サンドイッチ
サンドイッチ(英語: sandwich)、あるいは、サンドウィッチとは、パンに肉や野菜等の具を挟んだり、乗せたりした料理。調理パンの一種。アイスクリーム・サンドイッチのように、パン以外の素材に具を挟んだものを指す場合もある。
概要
手軽な料理でもあり、様々なバリエーションがあるので、世界中のいたるところでよく食されている。食べる時にフォークや箸などの食器を必要としないので、ピクニックなどの食事としても重宝されている。同様の理由で、列車で旅行する際の車内食や、航空機などの機内食に用いられることも多い。
日本では、おにぎりと共にコンビニエンスストアにおける定番商品であり、各店とも様々な種類のサンドイッチを用意している。アメリカ合衆国ではデリカテッセンの主力商品であり、サンドイッチのおいしさが店の繁盛に大きく影響するといわれている。
日本では食パンに具を挟んだものをさすことが多いが、それ以外の形式のものもサンドイッチと呼ばれる。例えば、フランス料理における前菜には、食パンベースのカナッペがあるが、これもサンドイッチの一種である。また、ハンバーガーや、イタリア料理のパニーノもサンドイッチの一種である。ハンバーガーショップでは、ハンバーガーと同じ円形のバンズに挟む方式のサンドイッチを、「~バーガー」と呼ぶことがある。
アイスクリームをクッキーなどで挟んだものをアイスクリーム・サンドイッチ(アイス・サンド)、クッキー・サンドなどとも称される。
この料理に因んで、両側から挟まれた状態を「サンドイッチ(された)」ということがある。このことより、広告を書いた板に挟まれた格好で街中で宣伝を行う者をサンドイッチマンと呼ぶ。また、プロレスのタッグマッチで前後から相手選手を挟む連係攻撃を「サンドイッチ○○」と呼ぶ(サンドイッチラリアット、など)。
なお、英語では「sand.」と略すことはあるが「サンドする」「○○サンド」の意味で「sand」を使うことはない(いずれの意味でも sandwich を用いる)。
歴史
パンに具を挟むという料理は、古代ローマのオッフラ、インドのナン、中東のピタ、メキシコのタコスやブリート等、古くからあったものである。[要出典]
1世紀のユダヤ教の律法学者ヒレルは、過越の時に、犠牲の仔羊の肉と苦い香草とを、昔風の柔らかいマッツァー(種無し、つまり酵母を入れない平たいパン)に包んだと言われている[1]。西アジアから北アフリカにいたる地域では昔から、食べものを大皿から口へ運ぶのに、このような大きくは膨張させないパンを使い、すくったり、包んだりして食べた。モロッコからエチオピアやインドにかけては、ヨーロッパの厚みのあるパンとは対照的に、円形に平たく焼かれた。
中世ヨーロッパでは、古く硬くなった粗末なパンを、食べ物の下に敷く皿がわり(トレンチャー)に使っていた。下敷きのパンは食べ物の汁を吸う。これを食事の最後に食べたり、腹が満たされている場合には、乞食や犬に与えた[2]。このトレンチャーは、オープン・サンドイッチ(パンで挟んだものではなく、一切れのパンの上に具を置いただけのサンドイッチ)の前身といえる。英国風サンドイッチのより直接な前身は、例えば17世紀ネーデルラントに見ることが出来る。博物学者ジョン・レイは、居酒屋の垂木に吊るされている牛肉を、「薄くスライスされ、バターの上にのせられ、バター付パンと一緒に食べられる」と記している[3]。このような詳細な記述は、当時のイギリスにおいては、オランダの belegde broodje(オープン・サンドイッチ)のような食べ方が未だに一般的でなかったことを示している。
始めは、夜の賭博や酒を飲む際の食べ物であったが、その後、ゆっくりと上流階級にも広がり始め、貴族の間で遅い夜食としても食べられるようになった。19世紀には、スペインやイングランドにおいて、爆発的に人気が高まった。この時代は工業社会の擡頭があり、労働者階級の間で、早い・安い・携帯できる食べ物としてサンドイッチは欠くことのできないものとなった。[4]。
同時期に、ヨーロッパの外でもサンドイッチは広まりはじめたが、アメリカでは、(大陸とは異なり)夕食に供される手の込んだ料理となった。20世紀初期までには、すでに広く地中海地方でもそうなっていたように、アメリカでもサンドイッチは人気のある手軽な食べ物となった[4]。
語源
M. モートンの調査によれば、16世紀から17世紀英国では「サンドイッチ」はただ単に"bread and meat" とか "bread and cheese"などと呼ばれていたという[2]。食べ物としての「サンドイッチ」の語の初出は、エドワード・ギボンの日記(1762年11月24日)にある。
ココア・ツリーで食事をした。この立派な場所は、毎晩、本当に英国的な光景を見せてくれる。二、三十人のこの国の一流の男たちが……テーブルで少しづつ食べる……僅か冷たい肉、あるいはサンドイッチを[2]。
この名は、当時のイギリスの貴族、第4代サンドウィッチ伯爵ジョン・モンタギューにちなんで付けられたものであるが[5]、モンタギューはサンドイッチの発明したわけでも、推奨したわけでもない。サンドウィッチ伯爵の評伝を著したニコラス・ロジャーによれば、その理由について唯一の情報源は、ピエール=ジャン・グロスレ(Pierre-Jean Grosley)による、1765年のロンドン滞在の印象をまとめた著作『ロンドン Londres』 (1770年。英訳はA Tour to London 1772年)の中の次のゴシップだという。
