年刊日本SF傑作選

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

年刊日本SF傑作選』(ねんかんにほんエスエフけっさくせん)は、東京創元社が刊行する年度別SFアンソロジー。編者は大森望日下三蔵2007年の作品を集めた『虚構機関』(2008年12月刊)より、創元SF文庫で毎年刊行されている。

姉妹編として、大森望単独編集の《ゼロ年代日本SFベスト集成》(『〈S〉ぼくの、マシン』『〈F〉逃げゆく物語の話』)が同じく創元SF文庫より刊行された。

毎年十数作に及ぶ日本語SF短編中編を収録する。日本SFの年刊傑作選の刊行は、『日本SFベスト集成』(筒井康隆編、徳間書店 1960年代版・1971年版~1975年版)以来である。

編者[編集]

編者はそれぞれ別のアンソロジーの編者も務めており、大森望は『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション』(河出文庫 2009年~)を、日下三蔵は『日本SF全集』(出版芸術社 2009年~)を編集している。1957年2006年の作品を対象とした『日本SF全集』は、2007年作品から始まった『年刊日本SF傑作選』の前史的な位置づけが与えられている。

大森は第1集『虚構機関』の序文で、日下・大森をそれぞれ、『ワールズ・ベストSF』のウォルハイムカー(理由は示されていない)、および、『日本SFベスト集成』の筒井康隆(SF作家の作品から選ぶ)と『年刊SF傑作選』のジュディス・メリル(周辺作品から選ぶ)になぞらえている。

3『量子回廊』以降に収録されている創元SF短編賞受賞作の選考にあたっては、毎回ゲスト選考委員が参加している。

対象作[編集]

収録の対象となるのは、奥付に準拠し毎年1月~12月(月刊誌では1月号~12月号)に発表された日本語作品。期間内の発表なら同人誌ウェブ公開など商業出版以外も対象となる。

原則として発表済みの作品が対象だが、例外的に、1『虚構機関』には円城塔の未発表作(群像新人文学賞2次選考通過作品)、2『超弦領域』には同じ円城の書き下ろしが収録されている。2『超弦領域』刊行時には、大森・日下が選考委員を務める創元SF短編賞の募集が開始され、3『量子回廊』以降には各回の受賞作と選評が巻末に掲載されている。

大部分は小説だが、各巻1~2作の漫画が収録されている。また短歌エッセイなど小説以外の文学作品もある。

SFマガジン』誌(早川書房)、『SF Japan』誌(徳間書店)、アンソロジーシリーズ『異形コレクション』(光文社井上雅彦編)から重点的に収録されている[1]。『NOVA1 書き下ろし日本SFコレクション』(河出書房新社、大森望編)、『神林長平トリビュート』(早川書房)からの収録は見合わされた[2]

刊行[編集]

各巻のタイトルに意味はなく、SFらしい響きの四字熟語を名付ける方式をとっていたが、7『さよならの儀式』からは収録作のタイトルからとっている。『虚構機関』は山田正紀エイダ』に登場する装置の名で、収録作「The Indifference Engine」(「公平化機関」の意味)にもかけている。『超弦領域』は山田正紀『超弦世界のマリア』(連載中断・未単行本化作)と半村良不可触領域』の合成である[3]

1『虚構機関』は年刊傑作選としては遅めの翌年12月刊行だったが、これは企画が立ち上がったのが遅かったため。次巻からは、翌年6–7月という標準的な時期に出ている。

各巻には両編者による序文と後記(1『虚構機関』では大森が序文・日下が後記、以下、各巻交代)および、大森望による年度概況が収録されている。また、短編推薦作リストも掲載されている。

各収録作には、冒頭に編者による作品解説・著者紹介、末尾に「著者のことば」(一部ないものあり)が収録されている。

SFが読みたい! 2010年版』(対象:2008年11月〜2009年10月発行書籍)では、『虚構機関』が8位、『超弦領域』が7位となった(『虚構機関』の刊行が遅かったために同年の年間ランキングにランクインした)。

収録作リスト[編集]

『虚構機関』(2007年作品)[編集]

全16作

『超弦領域』(2008年作品)[編集]

全15作

『量子回廊』(2009年作品)[編集]

全19作

『結晶銀河』(2010年作品)[編集]

全14作

  • 冲方丁「メトセラとプラスチックと太陽の臓器」
  • 小川一水「アリスマ王の愛した魔物」
  • 上田早夕里「完全なる脳髄」
  • 津原泰水「五色の舟」
  • 白井弓子「成人式」
  • 月村了衛「機龍警察 火宅」
  • 瀬名秀明「光の栞」
  • 円城塔「エデン逆行」
  • 伴名練「ゼロ年代の臨界点」
  • 谷甲州「メデューサ複合体」
  • 山本弘「アリスへの決別」
  • 長谷敏司「allo, toi, toi」
  • 眉村卓「じきに、こけるよ」
  • 酉島伝法「皆勤の徒」(第2回創元SF短編賞受賞作)

『拡張幻想』(2011年作品)[編集]

