鉄道の車両番号
鉄道の車両番号(てつどうのしゃりょうばんごう)は、鉄道車両1両ごとに付与される、固有の記号番号のこと。略して車番(しゃばん)とも。
形式称号(○○形、○○系などの○○の部分)を含んでいる場合が多いが、絶対ではない。なお、○○形とは、デザイン・性能などが同じ制御車・付随車・動力車に与えられる番号のこと。○○系とは、一連の○○形の車両群のこと[1]。
概要
同じ鉄道事業者に在籍する他の車両との区別のため、管理上の必要から付されるもので、日本においては、同じ記号番号を持つ車両が同時に同じ鉄道事業者に在籍することは通常ないが、かつての国鉄をはじめ、まれに2両以上が同時に在籍することがある(→二車現存)。またかつての殖民軌道では、車両番号が付されないこともあった。
日本においては多くの場合、アラビア数字のみ、または片仮名との併記で表される。数字のみならずアルファベット・平仮名・ローマ数字・漢字などを用いることもある。番号は形式に関連付けられていることが多いが、形式と番号を完全に分離して併記するケース、逆に形式と番号に全く関連性のないケース[2]も見られる。
具体的画像は、Category:鉄道車輌番号画像も参照。
車両への表示
車両番号は車体正面や側面、また車内などに表示される。表示方法はさまざまで、鉄板にカット活字を載せたナンバープレート、車体にカット活字を貼り付けたもの、車体に直接ペンキで書いたりなどがある。車両番号に片仮名を含む場合、日本国有鉄道(国鉄) - JR各社では「クモヤ145-1007」のように片仮名も表記するが、四国旅客鉄道(JR四国)の新形式車両や私鉄の多くでは通常、車体に車種片仮名を表記せず数字部分のみとする(京成電鉄や西武鉄道の一部旧型車両では片仮名も併記されている)。
車番表示の書体は概ね標準的なゴシック体だが、各鉄道営業体に特有の書体を用いる場合もある(阪神電気鉄道、南海電気鉄道、神戸市営地下鉄、名古屋鉄道、東京メトロなど)。細かく見れば、同じゴシック体のようでも各営業体で微妙に異なるのが分かる。またJR各社も、車種片仮名や数字の書式については旧国鉄時代のものを引き継いできたが、21世紀初頭になって西日本旅客鉄道(JR西日本)(207系以降の新型車両、221系は車内ナンバープレートのみ)でのゴナ(および683系・改造諸系列(103・113・201系30/40N更新車含む)などのモリサワ新ゴ)体、東日本旅客鉄道(JR東日本)・近畿日本鉄道(21000系以降の特急形および30000系「ビスタEX」、シリーズ21以降の通勤形)のヘルベチカ、など、新型車両での別書体採用、従来型車両での書体変更も見られるようになった。 また、九州旅客鉄道(JR九州)の一部車両で見られる、ゴシック体で文字の周りを1文字ずつ四角で囲む『水戸岡デザイン』のような特殊な書体も見られる。
鉄道のナンバープレートは、廃車された蒸気機関車のものなどについてコレクションの対象となっており、プレミアムが付いて取引されたりする。各鉄道事業者が車庫見学会などの折、他の鉄道廃材と並べ即売会を行うこともある。一方でコレクションが昂じて、あまり厳重に管理されていない公園に静態保存されている車両、更には現役の車両から窃盗する事件も発生している。
具体的車両番号
以下を参照。
特徴的な例
- 機関車では、運転整備重量を形式の一部として付与するケースが見られる。機関車の大きさを把握するのに最適であることから、産業用を中心に私鉄・臨海鉄道用の機関車に採用例が多い。国鉄の機関車としては、B20形蒸気機関車が唯一例である。
- 富山地方鉄道では鉄道線車両のほとんどに数字5桁の大きな車番 (xxxyy) が付いているが、これは上3桁 (xxx) で電動機出力をPS(馬力)で表しているためである(電動車の場合)。下2桁 (yy) は形式番号。同社の軌道線車両でも、4桁 (xxyy) ある車番の上2桁 (xx) を電動機出力としている。かつては鉄道線にも4桁車番があった。以前の南海電気鉄道でも、電動機出力を車番(形式)に用いていた。
- 十和田観光電鉄では自社発注の電車は木造車には1400番台を、鋼製車には2400番から新造順に1000番刻みで付番。譲受車は前所属鉄道会社での形式を使用(一部例外あり)。機関車(Exyy)は動輪数(x)・自重(yy)で形式を規定する「仙鉄式」を採用。さらに電車・機関車で末尾を連番としていた。
- 東京メトロが営団地下鉄時代に昭和末期から東京メトロ発足まで製造した車両は「0x系」と最初に0がついていた。形式番号は「0x」の後にハイフンと3桁の数字が入る。
