコンピュータおよびそのプログラムそのものである。

歴史[編集]

黎明期[編集]

将棋は二人零和有限確定完全情報ゲームに分類されるため、将棋を指すプログラムを作る、いわゆるコンピュータ将棋は、人工知能の一分野として開発が進められた。チェスオセロ(リバーシ)などのボードゲームでも同様の開発が進んでおり、日本国内だけの普及にとどまっている将棋はむしろ後発であった。「人間が考えるように考える」という人工知能としての方法論はすぐに行き詰まる。人間の持つ大局観をコンピュータが理解できる情報に落とし込むことが非常に困難であったためである。

コンピュータが得意とする詰将棋については先行例があるが、コンピュータで将棋を指す開発が始まったのは1970年代中ごろと言われている。「人工知能、知識工学の完全情報ゲームへの応用」というテーマでコンピュータによる指将棋システムの開発をしていた、早稲田大学大学院理工学研究科の大学院生であった瀧澤武信(後に早稲田大学政治経済学術院教授、コンピュータ将棋協会会長)をメインプログラマーとするプロジェクトチームによって、1974年11月から開発が進められ、翌1975年5月に完成したものが、おそらくは世界で最初のコンピュータ将棋であり[1]、2010年に情報処理学会が日本将棋連盟に渡した挑戦状にも、この年を起点とした「35年」という開発の歴史の年数が記されている。瀧澤は初期のコンピュータ将棋として自分たちのものの他、大阪大学の奥田育秀、牧野寛、木沢誠らのもの、東京農工大学の小谷善行のもの、を挙げている。瀧澤らの開発の目的は、作家斎藤栄の「江戸時代の天野宗歩が現代の花形棋士(当時の中原誠米長邦雄)と戦ったらどうなるのかコンピュータでシミュレーションしてくれませんか」という依頼に応じることであった。その後、日本情報処理開発協会の催しでも数回実演し、序盤を過ぎると目を覆いたくなるような解説のしようがない手を連発して、解説に来た中原らを困らせた[2]

コンピュータ同士の対戦がおこなわれるようになったのは1980年前後のことである。1979年に早稲田対阪大で対戦がおこなわれ、阪大が勝った。1981年の早稲田対農工大では早稲田が勝利。当時のコンピュータの速度では、対戦が終わるまでに日が暮れるどころか年が暮れるため、竹内郁雄が「コンピュータ、人、人」という順序で2/3は人が指す「ハイブリッド対戦法」が提案された。瀧澤武信と小谷善行(と、おのおののコンピュータ)の間で、1982年から1983年にかけて年をまたいだ対戦が行われた[3]

1980年代に入ると初期のパーソナルコンピュータ(当時はマイコン)が普及し、アスキーマイクロオセロリーグが1980年から行われている。興味の対象は徐々に、より複雑なゲームである将棋に移行し、1980年代中盤には、コンピュータ将棋のゲームソフトが市場に出回り始めた。当時はハードウェアの性能も低く、評価関数も簡単なものであったため、人間に比べて非常に弱いプログラムであった。アマチュアの級位者レベル以下であったことは間違いなく、そのような級位はないが20級程度といわれていた。ファミリーコンピュータでも1985年に内藤九段将棋秘伝が出た。

1980年代後半には、多数のコンピュータ将棋プログラムが誕生しており、ファミコンのゲームソフトとしてもコンピュータ将棋が製品化されるようになった。これが「どのプログラムが最も強いのか」という興味を惹くこととなった。

世界コンピュータ将棋選手権[編集]

将棋ソフトのプログラミングに興味を持つ有志らが集まり、1986年に『コンピュータ将棋プログラム』の会が発足した。翌年、『コンピュータ将棋協会』に改名された。彼らが主体となり、世界コンピュータ将棋選手権が年1回開催されるようになった[4]。記念すべき第1回大会は1990年12月2日将棋会館で行われた。参加ソフト数は6つ、優勝したのは『永世名人』であった。

毎年5月上旬のゴールデンウィーク期間中に開催されており、毎回約40種のプログラムが参加している。

世界コンピュータ将棋選手権の大会ルール[5]によると、対戦は、対戦サーバを介して行うこととされ、対戦サーバが利用できない場合、CSAの規定するシリアル(RS-232)通信プロトコルに則った通信や手入力で対戦が行われる。持ち時間は25分で、これを使い切ると負けとなる。

1995年にアマ初段レベルに達した将棋ソフトは、2年で一段のペースで棋力が上がっていった。そして2005年、『激指』の優勝により、県代表クラスに到達した。

第16回以降の大会では、開催期間中インターネット上で棋譜のライブ中継が行われている。

人間との対局[編集]

公開対局において、2009年までは人間対コンピュータの対局ではコンピュータが負けることが多かったものの、2010年から2012年にかけての公開対局ではコンピュータ側の勝率が9割を超えている[6]。基本的に、コンピュータ将棋は持ち時間が短い対局の方が人間に対して有利である。2011年には、1手30秒などといった早指しなら、米長邦雄によると、プロ棋士に対しても7〜8割以上の勝率をあげるまでになっている。2013年3月30日の第2回将棋電王戦において、ponanza佐藤慎一に勝利した。これは長い持ち時間(各四時間)・公開対局・相手が現役の女流を除いたプロ棋士という条件で初めてコンピュータが人間に勝利した事例となった。

コンピュータ将棋が平手でトッププロ棋士を破る日はさほど遠くないと考えられており、松原仁は2005年の時点で、2010年代から2020年までにプロ棋士がコンピュータ将棋に負けると予測し[7]、2012年現在は「人間に勝つコンピュータ将棋の作り方」[8]によると数年以内にトッププロ棋士に勝つ(複数回対戦し勝ち越す)と予想された。Puella α(ボンクラーズ)開発者の伊藤英紀は第2回将棋電王戦PVでは2012年現在、既にプロ棋士を超えているとコメントした[9]。トップ棋士の一人である渡辺明は、第2回将棋電王戦第3局に登場したツツカナについて触れ、「現役棋士約160人の半分 (80) 、いや3分の1以上 (50) に相当する力がある、という見方をせざるを得ない」との見解を示した[10]

