イレウス
イレウス(ileus)とは、腸管内容の肛門側への移動が障害される病態。腸閉塞(ちょうへいそく、intestinal obstruction)とも呼ばれる。急性腹症を起こす疾患のひとつである。
| 腸閉塞のデータ | |
| ICD-10 | K56 |
| 統計 | 出典: |
| 世界の患者数 | |
| 日本の患者数 | |
| イレウス学会 | |
| 日本 | 日本消化器外科学会 日本腹部救急医学会 |
| 世界 | 国際外科学会 |
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目次 |
病態 [編集]
腸管が閉塞すると、閉塞部位の口側はガスや腸液により拡張し、静脈還流が障害される。その結果腸管壁が浮腫を起こし、腸管腔へ水やナトリウムが漏出する。そしてさらに腸管内圧が上昇し、動脈血流の障害も起こり、腸管の壊死・穿孔を引き起こす。また、水やナトリウムの漏出によるショックも起こる。
分類 [編集]
- 機械性イレウス
- 単純性イレウス(閉塞性イレウス)
- 複雑性イレウス(絞扼性イレウス)
- 機能的イレウス
- 麻痺性イレウス
- 痙攣性イレウス
原因 [編集]
機械性イレウス [編集]
閉塞性イレウスは腫瘍や胆石、回虫などの異物による腸管内の閉塞や、卵巣癌などによる外部からの圧迫、クローン病などの炎症、癒着・屈曲等の要因で発症する。絞扼性イレウスは腸管および腸間膜の絞扼やヘルニアの嵌頓、腸重積症、腸軸捻転症などにより、腸管壁の血行障害も起こしたもので急速に症状が進行する。
機能的イレウス [編集]
腹部手術後などの腸管の運動麻痺、腹膜炎、低カリウム血症や鉛中毒による腸管の痙攣が原因となる。
症状 [編集]
腹部膨満感、悪心、嘔吐、排便・排ガスの途絶、機能性イレウスでは腹痛も認められ、単純性イレウスでは間欠的な、複雑性では持続的な痛みを伴う。また、機械性イレウスでは腸音が亢進し、特有の金属音(カラコロやペチペチなど金属のような音)が聴取される。麻痺性イレウスでは腸音は低下する。
合併症 [編集]
嘔吐による脱水症状、絞扼性イレウスでは発熱、白血球数増加、ショックが見られる。
検査 [編集]
- 血液検査
- 代謝性アルカローシス、赤血球数・ヘモグロビン・白血球数・BUN・クレアチニンの上昇。
- 腹部単純X線
- 腸管のガスの貯留、鏡面像(air-fluid level, niveau;二ボー)の形成(基本的には立位で撮影する。無理な場合はfree airをみるため、左側臥位)。小腸のケルクリング皺襞。
- 腹部超音波検査
- 小腸の拡張、腸管の蠕動異常などが見られる。(pseudo-kidney sign, keyboard sign)
- 腹部CT
- 造影検査
診断 [編集]
腹痛の種類、嘔吐の有無、排便・排ガスの消失、X線検査により単純性か、複雑性か、麻痺性かを診断する。
なお、腹部手術歴がある場合は癒着による絞扼性イレウスの可能性が高く、腹部手術歴のある患者が急性腹症を起こした場合はそれを第一に考える。
治療 [編集]
単純性イレウスや麻痺性イレウスでは保存的治療が第一選択となる。軽度であれば絶食や輸液のみで軽快するが、腸管拡張が高度であれば経鼻胃管で逆流した腸内容を吸引・減圧したり、イレウス管で腸閉塞部を拡張したりする。また、麻痺性イレウスでは蠕動亢進薬、痙攣性イレウスでは鎮痙薬が使用されることがある。
一方、癒着性イレウスや頻回にイレウスを繰り返す症例、保存的治療が無効である場合等では手術適応となる。また、原疾患が手術によって治療できる場合は、原疾患の治療を行う。また、複雑性イレウスでは緊急手術の適応となる。直ちに絞扼を解除して血流を回復させ、その後壊死した腸管を切除する。
漢方薬の大建中湯にはイレウスを早期に回復させ予防にも効果があり、イレウスを起こしやすい大腸手術後の主治療薬として活用が試みられている [1]。
予後 [編集]
適切な治療を行えば回復するが、放置すれば徐々に重篤化し、敗血症やショックを引き起こす。複雑性イレウスは放置すれば急激に進行し、数日で敗血症性ショックに進行し死に至る。