ズムウォルト級ミサイル駆逐艦

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ズムウォルト級ミサイル駆逐艦
Concept drawing for USS Zumwalt, the lead ship of the DD(X) class.
艦級概観
艦種 ミサイル駆逐艦
艦名 海軍功労者 一番艦は
エルモ・ズムウォルト・ジュニア提督に因む
建造期間 2009年 - 建造中
就役期間 2015年(計画)
建造費 33億USドル
前級 アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦
次級 最新
性能諸元
排水量 満載:14,797 t
全長 183 m
全幅 24.5 m
喫水 8.4 m
機関 統合電力システム 2軸推進
MT30ガスタービン(35MW) 2基
LM500 補助ガスタービン(5MW) 2基
非常用ディーゼル発電機 複数
Alstorm AIM 推進モーター(34.6MW) 2基
航続距離 不明
速力 最大30.3ノット(56+ km/h)
乗員 106名 航空要員:36名
(最終的には100名以下まで削減予定)
兵装 62口径155mm単装砲 2基
70口径57mm単装砲CIWS 2基
Mk 57 VLS(20セル)
スタンダードSM-2 SAM
スタンダードSM-3 ABM
ESSM 短SAM
VLA SUM
トマホーク CM
を発射可能
4基
レーダー AN/SPY-3
艦載機 SH-60 LAMPS 2機
またはMH-60R LAMPS(1機)
MQ-8 UAV(3機)

ズムウォルト級ミサイル駆逐艦 (Zumwalt class destroyer) 、またはDD(X)は、アメリカ海軍が2011年現在取得中の新型ミサイル駆逐艦である。

2015年頃に1番艦「ズムウォルト」が就役予定である。

目次

[編集] 開発の経緯

第二次世界大戦中に建造され戦後長く使用されたアレン・M・サムナー級駆逐艦ギアリング級駆逐艦を代替すべく1970年代から1980年代にかけて開発されたスプルーアンス級駆逐艦が、2010年前後に寿命を迎えることから、これを代替する駆逐艦の計画が1990年代から開始された。

当初、沿岸地域での活動能力や対地攻撃能力を重視した新型駆逐艦の開発がDD-21の計画名で進められ、2000年には1番艦の艦名をエルモ・R・ズムウォルト・ジュニア提督に因んでズムウォルトとすることまで決まったが、2001年11月にそれまで別計画で進行していた新型ミサイル巡洋艦CG-21計画、及び沿海域戦闘艦(LCS)とで新規開発する技術を共通使用し開発費を削減することが決定された。それにあわせ、名称がDD(X)に変更され、能力も従来までの要求に加え、弾道ミサイル防衛能力や対空攻撃能力も要求されることとなった。

ズムウォルト級はDD-21の名称時からノースロップ・グラマン社を中心としたゴールドチームとジェネラル・ダイナミクス社を中心としたブルーチームの2つによる競合で、優れている方を採用することとなっていたが、2002年4月にゴールドチーム案を採用することが決定し次の段階へ進むことになった。

開発技術が次期ミサイル巡洋艦CG(X)」と共用される予定であったが、CG(X)計画は中止されている。

[編集] 船体

[編集] 船体形状

従来の艦船とは大きく異なる設計のズムウォルト級

船体形状はこれまでの艦船とは、かなり異なる。船を輪切りにして前方から見た船体断面は、従来の艦級では上甲板付近が最も幅が広く、その上下では幅が狭い形状であったが、本級ではステルス性向上のため、吃水線直下が最も幅広く、乾舷は船体内向きに内傾しているタンブルホーム船型(Tumblehome hull form)を採用した。また、船首形状も波浪貫通型船首(Wave piercing bow)となっており、水面上より水面下の方が前方に突き出ている。広い船尾トランサムも1枚の単純平面で構成され、側面同様に内傾している。ちょうど潜水艦が浮上したような形状となっている。

アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦フランス海軍ラファイエット級フリゲートのようなステルス性が重視されている艦は、前から見るとひし形のような形状をしているが、この場合水平方向からくる電波は上部にあたると空に向かって、下部にあたると海に向かって反射され、直接もとの方向へ戻ってしまうことはない。しかし海に向かって反射された電波は海面で乱反射し、ある程度もとの方向へ戻ってしまう。DD(X)で採用したタンブルホーム船型は、水平方向からくる電波はほぼすべて空に向かって反射されるため、従来までステルス性を重視していた艦級のそれを凌駕した。