やねうら王の開発者・磯崎元洋は2014年10月31日のブログで「上位のソフトは事前貸出なしの条件であればとっくに羽生さんを超えていることは誰の目にも明らかである。超えているとは言ってもソフト側から見て勝率が50パーセントは超えるだろうという程度の意味で、勝率が90パーセントとか100パーセントとかではないので試合としては成立すると思うが…」「しかし、事前貸出1年間だとか、そういう条件がつくならとんでもない茶番であり、羽生さんがゲーム攻略よろしく将棋ソフトの序盤のあら探しに終始することになる。羽生さんのような優れた頭脳を1年もそんな遊びに投入させるべきではない。それこそ社会的損失である」と述べた[11]

特徴[編集]

詰みの周辺における強さ[編集]

ある局面において『詰み』の有無を判定する作業は、単純な情報処理能力が力を発揮する分野であり、コンピュータは人間をはるかに超える計算力により、容易に詰みを発見することが可能になっている。

コンピュータが得意とする分野であるとも言え、実際に詰将棋プログラムは、対戦プログラムより古く、1968年頃にプログラムで解こうとさせていた、という談話がある[12]

詰みに特化した詰将棋の分野では、大半の局面においてコンピュータはすでにトップ棋士の解図力を上回っている。可能な王手と玉方の応手をすべて検索するコンピュータならではの方法論により、人間を凌駕する実力を備えている。詰将棋の創作にあたって、コンピュータを使用して作品の完全性を検証することは、すでに常識となっている[13]

2013年現在において手数が最長の詰将棋である「ミクロコスモス」すら、解答に成功したプログラム(通常の対戦用のプログラムとは異なり、詰将棋専用の探索ルーチンから成るもの)が報告されている(ミクロコスモス (将棋)#ミクロコスモスと脊尾詰を参照)。

また、対戦用ソフトウェアではない、独自プログラムによる創作の試行も行われている[14]

中盤の強さ[編集]

第3回電王戦に出場した豊島将之はコンピュータ対策について「1000局とはいかないが3ケタは練習対局をした」「何度も逆転負けをする中で、序盤の長い将棋や中盤を省略する激しい将棋に勝ち目があると思った」と述べている[15]。第3回電王戦を観戦していた遠山雄亮は「豊島さんはコンピュータの中盤の強さを警戒していました。少しぐらい優位に立っても中盤の難解な局面が続くと簡単に逆転されると。だから、コンピュータに勝つには、序盤の長い将棋にして、中盤に入る時点で大きなリードを奪ってしまうか、逆に中盤のない展開にして一気に終盤で勝負するのがいいと思っているようです。本局は意識して中盤のない展開を狙っているように見えますね。」とコメントした[16]。また、産経新聞も電王戦FINALを総括した記事において「1秒間に数百万〜1000万手以上を読むコンピューター相手では、互角に終盤の寄せ合いに突入したらまず勝ち目はない。中盤も、棋士側が手筋や定跡通りに指していてもコンピューターは正確無比でミスはしない。過去2回の経験からプロ側は『序盤で過激に鬼手を連発し、中盤を飛ばして一気に終盤に持ち込む』作戦が有効と結論づけた」と報じた[17]

ミスの少なさ[編集]

人間同士の対局では、ミスにより、局面に差がつくケースが多々あり、特に乱戦になると、人間はミスする確率が上がるが、コンピュータは人間よりもミスをしないため、乱戦になった場合はコンピュータの方が有利になると遠山雄亮が2011年に将棋倶楽部24でのボンクラーズとの対局を分析し、コメントしている。また、感情面で動揺したり、集中力が切れたりしないのも強さであるとしている[18]。人間の注意力には限界があり、どんなに注意深い慎重な人であっても、疲労錯覚などでヒューマンエラーを起こす場合がある[19]。一方、コンピュータは人間と違い肉体的な疲労がない[注釈 1]。そのため、持ち時間の長い将棋で終盤になると、疲労しないコンピュータが相対的に有利になる。また、コンピュータは人間と違い、プログラムにバグがない限りは二歩や二手指し等の反則行為は皆無である。バグの例としては、2015年の電王戦FINAL第2局において、「Selene」が角成らずの手を正しく認識できず、王手放置の反則負けをしたという事例がある[21]

入玉模様の弱さ[編集]

2012年現在、プロ棋士の対戦データを元に教師あり学習をしているが、プロ棋士の対局ではほとんど見られない入玉模様になると、駒の配置に関する評価値が0に近い値になる。さらに相入玉になった場合は、駒の点数を計算して勝ちを狙うという、相手玉を詰ます以外の目標が生まれるのだが、これを判断できず適切に指せない状態になることが多い。自己対戦など、強化学習の研究も進められているが、まだ教師あり学習を超えるレベルにはなっていない。

序盤の弱さ[編集]

プロ棋士が積み上げてきた定跡は完璧ではなく、研究会や対局、感想戦を経て日々進歩しているものであり、棋譜以外の情報は将棋世界などの専門誌を通じ極一部紹介される程度で多くは公開されることはない。ソフトはその限られた情報を元に序盤戦術を構築している。また、データベースにない新手を指されると(それが正しく受ければ不利になるものであっても)対応しきれないことが多い。序盤は定跡データベースを利用しているが、「なぜそのような駒組みにするのか」を理解して指すわけではない。そのため、2011年現在、定跡データベースから外れた場合に、おかしな手をさす確率が終盤よりも高く、また、まだ攻め始めてはいけないタイミングで攻め始めてしまうことがあると遠山雄亮が分析している[18]。古作登も2012年現在、均衡状態でコンピュータの手待ちをすると、コンピュータがスキを作っておかしな攻め方を始めたり、穴熊に組み替えようとしてその途中でスキを作ったりすることがあると指摘した[22]。近年ではponanzaのように、序盤を既存の定跡データに頼らないソフトも出現している[23]

駒落ち戦の弱さ[編集]

序盤の定跡データベースは平手戦に特化しており、プロ棋士の公式戦で指されなくなった駒落ち戦をコンピュータは苦手としている。駒落ち特有の大局観を持ち合わせていないコンピュータは二枚落ちの上手を持っても穴熊に囲って自滅してしまうことがある[24]。また、プロはアマチュア相手に駒落ちでの指導対局を行うが、コンピュータはうまく手抜きをして負けてあげるなどの指導対局ができない。

全幅探索の強さ[編集]

コンピュータで全幅探索をしている場合、途中局面の善し悪しではなく最終的にどうなるかで全てのパターンを読むので、一見ひどい手のため人間は検討対象に加えないが、実は良い手を見落とさないという長所がある。人間の場合、全てのパターンを読むのではなく直観大局観を使って筋の良い手・悪い手を判別、検討対象を絞っているため、見落としをすることがある。

