ミシェル・ウエルベック

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ミシェル・ウエルベック
Michel Houellebecq
2008.06.09. Michel Houellebecq Fot Mariusz Kubik 01.jpg
ミシェル・ウエルベック(2008年)
誕生 Michel Thomas
(1958-02-26) 1958年2月26日(59歳)
フランスの旗 フランスレユニオン
職業 小説家
国籍 フランスの旗 フランス
代表作 『素粒子』(1998年)
『ある島の可能性』(2005年)
『地図と領土』(2010年)
主な受賞歴 国際IMPACダブリン文学賞(2002年)
アンテラリエ賞(2005年)
ゴンクール賞(2010年)
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ミシェル・ウエルベック(Michel Houellebecq [miʃɛl wɛlˈbɛk], 1958年2月26日 - )はフランスの小説家、詩人。

経歴[編集]

フランスの海外県であるインド洋の孤島レユニオンミシェル・トマ(Michel Thomas)として生まれる。父はスキーインストラクター兼登山ガイド、母は麻酔専門医であったが、両親がはやくに幼いウエルベックの育児を放棄したため(その後離婚)、6歳のときよりパリのセーヌ=エ=マルヌ県在住の母方の祖母のもとで育てられた。この祖母は共産主義者で、ウエルベックが20歳のときに死去した。のちに筆名として採用した「ウエルベック」は、この母方の祖母の旧姓から取られている[1]

同県モーのアンリ・モアッサン中学校で寄宿生として過ごしたのち、1980年、 グランゼコール国立パリ-グリニョン高等農業学校フランス語版を卒業。同校は農業技官を育成するためのエリート校であり、過去の卒業生にアラン・ロブ=グリエがいる。卒業後最初の結婚をし息子をもうけるが、やがて離婚。精神が不安定になりたびたび精神病院に入院するようになる。この頃に農業学校時代にはじめた詩作を再開し、1985年、『ヌーヴェル・レビュー』誌に自作の詩がはじめて掲載された[1]

1991年、10代のときに愛読していたラヴクラフトの伝記『H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って』を出版。続けて2冊の詩集『生きてあり続けること』(1991年)、『幸福の追求』(1992年)を出版し、後者でトリスタン・ツァラ賞を受賞。この間にはコンピュータの管理者としてパリで働いていた。1994年、初の小説『闘争領域の拡大』をモーリス・ナドー社から出版し、カルト的な人気を得る[1]。1998年、長編第一作『素粒子』を発表。強い性的コンプレックスを持つ男性高校教師と孤高の天才科学者という、対照的な異父兄弟の私的な物語を、量子論遺伝子工学といった科学的知見を交え壮大なSF的枠組みの中で語るという異色の作品で、出版後フランスの読書界にセンセーションを起こし30ヶ国語に訳された。

その後中編小説『ランサローテ島』(2000年)を経て2001年に長編第二作『プラットフォーム』を出版。タイを舞台としたセックスツーリズム(売春観光)をテーマとした作品で、人権思想家やフェミスト、イスラム原理主義などへの攻撃的な文章が、アメリカ同時多発テロ事件と時期的に重なったこともあいまってスキャンダラスな話題作となった。2005年にはふたたびSF的な構想に挑戦した長編第三作『ある島の可能性』を刊行、著者自ら「自分の最高傑作」を自負した作品でこれもベストセラーとなる。ウエルベックは『素粒子』『プラットフォーム』『ある島の可能性』でそれぞれゴンクール賞にノミネートされながら受賞を逃していたが、2010年、架空の現代美術家の生涯を主題にした長編『地図と領土』によってこの賞を受賞した。この作品ではウエルベックが主要人物の一人として登場するほか、フランス語版ウィキペディアからの引用部分が剽窃に当たるとして訴えられたことでもメディアを騒がせた[2]

2015年1月7日、「2022年ムスリムマリーヌ・ル・ペンを破ってフランス大統領となる」という近未来小説『服従』を発表した[3]が、奇しくもその日にシャルリー・エブド襲撃事件が起きた。同日発売されていたシャルリー・エブドの一面には『2015年に私は歯を失い、2022年に私は断食をする』と言うウエルベックの戯画が掲載されていた[4]。その上、ウエルベック自身がたびたびイスラム教を批判していたこともあって国内外で大きな反響を呼びフランス国内で60万部を超えるベストセラーになったが、彼の友人のエコノミスト、ベルナール・マリスフランス語版が事件で殺害されたことを受け、ウエルベックは『服従』の広報活動を中止した。同年1月27日、ウエルベックは警察の保護下に入ったと伝えられている[5]。その後、1月末にウエルベックは姿を現し、「我々には火に油を注ぐ権利がある」と発言した[6]

そして『服従』は、同年11月13日に発生したパリ同時多発テロ事件の背景を理解する上で貴重な視点を提供する作品と称されることとなった[7]。同書は同年9月に日本でも発売された。

ウエルベックは著作活動のほか、自作の詩を用いた音楽活動なども行っており、これまでに3枚の音楽CDを出している。2008年には自作『ある島の可能性』をみずからの監督で映画化した。

著書[編集]

小説[編集]

詩集[編集]

エッセイ集、その他[編集]

日本語訳[編集]

映像化[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c ミシェル・ウエルベック 『素粒子』野崎歓訳、筑摩書房、2001年、349-352頁。
  2. ^ Davies, Lizzy (8 September 2010). "Houellebecq fights off claims of plagiarism in new novel". The Guardian, Main section, p. 16. Published online (7 September 2010) as "Michel Houellebecq novel ruffles literary world again". Retrieved 15 September 2010.
  3. ^ 近未来の「フランス・イスラム政権」、小説家ウエルベック氏新作フランス通信社2015年1月6日、同年3月11日閲覧
  4. ^ Attentat à Charlie Hebdo : Houellebecq à la Une du numéro en kiosque, Le Parisien, 2015年1月7日、同年3月11日閲覧
  5. ^ Alice Coffin Attentat à «Charlie Hebdo»: Michel Houellebecq sort de son silence, 27 janvier 2015 sur le site du journal 20 Minutes
  6. ^ イスラモフォビアとフランス流「自由原理主義」の疲弊月刊WEDGE2015年3月号、同年12月20日閲覧
  7. ^ “同時テロを「予言」!? 小説『服従』にみるフランスの現在、未来”. 読売新聞. (2015年11月19日). http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20151119-OYT8T50062.html 2015年11月20日閲覧。 

参考文献[編集]

  • ミシェル・ウエルベック 『素粒子』 野崎歓訳、筑摩書房、2001年(訳者解説)
  • ミシェル・ウエルベック 『闘争領域の拡大』 中村佳子訳、角川書店、2004年(訳者解説)

外部リンク[編集]