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臭化物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
臭化物
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
バイルシュタイン 3587179
ChEBI
ChEMBL
ChemSpider
Gmelin参照 14908
KEGG
性質
Br
モル質量 79.904 g mol−1
共役酸 Hydrogen bromide
熱化学
標準モルエントロピー S 82 J·mol−1·K−1[2]
標準生成熱 fH298)
−121 kJ·mol−1[2]
薬理学
N05CM11 (WHO)
薬物動態学:
12 d
関連する物質
その他の
陰イオン
フッ化物

塩化物
ヨウ化物

特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
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臭化物発疹

臭化物イオン(しゅうかぶつイオン、Bromide ion)とは、-I価の電荷を帯びた臭素原子である。

厳密には酸化数が-1である臭素化合物臭化物(bromides)と呼ぶ。同様に、これに分類される個々の化合物もまた臭化物(bromide)と呼ぶことができる。分類上、臭化セシウムのようなイオン結晶二臭化硫黄のような共有結合化合物も含むことがある。

自然界の臭化物

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臭化物は標準的な海水には約65mg/Lの濃度で溶け込んでおり、これは海水中の全ての塩類の0.2%に当たる。臭素は塩素と同様に岩石圏・水圏・気圏・生物圏問の移動性が大きく、岩石中の臭素は容易に溶脱し、様々な形態で臭化物が移動している[3]

鉱物としては、臭化銀(I)からなる臭銀鉱英語版(臭化銀鉱)がある。

シーフードには概して高水準の臭化物が含まれる。また、陸上から得られる食物の臭化物量は多様である。

化学

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希硝酸または硝酸銀を使って臭化物イオンの検出ができる。また、アンモニア水によってクリーム色の沈殿が消失する。

利用

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英語圏では、臭化物化合物、特に臭化カリウムは19世紀から20世紀初頭にかけて鎮静剤として多用されたことから、ブロマイド(bromide)という言葉が口語で、(鎮静剤・気休めとして多用されるような)「陳腐で退屈な常套句」を意味することになった。日本では、臭化銀(シルバー・ブロマイド)を感光剤として用いた印画紙 (Bromide paper) を指す和製英語からさらに転じて、タレントなどのコレクション用肖像写真「プロマイド (Puromaido)」を差すことが多い。

臭素系難燃剤英語版は、1960年代から利用され、難燃剤としては最も性能が高いものではあるが、環境や人体への影響が懸念され、2007年のRoHS規制などによって、いくつかの製品は使用が制限されている[4][5][6][7]

医学

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臭化物イオンには抗てんかん作用があり、特に獣医学において臭化物塩が未だに使われている。

臭化物による副作用にはいわゆる臭素中毒(ブロム中毒)があり、多様な神経症状を引き起こす。また、皮膚疾患も引き起こす可能性がある。詳細は臭化カリウムを参照のこと。

臭化リチウムは1900年代初頭に鎮静剤として使用され始めたが、一部の心臓病患者が代用塩としてそれを用いたのち死亡したため1940年代には人気を失った[8]。現在では、炭酸リチウム塩化リチウムのように臭化リチウムも、双極性障害の治療に使われている。

生物学

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臭化物は好酸球(多細胞寄生虫を処理するために特殊化された顆粒細胞の白血球)にとって必要なものである。好酸球は、優先して臭化物を使う酵素である好酸球ペルオキシダーゼの反応によって抗寄生虫性臭素化化合物を発生させるために臭化物を使っているのである[9]

身体によって臭化物が使われているにもかかわらず、臭化物が生命にとって必須であるとはわかっておらず、普通その機能は塩化物に(場合によっては不十分ながら)取って代わられる可能性がある。

脚注

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  1. ^ Bromide – PubChem Public Chemical Database”. The PubChem Project. USA: National Center for Biotechnology Information. 2012年11月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月20日閲覧。
  2. ^ a b Zumdahl, Steven S. (2009). Chemical Principles 6th Ed.. Houghton Mifflin Company. ISBN 978-0-618-94690-7 
  3. ^ 結田康一; 渋谷政夫『Br(臭素)のSoil Geochemistry (1)』1973年。doi:10.20710/dojo.44.2_69https://doi.org/10.20710/dojo.44.2_692025年9月6日閲覧 
  4. ^ Jagić, Karla; Dvoršćak, Marija; Klinčić, Darija (2021年12月1日). “Analysis of brominated flame retardants in the aquatic environment: a review” (英語). Archives of Industrial Hygiene and Toxicology 72 (4): 254–267. doi:10.2478/aiht-2021-72-3576. ISSN 1848-6312. PMC 8785114. PMID 34985845. https://www.sciendo.com/article/10.2478/aiht-2021-72-3576. 
  5. ^ Nishizawa, Hitoshi (2019年). “臭素系難燃剤” (英語). 日本ゴム協会誌 92 (6): 211–217. doi:10.2324/gomu.92.211. ISSN 0029-022X. https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu/92/6/92_211/_article/-char/ja/. 
  6. ^ Polybrominated Diphenyl Ethers (PBDEs) Action Plan Summary | Existing Chemicals | OPPT | US EPA”. 2015年9月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年12月3日閲覧。
  7. ^ Brominated Flame Retardants in the Environment”. Columbia Environmental Research Center. 2016年5月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年12月3日閲覧。
  8. ^ Bipolar disorder
  9. ^ Eosinophils preferentially use bromide to generate halogenating agents - Mayeno et al. 264 (10): 5660 - Journal of Biological Chemistry

関連項目

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