アンチコンピュータ戦略[編集]

「稲庭将棋」というソフトウェアは対コンピュータ将棋に特化した作戦を行う。これは、基本的には自陣の歩を動かさず、守備に駒を配置したあとはひたすら手待ちして相手の時間切れを目指す戦法である[25]。人間にとっては簡単に打開できる駒組みでも、コンピュータにとっては読む手順が難しい穴となっていることによる。世界コンピュータ将棋選手権は時間切れ負けで秒読みが無いため、有力な戦法となった。2010年の第20回世界コンピュータ将棋選手権での「独創賞」は、新しい技術や工夫、面白い趣向を凝らして選手権を盛り上げたプログラムとして、丸山スペシャルをさらに進化させて実装し、コンピュータ将棋の弱点をあらわにした「稲庭将棋」が選出された[26]

第2回将棋電王戦開催記念イベント「ニコニコ本社(原宿)で誰でもGPS将棋に挑戦! 勝てたら賞金100万円!!」で、ponanza開発者の山本一成が前述の稲庭将棋の戦術を使ってGPS将棋の無理攻めを誘う作戦(山本曰く「400手以上攻めないで待ってると、無理に攻めてくるバグを見つけた」[27])を取ろうとした。あまりにも時間がかかり、順番待ちの人が対局できなくなるために、明文化はされていなかったが、勝又清和の裁定によって引き分けとなった。

その他、通常あり得ない手を指すことにより、考察する分岐を省いて計算するコンピュータにバグのような挙動をさせることができる。基本的に同じ挙動をするコンピュータでは、相手に応じて指し手を変化させることのできる人間には不利になってしまう戦法である。

第2回将棋電王戦第5局の総括インタビューで三浦弘行は「事前の研究で、GPSの弱点には気づきませんでしたか?」と質問されて「明らかな癖などは見つかりませんでした。でも逆に、それでよかったと思っています。もし見つかっていれば、そこを衝くべきかどうか思い悩んだでしょうから。弱点を衝いて勝ったとしても、それで勝ったといえるのかというところがありますので。ただ団体戦だから、本当はやりたくなくてもそうすべきだという考え方もありますし・・・難しいところです」と答えている[28]

高見泰地は「(自分が電王戦の対局者だったらどうするかとの問いに)まず貸し出されたソフトで本番と同じ環境・時間設定にして同じ作戦を試して、どのくらいの確率で使えるのか、もちろん研究はしますね。ただ使えたとしても、やはり『ハメ手』ではあるので、今回のような一発勝負のイベント対局ではいいと思うんですが、電王戦では(プロとしての)自尊心の問題も出てくると思います。難しいですね」と答えている[29]

電王戦FINALの第二局において永瀬拓矢Seleneに対し「2七角不成」という通常あり得ない手を指した[30]。ソフトウェアは角、飛、歩が成らない局面を省くことで探索効率を上げており、こういった手を指し、ソフトウェアに一から計算させることで持ち時間を使わせることができる。この対局の場合はSeleneに角不成を認識できないバグがあり、王手放置によって反則負けとなった[注釈 2]。この時、開発者は事前にバグを察知できていなかった。

電王戦FINALの第5局において阿久津主税があえて自陣に隙を作ることでコンピュータの「2八角」を誘い[31]AWAKEに勝利した(開発者による投了)[32]。この戦法は、ponanza対策として以前から知られていた戦法の一つであり、コンピュータ将棋が短期的には有利と評価されても、長手数後に不利になることを読めない(計算コストの問題からその前に探索を打ち切る)ことに基づくコンピュータ将棋共通の弱点(水平線効果)を突いたものである[33]。対局前に弱点は明らかになっていたが、プログラムの修正は認められていなかった。

人間との対局の歴史[編集]

〜2004年[編集]

コンピュータ将棋の黎明期には、当時のコンピュータの性能もあり、コンピュータがプロ棋士のレベルに達するのは、当分先のことだと思われていた。チェスソフトのノウハウを応用して最初に将棋ソフトが作られた時代は、アマチュアの初級者にすら負けるようなひどい有様であった。しかし、1990年代に入ると、技術の急速な進歩により、ソフトの棋力が大きく上昇した。また、ハード(CPUメモリ)の進歩などもあり、「金沢将棋」などのトップレベルのプログラムは、1994年から1996年の間に、アマチュア初段に達したとされる。1997年になると、コンピュータチェス「Deep Blue」が人間のチャンピオンであるガルリ・カスパロフを破った。しかし、その頃のコンピュータ将棋は、アマチュア二段程度であった[34]

1996年、「コンピュータがプロを負かす日は? 来るとしたらいつ」というアンケートがあった。

米長邦雄「永遠になし」、行方尚史「たぶんこないと思うけど、みなさん頑張って下さい」、加藤一二三「こないでしょう」、大内延介「当分こない」、深浦康市「こない」、淡路仁茂「私が生きている間はない」、中村修「トップは負けないと思う」、村山聖「こない」、阿部隆「こない日を祈っている」、畠山鎮「こない」、佐藤秀司「そういうことになったらプロは要らなくなるので、こないように祈るしかない」、真田圭一「100年は負けない」、高橋道雄「?」、勝又清和「否定」、中井広恵「こない」、石橋幸緒「こない」、矢内理絵子「こないと思う」

羽生善治「2015年」、森内俊之「2010年」、三浦弘行「分からない」、屋敷伸之「来る。ただトップには勝てない」、桐谷広人「来る。10年後」、久保利明「来世紀」、中原誠「だいぶ先とは思いますがくるはずです」、森下卓「いつかは来ると思う」、田中寅彦「思います。私が生きているうち」、内藤国雄「10年以内にくるような気がする」、井上慶太「10年ではこないと思う。」、先崎学「10年後」、青野照市「プロの仲間入りはできても、トップは負かせない」、塚田泰明「希望としては、自分が現役の内に」、田村康介「自分は負けない(他人は?)」、郷田真隆「いつかはくる。ただし人間を超えることはできないと思う」、東和男「七冠王がプログラミングする日」、桐山清澄「20年後」、南芳一「40年ぐらい先」、神吉宏充「5年ぐらい先か。最初に私が負けてやる」、真部一男「プロにも色々あるが、トップを負かすとなると百年くらい先か」、剱持松二「プロ棋士がプログラムを組めるようになった時」、伊藤能「僕くらいのレベルなら近いのではないか」、斎田晴子「10年後」、千葉涼子「50年後」谷川浩司(1962年生)「私が引退してからの話でしょう」との回答だった。

