虚数単位

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
複素平面(ガウス平面)上の虚数単位 i。横軸は実数全体を表し、それ以外の部分が虚数である。

虚数単位(きょすうたんい、: imaginary unit)とは、−1 の平方根2乗して −1 になる)である2つの数のうちの1つの数のことである(どちらかを特定することはできない)。そのような数を記号で または で表す。

任意実数の2乗は0以上なので、虚数単位は実数でない。虚数単位は、実数の概念を複素数に拡張するための数である。

虚数単位の記号 imaginary の頭文字から採られている。ただし、 を別の意味(電流など)の記号として使う場合は、虚数単位を などの i 以外の文字で表す(その場合にはどの文字を用いるかを初めに必ず宣言する)。

交換法則が成り立たないこと(非可換体)を許容すると、異なる3個以上の虚数単位からなる数の体系(多元数)を考えることができる。

四元数の場合は3個の虚数単位 八元数の場合は7個の虚数単位 十六元数の場合は 15個の虚数単位 を実数に添加する。

定義[編集]

虚数単位 i とは、2次方程式 x2 + 1 = 0 の2つののうちの一方のことであり、

あるいは

とも表すことができる。解の一方を i とすれば、(x + i)(xi) = 0 より、解の他方は i である。

実数に虚数単位 i を添加してできた拡大体」を複素数体、その元(要素)複素数という。特に実数でない複素数を虚数という。

同様に、「複素数体に、虚数単位 i とは異なるもう一つの虚数単位 j を添加してできた拡大体」を四元数体といい、その元を四元数という。このとき、ij = k とおくと、k も虚数単位である。すなわち を満たす。この i, j, k をそのまま虚数単位とすることもできるが、複素数体の場合に ii と置き直しても同じ構造であるのと同じように、四元数体 H においても、虚数単位を取り直すことができる。すなわち、R3正規直交基底を一組選び、

によって写した像を新たに i, j, k とおいて虚数単位としてもよい。ただし、基底を左手系に取ると ij = −k となってしまうので、数学的な必然性はないが、慣習として右手系が選ばれる。

つまり虚数単位は、複素数四元数の範囲を、実数部分と虚数部分に分けた時の、後者の方の基本単位である。八元数十六元数はさらに多くの虚数単位を持つ。

行列表現[編集]

線型代数学(あるいは線型表現)の知識を用いると、虚数単位が複素二次正方行列で表される。実際、

で定義される行列 J は、J2 = −EE は 2 次単位行列)という性質を持つ。これは、虚数単位 i の左からの積が引き起こす複素数体 C一次変換を、表現空間 C を2次元実ベクトル空間 R2 と見て行列表現することにより得られる。

四元数についても同様に、四元数体 H における積を C2 に対して引き起こされる一次変換と見なすことにより

という3つの虚数単位の行列表現を考えることができる。また、C2 と見なすのでなく R4 と見なせば、4 次の正方行列として表現することもできる。詳しくは四元数の項を参照されたい。

行列の積は結合的であるので、八元数や十六元数では(結合法則を満たさないため)このような表示はできない。

虚数単位の演算[編集]

を整数、ネイピア数とする。

虚数単位の累乗
虚数単位の虚数単位乗
 [1]
1の虚数単位乗
 [2]
虚数単位の自然対数
 [3]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ ポール・J・ナーイン 『虚数の話』 pp. 270–271、青土社、2008年。
  2. ^ 表実 『理工系の数学入門コース5 複素関数』 p. 115、岩波書店、1988年。
  3. ^ 岸正倫・藤本担孝 『複素関数論』 p. 45、学術図書出版社、1980年。

参考文献[編集]

  • ポール・J・ナーイン 『虚数の話』 青土社、2008年

関連項目[編集]