テクノデリック
『テクノデリック』 | |||||
---|---|---|---|---|---|
YMO の スタジオ・アルバム | |||||
リリース | |||||
録音 |
1981年3月21日 - 10月13日 STUDIO "A" | ||||
ジャンル |
テクノポップ ニュー・ウェーヴ 現代音楽 | ||||
時間 | |||||
レーベル | アルファレコード | ||||
プロデュース | 細野晴臣+YMO | ||||
専門評論家によるレビュー | |||||
チャート最高順位 | |||||
| |||||
YMO アルバム 年表 | |||||
| |||||
『テクノデリック』収録のシングル | |||||
細野晴臣 年表 | |||||
|
|||||
高橋幸宏 年表 | |||||
|
|||||
坂本龍一 年表 | |||||
|
『テクノデリック』 (TECHNODELIC) は、日本の音楽グループであるイエロー・マジック・オーケストラ(以下、YMO)の6作目のアルバム。
背景
アルバムのタイトルは「テクノ+サイケデリック」の造語である。
アルバム全体として、ミニマル・ミュージックが取り入れられているのも特徴である[要出典]が、後年細野晴臣は「YMOの中で唯一、可能性を秘めたまま発展し損ねた音楽のスタイルがミニマル」と『YMO GO HOME!』のライナーノーツで記している。
録音
レコーディングは前作『BGM』の発売日(1981年3月21日)から開始され、10月13日まで長期間行われている。細野がこだわっていた[要出典]プロデュースのクレジット名が今作では「細野晴臣+YMO」となった。
録音に関しては『BGM』ではデジタル録音を導入したが、デジタル特有のエラーノイズの問題や編集効率の問題から「体操」を除きアナログ録音に戻した[2]。
他のYMOのアルバム同様、当アルバムのマルチトラックマスターも消却・破棄されたと考えられていたが、後年、高橋が編集盤『ONE MORE YMO』を監修していた際に、各所に散らばったマスターテープを発掘していたところ、マスターテープのメーカーが『テクノデリック』のマルチトラックマスターを保管していた事が分かったが、『体操』のみ見つからなかったという。
使用機材はプロフェット5、アープ・オデッセイ、Emulator、ローランドMC-4、ローランドTR-808が挙げられる。
前作『BGM』作成中に心身不調だった坂本龍一が韓国旅行をきっかけに元気になった[3]。そのときインスパイアされた内容が「京城音楽」で表現されている[3]。しかし逆に細野が不調に陥り、その状態が「灰色の段階」という曲名で表現されている[要検証 ]。
リリース
1981年11月21日にアルファレコードからLPレコード、カセットテープの2形態でリリースされた。
アルバム・ジャケットは二種類存在し、通常盤と再発CDで使われているのはコルホーズで働く女性の肖像[4]。その後、レコード会社からの「メンバーの顔が入っていない」という理由でメンバー三人の写真があしらわれたものが作り直され、これが初回盤のジャケットとなる。又、初回プレスのみカスタムレーベル仕様。
アートワーク
アルバム・ジャケットはアートディレクター奥村靫正によるデザイン。初回盤の撮影とメーキャップも奥村靫正が手掛けている。
収録曲
全編曲: YMO。 | ||||
# | タイトル | 作詞 | 作曲 | 時間 |
---|---|---|---|---|
1. | 「ジャム」(PURE JAM) | 高橋幸宏、ピーター・バラカン | 高橋幸宏 | |
2. | 「新舞踊」(NEUE TANZ) | 細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏 | 細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏 | |
3. | 「階段」(STAIRS) | 高橋幸宏、ピーター・バラカン | 高橋幸宏 | |
4. | 「京城音楽」(SEOUL MUSIC) | 坂本龍一、ピーター・バラカン | 坂本龍一、高橋幸宏 | |
5. | 「灯」(LIGHT IN DARKNESS) | 坂本龍一、高橋幸宏 |
# | タイトル | 作詞 | 作曲 | 時間 |
---|---|---|---|---|
6. | 「体操」(TAISO) | 坂本龍一 | 坂本龍一、YMO | |
7. | 「 | 細野晴臣、ピーター・バラカン | 細野晴臣 | |
8. | 「手掛かり」(KEY) | 細野晴臣、ピーター・バラカン | 細野晴臣、高橋幸宏 | |
9. | 「前奏」(PROLOGUE) | 坂本龍一 | ||
10. | 「後奏」(EPILOGUE) | 坂本龍一 | ||
合計時間: |
曲解説
A面
- ジャム PURE JAM
- イントロの高橋のコーラスに関して細野はサイケデリックであるとコメントしている。曲の最後では逆回転で録音したモチーフが使われている。タイトルと歌詞の内容は当時アルファレコードの1階にあった喫茶店「BAN」のメニューにあった、とても分厚いパンにジャムののったトーストが不細工だったことを意味している(彼らはレコーディング中のスタジオから喫茶店に軽食をよく注文していた)。細野や坂本によれば、欧米のミュージシャン達はこの他愛もない詞を深読みして「何か意味深なことを語っているのではないか」とよく質問したそうである。作曲は高橋名義ではあるが、サウンドの大部分は細野が担当している。シンセサイザーが「うねうね」しているのはそのためである。「ジャムデショ」「ソレジャムデショドーゾ」の声は、ピーター・バラカンが実際にスタジオ内でトランシーバーを使って喋っている。これは「完璧じゃない日本語」が欲しかったため[5]。この曲はアルバムでは最初に収録されているが、録音は最後に行われた(トラックシートではM-8)。細野と高橋のユニットであるスケッチ・ショウにおいてもレパートリーとして大幅なアレンジを経て演奏されている。
- 新舞踊 NEUE TANZ
- 階段 STAIRS
- 京城音楽 SEOUL MUSIC
