NTT中継回線

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横手山に設置された、NTT無線中継所。(2009年10月撮影)現在では空中線が撤去され, 中継機器が納められていた建屋と鉄塔が残る。
2005年当時の美ヶ原NTT無線中継所

NTT中継回線(エヌティーティーちゅうけいかいせん)は、日本電信電話公社からNTTとなり、さらにNTT分割後はNTTを起源として発足した会社等が所有、管理もしくは運用する、映像音声データ伝送などのための電気通信回線のことであるが、ここではそのうちのテレビ局とテレビ局の間を結ぶテレビ回線(テレビジョン専用回線(専用線))について述べる。

概要[編集]

NTT中継回線は、テレビ放送の普及に合わせて日本全国に拡大された。現在、地上回線と衛星回線等があり、主力は地上回線である。この回線を用いて、テレビの全国ネットワークが構成されている。NTT中継回線には固定回線と臨時回線があり、固定回線はいわゆる「ネット線」であり、東京にあるテレビ局(キー局)が地方の系列局に番組を送る「下り線」と、地方の系列局が東京のキー局にニュース番組の素材や番組内容を送る「上り線」がある。臨時回線は、地方局同士の番組素材伝送など、必要に応じて使用されるものである。

かつてその主幹部はマイクロ波を用いた無線中継伝送により、日本列島を縦貫するように結ばれていたが、地上デジタル放送などへの対応から、地上回線については、より回線容量の大きい光ファイバー伝送に移行された。

沿革[編集]

1954年4月15日正力マイクロ波事件の混乱の後、電電公社のマイクロ波により、東京-名古屋-大阪間の2系統が開通。1960年代にかけて、全国に拡大した。

1985年4月1日、電電公社からNTTに移管され、1999年からはNTT分割により発足したNTTコミュニケーションズが回線を保有。実際の運営はNTTコミュニケーションズと、民放連(日本民間放送連盟)テレビ回線部が共同で行っている。

2004年3月頃、NHKの回線は、全国回線・道内回線、アナログ放送・デジタル放送とも、デジタル回線(光ファイバー伝送)に完全移行された。

そして2006年6月4日深夜、全民放128局が利用する全国回線も、デジタル回線に完全移行し[1]、マイクロ波を用いた中継回線は、この日をもって52年間続いた役目を終えた。

その後、民放のデジタル回線は、2012年11月25日の放送終了後、全国一斉に民間放送テレビジョン中継ネットワーク(新民放テレビ中継回線)への切替えが行われた。民放各社はこの回線により、指定した時間・局間で、非圧縮のハイビジョン映像を、正確にかつ安定して伝送している。

北海道内[編集]

北海道内民放各局の道内回線(全道ライン/ルートは札幌⇔室蘭⇔函館および、札幌⇔旭川⇔網走(北見)⇔釧路⇔帯広)は、民放の全国ラインの完全デジタル化後も、アナログ放送だけは引き続きマイクロ波を用いていたが[2]、こちらも運用を終了した[3]

マイクロ波はその後、地上デジタル放送の道内主要地域(旭川・函館・室蘭・帯広・網走(北見)・釧路)にある中継局、いわゆる「道内基幹局」の試験電波発射・放送開始を目処にデジタル回線に移行された。

道内の民放各局による道内基幹局へのデジタル回線は、NTTに代わって、北海道電力系の通信会社である北海道総合通信網(HOTnet)所有の光ファイバー回線が使用されており、各局の本社が置かれている札幌から、基幹送信所のある旭川・函館・室蘭・帯広・網走(北見)・釧路へ、中継点を経由せず直接結ばれている。

しかしテレビ北海道(TVh)は、長期不況で経営不振がなおも続いていることから、道央・道北の一部と道東全域においては、アナログ放送に続き、地上デジタル放送でも開局出来ない状態で、2011年7月24日の地デジ完全移行以後も、道央・道北のアナログ未開局中継局のデジタル新局開局にとどまる予定となっていた。

2010年、TVhの送信所・中継局のうち、「当初は地デジでもカバーされない」とされていた道東基幹局[4]に関しては、同年11月26日に成立した2010年度補正予算から、総務省が所管する地域活性化枠に盛り込まれていた「後発民放局支援スキーム」を使って、地デジ完全移行直後に開局することが、12月21日に佐々木邦佳社長(当時)から発表され、24日に事業許可が下りた。 2011年6月1日、TVhが免許申請していた道東基幹局に予備免許が交付され、同年8月から11月にかけて開局することになった[5][6][7][8][9][10]。 これにより、全道の基幹局に関しては、TVhを含む全てのテレビ局で整備が終了した。

