バルビツール酸系

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バルビツール酸の構造式。

バルビツール酸系(Barbiturate、バルビツレート)は、鎮静薬静脈麻酔薬抗てんかん薬などとして中枢神経系抑制作用を持つ向精神薬のグループである。構造は、尿素と脂肪族ジカルボン酸とが結合した環状の化合物である。それぞれの物質の薬理特性から適応用途が異なる。

バルビツール酸系の薬は治療指数が低いものが多く、過剰摂取の危険性を常に念頭に置かなければならない[1]。1960年代には、危険性が改良されたベンゾジアゼピン系が登場し用いられている。抗てんかん薬としてのフェノバルビタールを除き、あまり使用は推奨されていない。

乱用薬物としての危険性を持ち、向精神薬に関する条約にて国際的な管理下にある。そのため日本でも同様に麻薬及び向精神薬取締法にて管理されている。

作用機序[編集]

中枢神経系では神経伝達物質として、アミノ酸が多く分布している。主な神経作用性のアミノ酸としては興奮アミノ酸であるグルタミン酸、抑制アミノ酸であるγ-アミノ酪酸 (GABA) が有名である。

GABAA受容体にはアゴニストであるGABA結合部位の他に、バルビツール酸系結合部位、ベンゾジアゼピン結合部位、糖質コルチコイド結合部位、ペニシリン結合部位、フロセミド結合部位、フルマゼニル結合部位が知られており、GABAとの反応性の調節を行っている。

バルビツール酸系が神経興奮性を低下させる機序としてはGABAA受容体機能の調節からきていると考えられている。バルビツール酸系はクロールイオンチャネルの開口時間を大幅に延長することによりGABAの薬理効果を増強することであると考えられている。また高濃度になるとGABAA受容体を直接活性化するようになる。また麻酔濃度ではAMPA型グルタミン酸受容体活性化を抑制したり、電位依存性ナトリウムイオンチャネル活性も低下させるといわれている。

副作用[編集]

活性化ビタミンB6やビタミンB2の吸収や作用を阻害するため、常用することでこれらビタミン欠乏症にみまわれ、結膜炎や皮膚炎を発症する。

耐性の形成が早く、依存性が高い。作用量と致死量が近い。特にバルビツール酸系過量服薬は致死的になる場合がある。この点で1960年代にはベンゾジアゼピン系に取って代わられた。

適応[編集]

ベンゾジアゼピン系が出現するまでは、不眠症や不安症状に対する治療薬としてよく用いられていた。ベンゾジアゼピンに比べて選択性が低く毒性が強いため使用頻度は減少を続けてきた。麻酔導入に関しても、別のGABAA受容体活性薬であるプロポフォールの普及によってとってかわられている。

2010年のてんかん治療ガイドラインにおいても、フェノバルビタールの優先度は低いため、第一選択の薬としては推奨されていない[2]。中止の際には漸減が原則であり、急な中止は、けいれん重積に注意が必要である[3]

名称 適応 作用時間
チオペンタール 麻酔導入と短期維持、てんかん発作の緊急治療 超短時間作用型(5〜15分)
ペントバルビタール 不眠、術前の鎮静、てんかん発作の緊急治療 短時間作用型(3〜8時間)
アモバルビタール 不眠、術前の鎮静、てんかん発作の緊急治療 短時間作用型(3〜8時間)
フェノバルビタール てんかん発作の治療、てんかん重積 長時間作用型(数日)

作用時間以外にも、薬剤ごとの鎮静麻酔作用が強い、あるいは、抗てんかん作用が強いといった薬理特性によって適応が決定されている。麻酔薬にはペントバルビタール、抗てんかん薬にはフェノバルビタールのようなことであり、ペントバルビタールでは、GABAAの直接活性化作用が強いため深い鎮静をきたす用量を投与しなければ、抗てんかん作用を示さない。

規制[編集]

乱用薬物を規制する国際条約、向精神薬に関する条約において、以下の指定がある。

  • スケジュールII セコバルビタール
  • スケジュールIII アモバルビタール、ペントバルビタール
  • スケジュールIV バルビタール、フェノバルビタール

出典[編集]

  1. ^ Barbiturates”. The European Monitoring Centre for Drugs and Drug Addiction (2011年9月13日). 2013年6月7日閲覧。
  2. ^ 日本神経学会(監修) 『てんかん治療ガイドライン2010』 医学書院、2010年ISBN 978-4-260-01122-8
  3. ^ 同『てんかん治療ガイドライン2010』102頁。

関連項目[編集]