リスペリドン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
リスペリドン
Risperidone.svg
IUPAC命名法による物質名
4-[2-[4-(6-fluorobenzo[d]isoxazol-3-yl)-
1-piperidyl]ethyl]-3-methyl-
2,6-diazabicyclo[4.4.0]deca-1,3-dien-5-one
臨床データ
胎児危険度分類
法的規制
投与方法 経口、徐放性製剤の筋肉内注射
薬物動態的データ
生物学的利用能 70% (経口)
代謝 肝臓 (CYP2D6-mediated)
半減期 3.91時間(未変化体)–21.69時間(主代謝物9-ヒドロキシリスペリドン)(経口、錠剤)
排泄 尿
識別
CAS番号 106266-06-2
ATCコード N05AX08
PubChem CID 5073
DrugBank APRD00187
KEGG D00426
化学的データ
化学式 C23H27FN4O2 
分子量 410.485 g/mol
リスパダール1ml 内用液

リスペリドン(英:Risperidone)は、ベルギー製薬会社ヤンセンファーマが開発したセロトニン・ドーパミン拮抗薬(SDA)と呼ばれる種類の非定型抗精神病薬である。 略称はRISまたはRPD。

概要[編集]

従来の抗精神病薬陽性症状には効果が見られたものの、陰性症状(感情的引きこもり、情動鈍麻など)に対しては満足する効果が挙げられていない上、錐体外路系副作用が高頻度で発現する問題があった。 選択的なセロトニン5-HT2受容体拮抗作用を持つケタンセリンと従来薬を併用したところ、これらの問題が改善されたり、弱まった。 単一化合物で錐体外路系の副作用が少なく、陰性症状に対しても有効な新薬として1984年に合成されたのがリスペリドンである。 ドーパミンよりセロトニンに強く働きかける特徴をもつ。薬理作用の項参照 また、少量でも優れた効果を発揮し、強力な鎮静作用をもつ。

リスペリドンは精神全体の高ぶりを抑える作用がある。 日本国内では1996年4月に統合失調症に用いる治療薬として承認されており、アメリカでは統合失調症に加え、躁病自閉症においてもFDAから承認を受けている。 ただし、適応外の処方が頻繁になされる薬剤であり、強い不安感や緊張感、睡眠障害強迫性障害引きこもりなど様々な精神症状に対して処方される。

薬価は1mg錠で1錠あたり40.90円と、他の非定型抗精神病薬より割安である(しかし持続性注射剤であるリスパダール・コンスタに限ると、その薬価は約23,000〜38,000円と極端に高額である)。 また、薬価が更に安い多くのジェネリック医薬品が発売されている。 第二世代抗精神病薬に分類される。

種類[編集]

  • リスパダール(ヤンセンファーマ)
    • 錠剤:リスパダール®錠1mg, 2mg, 3mg
    • 細粒剤:リスパダール®細粒1%
    • 口腔内崩壊錠:リスパダール®OD錠,0.5mg,1mg,2mg
    • 内用液:リスパダール®内用液0.5mL, 1mL, 2mL, 3mL(分封包装品),30mL, 100mL(瓶包装品)
    • 持続性注射剤:リスパダール®・コンスタ 25 mg, 37.5 mg, 50 mg(バイアル

他、ジェネリック医薬品多数。

薬理[編集]

脳の中枢に直接作用して、ドパミンD2受容体拮抗作用・セロトニン5-HT2受容体拮抗作用により統合失調症の陽性症状及び陰性症状を改善する作用がある。

用量・用法[編集]

維持量は通常1日2~6mgを原則として1日2回に分けて経口投与する。 なお、年齢、症状により適宜増減する。 但し、1日量は12mgをこえないこと。

副作用[編集]

強い副作用が有る為使用する際は十分に注意しなければならない。 発生する可能性のある主な副作用は、

処方されたばかりは血圧低下による作用によって立ちくらみがよくある。

他にも、重い副作用として

悪性症候群では筋肉の引きつり、嚥下困難、頻脈、発汗、発熱などがある。従来の定型と呼ばれる抗精神病薬に比べ、悪性症候群やジスキネジア、錐体外路系症状は少ないとされている。