田丸昇佐藤康光清水市代は「無回答」だった[35][36]

羽生善治の「2015年」という予想は後に「う~ん、いやぁ、アンケートを書いたときも、別に深く考えずに適当に書いただけなんで・・・・・・(苦笑)」インタビュアー「適当、ですか?」 「ハハッハハッ。いや、ただ、コンピュータそのものの進歩と比例して、必ず強くなる日が来ると思ってはいましたが・・・・・・」と真意を答えている[37]

羽生善治は「将棋がコンピュータによって完全解明されてしまったらどうするか」という質問に「そのときは桂馬が横に飛ぶとかルールを少しだけ変えればいいんです」と答えた[38]。ただし、ルールを変えてもコンピュータは進歩し続けるので、いずれは対応されてしまうという問題がある。コンピュータが人間を超えたチェスにおいて、新ルールの「アリマア」というゲームが考案されたが、2015年にコンピュータプログラム「Sharp」が7勝2敗で人間を破っている[39]

2001年7月YSS将棋倶楽部24に参戦、12勝5敗の成績でレーティング1870?を記録。

2003年6月YSSが将棋倶楽部24に参戦、39勝13敗の成績でレーティング2077を記録。

2004年5月YSSが将棋倶楽部24に参戦、41勝11敗の成績でレーティング2324を記録[40]

2005年[編集]

2005年には、コンピュータ将棋選手権でのエキシビション対局において、同大会の優勝ソフト『激指』が、プロ棋士の勝又清和角落ちで勝利した[41]。また、2005年6月の第18回アマチュア竜王戦において招待選手として出場した『激指』は、都道府県代表を相手に3連勝し決勝トーナメント進出・ベスト16入りを果たした[42]

2005年5月YSSが将棋倶楽部24に参戦、37勝15敗の成績でレーティング2463を記録[43]

2005年6月2日にBonanza ver.1.0が公開。将棋倶楽部24でのレーティングは約2400[44]。(Pentium4 2GHz,1手 18秒)

2005年9月18日、イベントでTACOS橋本崇載平手の対局を行った。結果は橋本の勝利となったが、TACOS に敗北寸前まで追い詰められた[45]。「プロ対ソフト」をビジネスチャンスと捕らえていた日本将棋連盟の理事会は、全棋士に無断でコンピュータと公開対局を行うことを禁止する通達を出した[46]

2005年10月、将棋世界の企画で激指渡辺明角落ちの持ち時間各40分、時間切れ後は1手40秒で対戦し、渡辺明が勝った。 同じ条件で激指と木村一基が対戦し、木村一基が負けた。激指が使用したコンピュータは(Pentium4 2.8GHz)

2005年10月23日、第3回国際将棋フォーラムにて、YSS森内俊之角落ちの1手30秒で対戦し、森内が勝った。

2006年〜2009年[編集]

2006年以降、コンピュータとの公開対局は、平手で行われるようになった[41]

2006年3月〜5月に、週刊将棋の連載で、第1回週刊将棋アマCOM平手戦が行われた。そこでは、アマ強豪5名と2回ずつ合計10回対戦し、コンピュータ側の7勝3敗であった。コンピュータ側は、激指KCC将棋IS将棋YSSBonanza。持ち時間は1回目が60分(秒読み60秒)、2回目が20分(秒読み30秒)。

2006年9月YSSが将棋倶楽部24に参戦、17勝11敗の成績でレーティング2508を記録[47]

2007年3月21日には、Bonanzaとタイトルホルダーである渡辺明竜王)との公開対局(平手)が行われた(Bonanza#竜王との対局参照)。

Bonanzaの使用したコンピュータはIntel Xeon X5355 2.66GHz×8cores、メモリ8GB、1秒間に400万手読む性能。ソフトは当時公開されていたver.2.1の探索手数を大幅に増やし、戦法の選択を改善するなどチューニングをほどこしたもの。 将棋倶楽部24でのレーティングは2800。

Bonanzaはタイトル保持者相手に健闘し、終盤の読み違いがきっかけとなって敗れはしたものの、対局者の渡辺をはじめとする複数のプロから、プロ予備軍である奨励会の初段から三段の実力に相当するとの高い評価を受けた。これ以降、6年間、男子現役プロ棋士との公開対局が行われなくなり、この次は2013年3月の第2回電王戦であった。

2007年5月YSSが将棋倶楽部24に参戦、41勝11敗の成績でレーティング2744を記録[48]

2008年5月5日に行われた第18回世界コンピュータ将棋選手権のエキシビションマッチにおいて、優勝ソフトの激指がアマ名人の清水上徹を、準優勝ソフトの棚瀬将棋が朝日アマ名人の加藤幸男をそれぞれ破るという快挙を成し遂げた。この対局に対し、敗れた清水上と加藤はそれぞれ、「コンピュータの読みが上回った」「完敗だった」とコメントした[49]。2008年11月8日に行われた清水上、加藤と激指、棚瀬将棋との持ち時間60分、その後1手60秒の再戦では、加藤が勝利して雪辱を果たしたものの、清水上はまたも敗北を喫した[50]。公式対局でプロ相手に何度も勝利を上げているトップアマの二人の敗戦はプロにとっても衝撃であり、渡辺明[51]、遠山雄亮[52]片上大輔[53]らのプロ棋士がブログにその驚きを綴った。

2010年[編集]

2010年2月6日、週刊将棋の編集者で元奨励会三段の古作登が激指と持ち時間20分の公開対局を行い、コンピュータが勝利した。

2010年4月2日、情報処理学会は、会長の白鳥則郎東北大学客員教授)名義にて「35年の開発の末名人に伍する力ありと情報処理学会が認める迄に強いコンピューター将棋を完成致しました」と宣言し、日本将棋連盟に挑戦状を渡した。将棋連盟はこれに対し、会長の米長邦雄名義で「その度胸と不遜な態度に感服した」として挑戦状を受理した。最初の対戦相手として女流の清水市代(対局決定時女流王位・女流王将の二冠)を指名した[54][55]

2010年5月〜7月に、第2回週刊将棋アマCOM平手戦が週刊将棋の連載として開催された。対戦相手は東京大学将棋部5名。それぞれ2回、合計10回対戦が行われ、棚瀬将棋が1敗して、コンピュータ側の9勝1敗であった。参加したコンピュータは、激指Bonanza Feliz・YSS棚瀬将棋GPS将棋。持ち時間は1回目が30分(秒読み60秒)、2回目が10分(秒読み30秒)。

