小説吉田学校

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

小説吉田学校』(しょうせつよしだがっこう)は、政治評論家戸川猪佐武による日本の実録政治小説である。

概要[編集]

『小説吉田学校』は、占領下での吉田内閣から鈴木善幸内閣までの保守政界の権力闘争史を描いた長編小説。当初は雑誌連載され、後に単行判(第7部まで)が1971-80年に流動出版で、1981年に角川文庫で出され、第8部は書き下ろしで刊行完結した。2001年に学陽書房〈人物文庫〉全8巻で再刊されている。 

なお本作と、さらに掘り下げた『小説吉田茂』と『小説三木武吉』(いずれも角川書店のち文庫化)は、各「小説」と銘打ってはいるが、実際は史実を克明に追ったノンフィクション作品に近い。戸川が「小説という形を取ってあえて評伝にしなかった」のは、「政治家というものは、そのパーソナリティ、キャラクターによって、行動様式が支配されている」ものであり、政治家の「人間を描くことによって、こういう人だから、こういう行動をとったということがはじめてわかるから」だという[1]。なお続編的著作に『小説 永田町の争闘』(全3部、毎日新聞社のち角川文庫)と、『昭和の宰相』(全7部、講談社のち講談社文庫)がある。

第1部 「保守本流
ワンマン宰相・吉田茂が、池田勇人佐藤栄作ら「吉田学校」の門下生たちを率いて日本の講和独立を果たした後、鳩山一郎ら党人派との熾烈な権力闘争に挑む姿を中心に、第2次吉田内閣から鳩山内閣成立までを描く。
第2部 「党人山脈」
保守合同に命を賭ける鳩山派の謀将三木武吉日米安保に執念を燃やす岸信介、そして河野一郎大野伴睦ら党人政治家たちの姿を中心に、鳩山内閣から池田内閣までを描く。
第3部 「角福火山」
「ポスト佐藤」を巡る田中角栄福田赳夫の暗闘角福戦争を中心に、佐藤内閣末期から田中内閣成立までを描く。
第4部 「金脈政変」
田中金脈問題を中心に「椎名裁定」で三木武夫内閣が誕生するまでを描く。
第5部 「保守新流」
ロッキード事件で前総理・田中が逮捕され「三木おろし」が激化した三木内閣末期を描く。
第6部 「田中軍団」
刑事被告人となった田中が初の総裁予備選で大平正芳内閣を樹立するまでを描く。
第7部 「四十日戦争
衆議院選挙惨敗を巡る大角主流派と三福中非主流派の対立を中心に描く。
第8部 「保守回生」
現職総理・大平の急逝を受け、史上初の衆参同日選挙自民党が圧勝するまでを描く。

映画[編集]

小説吉田学校
監督 森谷司郎
脚本 長坂秀佳
森谷司郎
製作 山本又一朗
出演者 森繁久彌
芦田伸介
リック・ジェイソン
夏目雅子
池部良
若山富三郎
音楽 川村栄二
撮影 木村大作
編集 池田美千子
配給 東宝
公開 日本の旗 1983年4月9日
上映時間 132分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
テンプレートを表示