また併用に注意を要する薬剤がある。(飲み合わせ)

  • パロキセチンとの併用で相互に効力を低下、血中濃度及び副作用を増加させるため併用は避ける必要がある。
  • ドパミンアゴニスト(例:レボドパ、ビ・シフロール)との併用でドパミン拮抗作用の低下や前頭葉でのドパミン機能の不均衡により、場合によっては重篤な気分変調などを引き起こす可能性があるため併用には注意を要する。

訴訟[編集]

2012年、ジョンソン・エンド・ジョンソンは、非定型抗精神病薬リスパダール(リスペリドン)の小児高齢者への適応外用途のマーケティングや、薬が体重増加や糖尿病と相関するというデータの隠ぺい、またほかの薬の違法マーケティングにより係争中であり、15~20億ドルが科されるとみられている[1]。リスパダールを処方するごとに5,000ドルの罰金で係争中である[2]

薬効薬理[3][編集]

薬理学的に関連ある化合物又は化合物群[編集]

薬理作用[編集]

薬効を裏付ける試験成績[編集]

ドパミン作用 ラット ED50 (mg/kg, 皮下) [4]
試験項目 リスペリドン ハロペリドール
アンフェタミンによる激しい興奮 0.056 0.016
アポモルフィンによる激しい興奮・常同行動 0.15 0.016

(※ハロペリドールと同等若しくはやや弱い)

セロトニン作用 ラット ED50 (mg/kg, 皮下) [5]
試験項目 リスペリドン リタンセリン[6]
トリプタミンにより前肢間代性痙攣 0.014 0.037
メスカリンによる小刻みな首振り運動 0.019 0.085
カタレプシー惹起作用 ラット ED50 (mg/kg, 皮下) [7] [8] [9] [10]
試験項目 リスペリドン ハロペリドール
カタレプシー惹起作用(A) 3.02 0.13
アポモルフィンによる常同行動抑制作用(B) 0.15 0.016
相対的カタレプシー惹起作用(A/B) 20.1 8.1

(※ハロペリドールより弱い)

海外での発売状況[編集]

イギリス[編集]

  • 統合失調症の治療 成人[11] 高齢者[12] 小児[13]
  • 双極性障害における中程度∼重度の躁状態の治療 成人[14] 高齢者[15] 小児[16]
  • 中等度∼重度のアルツハイマー型認知症患者の持続的攻撃の短期治療[17]
  • 5歳以上の小児および青年の行動障害における持続的攻撃の短期対処療法[18]

アメリカ[編集]

