便秘

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
便秘症から転送)
移動: 案内検索
便秘
分類及び外部参照情報
ICD-10 K59.0
ICD-9 564.0
DiseasesDB 3080
MedlinePlus 003125
eMedicine med/2833
MeSH D003248
プロジェクト:病気Portal:医学と医療
テンプレートを表示

便秘(べんぴ、: constipation)とは、ヒト(または他の動物)において便の排泄が困難になっている消化器の状態のことである。

概要[編集]

一般に、

  • 一般に排便の無い期間の長さ(排便が3日以上無い、週に3回以下しかないなど)
  • 排便の困難さ
  • 残便感
  • 口腔からの便臭

などで認識・診断される。「毎日便が出なければならない」と考える者も存在するが、各個体の排便間隔は体質、環境などによりまちまちで、一意に決めることはできない。

日本内科学会の定義では「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」 となっている。

便秘の対義として下痢ないし軟便を用いることがあるが、下痢・軟便の状態でも便秘になることはある。

便秘はその原因から「続発性便秘」と「特発性便秘」の2種類に大別される。

  1. 続発性便秘は、抗コリン薬など薬剤の副作用や大腸癌などの疾患が原因。「器質性便秘」とも呼ばれる。
  2. 特発性便秘は、大腸蠕動運動や直腸機能の異常などが原因。「機能性便秘」とも呼ばれ、食事性便秘、直腸性便秘、痙攣性便秘、弛緩性便秘などと細分類されることもある。

具体的な状態としては、

  • の一部が締め付けられ、細くなったり遮断されたりして便が動けなくなる。
  • 麻痺により腸の蠕動ができなくなった場所で便が動けなくなる。
  • 過度の脱水により便が硬く大きくなり、排泄されなくなる。
  • 便の量が少なくなり、固い塊(兎糞状)になる。

などがある。

また、自覚症状として、腹痛、吐き気、直腸残便感、腹部膨満感、下腹部痛、食欲不振、めまいなどのほか、肩や背中に放散痛を伴う場合がある。

便秘の外部的要因には次のようなものが一例として挙げられる。

  • 食物や食物繊維の摂取が不十分なため、適切な咀嚼が行われなかった。
  • 薬の副作用。カルシウム剤、コデインなどの鎮痛剤、鎮静剤、制酸剤、鉄剤、利尿剤(水薬)、抗うつ剤、抗コリン薬などには、副作用として便秘をともなうものがある。
  • ホルモンバランスによるもの。
  • 紅茶緑茶を通したタンニンの大量もしくは過度の常習的摂取によるもの。
  • 心配事や環境などによる精神的なストレスを受けている場合に、便秘や下痢などといった消化・排泄への影響が発生する事もある。

これらは、互いに原因となる多様性があり、女性はホルモンの関係にも伴い陥り易いほか、加齢によっても便秘になりやすくなる傾向や、性別に拠らず職業を含む生活環境によっても便秘となりやすい傾向も見られる(後述)。

S状結腸の過長等により、腸内に便の通りが著しく悪い個所が存在する場合、直腸内は空になっていても便秘になりやすい。この場合、薬局で市販されている浣腸では便まで薬が到達せず、排泄を促進することができない。

多くの場合、短時間しか続かないが、重症の場合は排泄できず中毒死する場合もある。

便秘の種類[編集]

便秘には、問題のある便秘と問題のない便秘があり、問題のあるものは大腸で便の通りが悪くなる、大腸ガン腫瘍直腸ガン、腸の癒着、甲状腺機能低下症などがあり、ガンや腫瘍などの場合は血便がある場合が多く、痔の場合は便通時に痛みを感じる場合がある。これまで述べたものは原因のはっきりした便秘で、それに合った治療を受けられるが、原因のはっきりしないものは「常習性便秘」と呼ばれる。常習性便秘は2つあり、1つ目は「弛緩性便秘」で、これは便をためておく癖がある人に良くみられるが、自覚症状はそれほどない。もう1つは「痙攣性便秘」で、多くは頭痛吐き気めまいのぼせ、さらに不眠などを伴う。