艦船や航空機に搭載されているレーダー機器から発射される電波波長領域(2-18GHz, S-Ku Band)では、現在運用されているアーレイ・バーク級に比べ、レーダー反射断面積(RCS)が50分の1程度になるといわれている[1]

[編集] 二重船殻

中央付近の船体横断面図

船体は内側と外側の二重の側壁を備えている。2枚の側壁の間には新型のVLS(PVLS, Peripheral VLS)を計80セル搭載する。二重船底と合わせて船体は二重船殻を成している[1]

満載排水量は15,000tに近く、これは現在アメリカ海軍が唯一保有する巡洋艦であるタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦よりも大きい。

[編集] 上部構造物

船体中央にデッキハウスと呼ばれる大きな上部構造物が設けられており、単純な平面で構成された壁面は、いずれも内傾しているため上部構造物は多角錐型になっている。

煙突はこの上部構造物に収められていて天井部に開口部があるだけである。炭素繊維などの複合材料で作られた壁面には多数の開口部が設けられて、同一平面を成した平面アンテナや電子光学機器の観測窓、信号灯が埋め込まれており、統合複合材デッキハウス・開口(Integrated composite deckhouse & apertures、IDHA)と呼ばれている。

他の艦では当たり前のはしごや手すり類、燃料補給ステーションなどの突起物は外面から見える位置には露出してしない。艦橋の窓は、上部構造物前部のやや低い位置にあり、船室の窓は基本的に設けられない。

[編集] 推進機関

本級では統合電力システム(Integrated Power System、IPS)を採用し、主推進動力を含むエネルギーの全てを発電機が作る電気によって得る仕組みになっている。主の35メガワット2基と補助の5メガワット2基のガスタービン発電機によって作られる最大80メガワットの電気が、先進誘導電動機AIM(Advanced induction motor)2基の各34.6Mwの電動モーターを駆動して2軸プロペラを直接回し、30ノット以上で艦を推進する。統合電力システムの採用によって、船体振動や水中騒音が小さく出来るためステルス性の向上に寄与し、推進力の調整を容易とする。また、保守整備の人員が削減出来る。計画当初は、大電力が必要な電磁投射砲の搭載も考慮して採用されたといわれた[要出典]

ガスタービンは軽量な割りに大出力が得られるので高速艦には向いているが、燃費は比較的悪い。2007年からの原油価格高騰の影響もあり、本級以降に建造予定のCC(X)に関しては米政府内部で本級同様に統合電力システムとするか、それとも原子力推進機関を採用するか、考慮されるようになっている[1]

3番艦からは2基の推進モーターがAIMに代わって、米アメリカン・スーパーコンダクター社(AMSC)製の高温超伝導(High temparature supercondductor、HTS)モーターに変更される可能性がある[2]

[編集] 装備

完成予想図

ズムウォルト級では従来までのようなマストは廃止され、ほとんどのアンテナも上部構造物の傾斜壁面に固定式で取り付けられている。唯一例外の通信・電子戦用の回転式小型アンテナも上部構造物の上面前部に傾斜角を揃えた選択電波透過性の角型レドームに収められている[1]

[編集] SPY-3レーダー

主要なレーダーとしては、長距離広域索敵用レーダー(VSR、Sバンド、2-4GHz)と低高度目標探知・精密武器管制用(MFR、Xバンド、8-12GHz)に2種類のDBR(Dual Band Rader)のアクティブ・フェイズド・アレイ・レーダーが採用される。このSPY-3と名付けられた新型レーダーシステムは、従来のイージス艦に搭載されているAN/SPY-1に比べて、目標探知追尾距離で約25%の延伸、シークラッターからの目標探知能力の向上、対電波妨害能力の向上、探知追尾目標数が10倍になっているとされる。