国務大臣は公衆の賭博台で24時間を過ごし、終始ゲームに夢中になっていたので、二枚の焼いたパンにはさんだ少しの牛肉を食べる他に生きてはおられず、ゲームを続けながらこれを食べる。この新しい食べものは、私のロンドン滞在中に大流行した。発明した大臣の名前で呼ばれた[2]。
一方、N. ロジャーは、伯爵は海軍や政治や芸術に傾倒していたから、最初のサンドイッチは仕事机の上で食べられたのではないかと推測している。
「サンド(砂、sand)とウィッチ(魔女、witch)」以外、どんなものでもパンにはさんで食べられるということからサンドイッチと名づけられた[6]というのは俗説(というより冗談)である。
調理法
軟食化の進んでいる現在においては、耳を切り落とした食パン等、柔らかいパンを使った俗に言うソフトタイプが一般的だが、耳をつけたままの物やフランスパン、ドイツパンを始めとした硬いパンを使ったハードタイプの物もある。ただしサンドイッチの販売において、ハードタイプはソフトタイプに比べて高価なものになっている事が多い。他にもベーグル、ロールパン、クロワッサン等を使う物もある。
パンはそのまま、あるいはトーストにして、普通はバター、マーガリン、マヨネーズなどを塗ってから具を挟む。これにはパンが具材の水分を吸うのを防ぐ目的もある。風味を付ける為、からしやマスタードを塗ることも多い。食パンの場合、1斤を8〜10枚切りの薄切りにしたものを使うのが一般的である。具を挟んだ後、布巾をかけて軽く上から重しを置き、パンと具材の密着度を高めると、食べる際にバラバラにならなくてよい。
具を挟まずに乗せただけの物は、オープン・サンドイッチ(オープンサンド)と呼ばれる。ライ麦パンの上に多彩な具材を乗せたデンマーク料理・スモーブローは特に有名。また、サンドイッチを専用器具に挟んで両面を焼いたものはホットサンド、細切りした耳なしの食パンに薄切りにした具を乗せ、端から円筒状に巻いたものはロール・サンドイッチやロールサンドと呼ばれる。細長いパンを切って具材を挟んだものを潜水艦に見立ててサブマリン・サンドイッチ(サブ)と呼び、サブウェイやクイズノス・サブがファーストフードとして世界的に普及させた。
バリエーションとして、パンに具材を挟んだものに溶き卵を絡めて油で揚げたモンテクリストサンドイッチ等もある。
具は特に限定されず、一般的な物としては、次のようなものがある。
- ハムやローストビーフ等の肉類
- ツナ缶やスモークサーモン、小エビ等の魚介類
- 茹で卵(スライス、もしくはみじん切りにしてマヨネーズと和える)や薄焼き卵、オムレツなどの調理された鶏卵
- カツレツやフライ、コロッケ、唐揚げ、フライドポテト等の揚げ物類
- ポテトサラダ等の惣菜類
- キュウリやトマトやレタス等の野菜
- チーズや生クリーム(ホイップクリームで代用されることが多い)等の乳製品
- ジャムやピーナッツバター等のスプレッド類
- イチゴやバナナ等の果物
- つぶあん、こしあん、うぐいすあん、白あんなどの餡類
複数の具材を挟み込むことも多く、特にベーコン・レタス・トマトの組み合わせはBLTサンドと呼ばれ定番サンドイッチの一つとなっている。BLTサンドの場合は、マヨネーズやトマトケチャップで味付けするのが一般的で、薄焼きした卵やゆで卵も一緒に挟むことがある。
更に海苔やじゃこのいわゆる和風食材や、焼きそばやスパゲッティなどの麺類までとその範囲は広い。
付け合せとして、ピクルスやパセリが添えられることが多い。またピクルスは挟むこともある。
トリビア
2011年現在、11代目サンドウィッチ伯であるジョン・エドワード・ホリスター・モンタギュー・サンドウィッチ伯爵はウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートのダウンタウン・ディズニーに、Earl of Sandwich (サンドウィッチ伯)というサンドイッチ店を開業しており、サンドウィッチ伯が経営しているサンドイッチ店になっている。
主要チェーン
脚注
- ^ バビロニア・タルムード、ペサヒーム、115a
- ^ a b c d What's Cooking America, Sandwiches, History of Sandwiches.
- ^ Ray, Observations topographical, moral, & physiological; made in a journey through part of the Low Countries, Germany, Italy, and France... (vol. I, 1673) 。Simon Schama, The Embarrassment of Riches (1987:152). より引用。
- ^ a b Encyclopedia of Food and Culture, Solomon H. Katz, editor (Charles Scribner's Sons: New York) 2003
- ^ この爵名自体は、領地であった Sandwich(現在のサンドウィッチ村)に由来する。古英語では Sandwicæ。入り江や河口付近の砂の多い地を意味する。
- ^ 魔夜峰央, 『パタリロ!』第18巻, 白泉社, 1983年
- ^ ハンバーガーチェーンとして知られるが、日本マクドナルドはそれらをサンドイッチと呼称している。(株主優待券の表記より)