長靴をはいた猫

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長靴をはいた猫(ギュスターヴ・ドレ

長靴をはいた猫』(ながぐつをはいたねこ、: Le Chat botté)はヨーロッパに伝わる民話1697年に出版された、シャルル・ペローによる『寓意のある昔話、またはコント集〜がちょうおばさんの話』(: Histoires ou contes du temps passé.Avec de moralités : Contes de ma mère l'Oye.)に収録されたものが有名。それ以前のものでは、1634年に出版された、ジャンバティスタ・バジーレによる『物語の物語、または小さき者たちのための楽しみ/ペンタメローネ』(: Lo cunto de li cunti overo lo trattenemiento de peccerille)に収められている。『グリム童話』の初稿にも『靴はき猫』(: Der gestiefelte Kater)というタイトルで収められていた。日本では1969年(昭和44年)などにアニメ化されている(下記)。

シチリア島では、ほぼ同じ物語で狐が主人公となった『ジョヴァンヌッツァ狐』(: La volpe Giovannuzza)という物語が伝わっている[1]


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


あらすじ

以下のあらすじは、ペロー版を元にしたものである。

ある粉引き職人が死に、3人の息子にはそれぞれ粉引き小屋、ロバ、猫が遺産として分けられた。三男が「猫を食べてしまったら、後は何もなくなってしまう」と嘆いていると、猫が「あなたがもらったものは、そんなに悪いもんでもないですよ。まず、私に長靴と袋を下さい。」と言った。そして、猫はウサギを捕まえ、王様に「カラバ侯爵からの贈り物です」と言ってウサギを献上する。

それを繰り返して王様と猫が親しくなった頃、猫は三男にある場所で水浴びをさせる。そこに王様と姫が通りがかり、猫はその前に出て「大変です、カラバ侯爵が水浴びをしている最中に泥棒に持ち物を取られてしまいました」と嘘をつく。そうして、三男と王様を引き合わせ、「カラバ侯爵の居城」に王様を招待することになる。

猫が馬車を先導することになり、道で百姓に会うたびに「ここは誰の土地かと聞かれたら、『カラバ侯爵様の土地です』と言え。でないと、細切れにされてしまうぞ」と言う。本当は、ogreオーガ)の土地だったが、百姓は王様に訪ねられると「カラバ侯爵様の土地です」と答える。そして、王様は「カラバ侯爵」の領地の広さに感心する。

そして、ある豪奢な城に着く。これは、オーガの城だったが、猫はオーガをだまして鼠に姿を変えさせ、捕まえて食べてしまう。そうして城を奪い、王様が着くと「カラバ侯爵の城にようこそ!」と迎える。王様は「カラバ侯爵」に感心し、婿になってくれないか、という。「カラバ侯爵」はその申し出を受けてその日のうちに姫と結婚し、猫も貴族となって遊びでしか鼠を捕まえなくなった。

東映動画版アニメ

東映動画によって、3作の劇場用長編アニメーション映画が製作された。『長靴をはいた猫』(1969年)、『ながぐつ三銃士』(1972年)、『長靴をはいた猫 80日間世界一周』(1976年)である。3作とも、宇野誠一郎が音楽を担当し、主要キャストらが主題歌・挿入歌を歌った。

なお、このシリーズの主人公ペロは、東映アニメーションのマスコットキャラクターである。

長靴をはいた猫(東映動画版・第1作)

長靴をはいた猫
監督 矢吹公郎(「演出」名義)
脚本 井上ひさし山元護久
原作 シャルル・ペロー
製作 大川博
出演者 石川進
藤田淑子
榊原ルミ
小池朝雄ほか
音楽 宇野誠一郎
主題歌 「長靴をはいた猫」(石川進、水垣洋子ボーカル・ショップ、トリオ・ポアン)
製作会社 東映動画
配給 東映
公開 日本の旗1969年3月
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
前作 太陽の王子 ホルスの大冒険(東映まんがまつり)
【なし】(長猫)
次作 空飛ぶゆうれい船(東映)
ながぐつ三銃士(長猫)
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東映動画版第1作『長靴をはいた猫』は、1969年(昭和44年)『東映まんがまつり』のうちの一作として公開された。通称長猫。演出(監督)は矢吹公郎 他。

