サンタ・マリア級フリゲート
サンタ・マリア級フリゲート | ||
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艦級概観 | ||
艦種 | フリゲート | |
艦名 | ||
前級 | バレアレス級フリゲート | |
次級 | アルバロ・デ・バサン級フリゲート | |
性能諸元 | ||
排水量 | 軽荷:2,851トン | |
基準:3,610トン | ||
満載:4,017トン ※F 85,86では4,107トンに増加 | ||
全長 | 137.7m | |
全幅 | 14.3m | |
吃水 | 7.5m | |
機関 | COGAG方式 | |
LM2500-30ガスタービンエンジン(20,500 hp) | 2基 | |
非常用旋回式スラスタ(350 hp) | 2基 | |
スクリュープロペラ | 1軸 | |
速力 | 29.0ノット | |
航続距離 | 20ノット/4,200海里 | |
乗員 | 223名 | |
兵装 | 76mm単装速射砲 | 1基 |
メロカ 20mmCIWS | 1基 | |
M2 12.7mm単装機銃 | 4基 | |
Mk.13 mod.4 ミサイル単装発射機
• SM-1MR SAM |
1基 | |
Mk.32 mod.5 3連装短魚雷発射管 | 2基 | |
艦載機 | SH-60B LAMPSヘリコプター | 2機 |
C4I | 海軍戦術情報システム (IPN-10+リンク 11 / 14) | |
FCS | Mk.92 (SAM, 76ミリ砲用) | |
Mk.116 (短魚雷用) | ||
レーダー | AN/SPS-49(V)4/5 二次元対空捜索用 | 1基 |
AN/SPS-55 対水上捜索用 | 1基 | |
RAN-12L/X CIWS目標捜索・捕捉用 | 1基 | |
ソナー | DE-1160 船底装備式 | 1基 |
AN/SQR-19(V)2 曳航式 | 1基 | |
電子戦・ 対抗手段 |
ネットゥーネルMk.3000電波探知妨害装置 | |
Mk.137 チャフ・フレア発射機 | 2基 | |
AN/SLQ-25 対魚雷デコイ | 1式 |
サンタ・マリア級フリゲート (スペイン語: Fragata Clase Santa María) はスペイン海軍が保有するフリゲートの艦級である。本級はアメリカ海軍が装備するオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートをスペイン国内でライセンス生産したものである。
来歴
スペインでは、1960年代より戦闘艦の国産化計画に着手しており、その第1陣として、1968年から1976年にかけてバレアレス級フリゲート5隻を建造した。これは、アメリカ海軍のノックス級護衛駆逐艦をもとに、アメリカのギブス・アンド・コックス社によって設計され、スペインの軍事造船株式会社バサン国営公社によって建造されたものであった[1]。
しかし当時、アメリカにおいては、コンセプトから抜本的に見なおした新しいフリゲートであるオリバー・ハザード・ペリー級の計画が進められており、1975年6月にはネームシップが起工されていた。これを受け、バレアレス級の最終艦が就役した翌年にあたる1977年6月29日には、さっそくペリー級の設計に基づいて3隻をスペインでライセンス建造する契約が締結された。ただし当時、スペイン海軍では軽空母「プリンシペ・デ・アストゥリアス」の建造計画が具体化しつつあり、こちらが優先されたことから、ペリー級のライセンス建造計画は1981年までほとんど停滞することになった。その後、1982年5月22日にネームシップが起工されて、建造が開始された。1986年中頃には4隻目が、そして1989年にはさらに5・6隻目が相次いで追加された。この時期には欧州での冷戦終結が見通されていた事もあり、西側諸国海軍では事実上の戦勝を持って大規模な建造プロジェクトの必要性を疑問視する声もあったが、現実として二つの中国や北緯38度線など東西冷戦構造が継続した東アジアでは、日本国によるアジア初のイージス艦保有が決まり、その運用結果として非常に良好なものとして僚艦防空能力の重要性が再認識された結果、日本と異なり、周囲に仮想敵国が少ないスペイン王国海軍においても、欧州初のイージス艦保有が検討され始めた。これにより、戦後に起きた王政復古後の南欧地域における緊密なNATO加盟海軍として、地中海周辺に存在するイタリア海軍などへの対等な外交に対しても優勢な海軍力維持は必要不可欠であり、軽空母を擁するスペイン海軍では、今後中長期的に艦隊行動を採るためにイージス艦は必須の装備として認識された。