  • 統合失調症 成人(通常初回用量)[19] 成人(維持療法)[20] 青年[21]
  • 双極性障害の躁状態 成人(通常用量)[22] 小児(通常用量)[23] 維持療法[24]
  • 自閉症に伴う興奮(小児・青年)[25]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ Maia Szalavitz Sept (2012年9月17日). “Top 10 Drug Company Settlements”. TIME.com. http://healthland.time.com/2012/09/17/pharma-behaving-badly-top-10-drug-company-settlements/ 2013年2月23日閲覧。 
  2. ^ Michael Muskal (2012年4月11日). “Companies belittled risks of Risperdal, slapped with huge fine”. Los Angels Times. http://articles.latimes.com/2012/apr/11/nation/la-na-nn-risperdal-arkansas-20120411 2013年2月23日閲覧。 
  3. ^ 医薬品インタビューフォーム 2015年3月改訂(第13版) (PDF)”. ヤンセンファーマ株式会社. p. 16 (2015年3月). 2015年8月27日閲覧。
  4. ^ Janssen, P. A. J., et al. (1988). J. Pharmacol. Exp. Ther. 244 (2): 685−693. 
  5. ^ Janssen, P. A. J., et al. (1988). J. Pharmacol. Exp. Ther. 244 (2): 685−693. 
  6. ^ リタンセリン:選択的セロトニン5−HT2拮抗薬
  7. ^ Janssen, P. A. J., et al. (1988). J. Pharmacol. Exp. Ther. 244 (2): 685−693. 
  8. ^ Leysen, J. E., et al. (1992). Mol. Pharmacol. 41 (3): 494−508. 
  9. ^ Megens, A., et al. (1992). J. Pharmacol. Exp. Ther. 260 (1): 146−159. 
  10. ^ 菊本修 他 (1993). 薬物・精神・行動 13 (1): 39−42. 
  11. ^ 本剤は1日1回または2回投与する。 本剤を投与する患者は急性例、慢性例にかかわらず、投与量を2mg/日で開始し、2日目に4mg/日に増量するのがよい。 初発患者などでは、漸増で有用性が期待できることがある。 それ以降は、その用量を変えずに継続するか、症状に応じて調節する。 至適用量は4∼6mg/日であるが、より低用量が適切な場合もある。 一般に、10mg/日を超える用量は、それ以下の用量よりも有効性が高いことは示されておらず、錐体外路症状の発現リスクが増大する可能性がある。 10mg/日を超える投与は、治療上の効果がリスクを上回る場合にのみ行う。 16mg/日を超える用量は広範囲における安全性の評価が行われていないため、推奨されない。
  12. ^ 初回投与量は、1回0.5mg1日2回が望ましい。 症状に応じ、0.5mgずつ1日2回増量し、1回1∼2mg、1日2回まで調節することが可能である。
  13. ^ 18歳以下の小児では有効性のデータが不足しているため、本剤の使用は推奨されない。
  14. ^ 本剤は1日1回2mgから開始し、用量調節は24時間以上の間隔をあけて行い、増量は1mg/日 とする。 有効性と忍容性を最適化するため、投与量は1∼6mg/日とする。 本疾患における6mg/日以上の投与は調査されていない。 本剤の投与の必要性については、継続的に評価すること。
  15. ^ 初回投与量は、1回0.5mg 1日2回が推奨される。 症状に応じ、0.5mgずつ1日2回増量し、1回1∼2mg 1日2回まで調節することが可能である。
  16. ^ 18歳以下の小児では有効性のデータが不足しているため、本剤の使用は推奨されない。
  17. ^ 初回投与量は1回0.25mg1日2回が望ましい。 症状に応じて、最大で1日おきに0.25mgずつ1日2回増量し、調節することが可能である。 至適用量は1回0.5mg1日2回であるが、1回1mg1日2回の投与が適切な場合もある。 患者は本剤を6週間以上使用してはならない。 治療中、患者を頻繁に定期的に評価し、治療継続の必要性を評価すること。
  18. ^ 5∼18歳までの小児および青年体重50kg以上の患者では、初回投与量は1日1回0.5mgを推奨する。 症状に応じて、最大で1日おきに1日1回0.5mg増量して調整することが可能である。 至適用量は1日1回1mgであるが、1日1回用法・用量 0.5mgまたは1日1回1.5mgが適切な場合もある。 体重50kg未満の患者では、初回投与量は1日1回0.25mgを推奨する。症状に応じて、最大で1日おきに1日1回0.25mg増量して調整することが可能である。 至適用量は1日1回0.5mgだが、1日1回0.25mgまたは1日1回0.75mgが適切な場合もある。 本剤は本障害を有する5歳未満の小児で使用経験がないため、5歳未満の小児における使用は推奨しない。
