身体拘束

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身体拘束(しんたいこうそく、英語: Medical Restraint)とは、精神科入院中の患者に対して、患者本人の生命の保護、自他への重大な身体損傷を防ぐために行われる行動制限である[1]。新聞報道によれば、外部からの侵入を防ぐ防犯対策であろうとも患者の部屋を外から鍵で施錠出来るようにすることも身体拘束であると記されている[2]

国際連合人権理事会による拷問に関する国連特別報告者の会議では、すべての国に対して心理社会的障害を持つ者に対する強制および同意のない介入の絶対的な禁止を要求している[3]

国際原則[編集]

世界保健機関は「精神保健法:10の原則」において、身体的抑制(隔離室や拘束衣など)や、化学的抑制を行う際は、仮に必要と判断された場合でも以下を条件としなければならない(should)としている[4]

  1. 患者と代替手法について、話し合いを継続していくこと
  2. 資格を持った医療従事者によって、検査と処方を行うこと
  3. 自傷または他害を緊急に回避する必要性があること
  4. 定期的な状態観察
  5. 抑制の必要性の定期的な再評価。たとえば身体抑制であれば30分ごとに再評価
  6. 厳格に制限された継続時間。たとえば身体抑制では4時間。
  7. 診療録への記載

国際連合人権理事会による拷問に関する国連特別報告者の会議では、すべての国に対して心理社会的障害を持つ者に対する強制および同意のない介入の絶対的な禁止を要求しており、拘束や独居監禁、神経弛緩薬(抗精神病薬)や電気ショックが含まれる[3]

規定[編集]

日本では、精神保健福祉法第36条第3項の規定にて

  1. 自殺企図または自傷行為が著しく切迫している場合
  2. 多動または不穏が顕著な場合
  3. そのほか精神障害のために放置すれば患者の生命にまで危険がおよぶ恐れがある場合

に限定して、精神保健指定医の診察を経て、行うことが認められている。

措置入院緊急措置入院応急入院医療保護入院の患者に対して行うことが想定されているが、任意入院でも行うことができる(退院制限がされている必要もない。ただし現実には、拘束を要する状態であり、かつ、任意入院に同意する能力があって退院を要求しない状態であるのは例外的であろう)。なお、医療観察法の入院では、別に基準が定められている。

有効性[編集]

身体拘束に関連する傷害に関するシステマティック・レビューは12の観測研究を特定し、身体的拘束が死亡、転倒、傷害の重傷度、入院期間を延長させるリスクを高めることを見出した[5]

是非[編集]

前述のように、身体拘束は、精神保健指定医の診察を受けた上で指示を受けた上で実施する必要があるが、実際は、指示を受けないまま身体拘束が実施されている事例も、少なくない。

1990年代にイギリスでは、患者を鎮静させる目的での大量の抗精神病薬の投与が、拘束された患者へ筋肉注射で行われたため、死亡する可能性が発覚し、ほとんどの集中治療室 (ICU) において、緊急時の鎮静のためのプロトコルが作成された[6]。第一選択薬の傾向はロラゼパムであり、鎮静作用のある非定型抗精神病薬は循環器の副作用のため適さないと考えられている[6]

2008年1月に、大阪府内の精神科病院に入院していた男性患者が、身体拘束を長期間受けた後死亡する事故があり、その際、勤務する複数の看護師が、指示を受けないまま拘束が行われ、厚生労働省へ提出する資料も改竄されていたと証言している[7]

厚労省が調査した統計によれば、日本国の精神科病院で身体をベッドにくくりつけられたり、拘束具で縛ったり、保護室に収容される身体拘束をされた患者数は、2014年(平成26年)6月30日の時点で1万682人である[8]。そのうち医療保護入院は8977人、都道府県知事らが決める措置入院は232人だった。都道府県別では北海道1067人、東京都1035人、千葉県が888人である。施錠された保護室への隔離は、1万94人で、医療保護入院患者8377人、措置入院患者549人である[9]

