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数学的な文章では、抽象的な概念を簡潔に記述するために様々な特殊な記号が用いられる。本項は、しばしば用いられるそれらの記号とその慣用的な使われ方の一例を記した数学記号の一覧表である[注 1]。なお流儀や時代によって使用される記号やその意味が異なることがある。ここで示されるのはあくまで一例である。
記号論理の記号[編集]
以下の解説において、文字 P, Q, R はそれぞれ何らかの命題を表すものとする。
集合論の記号[編集]
以下の解説において、S, T は任意の集合を表す。
集合演算
| 記号 |
意味 |
解説 |
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共通部分 |
「S ∩ T」は集合 S と集合 T の共通部分を表す。また

は、集合族 {Sλ} のすべての共通部分を表す。 のとき,上の集合族を

と書くことがある.
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和集合 |
「S ∪ T」は集合 S と集合 T の和集合を表す。また、

は、集合族 {Sλ} のすべての和集合を表す。 が上欄のものであるとき,上の集合族を

と書くことがある.
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直和集合 |
「S + T」は「S ∪ T」に同じであるが、S ∩ T が空集合であることを暗黙に述べている。
この場合、集合族の和集合は次のように記す。

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差集合 |
「S ∖ T」は、集合 S から集合 T を除いた差集合を表す。「S − T」も同じ。 |
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補集合 |
Sc は、集合 S の補集合を表す。「 」も同じ。 |
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冪集合 |
2Sは、S の部分集合をすべて集めた集合を表す。 とも書く。 |
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順序対 |
元の順序付けられた組 |
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直積集合 |
「S × T」は S と T の直積を表す。一般に、集合族 {Sλ} に属する集合の直積を

のように記す。
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商集合 |
「S/∼」は、集合 S の同値関係 ∼ によって定まる S の商集合を表す。 |
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写像の全体 |
Map(S,T) や TS は S から T への写像をすべて集めた集合を表す。 |
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対称差 |
対称差は、二つの集合に対し、一方には含まれるが他方には含まれない元をすべて集めた集合を表す。

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順序構造
| 記号 |
意味 |
解説 |
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大小関係, 順序 |
「x < y」は x と y の間に何らかの順序が定まっていて、x の方が「先」であることを示す。必要に応じて「y > x」とも書く。 |
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| ≦ |
大小関係, 順序 |
「x ≦ y」とは「x < y または x = y」のことである。「x ≧ y」も同様に定義される。 |
| ≧ |
| (•, •) |
開区間 |
(a, b) は {x : a < x < b} を表す |
| ]•, •[ |
| [•, •] |
閉区間 |
[a, b] は {x : a ≦ x ≦ b} を表す |
| (•, •] |
半開区間 |
(a, b] は {x : a < x ≦ b} を表す |
| ]•, •] |
| [•, •) |
[a, b) は {x : a ≦ x < b} を表す |
| [•, •[ |
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上限 |
集合 S に対し、sup S は S の上限を表す。また、写像 f に対し、f(S) の上限を次のようにも書く。

その他、幾つかの記法のバリエーションがある。
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下限 |
上限と同様。 |
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最大値 |
記法は上限と同様 |
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最小値 |
記法は上限と同様 |
ある数学定数を表すために広く習慣的に使われる記号がいくつかある。
| 記号 |
意味 |
解説 |
| 0 |
0 |
加法における単位元、乗法の零元などを指す。 |
| 1 |
1 |
乗法の単位元、加法の零元などを指す。 |
| π |
円周率 |
円周の直径に対する比 |
| e |
ネイピア数(自然対数の底) |
リンク先参照。定義の一例として なる a。 |
| i |
虚数単位 |
自乗して −1 となる数。電気工学系ではしばしば j を用いる。 |
| j, k |
1, i と共に四元数体の、R上のベクトル空間としての基底をなす。 |
幾何学の記号[編集]
距離空間
| 記号 |
意味 |
解説 |
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距離関数 |
d(x, y) は x と y' との距離 |
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径 |
diam(X) は d(x, y) (x, y ∈ X) の上限 |
解析学の記号[編集]
微分積分
| 記号 |
意味 |
解説 |
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導関数, 微分 |
関数 f に対し、f' は f の導関数を表す(ラグランジュの記法)。' はプライム、まれにダッシュとも呼ばれる。
また、次のようにも表記される。