東映動画創業40周年(1996年)記念のファン投票で1位を得た[2]とされ、ニュープリント版を製作の上、1998年3月に完全新作の『銀河鉄道999 エターナル・ファンタジー』と同時上映という形でリバイバル公開された(東映アニメフェア扱いではない)。しかし、本作の方が時間配分が多かったため、『エターナル・ファンタジー』目当ての観客からは不評で、配給収入も低調であった(当該項目を参照)。なおこれより前の1978年にも『東映まんがまつり』でリバイバル公開された。

ニュープリント版のDVDビデオは2002年7月21日発売。また、初公開時に上映されたすべての作品をまとめて収録したDVD『復刻!東映まんがまつり 1969年春』も2012年8月10日に発売が予定されている。

なお、『ゲゲゲの鬼太郎 アニメ第二作』第18話「幸福という名の怪物」の劇中で、本作の音楽が使われている。

あらすじ

以下はペロー版との差分を中心に記述する。


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


ペロ(猫)は、三男がもらった遺産ではなく、たまたま通りがかって、ピエール(三男)と知り合う。最初からナイトの格好で登場している。ねずみを助けたために、猫の国から追われているという設定になっている。

オーガから魔王ルシファに悪役の設定が変わっている。ルシファがお姫様を結婚相手と狙う、という災難が降りかかる。

ウサギの献上の代わりに、ピエールの腹黒い兄二人が献上したものを、ペロの機転で、ピエール(カラバ侯爵)の献上品として王様に献上。まず名前を売る。

王様とお姫様が馬車で通るとき、いきなりピエールに裸になって川に飛び込めとペロは言う。近隣の農民には、ペロに協力的なねずみをけしかけ、カラバ侯爵のものだ、と言わないと、作物を食い荒らしてしまうぞ、と脅し、カラバ侯爵のものと見せかける。災難にあったと現状を説明し、王様とともに城に戻り、まともな格好に着替えさせる。

夜、お姫様とのデートシーンにおいて、ピエールはうそに耐えきれず、本当のことをしゃべってしまう。自分はカラバ侯爵ではないと。そして、その時魔王がお姫様をさらいに来る。ピエールは歯が立たない。あっと言う間にさらわれてしまう。

すぐさま、魔王の城まで追いかけ、進入。ペロの機転で魔王をねずみにし、やっつけようとするが失敗。危機一髪の状態をお姫様に見せ、ピエール一行の命と引き換えに結婚を承諾させる。その結果ピエール一行は城から放り出される。

しかし、ピエールはあきらめない。別の方向から城に進入。魔王の弱点が首からかけている髑髏であり、それが朝日にあたると大変まずい状態になることを知る。魔王との戦闘の過程で髑髏がお姫様の手に渡り、それを持って塔のてっぺんに登り、ピエールと共に朝日にあてようとする。魔王はそれを阻止するために塔を破壊するが、塔が倒れる瞬間、朝日が髑髏にあたり、魔王はコウモリとなって消滅。そして子分のカラス達が白いハトになり、落ちてくるピエールとお姫様をささえ、無事地面に。

ピエールと、お姫様の結婚式を見届けた後、ペロはまた旅に出る。

キャスト

主題歌・挿入歌

全曲とも、作詞は井上ひさし山元護久の共同名義で、作・編曲は宇野誠一郎による。

主題歌
  • 「長靴をはいた猫」
歌:石川進、水垣洋子、ボーカル・ショップ、トリオ・ポアン
挿入歌
  • 「カラバさま万歳」
歌:ボーカル・ショップ、トリオ・ポアン
  • 「幸せはどこに」
歌:榊原ルミ
  • 「ネズミたちの行進」
歌:水垣洋子、ボーカル・ショップ
  • 「はなれられない友だちさ」
歌:石川進、藤田淑子

同時上映

1969年版
1978年版
1998年版

ながぐつ三銃士(東映動画版・第2作)

