インディーゲーム

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FEZ (インディーゲーム)

インディーゲーム英語: indie game)とは、インディペンデント・ゲームindependent game, 独立系ゲーム[1])の略称で、少人数・低予算で開発されたゲームソフトを主に指す。日本語ではインディーズゲームともいう[1]

概要

「インディーゲーム」という語彙は、日本語では「同人ゲーム」「フリーゲーム」の同義語として用いられることもある。しかしながら、国際的にはやや異なる意味で用いられる。

国際的な語彙としての「インディーゲーム」(indie game)は、「AAA(トリプルエー)ではないゲーム」を指す。言い換えれば、「AAAではない」ということ以外に明確な定義がない[2][3][4][5]

とはいえ、インディーゲームと呼ばれる作品には、以下のような特徴がありがちである。例えば、開発者が個人または少人数のチーム、または小規模の企業である[3][6][7]。作品の規模も大手に比べて小規模である[7]。また例えば、開発の過程において、巨額の予算を投じる分リスクを避けたがるような大手パブリッシャー英語版出資を受けていない[8]。言い換えれば、パブリッシャーの意向に左右されないため、リスク度外視の先鋭的な作品や、イノベーションを起こす画期的な作品、独創的で芸術的な作品になることが多い[4][2][3][5]。しかしそれゆえ、インディーゲームは基本的に低予算で、資金源は開発者の自前か、もしくはクラウドファンディングである[2][3][5][9][10]

ただし、以上はあくまで傾向であって定義ではないため、例外も多数ある。たとえば、『風ノ旅ビト』(原題: Journey)は代表的なインディーゲームだが、ソニーの出資を受けて開発されている[11]。また、アンナプルナ・インタラクティブDevolver DigitalRaw Furyなどのような、インディーゲーム専門のパブリッシャーもある。

インディーゲームは、モバイルゲームmod制作の文化と重なる部分も大きい[12][13]。また、『Outer Wilds』『And Yet It Moves』などのような、ゲーム学科の学生作品に由来する作品や、『Superhot』『Goat Simulator』『Broforce』などのような、ゲームジャムで開発された即興作品や試作品に由来する作品も多い[14][15]

販売

販売形態としては、小売店でのパッケージ販売よりもダウンロード販売になることが多い。無料のフリーゲームとして公開されることも多い。

販売プラットフォームとしては、SteamGOG.comHumble BundleEpic Games StoreといったAAA・インディー両方を扱うものや、インディーを専門的に扱うitch.ioGame Jolt英語版PLAYISMなどがある。ソニー、任天堂Microsoftの各社は、自社ハードウェア対応のサードパーティー製インディーゲームの販売も扱っている[16][17]

歴史

インディーゲームの歴史は、PCの普及の歴史とほぼ軌を一にする。1980年代から1990年代シェアウェアなどの文化を起源として、2000年代Steamをはじめとする販売プラットフォームの出現や、FlashUnityUEをはじめとする開発ツールゲームエンジンの普及によって盛んになり、2010年代には『Minecraft』『Undertale』といった社会現象になる作品が複数登場した[18][19]。2012年にはドキュメンタリー作品『Indie Game: The Movie英語版』も公開された。

一方で、2010年代中頃からは、供給過剰・過当競争のレッド・オーシャンの時代に入ったとされ、「indiepocalypse」(インディポカリプス、インディーゲームの終末)という言葉が囁かれるようになった[20][21][22]

2010年代末には、新設の販売プラットフォームEpic Games Storeが、Steamの覇権に挑む形でインディーゲームの独占販売と開発支援を行い、注目を集めた[23][24]

業界

洞窟物語』の開発者・天谷大輔GDC 2011、スピーチの壇上にて[25]

インディーゲームの国際的なイベントとして、Game Developers Conference (GDC)、およびその一環のIndependent Games Festival (IGF)がある。また、グローバルゲームジャムLudum Dareなどのゲームジャム大会がある。

インディーゲームの開発は、英語圏西欧だけでなく、日本・中国[26]韓国[27]東南アジア[28]東欧[28]北欧[12]中南米[29]といった世界各地で盛んである。

日本

日本の『洞窟物語』や『東方Project』といったフリーゲーム同人ゲーム (dōjin game) が、国際的なインディーゲームに含められることもある[25][28]

日本のインディーゲーム業界に関しては、業界団体の日本インディペンデント・ゲーム協会がある。また、ローカライズも手掛ける販売プラットフォームのPLAYISMがある。講談社のような大手企業が開発支援企画を立ち上げることもある[30]

日本国内の主なイベントとしては、京都で開催されるBitSummitがあり、ゲーム学科の学生作品も扱っている[31]

