グリセリン
| グリセリン | |
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1,2,3-propanetriol |
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別称
グリセリン
グリセロール 1,2,3-プロパントリオール 1,2,3-トリヒドロキシプロパン グリセリトール グリシルアルコール |
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| 識別情報 | |
| CAS登録番号 | 56-81-5 |
| PubChem | 753 |
| ChemSpider | 733 |
| UNII | PDC6A3C0OX |
| KEGG | D00028 |
| ChEMBL | CHEMBL692 |
| ATC分類 | A06,A06AX01
, QA16 |
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| 特性 | |
| 化学式 | C3H5(OH)3 |
| モル質量 | 92.09382 g/mol |
| 外観 | 無色透明の液体 吸湿性 |
| 匂い | 無臭 |
| 密度 | 1.261 g/cm3 |
| 融点 |
17.8 °C, 291.0 K, 64.0 °F |
| 沸点 |
290 °C, 563 K, 554°F [1] |
| 屈折率 (nD) | 1.4746 |
| 粘度 | 1.412 Pa·s[2] |
| 危険性 | |
| MSDS | JT Baker |
| 引火点 | 160 °C (密閉式) 176 °C (開放式) |
| 発火点 | 370 °C |
| 特記なき場合、データは常温(25 °C)・常圧(100 kPa)におけるものである。 | |
グリセリン (glycerine, glycerin) は、示性式 C3H5(OH)3 もしくは分子式 C3H8O3 で表される3価のアルコールである。IUPAC名は 1,2,3-プロパントリオール (1,2,3-propanetriol) である。グリセロール (glycerol) と呼ばれることもある。
1779年にスウェーデンのカール・ヴィルヘルム・シェーレがオリーブ油加水分解物の中から発見し、甘味を持つことからギリシャ語のγλυκυς(glykys、甘い)にちなんで名づけられた。
目次 |
性質 [編集]
石鹸の廃液を精製するか、プロピレンから合成して作られる。引火点 176 °C(開放式)、発火点 370 °C。可燃性を持ち、消防法により危険物第4類(引火性液体)の第3石油類に指定されている。
無色透明の糖蜜状液体でエタノールに可溶、エーテルに難溶。水に非常に溶けやすく、吸湿性が強い。その保水性を生かして、化粧品、水彩絵具によく使われる。医療分野では利尿薬、脳圧降下薬、浣腸液、目薬など様々に用いられる。
局所(腸管、肛門)に炎症・創傷のある患者は腎不全を起こすおそれがある。
エチレングリコール同様に不凍液としても使用されている。また、ニトログリセリンの原料としても重要である。
3つのヒドロキシ基すべてを脂肪酸でエステル化したものはトリアシルグリセロール(トリグリセリド)と呼ばれる。
反応 [編集]
ギ酸と加熱するとエステル化を経て脱離が起こり、アリルアルコールを与える[3]。硫酸水素カリウムなどを作用させながら熱すると、脱水が起こりアクロレインに変わる[4]。酸触媒の存在下にアセトンと加熱すると、脱水して1,2位がイソプロピリデン基で保護された形の誘導体が得られる[5]。
赤リンと臭素とともに反応させると1,3位が臭素化された誘導体が得られ[6]、酢酸中で塩化水素を作用させると、その当量により 1-モノクロロ体[7]もしくは1,3-ジクロロ体[8]が生成する。後者や 1,3-ジブロモ体をアルカリと加熱することにより、エピクロロヒドリン[9][10]、エピブロモヒドリン[10]が得られる。
アニリン誘導体と酸化条件で縮合させるとキノリン骨格が構築できる[11][12]。この手法はスクラウプのキノリン合成と呼ばれる。
グリセリンの生合成 [編集]
ジヒドロキシアセトンリン酸は、グリセルアルデヒド-3-リン酸とともに、解糖系でフルクトース-1,6-ビスリン酸が分解されて生成する2つの化合物のうちの1つである。グリセルアルデヒド-3-リン酸とは、素早く、可逆的に異性化反応を起こす。
- フルクトース-1,6-ビスリン酸
グリセルアルデヒド-3-リン酸 + ジヒドロキシアセトンリン酸 - ジヒドロキシアセトンリン酸
グリセルアルデヒド-3-リン酸