タイプが最も多い便秘として特発性便秘(機能性便秘)がある。慢性便秘とも呼ばれ、症状・原因により次の3つに分類される。

  • 弛緩性便秘
食事量・食物繊維の摂取不足(入れ歯がかみ合わなかったり、歯の数が少なかったりして食事量が減ることもある)、運動不足、加齢、経産婦、臥床者に良く見られる腹筋力の低下などが原因となる。これらにより、腸管への機械的刺激が不足し、腸蠕動の低下をきたす。その結果腸の内容物が大腸に貯留し必要以上に水分が吸収され、少量の硬い便が形成される。
  • 痙攣性便秘
精神的ストレスや過敏性大腸炎症候群(過敏性腸症候群)に代表される便秘で自律神経失調により下部大腸(横行結腸より肛門側の結腸)が過度に痙攣性の収縮をするために、腸管内膜が挟まり大腸内容物の輸送に時間がかかる。便は硬く少量で、時に兎糞状を呈する。
  • 直腸便秘
多忙、環境の変化、プライバシーの欠如、疼痛、不規則な生活などにより便意が繰り返し抑制されたり、下剤浣腸の乱用をしたりすることによって起こる。これは直腸内圧に対する感受性が低下し、直腸内圧を介し起こる直腸反射が減弱し、直腸内に便がたまっても便意を生じなくなるためである。その結果、便が大腸に貯留する時間が長くなり、水分が吸収されて硬便となる。

治療[編集]

治療には、下剤の摂取により便の排泄を試みたり、早期の治療には浣腸も含まれるが、そういった状態が常態化すると、体がそれらの刺激で排泄をするのが当たり前になってしまい、それらを欠かすとなおひどい便秘になる場合もある。

過敏性腸症候群では、「過敏性腸症候群の診断・治療ガイドライン」[1]が策定されている。

薬剤[編集]

(詳細は、下剤 を参照。)

下剤による副作用として、塩類下剤では高マグネシウム血症、刺激性下剤は習慣性になりやすく、薬剤に対する感受性が低下し便秘薬を服用しないと排便が行われなくなる便秘薬依存症や腸管粘膜障害などがある。

浣腸[編集]

浣腸にはグリセリンなどが入っており、これらの直腸への刺激で排泄を促すものだが、刺激が強く急激に催し、また悪寒や吐き気などといった症状を誘発させる場合もある。グリセリン浣腸では、我慢しきれずすぐに出してしまうなど使い方が悪かった場合などには、後述するような体質にも拠り、出し切ることができず不快感が残る場合もある。完全に腸内の便を取り除くのを望む場合には、腸洗浄と呼ばれる処置もある。こちらはぬるま湯(生理食塩水を使う場合もある)を注入、それらの湯と一緒に排出するが、注入時に無理な圧力を掛けると直腸穿孔など負傷のおそれもある。したがって専用の器具が利用され、また市販もされているが、基本的には専門の医師などの指導が必要といえる。また、こちらは専用の器具や温度管理などで手間が掛かるが、注入量が多く刺激が少ないため、腹痛などの問題がおきにくいなどの体験談も聞かれる。民間療法の範疇としてはぬるま湯や生理食塩水以外のもの(コーヒーなど)を使うという話も聞かれるが、医学的に根拠は無い。

家庭で出来る常習性便秘の養生法[編集]

原因のはっきりしているものは、それに合った治療をするが、常習性便秘の養生法は以下の通り。

  • 毎日一回、決まった時間にトイレに行く習慣をつける。便意がなくても、朝に一度はトイレに必ず行き、排便をしようと努力する。しかし、本当に出そうもないのに長時間座り続けるのは良くない。
  • 積極的に体操や水泳などの運動に心がけ、腹筋を鍛える。一見、腹筋は関係なさそうだが、腹の筋肉の強化は排便の上で大切。腹部のマッサージも効果的。
  • 朝、起き抜けに冷たい水や牛乳を飲むのも良い。食物繊維を積極的にとり、一日3食を心がける。

排便姿勢[編集]

The Thinker, Rodin.jpg

排便時の座位姿勢は、直腸肛門角が開くよう少し前傾姿勢で、たとえるならロダンの彫刻「考える人」の様な姿勢が良いとされる。更に、腹筋に力が入りやすいように踵を少し上げたり、脇腹を両手で押さえて腹圧を与える方法もある。[2]

予防[編集]

食べ物、飲み物、運動の程度を変えることは、便秘を予防することになる。以下はそれらの他の方法である。

食物繊維の摂取[編集]

食物繊維は柔らかく大きな大便を作る。野菜果物穀物などに多く含まれる。食物繊維は、一度に大量摂取してもあまり意味がない。繊維を多く含む食べ物を次に示す。

水分の摂取[編集]

十分な量の水もしくは野菜や果物のジューススープなどを摂取する。

水分は大便を柔らかく保ち、通りを良くするため、水分を十分取っただけで便が排出される又は症状が改善される場合も多い。ただし、カフェインアルコールを含む飲料は、消化器の水分を減らす傾向がある。

脂肪の摂取[編集]