関連項目

出典

  1. ^ a b インディゲームに魅了 自由の翼得た若手開発者”. 日本経済新聞 電子版 (2013年). 2020年10月10日閲覧。
  2. ^ a b c Gnade (2010年7月15日). “What Exactly is an Indie Game?”. The Indie Game Magazine. 2013年9月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年1月9日閲覧。
  3. ^ a b c d Gril (2008年4月30日). “The State of Indie Gaming”. Gamasutra. 2011年1月14日閲覧。
  4. ^ a b MacDonald (2005年5月3日). “Understanding "Independent"”. Game Tunnel. 2009年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年1月18日閲覧。
  5. ^ a b c Thomsen, Michael (2011年1月25日). “The 'Indie' Delusion: The Gaming Category that Doesn't Exist”. IGN. 2012年12月4日閲覧。
  6. ^ McGuire & Jenkins 2009, p. 27; Moore & Novak 2010, p. 272; Bates 2004, p. 252;
  7. ^ a b Carroll (2004年6月14日). “Indie Innovation?”. GameTunnel. 2009年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年2月7日閲覧。
  8. ^ MARCELO PRINCE, PETER ROTH (2004年12月21日). “Videogame Publishers Place Big Bets on Big-Budget Games”. Wall Street Journal Online. 2013年7月1日閲覧。 “The jump in development and marketing costs has made the videogame industry "enormously risk averse,[...]Publishers have largely focused on making sequels to successful titles or games based on movie or comic book characters, which are seen as less risky. "We don't green light any more things that will be small or average size games.[...]"[リンク切れ]
  9. ^ McGuire & Jenkins 2009, p. 27; Moore & Novak 2010, p. 272; Bates 2004, p. 252; Iuppa & Borst 2009, p. 10
  10. ^ Parker, Laura (2011年2月14日). “The Rise of the Indie Developer”. GameSpot. 2012年12月4日閲覧。
  11. ^ Dutton, Fred (2012年4月18日). “What is Indie?”. Eurogamer. 2016年3月4日閲覧。
  12. ^ a b 七邊信重「モバイルゲーム産業の「北欧モデル」―フィンランドとスウェーデンを中心に―」『研究員レポート』、マルチメディア振興センター、2014年。 
  13. ^ How to turn your mod into an indie game” (英語). www.gamasutra.com. 2020年10月11日閲覧。
  14. ^ Ishimoto, Shuji (2014年7月28日). “ゲームジャムとインディーゲーム”. AUTOMATON. 2020年10月22日閲覧。
  15. ^ Francis, Bryant. “Crucial lessons from 7 game jam prototypes that went commercial” (英語). www.gamasutra.com. 2020年10月23日閲覧。
  16. ^ ソニー経由任天堂スイッチ行き、独立系ゲーム制作者の戦略が奏功”. Bloomberg.com. 2020年10月11日閲覧。
  17. ^ Ishimoto, Shuji (2017年3月2日). “「Xboxインディーズゲーム」の後釜となるか、Windows 10/Xbox One向けに作品を販売できる「Xbox Live Creators Program」が発表”. AUTOMATON. 2020年10月22日閲覧。
  18. ^ CNJ. “マインクラフトをつくった男:ゲーム業界を根幹からゆるがしたインディーメーカー”. WIRED.jp. 2020年10月22日閲覧。
  19. ^ 星野源の人生に影響を与えた『UNDERTALE』とは? パッケージ版発売で絶賛トークを振り返る”. Real Sound|リアルサウンド テック. 株式会社blueprint. 2020年10月22日閲覧。
  20. ^ Inc, Aetas. “[GDC 2019]終わったのは“ゲーム”じゃない? インディーズゲーム開発者からの「ゲーム業界世紀末説」に異論が登場”. www.4gamer.net. 2020年10月10日閲覧。
  21. ^ Umise, Minoru (2018年8月27日). “Steamのインディーゲーム市場は“ポストアポカリプス状態”なのか?悪化し続けるマーケットを関係者らが観測”. AUTOMATON. 2020年10月10日閲覧。
  22. ^ Inc, Aetas. “インディーズゲームが埋もれないためには何が必要か? 最新の市場動向をもとに分析”. jp.gamesindustry.biz. 2020年10月10日閲覧。
  23. ^ Maxwell, Tom. “Epic takes a serious swing at Steam's indie game supremacy with $1M revenue change” (英語). Input. Bustle. 2020年10月22日閲覧。
  24. ^ 脱Steam、「Epic Games Store」でインディー系の独占タイトル続く。「88:12」と無料ゲーム配布で攻勢仕掛ける『フォートナイト』の成功者”. 電ファミニコゲーマー. 株式会社マレ. 2020年10月22日閲覧。
  25. ^ a b Inc, Aetas. “[GDC 2011]日本の同人ゲーム作家がGDCで講演を行うという快挙を達成。フリーゲーム「洞窟物語」の作者 天谷大輔氏による講演の模様をレポート”. www.4gamer.net. 2020年10月11日閲覧。
  26. ^ Inc, Aetas. “中国のインディーズゲームデベロッパ達を追ったドキュメンタリー映画「独行」日本語版がSteamで6月25日に配信決定”. www.4gamer.net. 2020年10月10日閲覧。
  27. ^ Inc, Aetas. “釜山で見た韓国インディゲーム大躍進の未来「BIC 2018」レポート”. jp.gamesindustry.biz. 2020年10月11日閲覧。
  28. ^ a b c Inc, Aetas. “国内外のタイトルが紹介された「INDIE Live Expo 2020」視聴レポート。ZUN氏とToby Fox氏が語るインディーズゲームのあり方とは”. www.4gamer.net. 2020年10月10日閲覧。
  29. ^ いま勢いのあるゲーム市場、ラテンアメリカのことがもっと知りたい!【GDC 2014】”. ファミ通.com. 2020年10月11日閲覧。
  30. ^ 講談社がインディーゲーム開発者に年間最大1000万円支給&全力サポート。“講談社ゲームクリエイターズラボ”始動”. ファミ通.com (2020年9月14日). 2020年10月10日閲覧。
  31. ^ インディーゲームは学生作品もアツい!「京都コンピュータ学院」ブースを直撃【BitSummit Vol.6】”. インサイド. 2020年10月10日閲覧。