宿便

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

宿便(しゅくべん、Fecal impaction)とは、便秘により内に長く滞留している糞便のことである。滞留便(たいりゅうべん)とも呼ばれる。必要な場合には治療として浣腸などが行われる。

健康・ダイエット関係でよく使われる「宿便」は、一般的な定義とは異なり、数週間程度以上の長期にわたり腸壁にこびり付いている便のことを指し、断食腸内洗浄によってはじめて排泄されるとされる。この手の言説では、こうして腸壁が清掃されるため断食に健康増進の効果があるとされるほか、断食しなくても宿便排泄に効果があるとされる健康食品の宣伝が行われることが多い。

国語辞典には、宿便:排泄されないで長い間、腸の中にたまっていた便、と記載されているが、宿便は医学の専門用語ではない。宿便は腸内に食物や腸内細菌の死骸に由来する老廃物が長期にわたり滞留している状態で、その原因解決対処法をここに解説する。 老廃物が体内に長時間滞留して悪いのは、牛乳が腐敗菌で腐るように、老廃物が悪玉菌で腐敗し、毒物と悪臭(おなら)を産生し、毒物は腸管壁から吸収されて血流に入り、身体の隅々まで送られることによる。健常人のように老廃物が体内を短時間で通過すれば、牛乳が乳酸菌でヨーグルトになるように人体に必須の栄養素や無臭のガス(無臭おなら)を産生する。

宿便の原因としては、先天的に便秘傾向にある体質、無理なダイエットによる生活習慣、下剤(便秘薬、浣腸、センナ茶など)の連用障害、加齢による排便反射機能の低下、ストレスによる神経症、血流の低下、他疾患の薬剤の副作用(静穏剤、睡眠薬、トランキライザーなどの筋弛緩効果薬など)などである。 便秘は病気ではなく、身体的に排便反射機能が低下したためにおこる症状である。そのため、医師によるほとんどの便秘治療は、大腸検査による大腸内の異常所見の有無、患者の苦痛原因を取除く対症療法、つまり下剤の投与となる場合が多い。一般的に、宿便対処法として、薬剤による排泄、運動による排泄促進、水分補給や食物繊維摂取などによる排泄補助、朝晩の定期的排泄習慣をつける、などいろいろな方法がある。これらの方法は宿便が軽い症状では有効であるが、宿便症状の重い人では薬剤に依存しがちとなり、ますます腸の排便反射機能(条件反射)が悪化する。断食は仕事のある人や肉体労働者などには適さない。クリニックでの腸内洗浄と民間療法としての腸内洗浄がある。宿便対処法として水便秘解消法は薬剤が不要、簡単にできる、家庭や旅行先でも容易である、などの点がある。ただし、他の疾患がある人や妊産婦の人は事前に医師に相談すべきである。大腸検査で異常のないことを定期的に確認しておくことで宿便による大腸がんなどの不安から解放される。コーヒーや酵素の使用は医学的に無意味である。

断食療法を行っている医師も、腸管の粘膜は日々生まれ変わるので、このように腸管にこびりつくというような便は存在できないと述べている。[1]。 断食等により排泄される宿便と呼ばれるものは、上記のように腸壁にこびりついている便ではなく、胃腸の処理能力を超えたために滞留している排泄内容物である。[2]

人間の腸には多数の襞があるのでその谷間に便が滞留し、断食の際に排泄されると説明されるが、内視鏡で観察しても腸壁にこびり付いた便は確認されない。小腸の内壁の表面には、柔毛という無数の小突起でおおわれており、これらは栄養素を吸収するための効率をあげるため無数の突起で表面積を増やしているが、これを構成する細胞は、新たに増殖し供給される細胞によって約24時間で突起の頂上まで押し上げられていき、頂上に達するとはがれ落ちて排泄されている。大腸の腸壁には柔毛はないが、新しく増殖した細胞が次々に出現し、古い細胞が剥がれ落ちて更新している点は同様である。このことから腸壁に便が癒着する事は考えにくい。断食中であってもこのように上皮細胞の更新が起きるほか、粘液線から分泌される粘液が常に腸管内に供給されており、腸内細菌はこれらを餌に繁殖し続け、その一部は肛門から排泄される。

つまり、断食の際にも排出される宿便と呼ばれるものは、腸内粘液や消化液、腸から脱落した古い上皮細胞などを基質として増殖した腸内細菌そのものに過ぎないとされる[3]

カネミ油症事件の油症患者に絶食療法を行った場合、体重が減るとともに排泄されるダイオキシン類が増加し、症状が軽減することも確認されている[4]

[編集] 脚注

  1. ^ 東 茂由、甲田 光雄 『長生きしたければ朝食は抜きなさい』 河出書房新社、2002年8月。ISBN 978-4309502526
  2. ^ 甲田 光雄『奇跡が起こる半日断食』マキノ出版、2001年12月。ISBN 4-8376-1156-7
  3. ^ 坂田隆 『はじめてナットク!大腸・内幕物語 知られざる臓器を探る』 講談社ブルーバックス、1989年。ISBN 4-06-132768-2
  4. ^ 小栗一太、赤峰昭文、古江増隆 『油症研究 30年の歩み』 九州大学出版会、2000年6月。ISBN 4-87378-642-8。298-302頁。

[編集] 関連項目

他の言語