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炭酸リチウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
炭酸リチウム
2 Structure of Li+-Ions Structure of Carbonate
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
ChEBI
ChEMBL
ChemSpider
ECHA InfoCard 100.008.239 ウィキデータを編集
KEGG
RTECS number
  • OJ5800000
UNII
性質
Li2CO3
モル質量 73.89 g/mol
外観 白色の粉末
匂い 無臭
密度 2.11 g/cm3
融点 723 °C (1,333 °F; 996 K)
沸点 1,310 °C (2,390 °F; 1,580 K)
~1300 °C で分解
  • 1.54 g/100mL (0 °C)
  • 1.43 g/100mL (10 °C)
  • 1.29 g/100mL (25 °C)
  • 1.08 g/100mL (40 °C)
  • 0.69 g/100mL (100 °C)[1]
溶解度平衡 Ksp 8.15×10−4[2]
溶解度 アセトン、アンモニア、エタノールに溶けない[3]
磁化率 −27.0·10−6 cm3/mol
屈折率 (nD) 1.428[4]
粘度
  • 4.64 cP (777 °C)
  • 3.36 cP (817 °C)[3]
熱化学
標準定圧モル比熱, Cp 97.4 J/mol·K[3]
標準モルエントロピー S 90.37 J/mol·K[3]
標準生成熱 fH298)
−1215.6 kJ/mol[3]
−1132.4 kJ/mol[3]
危険性
労働安全衛生 (OHS/OSH):
主な危険性
刺激性
GHS表示:
急性毒性(低毒性)[5]
Warning
H302, H319[5]
P305+P351+P338[5]
引火点 不燃性
致死量または濃度 (LD, LC)
525 mg/kg (経口, ラット)[6]
安全データシート (SDS) ICSC 1109
関連する物質
その他の
陰イオン
硫酸リチウム
塩化リチウム
水素化リチウム
水酸化リチウム
臭化リチウム
フッ化リチウム
ヨウ化リチウム
その他の
陽イオン
炭酸ナトリウム
炭酸カリウム
炭酸ルビジウム
炭酸セシウム
関連物質 炭酸塩
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
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炭酸リチウム(たんさんリチウム、Lithium carbonate)は、化学式 Li2CO3 で表される無機化合物である。無色のであり、金属酸化物の製造において広く用いられている。

性質

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他の無機塩類と同様に炭酸リチウムも多形を持つ。室温では水100mLに対し1.33gしか溶けず、高温では溶解度が低下する。この低溶解性は鉱石の水性抽出物からのリチウムの分離に使われている。水溶液はアルカリ性を示す。外見上の溶解度は二酸化炭素の低圧力下で10倍に増加するが、この効果は準安定状態炭酸水素塩の形成によるものである。

用途

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炭酸リチウムは工業的に重要な化合物である。二酸化ケイ素や他の材料とともに低溶融剤を形成し、炭酸リチウムに由来するガラス製品は耐熱容器として役立つ。炭酸リチウムから作られたセメントは、より早くタイルを接着させる。

リチウムの産出とリチウム化合物原料

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リチウムは鉱石や鹹水を採掘して生産される。生産コストは後者の方が安価となる[7]。いずれの場合においても多くの場合で原料から抽出されたリチウムは一旦炭酸リチウムとして産出され、他のリチウム化合物は炭酸リチウムを出発原料として二次的に製造されている。そのためリチウムの産出量などの統計では炭酸リチウム換算(LCE:Lithium Carbonate Equivalent)で表されることが多い[8][9]

鉱石を原料とする場合には硫酸リチウムとして、鹹水を原料とする場合は塩化リチウムとして濃縮、精製し、いずれの場合においても最終的に炭酸ナトリウムと反応させて炭酸リチウムが得られる[8]

こうして得られた炭酸リチウムはそのまま、もしくは更に他の化合物に加工されて利用される。例えば水酸化リチウムは水と混ぜてスラリー状にした炭酸リチウムに水酸化カルシウムを加え複分解反応によって水酸化リチウム溶液と炭酸カルシウムの沈殿物とし、そこから炭酸カルシウムを濾別した後に溶液を蒸発させて製造される[8]

またリチウムイオン二次電池正極活物質として用いられるコバルト酸リチウムニッケル酸リチウム等のリチウム遷移金属酸化物は炭酸リチウムと遷移金属酸化物を混合、焼成することによって製造されている[10]

医学的用途

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炭酸リチウムは双極性障害の治療に使われる。リチウムイオンは脳の細胞への情報伝達を増幅する化学反応に干渉する[11]

用法・用量

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1日400〜600mgより開始する。以後3日ないし1週間毎に、1日通常1,200mgまでの治療量に漸増する。改善がみられたならば症状を観察しながら、維持量1日通常200〜800mgに漸減する。