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偏微分 |
:多変数関数 f(x, y) の y に関する偏微分。 |
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積分 |
: 関数 f(x) の区間 [a,b] における積分 |
: f(x) の領域 D における積分 |
: f(x) の不定積分。または、積分域が明らかな場合の略記 |
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ナブラ |
各成分を微分するベクトル微分作用素 |
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ラプラシアン |
2つの ∇ の内積になるラプラスの微分作用素 |
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ダランベルシアン |
物理学において、時空の空間成分のラプラシアンに時間成分を加えたもの |
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は D 上で定義された k 回連続微分可能な関数からなる集合 |
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発散(湧き出し) |
ベクトル場 A(x) に対する ∇·A(x) を与える |
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回転(渦度) |
ベクトル場 A(x) に対する ∇×A(x) を与える |
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勾配 |
スカラー場 f(x) に対する ∇f(x) を与える |
代数学の記号[編集]
| 記号 |
意味 |
解説 |
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絶対値 |
|x| は x の絶対値である。 |
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ノルム |
‖x‖ は x のノルムである。 |
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実部 |
複素数 z に対し、Re(z) はその実部を、Im(z) はその虚部を表す。z = Re(z) + i Im(z) |
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 |
虚部 |
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共役複素数 |
複素数 z に対し、 はその共役複素数を表す。 |
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次数 |
多項式 f に対して、deg f はその次数を表す。 |
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冪根、根基 |
n√x は x の n 乗根を表す。n が 2 であるときには単に √x と書くことが多い。イデアルの根基をあらわす。 |
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内積 |
<x, y> は x と y の内積を表す |
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| 記号 |
意味 |
解説 |
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次元 |
ベクトル空間 V に対し、「dim V」は V の次元を表す。 |
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行列式 |
|X| は行列 X の行列式である。 |
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トレース |
tr(X) は行列 X のトレースである。 |
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転置 |
tX は行列 X の転置行列である。 |
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階数 |
線形写像 φ に対して、rank φ は dim Image(φ) を表す。また、行列 A に対して、rank A は A の階数を表す。 |
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核, 零空間 |
群や環の準同型、ベクトル空間の間の線形写像 φ に対して、Ker φ はその準同型の核を表す。 |
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像 |
群や環の準同型、ベクトル空間の間の線形写像 φ に対して、Im φ はその準同型の像を表す。 |
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準同型の集合 |
HomK(F, G) は、作用域 K のある代数系 F, G の間の作用準同型 (homomorphism) 全体からなる集合を表す。 |
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自己同型群 |
Aut(G) は、G のそれ自身に対する同型 (automorphism) 全体からなる群を表す。 |
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内部自己同型群 |
Inn(G) は、G の内部自己同型 (inner automorphism) 全体からなる群を表す。 |
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自己準同型 |
End(G) は、G のそれ自身に対する準同型 (endomorphism) 全体からなる集合(モノイド)を表す。 |
| 記号 |
意味 |
解説 |
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生成 |
G を群とすると、G の部分集合 S に対し、〈S〉 は S の生成する部分群を表す。特に、S が一元集合 S = {x} であるときには 〈x〉 とも書く。これは x の生成する巡回群である。環やベクトル空間などについても同様の記法を使う。 |
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生成するイデアル |
(a, ...) は a, ... の生成するイデアル |
![K[\bullet ]](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/da1f2c1dbec5a995656162fb7fc609b5cb9ad403) |
多項式環、生成する環 |
K を可換環とするとき、K[x, ...] は K と {x, ...} を含む最小の環。生成系が不定元のみからなれば多項式の環である。 |
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有理関数環、生成する体 |
K を可換体とするとき、K(x, ...) は K と {x, ...} を含む最小の体。生成系が不定元のみからなれば有理式の体である。 |
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非可換多項式環、生成する環 |
K を非可換環とするとき、K〈x, ...〉 は K と {x, ...} を含む最小の環。 |
統計学の記号[編集]
統計学
| 記号 |
意味 |
解説 |
| r. v. |
確率変数 |
random variable の略 |
| p. m. f. あるいは pmf |
確率質量関数 |
probability mass function の略 |
| p. d. f. あるいは pdf |
確率密度関数 |
probability density function の略 |
 |
“確率変数”が“確率分布”に従う |
は確率変数 X が確率分布 に従うことを表す |
| i. i. d. |
独立同分布 |
independent and identically distributed の略。X1, ..., Xn i.i.d. は確率変数 X1, ..., Xn が同じ確率分布に独立に従うことを表す |
![{\displaystyle P[\bullet ],\mathbb {P} [\bullet ]}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/f23402670a3a2c2e3af04e06470c8fd8b22f77a0) |
確率 |
P[E] は事象 E の確率 |
![{\displaystyle E[\bullet ],\mathbb {E} [\bullet ]}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/f84d64b3438b1ee8ad0c0c2d337e217a2d79b61a) |
期待値 |
E[X] は確率変数 X の期待値 |
![{\displaystyle V[\bullet ]}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/c40073fa44417826c45d04c7586a1177e85e0931) |
分散 |
V[X] は確率変数 X の分散 |
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正規分布 |
平均 μ、分散 σ2 の正規分布 |
- ^ 数学においては、各々の記号はそれ単独では「意味」を持たないものと理解される。それらは常に、数式あるいは論理式として文脈(時には暗黙のうちに掲げられている、前提や枠組み)に即して評価をされて初めて、値として意味を生じるのである。ゆえにここに掲げられる意味は慣用的な一例に過ぎず絶対ではないことに事前の了解が必要である。記号の「読み」は記号の見た目やその文脈における意味、あるいは記号の由来(例えばエポニム)など便宜的な都合(たとえば、特定のグリフをインプットメソッドを通じてコードポイントを指定して利用するために何らかの呼称を与えたりすること)などといったものに従って生じるために、「記号」と「読み」との間には相関性を見いだすことなく分けて考えるのが妥当である。
- ^ 言語によっては
% をエスケープする必要があり、たとえばR言語では %% が用られる。
参考資料[編集]
関連項目[編集]