VSR(Volume search radar)は1面の縦横サイズが4.1mx3.9m、MFR(Multi function radar)は2.7mx2.1mであり、各面で120度以上をカバーするものが3面×2種類が上部構造物の傾斜壁面に取り付けられて、360度全周の半球空間を覆域に捕らえることが出来る。

MFRには目標の索敵追尾機能だけでなく、セミアクティブ誘導型のミサイル用誘導電波の照射と、ミサイルへのアップリンク/ダウンリンク機能も備わっている。 戦闘システムも改良型のイージスシステムが搭載される[1]

[編集] ソナー

内部配置予想図

艦首と曳航式のソナー、デコイ、魚雷、アスロックによって海中機雷や敵潜水艦に対抗する、統合水中戦システム(Integrated Undersea warfare system、IUWS)を構成している。

艦首ソナー
艦首ソナーも従来より探知能力を高めた新型のものが搭載される。この2周波数バウソナーは水面下の艦首の上側に高周波ソナーが、下側に中周波ソナーが位置する[1]
曳航アレイ・ソナー
ケーブルで続がれたソナーの列が艦尾から曳航され、自艦の出す水中騒音や振動から離れた水中で基線の長い複数の聴音点が得られる。

[編集] 電子戦装置

電子戦への対処として従来からのSLQ-32に替えて、米ノースロップ・グラマン社が開発中のMFEW(Multi Function Electronic Warfare)システムを搭載する計画である。このシステムのアンテナは平板型で構成されている[1]

[編集] 兵装

[編集] ミサイル

ミサイル発射イメージ

ミサイルは内壁と外壁の間に装備するMk57 VLS(PVLS:Peripheral Vertical Launch System)に搭載される。Mk57 VLSは従来使用されているMk41VLSと同じようにトマホークスタンダードミサイル(SM-2 BlockIII、SM-2ER BlockIV、SM-3 BlockIA)、ESSM垂直発射式アスロック(VLA)など、2011年現在は6種類のミサイルが使用可能である。今後は、SM-3 BlockIIAやSM-6 ERAMといった現在開発中のミサイルも使用される可能性がある。 内壁と外壁の間に装備することで、被弾によって自艦のミサイルが誘爆した場合でも、その被害を局限化するように考慮されている。

ズムウォルト級は当初、128セル前後を主砲とヘリコプター甲板の両脇付近に装備する予定と言われていたが、2011年現在、内殻と外殻の間には4セルを1単位とするPVLSを前甲板左右舷に各6基、後部のヘリコプター甲板左右舷に各4基の合計20基、80セルを搭載する。ESSMは細身であるため1セルに4発まで装填できるため、セル数以上の搭載数となる[1]

[編集]

砲撃イメージ

主砲はBAEシステムズ製62口径155mm単装砲を2門、前甲板に装備する。このAGS(Advanced Gun System、先進砲システム)と名付けられた完全自動の無人艦砲は、全周回360度、俯角-6度-+71度、発射速度は10発/分で、砲塔全体が楔形のシルエットとなるよう外面をいくつかの単純な多角形で構成されておりステルス性に配慮されている。

当初発表時のイラストでは砲身の側面が平面で覆われていたが、後には通常の円筒形が剥き出しで描かれており、砲の使用時以外は砲身は正面向きで下げられて砲塔と上甲板の収納部に収納されステルス性が守られるようになっている。一般に近年の艦載砲の即応弾数は多くても100発程度であるが、AGSは1門あたりの即応弾数は600発と非常に多い。

AGSが受け持つのは水上目標と地上目標用であり、対空目標に対しての使用は考慮されていない。AGSは無誘導の通常砲弾(56km)とミリ波誘導型対艦用砲弾(41km)のほかに、固体ロケットモーターを装備し目標射程を185km(開発中の現在154km)に延ばした開発中の誘導砲弾 LRLAP(Long range land attack projectile)の使用も可能である。この砲弾は長さ2.24mで102kg、炸薬は10.9kgであり、アーレイ・バーク級などが装備するMk45 Mod4で使用されるMk171 ERM(射程延伸誘導砲弾、117km、1.55cm、50kg、炸薬3.3kg)より射程が長く加害力も大きい。LRLAPは各砲に35発ずつ搭載される[2]