映画『小説吉田学校』は、フィルムリンク・インターナショナル製作、東宝配給で、1983年4月9日に公開された。

占領下を描いた前半はモノクロ、独立を達成した後半はカラーになっている。モノクロ部分の撮影にあたっては、『史上最大の作戦』の試写を行なって参考にしている。

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

※人物紹介は『劇画 小説吉田学校』およびそれを改題した『歴史劇画 大宰相』の主な登場人物紹介による。

  • 吉田茂 - 森繁久彌第1次第5次まで内閣を組閣し、日本の復興に尽力するがやがてワンマン体制への不満が噴出する。首相退陣後も池田・佐藤両首相の相談役として政界に影響力を持った。
  • 鳩山一郎 - 芦田伸介:吉田のライバル。戦後日本自由党を結成するが後に公職追放となる。後に自由党内の反吉田勢力や改進党を糾合して日本民主党を結成し、後に首相・自民党初代総裁。鳩山威一郎の父で、鳩山由紀夫鳩山邦夫兄弟の祖父。
  • 松野鶴平 - 小沢栄太郎:戦前は選挙の神様と言われ、戦後は吉田の参謀として政界を陰でリード。後に参議院議長松野頼三の父で、松野頼久の祖父。
  • 星島二郎 - 伊豆肇:自由党内の反吉田派の重鎮で、広川らとともに山崎首班を画策する。その後衆議院議長加藤六月の政界の師匠。
  • 幣原喜重郎 - 三津田健:吉田の外交官時代の先輩で、戦前外相。戦後まもなく首相となるが、GHQの言いなりだったこともあり在任7か月で総辞職。民主党顧問となるが、片山内閣の政策に反発し田中角栄らの若手議員とともに民主党を離党し、民主自由党入り。後に衆議院議長。
  • 林譲治 - 土屋嘉男:吉田の又従兄弟で、益谷・大野と共に「党人御三家」と言われた。
  • 河野一郎 - 梅宮辰夫:鳩山の側近で反吉田の急先鋒。農林大臣建設大臣などを歴任するが、佐藤栄作とポスト池田を争って敗れ、後に死去。河野洋平の父で、河野太郎の祖父。
  • 大野伴睦 - 田崎潤:元々は鳩山の側近だったが、鳩山が三木武吉と連携したことに抗議して親吉田に転向。吉田・鳩山対立の調整役をつとめるが、後に三木と和解し保守合同を実現。
  • 広川弘禅 - 藤岡琢也:自由党党人派の重鎮。星島とともに山崎首班を画策するも後に撤回。その後吉田内閣で党幹事長・農相を歴任するが、野党が提出した吉田首相不信任案に欠席し、自由党を除名される。
  • 佐藤栄作 - 竹脇無我:吉田学校の優等生で、通産相・蔵相などを歴任して首相に就任。7年8か月の長期政権を打ち立て沖縄返還や公害問題の解決に尽力する。佐藤信二の父。
  • 田中角栄 - 西郷輝彦:元々は幣原とともに民主党に在籍したが、炭鉱国家管理法案に反発して党を除名される。後に吉田率いる自由党入りし、自民党発足後は郵政相・自民党幹事長・蔵相などを経て首相となる。田中眞紀子の父で、田中直紀の義父。
  • 池田勇人 - 高橋悦史:佐藤とならぶ吉田学校の優等生で、1年生議員ながら蔵相に抜擢。その後首相に就任して官僚派と党人派の融和をはかり所得倍増政策を提唱するが、癌のため退陣。池田行彦の義父。
  • 太田一郎 - 神山繁:外務事務次官(1949-51年に初代事務次官、外相兼務の吉田の命で講和条約に向け案を作成)[2]
  • 岸信介 - 仲谷昇東條内閣の商工大臣だったことなどから戦後は公職追放を余儀なくされる。政界復帰当時は自由党に所属したが、鳩山の新党構想に乗る形で自由党を離党し、日本民主党幹事長。後に首相として日米安保条約を改訂する。
  • 益谷秀次 - 稲葉義男:大野・林とともに「党人御三家」と言われ、建設相・衆議院議長・副総理など要職を歴任。池田内閣で党幹事長を務める。瓦力の師匠(地盤を引き継いだ)。
  • 増田甲子七 - 加藤和夫:吉田側近として党人派の広川と対立。運輸大臣・建設大臣・官房長官・防衛庁長官などを歴任。
  • 中井川隆一郎 - 鈴木瑞穂:架空の人物。モデルは山口喜久一郎とされる。広川・星島らの党人派に同調し、吉田を自由党総裁から降ろすことを画策する。佐藤内閣時代に衆議院議長となるが、黒い霧事件で辞任。中西啓介の政界の師匠。
  • 中曽根康弘 - 勝野洋:改進党議員として昭和天皇退位問題について吉田と国会で討論。保守合同後は科学技術庁長官・運輸相・防衛庁長官・通産相・行政管理庁長官など重要閣僚を歴任。後に鈴木善幸の後を受けて首相となり、長期政権を打ち立てる。中曽根弘文の父。
  • 三木武夫 - 峰岸徹:国民協同党・改進党で委員長を歴任。鳩山新党結党にあたり、改進党内の親吉田勢力の反対を押し切り日本民主党結党に参加。鳩山内閣で運輸相。後に石橋・岸・池田・佐藤・田中各内閣で要職を歴任し、田中退陣後首相に就任。
  • 麻生太賀吉 - 村井国夫:吉田の三女・和子の夫で、福永健司塚原俊郎と共に吉田側近の一人と言われた。吉田退陣後、政界を引退。麻生太郎の父。
  • 浅沼稲次郎 - 小池朝雄右派社会党書記長で、統一後の社会党書記長・委員長。1960年日比谷公会堂で右翼に暗殺される
  • 石橋湛山 - 里木佐甫良東洋経済新報のジャーナリストから第1次吉田内閣の蔵相に抜擢されるが、後に吉田と対立。鳩山退陣後の自民党総裁選で岸信介を破り首相となるが、病のため2か月で退陣。