2010年7月23日に、激指 定跡道場2 優勝記念版 発売、(2010年世界コンピュータ将棋選手権で優勝した激指の思考ルーチン搭載)謳い文句に強さはネット将棋でレーティング3000点台(プロ級)と記載。

2010年8月23日に、清水市代との対局の詳細が発表され、持ち時間はチェスクロック使用による3時間(1分未満の考慮時間も計測される)、使い切ったあとは1手1分というマイナビ女子オープン五番勝負と同様の条件となった。また、コンピュータ側のハードウェアはクラスタなし(Intel Xeon W3680 3.33GHz 6コア)を中心に、GPS将棋が提供した東京大学のクラスタマシン(Intel Xeon 2.80GHz 4コア:109台・Intel Xeon 2.40GHz 4コア:60台・合計169台 676コア)を併用する形で、ソフトウェアは「激指」「GPS将棋」「Bonanza」「YSS」の4種類のソフトが電気通信大学伊藤研究室の開発するマネージャの管制の下で多数決を行う合議制がそれぞれ採用された。このシステムは、10の224乗という、将棋の全局面数10の226乗に近い数を示す語をとって、「あから2010」と名付けられた。

合議制の重み付けは以下の通り。クラスタなしが合計7.7、クラスタありが合計1.3とクラスタなしを優先している。

  • クラスタなし - Intel Xeon W3680 3.33GHz 6コア
    • 激指 - 2.9
    • Bonanza - 1.9
    • GPS将棋 - 1.0
    • YSS - 1.9
  • クラスタあり - Intel Xeon 4コア、合計169台、676コア
    • 激指 - 0.1
    • Bonanza - 0.1
    • GPS将棋 - 1.0
    • YSS - 0.1

清水市代とあから2010の対局は2010年10月11日に東京大学工学部で指され、86手で後手のあから2010が勝利した。あから2010の駒を動かすアシスタントは上村亘(当時三段)が務めた。

2011年〜2012年[編集]

2011年5月16日、ponanza将棋倶楽部24で92勝8敗の成績でレーティング3110を記録。最後に「謎の棋士」と呼ばれる人と2局対局を行い1勝1敗であった[56]

2011年11月8日〜翌年2012年1月12日にかけてボンクラーズが将棋倶楽部24に参戦、2406勝134敗79分の成績でレーティング3364を記録。

2013年[編集]

2013年5月6日〜5月12日にかけてponanzaが将棋倶楽部24に参戦、88勝4敗の成績で過去最高記録のレーティング3453を記録。

将棋電王戦[編集]

清水市代とコンピュータソフトのあから2010が対局し、あから2010が勝利したことを受け、日本将棋連盟会長(当時)米長邦雄が「引退棋士の代表」としてコンピュータ将棋と対局。また、同時に定期的にプロ棋士とコンピュータソフトが対局する「電王戦」が開催されることが発表された。

2012年1月14日に行われた第1回将棋電王戦では、米長とボンクラーズの本対局が将棋会館で行なわれ、113手で先手のボンクラーズが勝利した[57][58]

2013年の3月から4月にかけて行われた第2回将棋電王戦はプロ棋士5名と2012年世界コンピュータ将棋選手権の上位5ソフトとの団体戦として行われ、プロ棋士側の1勝3敗1分(持将棋)に終わった。第2局では正式ルールで行われた現役のプロ棋士戦で初めてコンピュータが勝利した[59]

2014年の3月から4月にかけて行われた第3回将棋電王戦は、プロ棋士5名と2013年の第1回将棋電王トーナメントの上位5ソフトとの団体戦として行われ、プロ棋士側の1勝4敗に終わった。

2015年の3月から4月にかけて行われた将棋電王戦FINALは、プロ棋士5名と2014年の第2回将棋電王トーナメントの上位5ソフトとの団体戦として行われ、プロ棋士側が3勝2敗と初めて勝ち越した。

代表的なソフトウェア[編集]

コンピュータ将棋のプログラミング技術[編集]

評価関数[編集]

将棋はお互いが1手ずつ指すゲームのため、局面の評価が必要で、局面の有利不利に序列をつけるための評価関数が必要である。序列をつけるだけでなく、通常は評価関数は局面を実数化(高速化のために整数化)する関数を使う。探索では、評価関数を利用し、数手先の変化を読み、相手が最善を尽くしてきたときに、もっとも自分が有利になる手を探す。ここでいう「有利」は、相手の玉を詰ませられる、駒得になるなど、数値化できる基準で評価する。評価関数の作り方と何手先までを探索の対象とするかでコンピュータ将棋の強さが決まってくる。駒の損得を中心に、玉形や駒の働きなどを評価対象としているものが多い。

機械学習[編集]

かつては、手作業で評価関数が作られていたが、Bonanzaの開発者保木邦仁は将棋の初心者であり自分で設定できなかったため、機械学習によって評価関数を作成した。これによりこれまでの他のソフトが見落としていた(あるいは開発者が軽視していた)指し手に高い評価を与えることが可能となった。この「評価関数のパラメータの自動生成」は「ボナンザ・メソッド」と呼ばれ、コンピュータ将棋史上最大のブレイクスルーの一つと見なされている。

2009年に開催された第19回世界コンピュータ将棋選手権では、決勝に進出した8ソフトの内、シードの激指YSSを除く6ソフトが「ボナンザ・メソッド」を採用した。この結果、激指は2勝5敗、YSSは1勝6敗と惨敗し、翌年の選手権では「ボナンザ・メソッド」を採用。以降、「ボナンザ・メソッド」不採用の決勝進出ソフトは存在しない。

機械学習には、過去のプロ棋士の対戦棋譜からの教師あり学習と自己対戦による強化学習がありえるが、今のところ、教師あり学習の方が強いという状況にある。教師あり学習の場合、プロ棋士の手を再現するというのが機械学習のテーマとなる。ミスの少なさ、読み手数の長さでプロ棋士を超えようとしている。教師あり学習の欠点として、入玉模様など過去のプロ棋士の対戦棋譜にあまり出てこないパターンが弱くなるという問題がある。

三駒の組み合わせ[編集]

王を1つ以上含む三駒の組み合わせおよび位置関係から評価関数を作る方法。Bonanzaは2009年のVer. 4から採用している。YSSは王からの相対座標で三駒の組み合わせを計算している。また、4駒での組み合わせで計算しているソフトもある。

探索[編集]

枝刈り[編集]