AGSは当初VLSのように垂直に打ち出す方式も考えられていたが、その場合通常の砲弾の使用ができなくなってしまうため結局従来までと同様の旋回砲塔となった。

副砲にはユナイテッド・ディフェンス社の70口径57mm単装砲 Mk110 近接砲システム(Close in gun system、CIGS)のステルス型砲塔がヘリコプター格納庫上の左右舷に各1基ずつが装備され、小型武装船などの水上目標への対処を主目的に、航空機や対艦ミサイルなどの経空脅威への対処を副目的にしている。ボフォース製の砲から作られたこの砲は、最大射距離17km、220発/分、砲塔内即応弾数120発、全周回360度、俯角-10度-+77度である。この砲は、沿海域戦闘艦(LCS)及びアメリカ沿岸警備隊のカッターでも採用が決定している。

本級からレールガンの搭載も視野に入れた開発が行なわれていたとされるが、2006年10月段階でのレールガンの開発計画では2016年に海上試験を行い、実用砲の完成は2020-2025年とされていたため、その後、公表される予想図にも示されないことと合わせれば、本級の初期造艦には間に合わないと判断されていると思われる[1]

[編集] 魚雷

艦尾などの船体内に三連装魚雷発射管が搭載されている。これにより、直径324mmのMk-50/Mk-54短魚雷が発射出来る[2]

[編集] 搭載物

[編集] ヘリコプター

後部にヘリコプター格納庫

後部にヘリコプター格納庫と広い甲板を備えている。有人ヘリコプターであるMH-60R シーホーク2機、またはMH-60R シーホーク1機と無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicles)のMQ-8 ファイアスカウト3機を格納庫内に収容可能である。

ヘリコプター甲板は広く、より大型なヘリコプターでも発着は可能であると示唆された[1]

[編集] 搭載ボート

複合艇(RHIB: Rapid hull inflatable boat)と呼ばれる硬質ゴム製で推進器の付いた長さ7mのボートが2艇、船尾のヘリコプター発着甲板下に格納されており、船尾の扉から発進・回収が行なえるようになっている[1]。後続艦には11m級のRHIB艇が搭載される予定である。[2]

[編集] 建造計画

DD-21計画時は最終的に32隻の建造が予定されていたが、DD(X)計画では未定となっている。議会では1隻50億ドルにのぼる本級の整備には批判の声が強く、一時は18,000tとも言われた排水量も当初予定の14,000t台まで削減された。

その後も次期ミサイル巡洋艦「CG(X)」[3]までのつなぎとして一定数が建造される予定だったが、予算的な事情から7隻、次いで2隻に削減された。ただしアメリカ合衆国議会は3番艦の建造を要求しており、また隻数の不足分はアーレイ・バーク級の追加建造で補う案が浮上している。

1番艦は暫定的な仕様の「フライト0」とされ、2009年に起工した。2~3番艦は、2011年9月ジェネラル・ダイナミクスバス鉄工所が18億ドルで受注したことが発表された。[4][5]

艦番号 艦名 造船所 起工 進水 就役
DDG-1000 ズムウォルト
USS Zumwalt
バス鉄工所 2009年
2月11日
2015年予定
DDG-1001 マイケル・モンスーア
USS Michael Monsoor
バス鉄工所 2015年予定
DDG-1002 発注済み・未命名 バス鉄工所 2018年予定

[編集] 脚注

  1. ^ a b c d e f g h i j k 野木恵一、多田智彦、他著『海自汎用護衛艦&世界の戦闘艦技術』軍事研究2008年6月号別冊、ジャパン・ミリタリー・レビュー、2008年6月1日発行 ISSN 0533-6716
  2. ^ a b c d 河津幸英著『アメリカ海軍の超戦闘艦&有事作戦』アリアドネ企画、2008年5月15日第1刷発行 ISBN 9784384041651
  3. ^ 2010年に計画中止。
  4. ^ 国防総省調達情報,2011年9月15日
  5. ^ General Dynamics Awarded $1.8 Billion for Construction of Two Zumwalt-class DDG-1000 Destroyers (PDF) ジェネラル・ダイナミクスバス鉄工所ニュースリリース,2011年9月15日

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

以下のサイトにはイラストもある。

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