シャルリー・エブド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索
Charlie Hebdo
Charlie Hebdo logo.svg
種別 週刊
設立 1970年[1]
1981年に廃刊
1992年に再開
政治的傾向 左派
言語 フランス語
本社所在地 フランスパリ
発行数 45,000(2012)[2]
ISSN 1240-0068
ウェブサイト www.charliehebdo.fr

シャルリー・エブド: Charlie Hebdo)は、フランスの週刊新聞。短く「シャルリ・エブド」とも。

左派寄りの風刺新聞であり、イラスト(風刺画)を多用し、フランス国内外の政治 を主に扱う。同誌の風刺画家のシャルブによると、その編集方針は「様々な左派の見解、さらには政治参加に無関心な人の見解」を反映すること、とのことである。

「シャルリー・エブド」という名の後半の「エブド」はフランス語の「エブドマデール(hebdomadaire)」(=「週刊の」という意味の形容詞)の短縮形[注 1]。「シャルリー」とは漫画「ピーナッツ」の登場人物チャーリー・ブラウンに因んだものであり、またシャルル・ド・ゴールのシャルルにも掛けたネーミングである。

歴史[編集]

フランソワ・カヴァナ。シャルリー・エブドの創立者のひとり。

シャルリー・エブドのルーツは主として『Hara-Kiri』(アラキリ)にあり、月刊誌Zéroの後、「ショロン教授フランス語版」と呼ばれているジョルジュ・ベルニエとフランソワ・カヴァナ(François Cavanna)は1960年に月刊の『Hara-Kiri』を発刊した。Hara-Kiri は日本語腹切りのこと。これは「ばかばかしくて、意地悪な」内容のものだった。

1961年発禁、1966年復刊。

1970年月刊紙「シャルリー」刊行。この月刊紙は、当初イタリアの月刊紙「ライナス」の仏語版であった。チャーリーもライナスも、「ピーナッツ」の登場人物で、チャーリー・ブラウン[3] [4]スヌーピーの飼い主である。

1981年に アラキリ は廃刊になり、1992年に週刊紙シャルリー・エブドとして再開された。

2006年ムハンマドとされる男性に「ばかに愛されるのはつらい」と付記したイラスト、ターバンに爆弾がし込まれたイラスト、天国に向かって並ぶ自爆テロ犯をムハンマドが迎え「待て待て、もう処女はいないぞ」と呼びかけているイラストなど12点を配した「ムハンマドと原理主義者」と題した特集が組まれた[5]。この特集はイスラム教徒の反発を招き、シラク大統領(当時)からは「行き過ぎた挑発だ」と批判された[6]。ムスリム団体は宗教的な侮辱だとして提訴したが、2007年3月の1審では、風刺雑誌におけるよく練られた挑発や誇張は、社会批判や政治批判の手段となりうるものであり、一定の制約は受けるが表現の自由として守られる、ユーモアがなく、不快感や恐怖、ショックを与え、傷つけるものも認められるが、特集全体の方向性を踏まえると、過激派に限定され、ムスリム全体を不快にさせようとしたものではないとして、これを無罪とした[5][7]。2008年2審も「ムスリムのごく一部に向けられたものであり、ムスリム社会全体を対象にしたものではない」として無罪となった[5][8]

2007年、爆弾を所持したムハンマドとされる人物を描き、パリの主要モスクから非難された[6]

2011年11月2日、「イスラム教の預言者ムハンマドを同紙の新しい編集長に指名した」という風刺画を掲載、事務所に火炎瓶が投げ込まれ全焼する事件が起きた[9]。同年、ムハンマドを同性愛者として同社の男性社員と口づけしている風刺画を掲載し、同紙ウェブサイトがクラックされる事件が起きた。

2012年には、フランス当局から警告を受けていたにもかかわらずヌード姿のムハンマドの絵を複数掲載した。

2013年には、「ムハンマドの生涯」と題した漫画を出版した[10]

2014年10月には、過激派組織イスラム国がムハンマドの首を切る漫画を掲載した。

2015年3月18日発売号で、今も収束していない福島第一原子力発電所事故を皮肉る風刺画を掲載した。事故で煙を出す福島第一原発の前に大きな鳥の足跡を描き、防護服を着た作業員がその足跡を見て、「今年の最初のツバメだ」と話している。足跡は放射能被害により大きくなったとの想定で、原発事故の被害を誇張する内容となっている。同時に最近、軽微な事故を起こしたフランス国内の原発2か所を扱った[11]

2016年9月3日号において、「イタリア風地震」[注 2]と題する記事において、血だらけで包帯を巻いた男性を「トマトソースのペンネ[注 3]、やけどを負った女性を「ペンネ・グラタン[注 4]、がれきの間に挟まれた被災者たちの様子を「ラザニア[注 5]と8月に発生したイタリア中部地震の被災者をイタリア料理に見立てて揶揄する諷刺画を掲載。イタリアアンドレア・オルランド英語版法相は「非常に不快」であるとコメントし、ピエトロ・グラッソ英語版下院議長も「この諷刺画は最低」であると批判。ソーシャル・メディア上でも批判が殺到した[12]