将棋の場合、平均着手可能手数は80通りもあるので、n手先までの局面数は80^nという膨大な数になる。これを全て計算すると限られた時間内では深く先読みすることはできなくなる。そこで、実際に計算する局面数を少なくし、深く読めるようにすることを枝刈りと呼ぶ。

枝刈りには全局面を評価した場合の結果と正確に同じ値を返す枝刈りと、少し誤差を含む結果を返すことを許容することでより多くの枝刈りを行うものの2種類がある。前者を後ろ向き枝刈り、後者を前向き枝刈りと呼ぶこともある。

全幅探索[編集]

ある局面下で指すことが可能な手をしらみつぶしに読む手法(力まかせ探索)。探索法としてはもっとも原始的でプログラミングも他と比べると単純だが、CPUに負荷がかかるため効率は悪いと考えられていた。しかしBonanzaの開発者である保木邦仁によれば、選択的な探索は選択を行う処理が複雑になるため、全幅探索よりも負荷がかかるとして全幅探索をBonanzaに採用している[60]

ミニマックス法[編集]

ミニマックス法はチェス、将棋、オセロ、チェッカー等の完全情報ゲームで次の手を決めるための基本アルゴリズム。数手先まで読み、その時点で評価関数により局面に点数(手番の方がプラス)をつけ、手番の方は評価値が最大の手を、手番ではない方は評価値が最小の手を選ぶとして、次の着手を選択する。局面の分岐数をN、先読みする深さをLとすると、評価が必要な局面数はN^Lとなる。

αβ探索[編集]

基本的にミニマックス法と同じだが、再帰的に局面の評価を行う関数を呼ぶときに、その時に判明している評価値の下限値(これをα値と呼ぶ)と上限値(これをβ値と呼ぶ)を引数として渡し、その範囲外を計算することは無駄なので、ミニマックス評価に於いて途中で得られた値がα値β値の範囲外の場合は評価を打ち切るアルゴリズム。ミニマックス評価で評価する局面数は N^L だが、αβ探索ではおよそ N^(L/2) となる。

実現確率探索[編集]

激指などが採用している手法。探索時に、過去の対局データから、次の一手の実現確率を求め、実現確率の高い方をより深く探索する。激指は実現確率の計算に2004年ロジスティック回帰を採用した。

クラスタリング[編集]

かつてはマシンを疎結合クラスタリングしても強くならず、あから2010の時は疎結合クラスタリング無しの重み付けを大きくしたが、2011年ボンクラーズが6台クラスタリングで優勝し、2012年は797台のGPS将棋が優勝した。ボンクラーズを開発した伊藤英紀は、もしボンクラーズが700台つかえるのであれば、レーティングが200-300程度上がるという見解を示している[61]。レーティング差が200-300だと、期待勝率は(レーティングが高い方から見て)75-85パーセント程度となる。第2回 将棋電王戦第5局を振り返り、三浦弘行は、670台のGPS将棋に対して「私の勝算は5パーセントしかなかったんです」と語った[62]。勝算が5%だとレーティング差500程度になる。

合議制[編集]

2010年以降からは、複数の思考エンジン間の合議(多数決)によって指し手を決める手法が研究されている。2009年に行なわれた第19回世界コンピュータ将棋選手権では、複数のBonanza[63]を搭載した「文殊」が3位という好成績を収めた[64]

水平線効果[編集]

水平線効果とは、読みの深さの限界により、手の選択肢の中で、のちに極端に不利となる手を選んでしまうこと。もしくは、小さな損を繰り返すことで、大きな損をする状態を先延ばしにし、本来よりももっと不利になってしまうこと。この問題は現在でも解決されたとは言えないが、ある程度深い読みが可能になったことにより、致命的な水平線効果は現れることはほとんど無くなった。

プログラマーツール[編集]

将棋所[編集]

将棋所は、将棋を指すためにプログラムを呼び出し、盤上に着手を表示するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)である[65]。将棋所は2007年に作成された。将棋所はユニバーサル将棋インタフェース(USI)を使用する。USIは、将棋プログラムがユーザインタフェースと通信するのに用いるオープンコミュニケーションプロトコルである。USIはノルウェーのコンピュータチェスプログラマーTord Romstadによって2007年に設計された。Tord RomstadはUSIをユニバーサルチェスインタフェース(UCI)に基づき設計した。UCIはコンピュータチェスプログラマーStefan Meyer-Kahlenによって2000年に設計された。将棋所は、2つのプログラム間の対局を自動的に実行できる。これによって、プログラマーはインタフェース部分を書く必要がなく、より速く開発することができる。また、プログラムの変更をテストするのにも有用である。将棋所は将棋エンジンを加えることで将棋を指すために使うことができる。将棋所で動かすことのできるエンジンとしては、Blunder、GPS将棋、Laramie、Lightning、ponanza、Spear、Ssp、TJ将棋がある。Bonanzaもアダプター(u2b)を用いることで動かすことができる。

WinBoard/XBoard・BCM Shogi[編集]

WinBoard/XBoardおよびBCM Shogiも将棋をサポートするGUIである。WinBoardでは2007年にH.G. Mullerによって将棋がサポートされた。WinBoardはエンジンと通信するために独自のプロトコル(チェスエンジンコミュニケーションプロトコル)を使用するが、UCI2WBアダプターを介してUSIエンジンと接続できる。WinBoardプロトコルをネイティブサポートするエンジンは、Shokidoki、TJ将棋、GNU Shogi、Bonanzaである[66]。将棋所とは異なり、WinBoardはオープンソースであり、LinuxではXBoardとして利用可能である。BCM Shogi[67]は、USIプロトコルとWinBoard将棋プロトコルのためのグラフィカルユーザインタフェースである。

中将棋大将棋といった多くの将棋類は、Winboardのフォークされたバージョンを用いることでAiと対戦することができる。Shogidokiでは持ち駒ルールのある5五将棋(ミニ将棋)を指すことができる。Hachuでは5五将棋、禽将棋小将棋、中将棋、大将棋を指すことができる[68]

Floodgate[編集]

Floodgateはコンピュータのための自動対戦サーバである[69]。将棋所で動作するプログラムはFloodgateに接続することができる。GPSチームがFloodgateを作成した。Floodgateは2008年から継続的に運営されている。2008年から2010年の間、167のプレーヤーが2万8千局をFloodgate上で対戦した。人間もFloodgateで対局することができる。持ち時間は15分切れ負けである。

その他[編集]

コンピュータチェスとの比較[編集]