- 都営地下鉄新宿線と大江戸線、りんかい線の車両は「xx-yyy」と、3桁目の前にハイフンが入る。
- 富士急行では3100形から5700形まで(7000形・キハ58形を除く)、形式の上位2桁は導入初年度を採用していた。
- 高松琴平電気鉄道の初期の車両には、形式をn桁、現車の番号は (n-1) 桁として、実質的にそのうちの何桁かのみを使用して車番を表すというケースがあった(具体的には、形式は1000形で、番号は100、110、120、130…といった具合)。事実上2桁で必要十分な形式番号を4桁にまで"粉飾"してしまった例だが、これが何を意図したものであったのかは不明である。
- 大阪市交通局の新20系では、届け出上の形式は4桁だが現車の番号は5桁で、使用する路線の番号 (1 - 5) が千の位に入っている。
- 東武鉄道の10000系以降の通勤型電車および西武30000系電車では、編成の長さを表す数字が入っている(東武では百の位、西武では千の位)。
- 2013年現在、現役の旅客用車両で最も大きな数字を持つ形式は小田急電鉄60000形と東武鉄道60000系である(呼称のみに注目する場合、公式呼称が「ななまんがた」である東京臨海高速鉄道70-000形が最大であるとも言える)。
- 語呂合わせ(四の字)の点から、特に4000番台の形式・番号が割り振られる車両は少ない。中小の地方私鉄では個々の車両番号の末尾の4・9を欠番にしていた例もある。
- 大部分の事業者では製造番号を1から振ることが多いが、阪急電鉄・山陽電気鉄道ではトップナンバーを0としている。
アラビア数字以外を含む車両形式の例
機関車については各鉄道事業者とも、動力方式・動力軸数を示すアルファベットを冠するケースがほとんどである。また私鉄の旅客用車両には、動力方式を片仮名で形式名に含む例が多い。デ・モ(電車)、キ・ケ・ジ(ディーゼルカー)など。
- 社名に由来
- 東日本旅客鉄道(JR東日本)E1系 (Max)、E5系電車、E7系電車、E351系電車、E231系電車など("East Japan Railway"に由来。E351系以後のJR東日本の各新形式車両にみられる)
- 西日本旅客鉄道(JR西日本) W7系電車 ("West Japan Railway"に由来)
- 北海道旅客鉄道(JR北海道) H5系電車 ("Hokkaido Railway"に由来)
- 信楽高原鐵道SKR-310形、天竜浜名湖鉄道TH2100形、宮福鉄道(後の北近畿タンゴ鉄道、現在はWILLER TRAINSに移管)MF100形・MF200形など(会社名の英文表記の略称に由来。第三セクター鉄道に多い)
- 伊勢鉄道イセIII形など(会社名の読みに由来)
- わたらせ渓谷鐵道わ89-310形など(会社名に由来)
- 青い森鉄道青い森701系など(会社名に由来)
- 京成電鉄初代AE形・AE100形・2代目AE形(車両の用途であるAirport Expressに由来)
- 新京成電鉄N800形(詳しくは記事参照)
- 北条鉄道フラワ2000形(沿線観光地である兵庫県立フラワーセンターに由来)
- 樽見鉄道ハイモ230-310形(ハイスピードモーターカーの略)
- 樽見鉄道うすずみ1形(沿線観光地である淡墨桜に由来)
- 札幌市電M100形(親子電車の電動車)
- 札幌市電雪1形など、函館市電排形(除雪電車)
- 智頭急行HOT7000系、HOT3500形など(詳しくは記事参照)
- 東海旅客鉄道(JR東海)/JR西日本/九州旅客鉄道(JR九州)N700系(newやnextに由来)
- 名古屋市交通局N1000形、N3000形
- JR東日本HB-E300系(ハイブリッド(Hybrid)動力形式に由来)
過去に存在した車両
- 札幌市電A830形など(連接車または連結車、A1200形で再登場)、D1030形など(路面ディーゼル車)、Tc1形(親子電車の付随車)、DSB1形(除雪ディーゼル車)
- 京都市電狭軌1形(車両番号にNを付けた。同番号の標準軌車両が全廃された後は省略)
- 栗原電鉄(後のくりはら田園鉄道、廃止)の各電車(Mは電動車、Cは制御車)
- のと鉄道NT800形、北海道ちほく高原鉄道CR70形、CR75形(会社名の英文表記の略称に由来)
- 三木鉄道(廃止)ミキ300形[3](会社名の読みに由来)
参考文献
- 白土貞夫『ちばの鉄道一世紀』崙書房、1996年7月10日 第1刷発行、1996年10月15日 第2刷発行、ISBN 978-4845510276