襲撃事件[編集]

事件の引き金を引く風刺画を描いた編集長シャルブ

2014年12月31日号(事件の前の週の号)には、「フランスではいまだに襲撃が全くない」という見出しの下で、ジハディスト戦士を(茶化すように、目線が左右バラバラになっているように)描かれ、ロシア製の自動小銃「AK-47」を肩にかけて立ち「慌てるな!新年のあいさつだったら1月末まで間に合うぞ」と言っている風刺画を掲載した(同画の右下隅には風刺画家「CHARB シャルブ」の署名あり)[注 6]

2015年1月7日、事務所で編集会議中に自動小銃を持った男らが乱入、同紙編集長と編集関係者、風刺画家、警官2人の計12人が死亡し、約20人が負傷した[13][14]。この犠牲者には、2013年に東京が2020年夏季オリンピックの開催地に選ばれた際に、奇形の力士が五輪競技に出場するという風刺画を風刺新聞「カナール・アンシェネ」に発表した風刺漫画家カビュフランス語版も含まれていた。この事件に続いてモンルージュ警官襲撃事件、ユダヤ食品スーパー襲撃事件が起こり、多発的なテロ事件に発展したが、特殊部隊により計3名の犯人が射殺された。

2015年1月14日、事件後初となる特別号を発売した。表紙にムハンマドの風刺画を掲載したほか、イスラム過激派らしき男3人がイスラム教の教えで天国にいるとされる処女の存在を語り合う場面をカラーのイラストで載せた。ただ、イスラム教以外の宗教を風刺した表現も多く、パリの凱旋門を描いた漫画には「シャルリーへの支持は(カトリックの)ミサ参加者より多い」と記した[6]

事件後フランスで行われた世論調査では、この週刊誌の姿勢を支持する人間が57%、支持しない人間が42%存在している。また、表現の自由には一定の制限が課されるべきと考えるものも、インターネット上では半数ほど存在した[15]

脚注[編集]

  1. ^ フランス語では、英語や日本語とは異なり、形容詞は基本的に(原則的に)名詞の後ろに置く。名詞の前に配置するのはあくまで特別な意味を持たせようとする時などで、例外的。
  2. ^ Séisme à l'italienne
  3. ^ Penne sauce tomate
  4. ^ Penne gratinées
  5. ^ Lasagnes
  6. ^ 原文は、「TOUJOURS PAS D'ATTENTATS EN FRANCE(フランスではいまだに襲撃が無い)」「ATTENDEZ! ON A JUSQU'À LA FIN JANVIER POUR PRESENTER SES VOEUX(急かすなよ!新年の挨拶なら1月末まで間に合うだろ。」
出典
  1. ^ McNab 2006, p. 26: "Georges Bernier, the real name of 'Professor Choron', [... was] cofounder and director of the satirical magazine Hara Kiri, whose title was changed (to circumvent a ban, it seems!) to Charlie Hebdo in 1970."
  2. ^ "Charlie Hebdo" triple ses ventes avec les caricatures de Mahomet” (fr). L'Obs (2012年10月4日). 2015年1月9日閲覧。
  3. ^ Santi, Pascale (2006年2月14日). “Cavanna et les cons”. M Livres. Le Monde. 2015年1月12日閲覧。
  4. ^ Charlie Hebdo: survivors' issue to sell outside France”. Agence France-Presse. theguardian.com (2015年1月10日). 2015年1月12日閲覧。
  5. ^ a b c ブライシュ 2014, pp. 70-72.
  6. ^ a b c 読売新聞、2015年1月15日付朝刊
  7. ^ Le jugement de l'affaire Charlie Hebdo”. 2015年4月閲覧。
  8. ^ 『ル・フィガロ』2008年3月12日
  9. ^ “フランス風刺紙の編集部、火炎瓶で焼ける 表紙に預言者の風刺画”. AFPBBNews (フランス通信社). (2011年11月2日). http://www.afpbb.com/articles/-/2838702?pid=8020771 2015年1月12日閲覧。 
  10. ^ “風刺週刊紙で銃撃、12人死亡=大統領、テロと断定-イスラム過激派の犯行か・パリ”. 時事通信. (2015年1月8日). http://www.jiji.com/jc/c?g=int&k=2015010700877 2015年1月16日閲覧。 
  11. ^ “シャルリー紙、福島原発事故を皮肉る風刺画掲載”. 読売新聞. (2015年3月18日). http://www.yomiuri.co.jp/world/20150318-OYT1T50182.html 2015年3月19日閲覧。 
  12. ^ 仏紙シャルリーが地震風刺画、被災者を「ラザニア」扱い 伊激怒AFPBB 2016年9月3日
  13. ^ パリの新聞社襲撃、12人死亡 イスラム教風刺で物議 朝日新聞 2015年1月7日
  14. ^ フランス:覆面男3人銃乱射、12人死亡 パリの週刊紙社 毎日新聞 2015年01月07日
  15. ^ 宮下日出男 (2015年1月19日). “【仏紙銃撃テロ】ムハンマド風刺画掲載、57%が支持 反対も42% 仏世論調査”. 産経新聞. 2015年3月12日閲覧。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]