初期のコンピュータ将棋はコンピュータチェスの理論をもとに開発されたものが多い[70]。チェスと比較した場合、持ち駒という特性から指し手の選択肢があるため、より計算量が増えることになる。一方でコンピュータチェスの開発は歴史が長く、計算理論に関する論文やプログラミング時のテクニックが蓄積されていることやオープンなソースコードも多いため、将棋と共通する部分が開発時の参考にされている。

1997年にはチェスの世界チャンピオン(当時)ガルリ・カスパロフIBMの開発したディープ・ブルーに1勝2敗3引き分けで敗北し、将棋界にも大きな衝撃を与えたが、持ち駒による全局面数の多さ[71]があることなどから、2000年代前半までは現役トップレベルには達していないと見なされる事が多かった。

2003年には汎用コンピュータと一般人が購入できるソフトが、ディープ・ブルーの様な専用機に匹敵する性能を持った。2009年8月には、スマートフォンに搭載された「Pocket Fritz 4」がグランドマスター級の評価が与えられた。

コンピュータチェスにおいてもアンチコンピュータ戦略が考案されており、2008年にはヒカル・ナカムラ(世界ランク46位、レイティング2670)とRybka(Ver3、レイティングは3000前後)の対局では、ナカムラが攻めずに手待ちを続けることでRybkaに自身が優勢と誤判定させ、無理な攻めを始めた際に隙を突いて勝利している。この対局は271ムーブ(将棋式では542手)の長期戦となった。

将棋では2000年代後半に入りトップアマが敗れ、2010年代にはトップ女流棋士の清水市代、元トップ棋士だった米長邦雄、さらには現役プロ棋士にそれぞれ勝利し、2014年の第3回将棋電王戦では、ハードウェアを市販のパソコン1台に限定されたソフトが現役プロ棋士5人に4勝1敗で勝ち越すなど、平手でも敗北・負け越しする例が出ている。

ソフト指し問題[編集]

将棋ソフトのレベルが上がった結果、ヒント機能や検討モード、対局機能などを使ってネット将棋を指すユーザーが少なからず出てきている。ネット将棋大手の将棋倶楽部24では(公認を除き)他の善良な会員の皆様に種々の迷惑がかかるとして、2008年に「24ソフト指し取締委員会」を設置。将棋ソフトの指し手との一致率を基準として「ソフト指し」を認定し、不良利用者アカウントの削除などを行っている[72]

逆に81dojoではソフト指し専用アカウントを作成し名前を指定されたもの(「COM_(任意の文字列)」)にすれば、公認が無くてもソフトの思考結果を用いて指せる。ただし、名前が「COM_」がついてない場合は81dojoでも不正行為者とみなされる[73]

同様のことはチェスでも問題になっており、グルジアグランドマスター(チェスの最高位)であるガイオズ・ニガリジェポーランド語版アラブ首長国連邦での対局中にトイレに立ってトイレットペーパーの中に隠してあったスマートフォンで分析する不正をしたことが報じられている[74]

プロ棋士の場合、現時点でソフトによるカンニングの事例はない。また、防止策としてタイトル戦などで自主的にスマートフォンなどを提出することはあるが、強制力はなく、発覚した場合の処分は不明である。

脚注[編集]