2017年に、日本の精神科病院(神奈川県の大和病院)へとニュージーランド人、ケリー・サベジ(27)が活動的になる躁病エピソードを原因として入院し、手首、足首、腰を拘束され10日後に心臓発作を起こし、その7日後に死亡したことが報道された[10]。彼の兄弟は、暴力的でなく強制的な拘束が必要となるような症状ではなかったと語り、心臓内科医は静脈血栓塞栓症の典型的な兆候を示していたことと、強い薬への反応が死因になりえると語った[10]。家族は、野蛮で中世のようだと言われる日本の精神病院における長期的な拘束を止める活動を行うようになり[10]、ニュージーランド政府を通じて日本国政府に働きかけを行っている[11]

出典[編集]

  1. ^ 一般社団法人日本精神科看護協会 (PDF) 『精神科看護ガイドライン2011』2011年9月、Chapt.2.8。ISBN 978-4862940414http://www.jpna.jp/sponsors/pdf/guideline-2011.pdf 
  2. ^ “相模原殺傷 共生と安全どう両立 障害者施設が対策に苦慮”. 東京新聞 夕刊 (中日新聞社). (2016年7月29日). オリジナル2016年7月30日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160730205631/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201607/CK2016072902000265.html 
  3. ^ a b United Nations (2013-2-1) (英語) (pdf). Report of the Special Rapporteur on torture and other cruel, inhuman or degrading treatment or punishment, Juan E. Méndez (Report). http://www.ohchr.org/Documents/HRBodies/HRCouncil/RegularSession/Session22/A.HRC.22.53_English.pdf. 
  4. ^ Division of Mental Health and Prevention of Substance Abuse (1996) (英語) (PDF). MENTAL HEALTH CARE LAW: TEN BASIC PRINCIPLES (Report). 世界保健機関. p. 4. WHO/MNH/MND/96.9. http://www.who.int/mental_health/media/en/75.pdf. 
  5. ^ Evans, David; Wood, Jacquelin; Lambert, Leonnie; et al. (2003). “Patient injury and physical restraint devices: a systematic review” (英語). Journal of Advanced Nursing 41 (3): 274–282. doi:10.1046/j.1365-2648.2003.02501.x. PMID 12581115. 
  6. ^ a b デイヴィッド・ヒーリー 『ヒーリー精神科治療薬ガイド』 田島治、江口重幸監訳、冬樹純子訳、みすず書房、2009年7月、第5版、25頁。ISBN 978-4-622-07474-8、Psychiatric drugs explained: 5th Edition
  7. ^ “患者拘束死で虚偽の報告書 理事長証言、大阪府調査”. 47NEWS. 共同通信 (全国新聞ネット). (2011年2月18日). オリジナル2015年8月17日時点によるアーカイブ。. https://archive.is/20150817052606/http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011021801000062.html 
  8. ^ 佐藤光展 (2017年2月1日). “身体拘束と隔離がまた増えた”. yomiDr. (読売新聞東京本社). https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20170201-OYTET50013/?catname=column_sato-mitsunobu 2017年6月14日閲覧。 
  9. ^ 井上充昌 (2017年3月21日). “精神科で身体拘束、最多1万人超 重症患者増加も要因か”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞). http://www.asahi.com/articles/ASK3P4J5FK3PUTFK00C.html 2017年4月2日閲覧。 
  10. ^ a b c Daniel Hurst, Eleanor Ainge Roy (2017年7月13日). “New Zealand man died after being tied to bed in Japanese hospital, says family” (英語). The Guardian. https://www.theguardian.com/world/2017/jul/13/new-zealand-man-dies-tied-bed-japanese-hospital?CMP=share_btn_tw 2017年7月31日閲覧。 
  11. ^ Karen Brown (2017年7月13日). “Call for answers after NZ man dies in Japan hospital” (英語). RNZ. http://www.radionz.co.nz/news/national/335007/call-for-answers-after-nz-man-dies-in-japan-hospital 2017年7月31日閲覧。 

関連項目[編集]