脂肪細胞では解糖系で作られたジヒドロキシアセトンリン酸が還元されてL-グリセロール-3-リン酸が作られ、新しいトリグリセリドを作る原料となる。この反応は、NAD+/NADHを補因子として、グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼにより触媒される[13]。
結晶化に纏わる都市伝説 [編集]
ライアル・ワトソン「生命潮流」に書かれたとする「間違った逸話」が、様々な引用・脚色を経て、シンクロニシティの代表的伝説となっている。
間違った逸話は以下のとおり。
- 世界中の科学者がどのようにしてもグリセリンは結晶化しなかった。
- 1920年代のある日、イギリス貨物船のある樽のグリセリンが一樽、偶然に結晶化した。
- 世界中の研究所から、種結晶を求める申し出が殺到した
- 熱力学に詳しいある二人の科学者が、入手した種結晶を使って結晶化に成功すると、実験室の全グリセリンが密閉容器内のものを含めて自然に結晶化した。
- この日を境に、世界中のグリセリンが 17.8 °C で結晶化するようになった。
しかし「生命潮流」が参考文献とした、カリフォルニア大のギブソンとジオークが書いた論文(1923年)には、グリセリン結晶を作る際のコツが記述されているのみである[14]。
- グリセリンは世界中の科学者がどのようにしても結晶化しなかった。
- ギブソンとジオークも、イギリスの偶然結晶化したグリセリンを入手した。
- グリセリン結晶が到着した後であったが、ギブソンとジオークは温度管理をすることで種結晶なしでも結晶を作ることができるということを発見した。
- グリセリンを −193 °C に冷却後、一日以上の時間をかけてゆっくりと温度を上げ、17.8 °C にすることで結晶化する。
無論、現代のグリセリンも種結晶なしで、単に 17.8 °C にするだけでは結晶化しない。なお、ニトログリセリンと混同している場合もある。
脚注 [編集]
- ^ Lide, D. R., Ed. CRC Handbook of Data on Organic Compounds, 3rd ed.; CRC Press: Boca Raton, FL, 1994; p 4386.
- ^ “Viscosity of Glycerol and its Aqueous Solutions”. 2011年4月19日閲覧。
- ^ Kamm, O; Marvel, C. S. (1921), “Allyl alcohol”, Org. Synth. 1: 15; Coll. Vol. 1: 42.
- ^ Adkins, H.; Hartung, W. H. (1926), “Acrolein”, Org. Synth. 6: 1; Coll. Vol. 1: 15.
- ^ Renoll, M.; Newman, M. S. (1948), “dl-Isopropylideneglycerol”, Org. Synth. 28: 73; Coll. Vol. 3: 502.
- ^ Braun, G (1934), “Glycerol α,γ-dibromohydrin”, Org. Synth. 14: 42; Coll. Vol. 2: 308.
- ^ Conant, J. B.; Quayle, O. R. (1922), “Glycerol α-monochlorohydrin”, Org. Synth. 2: 33; Coll. Vol. 1: 294.
- ^ Conant, J. B.; Quayle, O. R. (1922), “Glycerol α,γ-dichlorohydrin”, Org. Synth. 2: 29; Coll. Vol. 1: 292.
- ^ Clarke, H. T.; Hartman, W. W. (1923), “Epichlorohydrin”, Org. Synth. 3: 47; Coll. Vol. 1: 233.
- ^ a b Braun, G. (1936), “Epichlorohydrin and epibromohydrin”, Org. Synth. 16: 30; Coll. Vol. 2: 256.
- ^ Clarke, H. T.; Davis, A. W. (1922), “Quinoline”, Org. Synth. 2: 79; Coll. Vol. 1: 478.
- ^ Mosher, H. S.; Yanko, W. H.; Whitmore, F. C. (1947), “6-Methoxy-8-nitroquinoline”, Org. Synth. 27: 48; Coll. Vol. 3: 568.
- ^ ジヒドロキシアセトンリン酸
- ^ 菊池誠 (2005年5月21日). “グリセリンの結晶”. kikulog. 2010年8月24日閲覧。
関連項目 [編集]
グリセルアルデヒド-3-リン酸 + ジヒドロキシアセトンリン酸