溶融炭酸塩型燃料電池

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溶融炭酸塩型燃料電池の電解質として炭酸リチウムと炭酸カリウムモル比で68:32に混合した物が一般に用いられる。この混合物を溶融させて液体とすることで電解質として機能させるという特性から高温で動作させることになるため、発電効率が高く貴金属触媒が不要になる等の利点がある[12]。一方で高温で溶融させた炭酸塩の腐食性の高さから材質の劣化による短寿命が問題となり[13]、材質の耐食性を上げる方法の他にカソードが電解質に腐食されないように電解質の成分をリチウム/カリウム系からリチウム/ナトリウム系に変更したり、電解質と直接接触するシール部分やセパレータ部分の腐食を防ぐために電解質へ炭酸カルシウムを添加したりするなど、様々な長寿命化技術が検討されている[14]

アルミニウム製錬

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アルミニウムの精錬には溶融塩電解法であるホール・エルー法が用いられているが大量の電力を消費するためエネルギー効率の向上が課題となっている。原料の酸化アルミニウムの融点を下げるためにヘキサフルオロアルミン酸ナトリウムおよび三フッ化アルミニウムが融剤として添加されているが、そこに炭酸リチウムを加えるとフッ化リチウムが形成され、その導電性の高さによって電解浴の抵抗が低減され必要な電解電圧が下がるためエネルギー効率が向上する[15][16][17]

花火

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リチウムは炎色反応により濃赤色を作るため、炭酸リチウムの形で花火に使われている。

出典

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  1. Seidell, Atherton; Linke, William F. (1952). Solubilities of Inorganic and Organic Compounds. Van Nostrand
  2. John Rumble (June 18, 2018) (English). CRC Handbook of Chemistry and Physics (99 ed.). CRC Press. pp. 5–188. ISBN 978-1-138-56163-2
  3. 1 2 3 4 5 6 lithium carbonate”. Chemister.ru (2007年3月19日). 2017年8月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年1月2日閲覧。
  4. Pradyot Patnaik. Handbook of Inorganic Chemicals. McGraw-Hill, 2002, ISBN 0-07-049439-8
  5. 1 2 3 Sigma-Aldrich Co., Lithium carbonate. Retrieved on 2014-06-03.
  6. Michael Chambers. ChemIDplus - 554-13-2 - XGZVUEUWXADBQD-UHFFFAOYSA-L - Lithium carbonate [USAN:USP:JAN] - Similar structures search, synonyms, formulas, resource links, and other chemical information”. Chem.sis.nlm.nih.gov. 2017年1月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年1月2日閲覧。
  7. リチウム相場が「ピークの10分の1」に暴落の無残 EVシフトの失速響き、供給過剰の長期化必至”. 東洋経済オンライン (2025年7月7日). 2025年7月10日閲覧。
  8. 1 2 3 大久保聡「リチウム生産技術概略 ―現状および今後の動向―」『金属資源レポート』第48巻、石油天然ガス・金属鉱物資源機構、2019年3月。
  9. 小林 正夫「レアメタルの製造と利用 リチウム」『エネルギー・資源』第6巻第5号、エネルギー・資源学会、1985年、491-492頁。
  10. 菅野 了次「リチウム二次電池材料の結晶構造と材料特性」『日本結晶学会誌』第40巻第4号、日本結晶学会、1998年、265-267頁、doi:10.5940/jcrsj.40.262
  11. Medical use
  12. 児玉皓雄「溶融炭酸塩型燃料電池とその開発状況」『エネルギー・資源』第6巻第2号、エネルギー・資源学会、1985年、185-190頁。
  13. 藤田 洋司, 西村 隆, 佐々木 明「Li/Na系電解質を用いた溶融炭酸塩型燃料電池の劣化率低減策の検討」『電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌)』第120巻第4号、電気化学会、2000年、615頁、doi:10.1541/ieejpes1990.120.4_615
  14. 宮崎 義憲「燃料電池の最新技術 2.溶融炭酸塩形燃料電池の長寿命化技術」『電気化学および工業物理化学』第66巻第2号、電気化学会、1998年、128-133頁、doi:10.5796/kogyobutsurikagaku.66.128
  15. Wietelmann, U.; Bauer, R. J. (2003). "Lithium and Lithium Compounds" in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Wiley-VCH: Weinheim.
  16. 村上 智矢「アルミニウムの製錬」『まてりあ』第58巻第10号、日本金属学会、2019年、553-556頁、doi:10.2320/materia.58.553
  17. 高橋 正雄「アルミニウム溶融塩電解の発展と将来」『軽金属』第37巻第1号、軽金属学会、1987年、3-12頁、doi:10.2464/jilm.37.3