  • 安藤正純 - 増田順司:戦前は鳩山と共に立憲政友会に在籍。反吉田の急先鋒でいったんは親吉田に転向するが、鳩山・岸の新党構想が明らかになると、自由党を離党。後に鳩山内閣の文相。
  • 宮澤喜一 - 角野卓造:池田の米国訪問に秘書官として同行。大平正芳黒金泰美とならぶ池田側近グループの一人で、大蔵官僚から池田の勧めで政界入り。経済企画庁長官・通産相・外相・官房長官・蔵相などを歴任。後に首相。
  • 石田博英 - 辻萬長:三木武夫の盟友で、倉石忠雄ら反吉田派と共に吉田の福永幹事長起用人事に強く反発。後に石橋擁立に動き、石橋~佐藤内閣まで官房長官・労相を務める。石田派を形成したが、後に三木派に合流。三木内閣では自民党幹事長代理、運輸相として三木を支える。
  • 須永一雄 - 石田純一:架空の人物(衆議院事務局勤務)。
  • 福田赳夫 - 橋爪功:大蔵官僚から保守系無所属で衆院選に当選。その後日本民主党を経て自民党入りし、岸・佐藤内閣で農相・蔵相・外相・自民党幹事長を歴任。田中・三木内閣で行政管理庁長官・蔵相・経済企画庁長官・副総理を経て首相に就任。福田康夫の父で、福田達夫の祖父。
  • 西村栄一 - 小林稔侍右派社会党議員。吉田の「バカヤロー」発言を引き出し、衆院解散のきっかけを作る。後に西尾末広らとともに民社党結党に参加し、委員長となる。西村真悟の父。
  • 大麻唯男 - 神田隆:戦前は東條英機の腰ぎんちゃくとして活躍し、戦後は政界の寝業師として鳩山内閣誕生・保守合同に貢献。田中角栄に政界入りを勧めたのは大麻である。
  • 一万田尚登 - 細川俊夫日本銀行総裁。戦後長く日銀総裁を務め、「日銀の法王」と言われた。後に鳩山内閣の蔵相。
  • 斎藤隆夫 - 佐々木孝丸:反軍演説で議員資格を剥奪された気骨の政治家。戦後は進歩党結成に参加するが、後に民主自由党に参加。
  • 河本敏夫 - 成田次穂三光汽船社長から戦後政界入りした三木武夫の側近で、三木・中曽根と共に吉田の単独講和に反対する。佐藤内閣で郵政相、三木・福田内閣で通産相、鈴木・中曽根内閣で経済企画庁長官を歴任し、四十日抗争の収拾にもあたった。後に三木派を継承。
  • 福田一 - 和崎俊哉:大野の側近で、吉田の福永幹事長起用人事に強く反発する。大野没後は船田派の重鎮として中間派をまとめ、田中内閣誕生に貢献。後に衆議院議長も務めた。
  • 河野金昇 - 御木本伸介:河本と並ぶ三木武夫の側近。吉田と改進党幹部の会談に参加。海部俊樹の師匠として知られる。
  • 二階堂進 - 山下洵一郎:国民協同党を経て、吉田の自由党に参加。佐藤内閣で頭角を現し、佐藤退陣後は田中派の大番頭として官房長官・自民党幹事長・副総裁などを歴任。二階堂擁立構想でポスト中曽根への色気を見せるが、田中の反対でとん挫する。
  • 河上丈太郎 - 庄司永建:右派社会党委員長。左派の鈴木茂三郎・浅沼と共に社会党統一を実現する。後に浅沼の後を受けて社会党委員長。
  • 安倍晋太郎 - 瀬戸山功:毎日新聞記者で、吉田が記者たちに水をかけるシーンで登場。農相・官房長官・通産相・外相・自民党幹事長を歴任しニューリーダーの一人として総理・総裁候補に浮上するが、病のため死去。安倍晋三の父。
  • 竹下登 - 下塚誠:島根県議から政界入りし、佐藤栄作の秘蔵っ子と言われた。官房長官・建設相・蔵相を歴任。中曽根裁定で首相となるがリクルート事件で退陣。退陣後も政界で影響力を持った。竹下亘の異母兄。
  • 海部俊樹 - 福田勝洋:吉田と改進党幹部の会談に河野金昇秘書として同席。官房副長官、文相などを歴任した後、竹下派の支援で首相となり政治改革に取り組むが、自民党内の政治改革反対派の抵抗にあい退陣を余儀なくされる。その後新進党党首を経て自民党に復党。
  • 渡辺美智雄 - 樋渡紀雄:抜き打ち選挙時の河野一郎の辻演説応援のシーンで登場。自民党では河野派に所属するが、河野没後に中曽根への派閥禅譲を主張した。福田・大平内閣で厚相・農水相などを歴任するが、四十日抗争で大平を支持したため中曽根派を除名される。その後、中曽根派に復帰し派閥を継承。渡辺喜美の父。
  • 田中六助 - 千葉茂:日経新聞記者から池田の秘書を経て政界入り。池田没後に派閥を継承した前尾繁三郎を批判し、大平への派閥移譲を訴える。後に大平・鈴木・中曽根内閣で官房長官・通産相・自民党幹事長を歴任する。
  • 中川一郎 - 脇田茂:大野の秘書。吉田の幹事長人事に大野が反対するのに同調。後に大野の勧めで政界入りし、農水相・科技庁長官を歴任するが、ポスト鈴木で中曽根に敗れ、後に死去。中川昭一の父。
  • ダグラス・マッカーサー - リック・ジェイソン:吉田とともに日本の戦後復興に大きな役割を果たしたが、トルーマン大統領と対立しGHQ司令官を解任される。
  • 麻生和子 - 夏目雅子:麻生太郎の母で、牧野伸顕の外孫。
  • 緒方竹虎 - 池部良特別出演):朝日新聞記者を経て政界入り。吉田退陣後の自由党を率いるが、直後の総選挙で議席を半減させ、鳩山の日本民主党との合併(保守合同)を決める。自民党誕生の2か月後に死去。
  • 三木武吉 - 若山富三郎:戦前は立憲民政党に所属し、軍部の独裁政権に反発。戦後は鳩山とともに自由党結成に動き幹事長を務めるが、公職追放。後に河野・岸らの反吉田派を結集させて保守合同を果たす。自民党誕生を見届けた後、胃がんのため死去。
  • ナレーター - 平光淳之助
その他(主に国会議員役)