脂肪は腸管を滑らかにする働きがあるので、摂取することで便の通りがよくなる。よって油物を摂取するのも効果的である。ただしこれはダイエットなどで過剰な摂食制限をしている場合にいえることで、脂身などの多い肉類を日常的かつ過剰に取っている場合などは当てはまらないし、他の生活習慣病になるおそれがある。あくまでも普段サラダと少量の炭水化物のみなどといった、偏った食生活をしている場合である。

十分な運動[編集]

規則正しい運動は消化器を活発にする。運動は軽いものでも十分で、毎日20~30分の歩行でよい。また、軽い腹筋やストレッチも効果がある。手を使って腹をさすり、腸の蠕動運動を促すだけでも効果がある。

十分な排便の時間[編集]

便意を無視しないようにする。生活習慣において毎日決まった時間に便意を催す者もいるが、そうでない人は、便意を催し易い時間帯を排泄に割り振る生活上の配慮も効果がある。朝食前は体温が低く体全体の活動も活発でないため排泄時間には向かない。

下剤を使う[編集]

下剤は大便を通しやすくする薬である。軽い便秘は上記の予防で十分な場合もあるが、程度に応じて下剤を使用することもできる。薬は医師の処方、または薬局で入手できる。液体、チューインガム、丸薬、粉などいくつかの種類がある。

便秘と女性[編集]

便秘は高齢者に多く見られ、男性よりも女性に多い[3]。これには科学的な根拠があり、それは社会的なものから、生活習慣的なもの、そして女性独特の身体構造に大きく関与すると様々な指摘がある[4][5]

  • 男性に比べ、排便に必要な括約筋、腹筋の力が弱い。
  • 男性に比べ、外や人前で便意を催したときなどでも、気恥ずかしさなどの理由で排便を躊躇、我慢する傾向があるが、それによって排便のリズムが狂い、排便反射が鈍くなってしまう。したがって、便が滞留しても便意を感じなくなる。
  • 女性に多いダイエットも大きく原因している。食べないことによって腸の蠕動(ぜんどう)運動がおろそかになる。
  • 女性独特の黄体ホルモン、プロジェステロンが体内に水分を蓄積しようとする。その結果、排便に十分な水分が補給されなくなってしまう(このホルモンは生理妊娠などの時に多く分泌され、そのためにその時期の便秘が多くなる)。更にこのホルモンは流産を防ぐために括約筋を収縮させる働きがあるため、一層排泄を困難にさせる。
  • 女性は胎児を育てるため、骨盤が広い。そこに腸が下垂しやすくなり、腸が不安定になる。また、下半身に脂肪がたまりやすくなるために、血液も骨盤に滞りがちになる。そのため腸の働きが弱まりやすい。
  • 上記と同様の理由で腸管の形がいびつになりやすく、そこに硬い便などが留まりやすい。
  • ストレスによる過敏性腸症候群などにより、歪になった腸が閉塞してしまい、そこに便が滞ってしまう。
  • 便秘薬など薬の濫用。一例として、ビサコジル製剤は腸の蠕動を促進させるものであるが、何度もそれに頼ると身体が慣れてしまい、反応が鈍くなる。それだけでなく、自立的な蠕動運動を阻害するために、薬に頼らないと排便が困難になるような慢性的な便秘に陥りやすい。その他、浣腸や下剤の濫用も、自然な排泄や排便サイクルを乱してしまう恐れがあるので、濫用すべきではない。

などの理由が挙げられており、便秘治療薬の購入者は女性が圧倒的に多い(パッケージピンクが多いのは明らかに女性をターゲットにしている証拠である)。その一方、男性は、高齢者以外は便秘で悩まされるケースは少ない。だが、男性は便秘より下痢に悩まされている傾向にある[6]。これも同様に、食習慣(アルコール、油物、刺激物を好む傾向にあるが、これらは腸の動きを活発化させたり、腸壁をなめらかにさせたりする作用がある)や外的ストレスに対する脆弱性(前述の過敏性腸症候群は、男性だと下痢になりがちである)、太い腸管など身体の構造に起因するものである。

脚注[編集]

  1. ^ http://ci.nii.ac.jp/naid/110001102866/ja/ 過敏性腸症候群の診断・治療ガイドライン(シンポジウムI/心身症の診断基準と治療ガイドライン)] 心身医学 43(1), 13, 2003-01-01
  2. ^ 日経メディカル2012年5月号特別編集版「消化管診療のトピックス&トレンド」転載~特集 便秘診療の勘所【その2】下剤投与、生活指導の注意点日経メティカルオンライン 記事:2012年6月1日
  3. ^ 平成10年国民生活基礎調査の概況統計表厚生労働省
  4. ^ 健康通信倶楽部
  5. ^ セルフドクターネット
  6. ^ ミクスon-line

関連項目[編集]