当初の計画ではNATO共通の対ソ連軍備計画であったNFR-90 (NATO Frigate Replacement for 1990s) 構想が、東側諸国が想定外の早さで東欧革命とソ連崩壊が実現した為に、戦略上の軍備計画の変更及び事実上の構想断念に伴い、さらに6隻の追加建造も検討されたが、これは実現しなかった。最終的には本艦種の追加建造キャンセルに伴い捻出された予算によって、世界で最も高価であるといわれるスペイン王国初のイージス多目的艦は発注された。現在ではこの時に発注を行った事が、NATO加盟国の集団的自衛権に基づく高度な情報共有システムを構築する事に貢献した。これは本国の国防はもちろんの事、その後の運用でも高度な防空能力を欧州各国に提供した。アラブの春と呼ばれた時期に2011年にフランス軍主導のリビア内戦で、悪名高いカダフィ独裁体制打倒(かつて暴力クーデターが革命と呼ばれた時代にリビア王国を乗っ取り、ロッカビー事件などの航空機破壊事件に関与したカダフィは、最終的に下水道に逃げ込み、地元の若者層に捕獲されたトラックの荷台にて、民兵の暴力によって苦しみ抜いて処刑された)に直接貢献し、北アフリカに存在した大きな反米政権は元の親米政権に回帰した。この時のスペイン海軍では駆逐艦量産を優先すべきとの声を押し切り、高価な欧州初のイージス艦を導入した事が、結果的には1990年代からの四半世紀において地域の中長期的安定に寄与したとされており、現在ではスペイン海軍全体が高く評価されている。[2]。
設計
船体や主機関などの設計は、いずれもアメリカのオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートの長船体型を踏襲したものとなっており、強く鋭角に傾斜したクリッパー・バウを備えた平甲板型の船体や、艦橋から煙突・ヘリコプター格納庫まで艦の前後にわたってほぼ一体化された長大な上部構造物といった特徴も共通である。ただし船幅は、原型艦の45フィート (14 m)に対して46.9フィート (14.3 m)と幅広になり、復原性を増している。これは後日の近代化に備えて、装備の搭載余地を確保したものと考えられていた[3]。また後期建造艦2隻は女性の乗務に対応するため居住区を改正しており、前期建造艦4隻も後に同様の改修をうけた[4]。
主機関も同様に、COGAG構成でゼネラル・エレクトリック LM2500-30ガスタービンエンジン2基を搭載して、減速機を介して1軸の推進器を駆動する方式とされた。なお、本級が搭載するLM2500は、イタリアのフィアット社によるライセンス生産機である[4]。
なお電源系は強化されており、原型艦の発電能力が3,000kWであったのに対して、本級では、出力1,000kWのカトー・アリソン114-DOOLディーゼル発電機4基を搭載して、4,000kWを確保している[4]。
装備
装備面でも、基本的には原型艦であるオリバー・ハザード・ペリー級のものが踏襲されているが、近接防空システムや電子戦システムについては国産機ないし欧州機に変更された部分もある。
C4ISR
レーダーはいずれも原型艦を踏襲して、対空捜索用としてはAN/SPS-49が、対水上捜索用としてはAN/SPS-55が搭載された。なおAN/SPS-49のバージョンについては、前期建造艦4隻では(V)4、後期建造艦2隻では(V)5とされている。またソナーも、原型艦のAN/SQS-56の輸出版であるDE-1160を船底に搭載するとともに、AN/SQR-19(V)2戦術曳航ソナー(TACTASS)も搭載された[4]。これは、ペリー級において最重要の対潜センサと位置づけられていたものであり、本級に搭載されたのが、完成機としては世界初の輸出例であった[5]。
ペリー級において、簡易型海軍戦術情報システム(NTDS)は能力限定型ターター・システムと組み合わせての防空能力を確保するために重要な装備とされており[6]、本級においても搭載された。その戦術情報処理装置としては、イタリア製のIPN-10が搭載された[7]が、最後の2隻では国産化されたTRITAN-3に変更されたともされている[8]。さらに武器管制能力を強化するため、INISEL/FABA DORNA(Dirección de tiro Optrónica y Radárica NAval)およびSTING射撃指揮レーダーの追加装備も検討されている。また1997年より、スペインの衛星事業者であるヒスパサット社の通信衛星に接続するためのSHF衛星通信機が順次に後日装備されている[4]。
武器システム