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  1. ^ 将棋世界2007年7月号より。また、開発に至った経緯およびその詳細は同号を参照のこと。
  2. ^ 共立出版 bit別冊『ゲームプログラミング』pp. 45〜46
  3. ^ 共立出版 bit別冊『ゲームプログラミング』p. 46
  4. ^ 将棋世界2007年7月号より。
  5. ^ コンピュータ将棋協会参照。各回ごとにルールが定められ、公開されている。
  6. ^ コンピュータ将棋対人間 対戦記録
  7. ^ コンピュータ将棋の専門家である公立はこだて未来大学松原仁はそれ(将棋のチャンピオンにコンピュータ将棋が勝つこと)を2015年と予想している(情報処理2005年7月号より)。また、コンピュータ将棋協会会長の瀧澤武信もそれを10〜20年後と予想している(将棋世界2007年7月号より)。
  8. ^ 瀧澤, 2012.
  9. ^ 第2回将棋電王戦PV ‐ ニコニコ動画
  10. ^ 将棋ソフトにプロ棋士が連敗、渡辺竜王「現役棋士の3分の1以上に相当する力がある」
  11. ^ 磯崎元洋 (2014年10月31日). “やねうら王開発実況用スレッド その3”. ノーゲーム・ノーライフ. 2015年5月25日閲覧。
  12. ^ 棚瀬 寧「コンピュータ将棋は止まらない : 5.棚瀬将棋の技術背景」、『情報処理』第49巻第8号、2008年、 987-992頁。 囲みコラム「おふぃすらん」
  13. ^ コンピュータソフトを使用するのは、作品に余詰や不詰がないかを確認するためである。また作成途中の補助に使う場合もある。
  14. ^ 詰将棋創作プログラミング
  15. ^ 将棋電王戦第3局で人間側が1勝を返す 豊島七段が「序盤、中盤、終盤、隙が無い」指し回しでYSSに圧勝”. ねとらぼ (2014年3月31日). 2015年6月3日閲覧。
  16. ^ 人間が勝つ鍵はどこにあるか「第3回将棋電王戦」第3局”. マイナビニュース (2014年4月4日). 2015年5月15日閲覧。
  17. ^ 【話題の肝】VSコンピューター制した「人類の執念」将棋電王戦、勝因はゲリラ戦術だった”. 産経ニュース (2015年4月19日). 2015年4月22日閲覧。
  18. ^ a b 【将棋】「ボンクラーズ」を遠山雄亮五段が徹底解剖part1【電王戦】 - ニコニコ動画
  19. ^ 渡辺明順位戦(1日制で持ち時間6時間)だと「だんだん眠くなってくる」と述べている。
  20. ^ http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/137/137345/
  21. ^ 「将棋電王戦FINAL」第2局はコンピュータが王手放置の反則負け、プロ棋士2勝目”. マイナビニュース (2015年3月21日). 2015年3月30日閲覧。
  22. ^ 瀧澤, 2012.
  23. ^ 定跡とは何か「将棋電王戦FINAL」第4局 - 村山七段の研究不発、ponanzaが示した可能性”. マイナビニュース (2015年4月11日). 2015年5月15日閲覧。
  24. ^ やねうらお(磯崎元洋) (2014年4月18日). “将棋における適切なハンディのつけかた”. 俺のボカロがこんなに音痴なわけがない。. http://d.hatena.ne.jp/yaneurao/20140418#p1 2014年9月23日閲覧。 
  25. ^ “アピール文章 稲庭将棋”. (2010年3月16日). http://www.computer-shogi.org/wcsc20/appeal/Inaniwa_Shogi/inaniwa.pdf 2014年9月1日閲覧。  (pdfファイル)
  26. ^ “コンピュータ将棋協会誌 第22巻(2010 年号)”. http://www.computer-shogi.org/journal/CSA_vol22.pdf 2014年9月1日閲覧。 (pdfファイル)
  27. ^ GPS将棋は本当に強いの? 佐々木勇気四段に聞いた”. 日刊SPA! (2013年3月13日). 2015年5月26日閲覧。
  28. ^ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35787?page=14
  29. ^ http://nikkan-spa.jp/810264
  30. ^ 打ち歩詰めなどを避ける場合、稀に不成を選ぶ場合がある
  31. ^ この角は馬に成ることができるが、その後捕獲されてしまう
  32. ^ 棋士、ソフトの弱点突き速攻決着 電王戦勝ち越し - 日本経済新聞
  33. ^ 将棋ソフトの死角をついた“ハメ手”で100万円獲得【将棋電王戦レポート】”. 日刊SPA!. 2015年4月27日閲覧。
  34. ^ 人間に勝つコンピュータ将棋の作り方、瀧澤武信, 2012/9/29, p.22.
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  40. ^ http://www.yss-aya.com/24rating.html
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  43. ^ http://www.yss-aya.com/24rating.html
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  45. ^ 飯田教授らが開発したコンピュータ将棋はプロ棋士に惜敗(北陸先端科学技術大学院大学:ニュースとお知らせ)参照。
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  47. ^ http://www.yss-aya.com/24rating.html
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  49. ^ “その名も「激指」…将棋ソフト、人間に勝つ”. 読売新聞. (2008年5月5日). オリジナル2008年5月8日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080508213452/http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20080505-OYT1T00432.htm? 2015年5月27日閲覧。 
  50. ^ 元アマ竜王2人、1勝1敗…コンピューターとの将棋対局 [リンク切れ]
  51. ^ コンピュータ選手権の結果。 渡辺明ブログ 2008年5月5日より「アマトップの方々は奨励会で言えばプロ手前の二段〜三段の力はあるので、そこに2連勝というのは衝撃的」
  52. ^ 大きな話題と小さな話題 遠山雄亮のファニースペース 2008年5月5日より「この二人はアマチュアの方の中でもトップ、しかもトップの中のトップですから衝撃的です。将棋も強い内容でした」
  53. ^ 衝撃 daichanの小部屋 2008年5月5日より「二人そろって完敗したと聞いて衝撃を受けました。彼らの強さは僕もよく知ってますので」
  54. ^ 情報処理学会が日本将棋連盟に「コンピュータ将棋」で挑戦状社団法人日本情報処理学会 2010年4月2日 2010年4月2日閲覧
  55. ^ 「コンピュータからの挑戦状」(日本将棋連盟HP、2010年4月2日閲覧)
  56. ^ ponanzaが将棋倶楽部24に登場、東京道場に「記録」破り
  57. ^ “米長氏、将棋ソフトに敗北 永世棋聖も歯が立たず”. 47news. (2012年1月14日). http://www.47news.jp/CN/201201/CN2012011401001634.html 2012年1月14日閲覧。 
  58. ^ 電王戦対決中!! 序盤は米長永世棋聖が有利か? 戦いの行方はニコ生を見よ!!”. 週刊アスキー (2012年1月14日). 2012年1月14日閲覧。
  59. ^ 「将棋電王戦」第二局で佐藤四段敗れる、現役プロ棋士がコンピュータに初の敗北マイナビニュース 2013/03/30
  60. ^ 保木邦仁・渡辺明共著 『ボナンザ VS 勝負脳――最強将棋ソフトは人間を超えるか』 角川書店、2007年。ISBN 978-4-04-710107-4
  61. ^ http://aleag.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/20134-fd94.html
  62. ^ http://gendai.ismedia.jp/articles/-/35787?page=13
  63. ^ 合議制のために各々は若干設定を変えてある。
  64. ^ 「将棋世界」2010年10月号 p.148、「コンピュータ将棋協会」のwebサイト、「合議アルゴリズムと文殊のページ」
  65. ^ 将棋GUIソフト将棋所”. 2015年5月11日閲覧。
  66. ^ Muller, Harm Geert. “WinBoard for Shogi”. 2015年5月11日閲覧。
  67. ^ Maerz, Bernhard. “BCMShogi Shogi Graphical User Interface”. 2015年5月11日閲覧。
  68. ^ H. G. Muller. “WinBoard Shogi-Variants package”. 2015年5月11日閲覧。
  69. ^ Floodgate is a computer shogi server for computers”. 2015年5月11日閲覧。
  70. ^ 2006年度の世界コンピュータ将棋選手権で優勝したBonanzaは、開発者自身がコンピュータチェスの文献を主に参考にしたことを表明している。
  71. ^ 読売新聞 2003年8月18日より
  72. ^ 24ソフト指し取締委員会”. 将棋倶楽部24 (2008年1月7日). 2012年1月10日閲覧。
  73. ^ 81道場利用規約
  74. ^ グルジアのチェス名人、スマホでカンニング”. CNN.co.jp (2015年4月14日). 2015年4月24日閲覧。

注釈[編集]

  1. ^ 第2回将棋電王戦でのツツカナのように輸送中に故障する事はあるが、人間と違いハードウェアソフトウェアニコイチである必要はない為、ハードウェアの部分をすげ替えて対処する事が可能である[20]
  2. ^ ただし、「不成」を指す前の局面は永瀬優勢で、仮に成ったとしても優勢は変わらないとする意見が大勢であった。それでも指した理由を、永瀬は「優勢になったと思ったが、万が一を考えて指した」「修正されているかもしれないと思っていた」としている。また、同年3月27日放送の『Session-22』にゲスト出演した際に、「敗勢になっていたら指したか?」という質問には「そのような場合は選ばなかっただろう」と答えている

出典[編集]

参考文献[編集]

  • 『人間に勝つコンピュータ将棋の作り方』 瀧澤 武信、技術評論社、2012年ISBN 978-4774153261
  • 『常識外の一手』谷川浩司 新潮新書 2015年 978-4106106217

関連項目[編集]

外部リンク[編集]