また、当初はTVh以外の民放も含め、既にアナログ中継局が開局している道内の他の地域でも、現在の160局強のうち100局程度のデジタル中継局は、2011年7月24日までの開局が困難な状況とみられていた。しかし、2010年12月までに、道内のすべての地域で中継局の設置が完了し、残る地域も、ケーブルテレビブロードバンドギャップフィラーでカバーすることが決まったため、こうした状況は解消された。

かつて、民放各局の道内回線は、NTTとHOTnetの2系統で敷かれており、2004年以降、全道で終夜放送を行うため、2社の回線を相互に切り替えて運用されていたが、2008年までにHOTnetへ一本化された。

余談だが、NTTの全道ラインはマイクロ波を利用していたにもかかわらず、全国ラインに比べ、料金が非常に高かった[11]。そのため、道内民放テレビ各局のアナログ放送は、札幌圏と札幌圏以外でサービス内容が異なるという、北海道以外の地域ではまったく考えられないような特殊な問題点があった。

  1. テレビの音声多重放送[12]
  2. 終夜放送(深夜に特別編成や報道特別番組があるときなど、特殊な場合を除く。)
  3. TVhの全道向けの放送[13]

その後、料金が割安であるHOTnetの光回線に移行したため、上記3つの問題点は大幅に解消された。 特に、札幌圏以外のアナログ放送では1度も実施されないまま終了した民放各局の音声多重放送が、デジタル放送では全道で受信できるようになり、さらに道東で放送されていなかったTVhは、総務省による「後発民放局支援スキーム」を利用して、2011年の地デジ完全移行後、帯広・北見(網走)・釧路の各送信所と、北見送信所を補完する新北見中継局がそれぞれ開局したことから、[5][6][7][8][9][10]、受信環境が劇的に改善された。

一方、NTTの全道ラインの場合、テストパターンが流れている間は、電話で117番にかけなくても、実質無料で時報を聴くことができた。[14]

傍受問題[編集]

現在、NTT中継回線は秘匿性の高い光ファイバーで運用されており、簡単に傍受されることはないが[15]、かつてはその主幹部がマイクロ波による無線回線であり、一定の条件さえ揃えれば、容易に傍受出来る問題があった。

かつて、その具体的ルートについてはNTTの社内秘とされていたが、一部マニア向け雑誌にそのルートが各中継地点(中継局)とともに詳細に紹介され、加えてその傍受方法まで紹介されたことから、傍受者が増加、関係者は対策の構築を迫られた。

当初この回線は、素人が簡単に傍受できるものではなかった。従来、運営事業者の課題は「テロ対策」や「回線ジャック」等の破壊活動の防止であったが、衛星放送の実用化に伴い、一部の使用周波数が、市販アナログBSチューナーでも簡易的に受信可能となったため、むしろ通信内容の漏洩が問題となった。皮肉なことに、「技術の進歩」がこのシステムを脆弱化させてしまったのである。現在のように「デジタル化」されるまでの間、漏洩は事実上黙認され、放置された。

なお、放送素材の伝送は特定の相手方に対して行われる「通信」であり、広く公表される「放送」とは区別される。特に「通信」は電波法等によりその取り扱いについて厳しく制限され、これを傍受した場合、その内容や存在についての「守秘義務」が課される。

NTT中継回線が意図的に受信された目的は、

  • キー局のみで放送される一部のローカル番組やニュースのローカル部分を、他の地方で見ることができた。
  • 一部の生放送番組は、CM中のスタジオの様子や 中継先でスタンバイ中のアナウンサーの様子がそのまま回線に乗っていたため、アナウンサーの素の表情を垣間見られることがあった。
  • 素材回線を傍受すれば、カットされたり、モザイクやぼかし処理などの編集を施す前の報道映像を見ることができた(ただし、発局が編集を施していない映像のみ)。

などであり、当初は一部マニアの密かな楽しみであったが、次第にエスカレートし、水面下でその通信内容などが流通、ついにはその内容を窃用した者の逮捕に至ることになった[16]

その他[編集]