ながぐつ三銃士
監督 勝間田具治(「演出」名義)
脚本 布勢博一
製作 高橋勇
出演者 鈴木やすし
小宮山清
小鳩くるみ
島宇志夫ほか
音楽 宇野誠一郎
主題歌 「長靴をはいた猫」(鈴木やすし、青二コーラス)
製作会社 東映動画
配給 東映
公開 日本の旗1972年3月
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
前作 アリババと40匹の盗賊(東映)
長靴をはいた猫(長猫)
次作 魔犬ライナー0011変身せよ!(東映)
長靴をはいた猫 80日間世界一周(長猫)
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『長靴をはいた猫』の続編。西部劇仕立てで、ララミーの町[3]が舞台。

キャスト

主題歌・挿入歌

両曲とも、作・編曲は宇野誠一郎による。

主題歌
  • 「ながぐつ三銃士」
作詞:山元護久、井上ひさし / 歌:鈴木やすし、青ニコーラス[4]
挿入歌
  • 「白いレストラン」
作詞:布勢博一 / 歌:鈴木やすし、青ニコーラス

同時上映

長靴をはいた猫 80日間世界一周(東映動画版・第3作)

長靴をはいた猫
80日間世界一周
監督 設楽博
脚本 山崎忠昭城悠輔
製作 今田智憲
出演者 なべおさみ
神山卓三
滝口順平
大塚周夫ほか
音楽 宇野誠一郎
主題歌 「長靴をはいた猫」(なべおさみ、こおろぎ'73
撮影 高梨洋一、片山幸男
編集 千倉豊
製作会社 東映動画
配給 東映
公開 日本の旗1976年3月
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
前作 アンデルセン童話 にんぎょ姫(東映。1975年
ながぐつ三銃士(長猫)
次作 白鳥の王子(東映。1977年
【終了】(長猫)
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東映動画設立20周年記念作品。東映名作アニメとしては最後の映画でもある。ジュール・ベルヌの『八十日間世界一周』をモチーフに、ペロたちが大活躍する。また本作に登場するキャラは、全て擬人化された動物で、人間は一人も登場しない(シリーズ唯一)。

DVDは2003年4月21日発売。2011年11月21日発売の「復刻!東映まんがまつり1976春」にも収録されている。

キャスト

予告編ナレーターは、はせさん治が担当した。

主題歌・挿入歌

全曲とも、作・編曲は宇野誠一郎による。

主題歌
  • 「長靴をはいた猫」
作詞:山元護久、井上ひさし / 歌:なべおさみ、こおろぎ'73
挿入歌
  • 「スザンナのうた」
作詞:城悠輔 / 歌:増山江威子、なべおさみ
  • 「八十日間世界一周のテーマ」
作詞:城悠輔、浦川しのぶ / 歌:なべおさみ、こおろぎ'73

同時上映

ドリームワークス版

ドリームワークス社の『シュレック』シリーズのスピンオフとなる『長ぐつをはいたネコ』(Puss in Boots)が、2011年10月28日にアメリカで、2012年3月に日本で、それぞれ劇場公開。この作品は2004年の『シュレック2』公開時よりDVD向けに企画されていたが、その後、劇場向けに路線変更となり、2010年の『シュレック フォーエバー』公開後から本格的な製作に入った。主人公長ぐつをはいたネコの声は『シュレック』シリーズ同様、アントニオ・バンデラスが担当する。

漫画

東映動画版のスタッフの宮崎駿が宣伝展開として1969年(昭和44年)1月-3月まで、漫画形式の『長靴をはいた猫』(全12回)を中日新聞/東京新聞・日曜版に連載した。この作品は後年、徳間書店アニメージュ文庫『長靴をはいた猫』として出版された。

テレビアニメ

ファンタジーアドベンチャー 長靴をはいた猫の冒険』を参照。

ゲーム

1986年(昭和61年)、『長靴をはいた猫 世界一周80日大冒険』と題したファミリーコンピュータ用ソフトが、東映動画より発売された。1976年(昭和51年)公開の同名アニメ映画(上記)が元になっている。

脚注

  1. ^ イタロ・カルヴィーノ 著, 河島英昭 編訳, 『イタリア民話集』, 岩波文庫, 岩波書店, 1985年(昭和60年) ISBN 978-4003270929
  2. ^ 映連データベース長靴をはいた猫(1998)
  3. ^ アメリカのテレビドラマ『ララミー牧場』が日本でヒットしたことにより、当時の日本人には「西部劇の町」として知られていた。
  4. ^ 本作に出演した青二プロダクションの声優たち。

関連作品

外部リンク

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