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言論統制

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警視庁検閲課による検閲の様子(1938年(昭和13年))

言論統制(げんろんとうせい)とは、政治権力が報道出版・その他の言論に対して行う規制である[1]

規制の対象や方法は様々である。マスメディアが対象となることが多いが、集会、デモ行進、個人の会話まで規制されることもある[1]

概要

言論統制は主に対内的に流布する利敵情報、例えば国家政策への批判、治安・風紀を乱す主義思想国家的に重大な機密暴動・国内的混乱の扇動など、が出版・報道・流布されないように調査や検閲を行い、必要に応じてこれらの情報を操作・管理・防止することである。

テレビ、新聞、ラジオ、映画、学校教育などが情報統制、世論操作に使われているが、近年ではさらにインターネットを通じてもおこなわれている。

実例

日本の場合

江戸時代の日本では出版には届け出が必要であり、これを犯したものは罰せられた。例えば1855年に仮名垣魯文の『安政見聞誌』を出した版元と共著者の一筆庵英寿は手鎖となった(ただし、魯文は無署名であったため筆禍を免れた)。

明治以降の日本では出版法新聞紙法などにより検閲が行われた。共産主義無政府主義の宣伝・扇動、天皇制に対する批判、日本の植民地朝鮮満州など)の独立運動の扇動、人工妊娠中絶の方法の紹介などは禁止された。横須賀の軍港付近などの地理記述、写真なども発行禁止の対象となった。戦時体制下の日本では、出版法新聞紙法国家総動員法などをよりどころにした言論統制が情報局特別高等警察を中心に行われた(安寧秩序紊乱に関わる発禁命令権者は内務大臣)。

戦後は日本国憲法言論の自由を保障すると明記されたが、プレスコードなどGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)による言論統制・弾圧は占領解除まで強力に行われた。

現在、日本では憲法上、言論の自由が保障されているが、菊タブー鶴タブーなど言論の禁忌(報道できないこと)が少なからず存在している(詳しくは報道におけるタブーを参照。これらは報道機関の自主規制とされている)。

公安警察公安調査庁は、憲法違反・違法な情報収集活動を行っているとして、その廃止を求める政党や個人もある。[2]

最近では人権擁護法案が言論統制につながる可能性があるとして議論を呼んでいる。また、児童ポルノ法の改正案に盛り込まれていた、実写を伴わない創作物の規制、及び児童ポルノの単純所有の処罰についても、現行法での取締りが可能であり、「人権の侵害や表現の自由の萎縮につながりかねず」、「捜査当局の恣意的な捜査を招く危険がある」として日本共産党等は「慎重であるべき」としている。[3]

ある種のソフトウェアー部門が煽る、情報セキュリティに基づいた社内情報統制政策もその範疇にあるとする。

世界の状況

現在でも中華人民共和国朝鮮民主主義人民共和国イスラム諸国、一部のアフリカ諸国などや軍事政権下では日常的に言論統制が行われており、国営放送など政府系の報道機関を通じて虚偽の情報を流すこと(情報操作)によって自国内の結束が維持されている。[要出典]

民主主義国家とされる国でも、国家による言論統制が行われている、ないしは行われることがある。国家が言論統制に直接関与しなくても、与党の有力政治家が個人的に多くのメディア企業の経営権を掌握し、あるいはメディア経営者と結びつき、言論への影響力を及ぼしている場合がある。[要出典]

ドイツではヒトラーを礼讃したり、ナチスの意匠や出版物を流布すると民衆扇動罪(ドイツ刑法第130条)で違法とされている。これは「戦う民主主義」(民主主義を否定することを認めない民主主義)と呼ばれている。

韓国では国家保安法により共産主義の宣伝や共産主義運動を支持する言論は禁止されている。韓国で戦前の日本の植民地支配を肯定するなどの発言をすると、国家侮辱罪で取り締まりの対象となることがある。[要出典]


中国の場合

1964年(昭和39年)に「日中記者交換協定」が締結され、1968年(昭和43年)に「日中関係の政治三原則」が確認された。「日中関係の政治三原則」とは、「1.中国を敵視しない、2.二つの中国の立場に立たない、3.日中国交正常化を妨げない」であり、日中記者が記者交換するにあたって守るべき原則とされた。当時北京に常駐記者をおいていた朝日新聞読売新聞毎日新聞NHKなどはこの文書を承認した。産経新聞はこの協定に反発し、傘下のフジテレビを含めて特派員をすべて引き上げた。

文化大革命の時期には外国メディアが次々と中国から追放され、日本の報道機関も朝日新聞をのぞいてすべて追放された。その後、他の日本の報道各社も中国への再入国を許された。

2011年1月に中国記者協会の党組書記は、中国で最近、経済や人々の生活に関連した虚偽報道が多すぎると指摘した[4]

アメリカの場合

アメリカアメリカ合衆国憲法修正条項第1条に検閲の禁止を掲げている。これは議会大統領も遵守しなければならない。ただし、公式には認めていないが、アメリカ国家安全保障局が「エシュロン」を用いて、全世界の電気通信の内容を傍受しているといわれている。

アメリカには上からの検閲はないがコード(code)と呼ばれる報道の自主規制がある。アメリカでは、強制的な方法でなく、大衆の意識に直接訴える「誘導型」の方法がとられている。

これらの規制が、特定の宗教観や倫理観などを前提としていることが指摘されている(例えば人工妊娠中絶反対など)。大手のマスメディアが独占資本であることや、常に名誉毀損などの訴訟を起こされる危険を抱えているという事情もある。

また、情報の受け手のメディア・リテラシー(情報を評価・識別する能力)の問題もある。

おもな言論統制国家

ネット検閲#各国の状況参照

アジア

オセアニア-大洋州

ヨーロッパ

アフリカ

南北アメリカ

関連項目

自主的な言論統制

国・地域別

戦前・占領下などの日本
現在の日本
自己検閲によるもの
中国
韓国
アメリカ

脚注

外部リンク