- ガムランと声(パーッ、フク、チキ)によるパーカッションが印象的な曲。アルバムの3番目に録音された(トラックシートではM-2)。途中のヴォイスはトランシーバーの声を録音したもの。プリペアド・ピアノが使われている部分もある。タイトルの京城とは日本統治時代の朝鮮におけるソウル(正確には京城府)の日本語表記である。坂本が韓国取材をした際の印象を元にしたもので、軍政下の韓国の事情をうかがわせる。
- YMO解散後の1985年に行われた「国際青年年記念 ALL TOGETHER NOW」で「サディスティック・ユーミン・バンド」(高橋と坂本が参加)によってカバーされた。
- 灯 LIGHT IN DARKNESS
B面
- 体操 TAISO
- シングルカットされた曲。詳細は「体操」を参照。アルバムの中では最初に録音された。
灰色 の段階 GRADATED GREY- 手掛かり KEY
- 細野、高橋は、この曲について「CUEの続編」と語っている。坂本によると「YMO版ハイスクールララバイ」。シングル「体操」のB面にも収録されている。スネアは石油缶を叩いた音をサンプリングしたもの。途中に入ってくる、「What Do You See?」などのボイスはハーモナイザーをフィードバックさせたもので、左チャンネルは坂本、右チャンネルは細野の声といわれている。このアルバムではシンセサイザーはほとんどプロフェット5を用いているが、この曲のみアープ・オデッセイをベースとして使っている。
- 前奏 PROLOGUE
- 後奏 EPILOGUE
- 機械の音の上に、鉄工所の音のサンプリングが重なった後、分厚いストリングスが重なる。仮タイトルは「おやすみミュージック」。録音は前曲「前奏」と同時に行われている(トラックシートではM-6)。坂本龍一のライブ(B2-UNITSなど)ではピアノで演奏されたこともある。
スタッフ・クレジット
参加ミュージシャン
スタッフ
- 細野晴臣 AND YMO - プロデューサー
- 小池光夫 - レコーディング、ミックス・エンジニア
- 飯尾芳史 - アシスタント・エンジニア
- YMO - ミックス・エンジニア
- 湯浅ヒロシ(JVCカッティング・センター) - マスタリング・エンジニア
- 藤井丈司 - エキプメント
- 山添昭彦 - エキプメント
- 伊藤洋一 - マネージメント
- 大蔵博 - マネージメント
- PLAN-NEW-WERK - クリエイティブ・サービス
- 奥村靱正 - 写真撮影、アート・ディレクション
- 小尾一介 - A & Rコーディネーター
- 川添象郎 - エグゼクティブ・プロデューサー
リリース履歴
No. | 日付 | 国名 | レーベル | 規格 | 規格品番 | 最高順位 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1981年11月21日 | 日本 | アルファレコード | LP・CT | ALR-28030 (LP)・ALC-28029 (CT) | 4位 | |
2 | 1981年 | ヨーロッパ | アルファレコード | LP | ALF 85621 | - | |
3 | 1982年 | オーストラリア | CBS Records Australia | LP | AAF 28030 | - | |
4 | 1982年 | スペイン | CBSレコード | LP | ALF 85261 | - | |
5 | 1984年7月25日 | 日本 | アルファレコード | CD | 38XA-17 | - | |
6 | 1985年 | オランダ | Pick Up Records | LP | LPU 0021 | - | |
7 | 1987年3月25日 | 日本 | アルファレコード | CD | 32XA-142 | - | |
8 | 1992年3月21日 | 日本 | アルファレコード | CD | ALCA-292 | - | |
9 | 1992年7月 | アメリカ合衆国 | Restless Records | CD | 7 72704-2 | - | |
10 | 1992年 | ヨーロッパ | Roadrunner Records、Restless Records | CD | LS 9153 2 | - | |
11 | 1994年6月29日 | 日本 | アルファレコード | CD | ALCA-9044 | - | |
12 | 1998年1月15日 | 日本 | アルファレコード | CD | ALCA-5221 | - | |
13 | 1999年9月22日 | 日本 | 東芝EMI | CD | TOCT-24239 | - | 細野晴臣監修、リマスタリング盤、ライナーノーツ:松武秀樹×飯尾芳史 |
14 | 2003年1月22日 | 日本 | ソニー・ミュージックハウス | CD | MHCL 209 | 56位 | 坂本龍一監修、紙ジャケット仕様 |
15 | 2004年 | カナダ、ヨーロッパ | エピック・レコード | CD | EK 91844 (CA)・513450 2 (EU) | - | |
16 | 2010年9月29日 | 日本 | ソニー・ミュージックダイレクト | ブルースペックCD | MHCL-20107 | 185位 | 1999年リマスタリング音源、紙ジャケット仕様、スーパーピクチャーCD |
参考文献
- 田中雄二 『電子音楽 in JAPAN』アスペクト、2001年
- 『イエロー・マジック・オーケストラ』アスペクト、2007年
脚注
- ^ 『オリコン・チャートブック LP編 昭和45年 - 平成1年』オリジナル・コンフィデンス、1990年、74頁。ISBN 4871310256。
- ^ サウンド&レコーディング・マガジン 1999年11月号
- ^ a b 『イエロー・マジック・オーケストラ』、72頁。
- ^ 田山三樹 『YMO GLOBAL YMOから広がるディスクガイド』 シンコーミュージック、2007年、81頁。
- ^ 2009年6月5日TOKYO FM「Tokyo Midtown presents The Lifestyle MUSEUM」で放送されたピーター・バラカンと高橋幸宏との対談より
- ^ a b 『イエロー・マジック・オーケストラ』、275頁。
- ^ 『イエロー・マジック・オーケストラ』、276頁。