テレビドラマ[編集]

映画公開日と同日の1983年4月9日(土曜日)午後9時3分から11時54分に、ドラマスペシャル『関西テレビ開局25周年記念 吉田茂』が、関西テレビ東映制作で、フジテレビ系列にて放送された。

監督出目昌伸、脚本笠原和夫。原案は猪木正道『評伝吉田茂』(読売新聞社)。森繁久彌が同じく吉田茂を、吉永小百合が娘麻生和子を、上原謙が義父牧野伸顕を演じた。他に映画出演した俳優では、芦田伸介や藤岡琢也などが異なる役で出演している。

漫画化作品[編集]

戸川の没後、さいとう・たかをにより1988年から1991年に読売新聞社でハードカバー版『劇画・小説吉田学校』全20巻が、1999年に改装版が、講談社+α文庫で『歴史劇画・大宰相』全10巻が出版された。なお後半部は改題・再編され、2003年リイド社コンビニコミックで5冊が出版。

角川版『小説吉田学校』により作品化されているが、鈴木内閣成立以後は「小説永田町の争闘」(全3巻:毎日新聞社のち角川文庫)に拠っている。以下は講談社版での各巻タイトル。

  • 「1巻 吉田茂の抗争」
  • 「2巻 鳩山一郎の悲運」
  • 「3巻 岸信介の豪腕」
  • 「4巻 池田勇人と佐藤栄作の激突」
  • 「5巻 田中角栄の革命」
  • 「6巻 三木武夫の挑戦」
  • 「7巻 福田赳夫の復讐」
  • 「8巻 大平正芳の決断」
  • 「9巻 鈴木善幸の苦悩」
  • 「10巻 中曽根康弘の野望」

脚注[編集]

  1. ^ 『小説吉田茂』「あとがき」より。
  2. ^ 実質上の担当者の一人に西村熊雄がいる。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]