経営学部

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

経営学部(けいえいがくぶ、英語: School / Faculty of Business, School / Faculty of Business Administration)は、大学において経営学を専攻とする学部である。

歴史・概要[編集]

1904年上田貞次郎東京高等商業学校教授により、商業学に代わる商工経営学の概念が提唱されていたところ、1902年明治35年)に創設された旧制官立神戸高等商業学校においては、1920年大正9年)から上田門下の平井泰太郎講師の命名により「經營学」が講じられていた[1]1926年大正15年)に神戸高等商業学校で「經營学」という名称の授業科目を開講していた。同年、世界で2番目に古い経営学の学会である日本経営学会が創立された。その後1929年昭和4年)に神戸商業大学に昇格し、1949年昭和24年)に学制改革により神戸大学が設置された時に、経営学部の設置を主張する平井泰太郎教授と、商学部の設置を主張する福田敬太郎教授の間で論争となったが、教授会において1票差で経営学部と決まり、この時の神戸大学に日本初の経営学部が設置された[1]

私立大学で初めて設置したのは明治大学で、1953年に商学部から分離する形で置かれた。女子大で初めて設置したのは文京女子大学(現: 文京学院大学)(1991年)である(2005年より共学化)。理工系総合大学で初めて設置したのは東京理科大学(1993年)であり、理学と工学の知識に基づいた数量的・実証的アプローチによる文理融合イノベーション重視を基本理念とした学部としている。

商学部経済学部とカリキュラム内容が近い(もしくは一部重複する)ことや、経営学自体が比較的新しい学問ということもあって、経営学部の置かれない大学の商学部や経済学部もしくは学科制の短期大学において、学科やコースや専攻の名称として「経営学」が用いられる場合がある。学部卒業生に対して授与される学位は学士(経営学)が代表的であるが、近年は学科名も多様化しているため、学位名称にも様々なものがある。

経営学部は実践に重点を置いた教育課程を編成しており、経営学を中心に簿記商学会計学の関連科目を学ぶことができる。近年は、高大連携(高校3年+大学4年=7年一貫した簿記会計教育)が活発化し、商業高校で簿記会計学の学習が進んだ者の多くが税理士試験公認会計士・監査審査会が行なう公認会計士試験を受験する。

日本の実業教育を理論面で支える学術研究は、明治初期に福澤諭吉により設立された簿記講習所[2]、同じく福澤諭吉が設立に関わった商法講習所(現:一橋大学[3]三菱商業学校慶應義塾分校)等から始まった学問の蓄積を今日まで連綿となされている。学問体系としては文系に分類されるが、経営分析や意思決定モデル、MISなど、数学統計学コンピュータ工学などの数理科学的手法を活用する大学も多い。学術団体については、1951年4月21日、日本商業学会が慶應義塾大学教授向井鹿松を初代会長として設立された[4]

税理士試験の院免除[編集]

経営学部で学ぶ多くの経営学徒は公認会計士試験と税理士試験を受験している。商業高校における学習指導の改革に基づき、優秀な商業高校卒業生は、商業高校在学中から全国商業高等学校協会が主催する9種目の検定勉強をはじめ、税理士試験公認会計士試験を積極的に受験している。今日、商業高校・大学教育(高校3年間+経営学部4年間=合計7年間)を勉学に集中することで多くの会計人を輩出している。慶應義塾大学(慶應義塾夜間法律科)の流れを汲む専修大学計理の専修)や立教大学の経営学部等は数多くの税理士を輩出してきた。これらの大学は大学院での税理士養成の伝統校であり、たとえば明治大学ビジネススクールではMBAを持つ「経営の分かる税理士」の育成を目指し、税理士試験の免除申請の指導が行われている。

進路[編集]

経営学は多くの資格試験や公務員採用試験の受験科目となっている。下記に代表的な事例を記載する。

資格試験[編集]

公務員採用試験[編集]

  • 準キャリアと位置付けられている財務専門官採用試験の受験科目である。
  • 国税専門官採用試験の受験科目である。税務大学校での研修を経て国税専門官となる。国税専門官は勤務年数等の条件を充足すると税理士資格が付与される。

学術の動向[編集]

日本には、もうじき百周年となる世界で二番目に長い伝統を有する経営学会である日本経営学会(令和6年現在:出見世信之理事長、明治大学教授)がある。明治大学、神戸大学、一橋大学、慶應義塾大学等の各大学が経営学分野の学術振興を主導している。経営学部の源流である神戸大学経営学部の他、福澤諭吉が創立に関わった慶應義塾大学と一橋大学が御三家といえる。各大学では、先師の学統を引き継ぎ、次の百年先を見据え、学統学派の門下生へ経営学研究の伝統を継承している。

事例として、令和5年の日本経営学会役員を記載する[5]

担当 氏名 出身校
総務担当 田淵泰男 慶應大院
総務担当 上林憲雄 神戸大院
大会担当 井上善海 福岡大院
大会担当 古川靖洋 慶應大院
会計・事務所担当 木村有里
国際担当 原拓志 神戸大院
学会誌担当 馬塲杉夫 慶應大院
学会誌担当 小沢貴史 神戸大院
学会賞担当 鈴木由紀子 慶應大院
広報担当 松田健

社会との関わり[編集]

  • 財務省財務局(『財政教育プログラム』等)、関税局(『税関教室』等)、国税庁(『租税教室』、国税局、税務署でのインターンシップ、職場説明会等)
  • 公正取引委員会(『独占禁止法教室』)

ランキング(機関別)[編集]

Top 25% Institutions and Economists in Japan(RePEc/IDEAS rankings)では神戸大学経営学部がランキングしている。なお、私立大学では早稲田大学商学部と慶應義塾大学商学部がランキング入りしている[6]

経営学部を置く日本の大学[編集]

国際認証校[編集]

国立[編集]

※「経営学部」を置く大学

※「経営学科」を置く大学

※「経営学科」に類する学科等を置く大学

公立[編集]

※「経営学部」を置く大学

※「経営学科」を置く大学

※「経営学科」に類する学科等を置く大学

私立[編集]

「経営学部」を置く大学[編集]

北海道・東北
関東
中部
近畿
中国・四国・九州

「経営学部」に類する学部を置く大学[編集]

上記以外で「経営学科」を置く大学[編集]

「経営学科」に類する学科等を置く大学[編集]

株式会社立[編集]

「経営学部」を置く大学

大学に準ずる教育機関[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b [1]神戸大学
  2. ^ 浅田毅衛「明治期における商業教育史の回顧-明治大学商学部創立の歴史的背景-」『明治大学史紀要』第5号、歴史編纂委員会専門委員会、1985年3月、40-104頁、ISSN 0285-2047NAID 120001441402 
  3. ^ 「HUBの歴史」一橋大学大学院経営管理研究科系管理プログラム
  4. ^ 学会HP”. 日本商業学会. 2022年1月23日閲覧。 個人会員1,072名,賛助会員11社・団体,購読会員32件 (2019年7月現在)
  5. ^ 日本経営学会役員及び委員一覧
  6. ^ Top 25% institutions in Japan, all authors, all publication yearsランキングにはRIETI日本銀行等も含まれる

関連項目[編集]