  19. ^ 本剤は1日1回または2回投与する。 初回投与量は通常2mg/日であり、増量は24時間以上の間隔をあけて1∼2mg/日ずつ行う。 忍容性が認められた場合の推奨用量は4∼8mg/日である。 患者によっては時間をかけて投与するほうが適切な場合もある。 臨床試験では4∼16mg/日で本剤の有効性が立証されたが、1日2回、6mg/日を超える用量がそれ以下の用量よりも有効性が高いことは示されておらず、錐体外路症状および他の有害事象の発現頻度の増加に関わることから、通常は推奨されない。 1日1回投与を支持する試験では、8mg/日は4mg/日よりも有効性が高いという結果が得られた。 16mg/日を超える用量の安全性は、臨床試験で評価されていない。
  20. ^ 本剤投与患者の推奨投与期間に関する証拠所見はないが、4週間以上臨床的に安定した患者に本剤を2∼8mg/日投与し、その後1∼2年間追跡し観察を行った臨床試験で、再発予防効果が認められた。 適切な用量での維持療法の必要性を判断するため、患者を定期的に評価すること。
  21. ^ 本剤の初回投与は1日1回0.5mg、朝または夕に行う。 用量調節が必要であれば24時間以上の間隔をあけて行い、増量は0.5mgまたは1mg/日とし、忍容性が認められた場合は3mg/日が推奨される。 青年を対象にした試験で、1∼6mg/日の有効性は立証されているが、3mg/日以上の投与には付加的な効果は認められず、用量の増加に伴い有害事象の発現が増加した。 6mg/日を超える用量での臨床試験は行われていない。 傾眠を有する患者には、投与を1日2回にし、1日量を半量にすると効果がみられる可能性がある。 本剤を8週間を超えて投与する長期使用を支持する対照データはない。 青年患者に長期間本剤を使用する際は、本剤の有効性を定期的に評価すること。
  22. ^ 剤は1日1回2∼3mgで開始し、用量調節が必要ならば24時間以上の間隔をあけ、増量または減量は1mg/日とすること。 臨床試験では、本剤1∼6mg/日で躁状態に対する短期(3週間)効果が認められた。 本剤6mg/日を超える用量での臨床試験は行われていない。
  23. ^ 本剤の初回投与は1日1回0.5mg、朝または夕に行う。 用量調節が必要であれば24時間以上の間隔をあけて行い、増量は0.5mgまたは1mg/日とし、忍容性が認められた場合は2.5mg/日が推奨される。 小児を対象にした試験で、0.5∼6mg/日の有効性は立証されているが、2.5mg/日以上の投与では付加的な効果は認められず、用量の増加に伴い有害事象の発現が増加した。 6mg/日を超えた用量の臨床試験は行われていない。 傾眠を有する患者は1日量を半量にして1日2回投与すると、効果がみられる可能性がある。
  24. ^ 本剤で急性の躁病エピソードを治療し改善が認められた患者の長期的管理法を臨床医に指示する対照データは得られていない。 一般に本剤は躁状態に対する速やかな治療効果が期待されているだけでなく、初期反応に対する維持療法および新規エピソードの予防が認められているが、長期治療で本剤の使用を支持する体系的なデータはない。 長期にわたり本剤を使用する際は、長期的なリスクおよび効果を定期的に評価する必要がある。
  25. ^ 本剤の5歳未満の自閉症小児に対する安全性と有効性は確立していない。用量は患者の反応性と忍容性により調節すること。 1日1回または2回投与し、患者の体重が20kg未満の場合は0.25mg/日から、20kg以上の場合0.5mg/日から開始する。 最低4日間は開始用量を維持し、患者の体重が20kg未満の場合は0.5mg/日に、20kg以上の場合は1mg/日に増量し、少なくとも14日間はこの用量を維持すること。 十分な効果が得られない場合は、2週間以上の間隔をあけ、体重20kg未満の場合は0.25mg/日、20kg以上の場合は0.5mg/日の増量が可能である。 体重15kg未満の患者の場合、投与量には特に注意すること。 臨床試験では、患者の90%が本剤の0.5∼2.5mg/日投与で効果がみられた。 重要な臨床試験の1つでは、本剤の最大1日量は治療効果がプラトーに達したときで、体重20kg未満の患者の場合は1mg、20kg以上の場合は2.5mg、45kgを超える場合は3mgであった。 体重15kg未満の小児患者の用量については利用可能なデータがない。 十分な臨床効果が得られ維持することができたら、徐々に用量を減らして有効性と安全性の最適なバランスを実現すること。 長期にわたり本剤を使用するためには、患者ごとに長期的なリスクおよび効果を定期的に評価する必要がある。 傾眠を有する患者には、就寝時に1日1回投与または1日量を半量にして1日2回投与、あるいは用量を減らして投与すると効果がみられる可能性がある。

参考文献[編集]

  • 上田均・酒井明夫 『リスペリドンを使いこなす 症例を中心に』 星和書店 2004年。ISBN 4791105362
  • 武内克也・酒井明夫 『リスペリドン内用液を使いこなす ―症例を中心に― 』 星和書店 2004年。ISBN 4791105516
  • 医薬品インタビューフォーム 『リスパダール』 ヤンセンファーマ

関連項目[編集]

外部リンク[編集]