世親
世親 (天親) | |
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300 - 400年頃 | |
興福寺北円堂の世親像 | |
尊称 | 世親菩薩、天親菩薩 |
生地 | プルシャプラ |
没地 | アヨーディヤー |
宗派 |
説一切有部 後に、瑜伽行唯識学派 |
師 | 無著(世親の実兄) |
著作 |
『阿毘達磨倶舎論』 『唯識二十論』 『唯識三十頌』 『浄土論』他 |
世親(せしん、वसुबन्भु vasubandhu)は、古代インドの仏教僧である。世親とは、サンスクリット名である「ヴァスバンドゥ」の新訳名である。旧訳(くやく)名は、「天親」(てんじん)。「婆藪般豆」、「婆藪般頭」と音写する。
現在のパキスタン・ペシャワールの出身。三人兄弟の次男で、実兄は唯識派の無著(アサンガ)、実弟は説一切有部の比隣持跋婆(ヴィリンチヴァッサ)。兄弟全員が世親(ヴァスバンドゥ)という名前であるが、兄は無著、弟は比隣持跋婆という別名で呼ばれるため、「世親」という名は専ら本項目で説明する次男のことを指す。
初め部派仏教の説一切有部を学び、有部一の学者として高名をはせた。ところが、兄の無著から大乗仏教を勧められ、下らない教義を聞いていたと自らの耳をそいで、瑜伽行唯識学派に入ったといわれている。その後、唯識思想を学び体系化することに努めた。
浄土真宗では、七高僧の第二祖とされ「天親菩薩」と尊称される。
著作
- 『倶舎論』 - 説一切有部の教義を体系化した論書で、極微(ごくみ)説に論及している。
- 『唯識二十論』
- 『唯識三十頌』 - 後に多くの論師によって注釈書が作られ、唯識の基本的論書となる。
- 『大乗成業論』
- 『大乗五薀論』
- 『大乗百法明門論』
- 『仏性論』
- 『無量寿経優婆提舎願生偈』(『浄土論』・『往生論』) - 後に曇鸞が、『浄土論註』を撰述し、本書を再註釈する。日本の浄土教において、もっとも重要な論書とされる。
これ以外に『中辺分別論』、『大乗荘厳経論』、『摂大乗論』などの注釈書も残っている。
参考文献
- 桜部建、上山春平 『仏教の思想2 存在の分析<アビダルマ>』 角川文庫ソフィア 1996年、ISBN 4-04-198502-1
- 服部正明、上山春平 『仏教の思想4 認識と超越<唯識>』 角川文庫ソフィア、1997年 ISBN 4-04-198504-8
関連文献
- 『摂大乗論釈』、『大乗荘厳経論』 〈新国訳大蔵経 瑜伽・唯識部11.12〉大蔵出版 続刊予定
- 三枝充悳 『世親』 講談社学術文庫、2004年、ISBN 4-06-159642-X
- 長尾雅人、荒牧典俊、梶山雄一訳注 『大乗仏典15 世親論集』 中公文庫、2005年、ISBN 4-12-204480-4
- 長尾雅人編、荒牧典俊、梶山雄一、桜部建 訳 『世界の名著(2) 大乗仏典』 中公バックス版 1978年、ISBN 978-4124006124