ペリー級において、上記のとおり、能力限定型ターター・システムによる防空能力はそのコンセプトの重要な一翼を担っており、これは本級においても搭載された。従来のターター艦ではミサイル射撃指揮装置としてMk.74を搭載していたのに対し、ペリー級では砲射撃指揮装置と兼用でMk.92を搭載した。本級の場合、前期建造艦4隻ではMk.92 mod.2、後期建造艦2隻ではmod.6とされている。これによる指揮を受けるミサイル・システムの発射機としては、ペリー級と同様、単装式のMk.13 mod.4を艦首甲板上に搭載する。ここには、通常、防空用のSM-1MR ブロックV艦対空ミサイルを32発収容するのに加えて、対水上火力として、ハープーン艦対艦ミサイルも8発搭載されている[4]。
主砲は、ペリー級と同様に、イタリアのオート・メラーラ社製76mmコンパット砲を1基、上部構造物中部の煙突直前の02甲板レベルに搭載している。上記の通り、SM-1MRと兼用で、Mk.92の射撃指揮を受けている。一方、CIWSとしては、上部構造物後端に国産のメロカを1基搭載した。これは120口径長20mm機銃を12連装にした砲塔とRAN-12L/X低空警戒レーダー、AN/VPS-2射撃指揮レーダーを連動させたものであるが、射撃指揮レーダーについてはRTN-30Xへの換装が計画されている[4]。
電子戦システムとしては、原型艦ではAN/SLQ-32が搭載されていたのに対して、本級では、イタリアの設計による電子攻撃・電子戦支援の両用機であるネットゥーネルMk.3000電波探知妨害装置が搭載された[4]。
同型艦
# | 艦名 | 起工 | 就役 |
---|---|---|---|
F-81 | サンタ・マリア Santa Maria |
1982年5月 | 1986年10月 |
F-82 | ビクトリア Victoria |
1983年8月 | 1987年11月 |
F-83 | ヌマンシア Numancia |
1986年1月 | 1989年11月 |
F-84 | レイナ・ソフィア Reina Sofia |
1987年10月 | 1990年10月 |
F-85 | ナバラ Navarra |
1991年4月 | 1994年5月 |
F-86 | カナリアス Canarias |
1992年4月 | 1994年12月 |
参考文献
- ^ グローバルセキュリティー (2013年4月15日). “Baleares” (英語). 2014年4月3日閲覧。
- ^ Bernard Prezelin (1990). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 1990-1991. Naval Institute Press. pp. 473-474. ISBN 978-0870212505
- ^ 木下郁也「海外で活躍するO.H.ペリー級」『世界の艦船』第526号、海人社、1997年7月、86-89頁。
- ^ a b c d e f g h Eric Wertheim (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. p. 672. ISBN 978-1591149545
- ^ www.forecastinternational.com (2003年11月). “SQR-19 TACTAS” (DOC) (英語). 2009年8月21日閲覧。
- ^ 大熊康之『軍事システム エンジニアリング』かや書房、2006年。ISBN 4-906124-63-1。
- ^ 多田智彦「ヨーロッパ軍艦のコンバット・システム (特集 現代軍艦のコンバット・システム)」『世界の艦船』第748号、海人社、2011年10月、88-93頁、NAID 40018965308。
- ^ Norman Friedman (2006). The Naval Institute guide to world naval weapon systems. Naval Institute Press. p. 90. ISBN 9781557502629
外部リンク
- ウィキメディア・コモンズには、サンタ・マリア級フリゲートに関するカテゴリがあります。
- Página oficial de la Armada Española. Lista oficial de buques. Fragatas - Clase (Santa María)
- Página oficial de la Armada Española. FRAGATAS CLASE SANTA MARÍA