全18作

  • 小川一水「宇宙でいちばん丈夫な糸 ――The Ladies who have amazing skills at 2030.」
  • 庄司卓「5400万キロメートル彼方のツグミ」
  • 恩田陸「交信」
  • 堀晃「巨星」
  • 瀬名秀明「新生」
  • とり・みき「Mighty TOPIO」
  • 川上弘美「神様 2011」
  • 神林長平「いま集合的無意識を、」
  • 伴名練「美亜羽へ贈る拳銃」
  • 石持浅海「黒い方程式」
  • 宮内悠介「超動く家にて」
  • 黒葉雅人「イン・ザ・ジェリーボール」
  • 木々津克久「フランケン・ふらん ―OCTOPUS―」
  • 三雲岳斗「結婚前夜」
  • 大西科学「ふるさとは時遠く」
  • 新井素子「絵里」
  • 円城塔「良い夜を持っている」
  • 理山貞二「〈すべての夢|果てる地で〉」(第3回創元SF短編賞受賞作)

『極光星群』(2012年作品)[編集]

全12作

  • 宮内悠介「星間野球」
  • 上田早夕里「氷波」
  • 乾緑郎「機巧のイヴ」
  • 山口雅也「群れ」
  • 高野史緒「百万本の薔薇」
  • 會川昇「無情のうた 『UN‐GO』第二話(坂口安吾「明治開化 安吾捕物帖 ああ無情」より)」
  • 平方イコルスン「とっておきの脇差」
  • 西崎憲「奴隷」
  • 円城塔「内在天文学」
  • 瀬尾つかさ「ウェイプスウィード」
  • 瀬名秀明「Wonderful World」
  • 宮西建礼「銀河風帆走」(第4回創元SF短編賞受賞作)

『さよならの儀式』(2013年作品)[編集]

16編収録。

『折り紙衛星の伝説』(2014年作品)[編集]

18編収録。

  • 長谷敏司「10万人のテリー」
  • 下永聖高「猿が出る」
  • 星野之宣「雷鳴」
  • 理山貞二「折り紙衛星の伝説」
  • 草上仁「スピアボーイ」
  • 円城塔「∅」
  • 堀晃「再生」
  • 田丸雅智「ホーム列車」
  • 宮内悠介「薄ければ薄いほど」
  • 矢部嵩「教室」
  • 伴名練「一蓮托掌(R・×・ラ×ァ×ィ)」
  • 三崎亜記「緊急自爆装置」
  • 諸星大二郎「加奈の失踪」
  • 遠藤慎一「『恐怖の谷』から『恍惚の峰』へ~その政策的応用」
  • 高島雄哉「わたしを数える」
  • オキシタケヒコ「イージー・エスケープ」
  • 酉島伝法「環刑錮」
  • 宮澤伊織「神々の歩法」(第6回創元SF短編賞受賞作)

『アステロイド・ツリーの彼方へ』(2015年作品)[編集]

20編収録。

  • 藤井太洋「ヴァンテアン」
  • 高野史緒「小ねずみと童貞と復活した女」
  • 上遠野浩平「製造人間は頭が固い」
  • 宮内悠介「法則」
  • 坂永雄一「無人の船で発見された手記」
  • 森見登美彦「聖なる自動販売機の冒険」
  • 速水螺旋人「ラクーンドッグ・フリート」
  • 飛浩隆「La poésie sauvage」
  • 高井信「神々のビリヤード」
  • 円城塔「〈ゲンジ物語〉の作者、〈マツダイラ・サダノブ〉」
  • 野崎まど「インタビュウ」
  • 伴名練「なめらかな世界と、その敵」
  • ユエミチタカ「となりのヴィーナス」
  • 林譲治「ある欠陥物件に関する関係者への聞き取り調査」
  • 酉島伝法「橡(つるばみ)」
  • 梶尾真治「たゆたいライトニング」
  • 北野勇作「ほぼ百字小説」
  • 菅浩江「言葉は要らない」
  • 上田早夕里「アステロイド・ツリーの彼方へ」
  • 石川宗生「吉田同名」(第7回創元SF短編賞受賞作)

『行き先は特異点』(2016年作品)[編集]

20編収録。

  • 藤井太洋「行き先は特異点」
  • 円城塔「バベル・タワー」
  • 弐瓶勉「人形の国」
  • 宮内悠介「スモーク・オン・ザ・ウォーター」
  • 眉村卓「幻影の攻勢」
  • 石黒正数「性なる侵入」
  • 高山羽根子「太陽の側の島」
  • 小林泰三「玩具」
  • 山本弘「悪夢はまだ終わらない」
  • 山田胡瓜「海の住人」
  • 飛浩隆「洋服」
  • 秋永真琴「古本屋の少女」
  • 倉田タカシ「二本の足で」
  • 諏訪哲史「点点点丸転転丸」
  • 北野勇作「鰻」
  • 牧野修「電波の武者」
  • 谷甲州「スティクニー備蓄基地」
  • 上田早夕里「プテロス」
  • 酉島伝法「ブロッコリー神殿」
  • 久永実木彦「七十四秒の旋律と孤独」(第8回創元SF短編賞受賞作)

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 1『虚構機関』解説(日下)
  2. ^ 3『量子回廊』序文(大森)
  3. ^ 各巻序文

関連項目[編集]

かつて刊行されていた年刊のSF傑作選

外部リンク[編集]