アナログ伝送の時代は、NTTマイクロ波中継回線を使って番組を送受信する際に、若干の画質の劣化が生じていた。特に発局から遠ければ遠い局(例:東京→福岡)ほど、その差が出ていた。前述のように2006年6月5日からデジタル回線へ移行したことにより、民放キー局の番組もこの現象が無くなった[17]。 現にNHKも、過去にアナログ回線を使用中に同じ現象が発生していたが、現在は光ファイバーによるデジタル回線に移行され、全国で同じ画質および音声になっている[18]

在京キー局同士が報道用の映像素材を交換するような用途では本回線は使用されない。アナログ放送時代は東京タワーに各局が個別に引いた映像回線を利用し、タワー内で映像信号を相互にやりとりすることで素材交換を行っていた(いわゆる「タワー分岐」)。地上デジタル放送開始後は、ネクシオンが運営する映像交換システムをキー局が共同利用することで素材交換を行っており、素材提供側として共同通信社も参加している[19]

なお、ラジオにおいても、テレビと同様に専用線による全国ネット[20]がある。ただし民放ラジオの場合、ISDNなどの電話回線や、光回線を利用した帯域保証型IP回線・VPN回線を用いることが多い。 NHKについては、AMのラジオ第1・ラジオ第2・FM放送とも、基幹の放送回線は完全デジタル化[21]され、ごく一部の地域を除き、全国一律で高音質な音声を全国に届けている。

脚注[編集]

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  1. ^ 民放テレビ局各社へのディジタルテレビジョン中継回線の提供について
  2. ^ テレビ北海道(TVh)は、長期不況による経営状況の悪化によって、道東での開局が出来なかったことから、道央道北道南のみ。
  3. ^ マスコミ研究会「日刊合同通信」のバックナンバー〔2005年6月17日(金) 第50巻 第12203号〕によると、「現行のNTT道内回線は2008年で運用終了」と予定されている。但し、STVテレビのルートは札幌⇔室蘭⇔函館および札幌⇔旭川⇔帯広⇔釧路⇔網走(北見)となっている。
  4. ^ 帯広送信所北見送信所釧路送信所新北見中継局
  5. ^ a b テレビ北海道が道東へ拡大計画-釧路新聞~釧路と根室地域のニュースをお届けするウェブサイト!~(2010年11月20日)
  6. ^ a b 来夏から釧路で放送/テレビ北海道-釧路新聞~釧路と根室地域のニュースをお届けするウェブサイト!~(2010年12月22日)
  7. ^ a b TVh、8月放送開始へ/釧路局などに予備免許-釧路新聞~釧路と根室地域のニュースをお届けするウェブサイト!~(2011年6月2日)
  8. ^ a b 来月17日試験電波発射 TVh/釧路に中継局を開設 管内一部で視聴可能に(2011年7月16日釧路新聞
  9. ^ a b 釧路の放送開始へ記念番組/TVh/-釧路新聞~釧路と根室地域のニュースをお届けするウェブサイト!~(2011年8月3日)
  10. ^ a b 釧根圏の一部で試験放送を開始/TVh-釧路新聞~釧路と根室地域のニュースをお届けするウェブサイト!~(2011年8月18日)
  11. ^ 1社当たり年間約2億5千万円も負担していた、とされている。北海道の地上デジタル放送~目指すものと地域課題~
  12. ^ かつてはAIR-G(FM北海道)でも、1996年頃のJCSAT-2Aを用いた衛星回線に移行するまでは、アナログテレビ放送と同様、NTTの全道ラインを使用していたが、こちらは開局当初から札幌地区以外の地域でもステレオ放送が行われている。
  13. ^ 同局の場合、バブル経済崩壊による不況と地デジ移行の影響により、経費増大に伴う経営破綻が懸念されたため、道北道南送信所旭川函館室蘭の3基幹局)まではカバーしたものの、道東の送信所(帯広北見釧路の3基幹局)はカバー出来なかった。
  14. ^ 札幌テレビ放送(STV)と北海道テレビ放送(HTB)では、ほぼ毎日流れていた。北海道放送(HBC)は、2000年に札幌圏でTBSニュースバードのフィラー放送が始まった頃から、NTT中継回線のテストパターンが流れていた。一方、北海道文化放送(UHB)やテレビ北海道(TVh)では、NTT中継回線のテストパターンはごくまれにしか見ることができなかった。
  15. ^ 技術上の問題まで突破して行なった場合は盗聴であり、有線電気通信法違反が成立する
  16. ^ 放送素材には放送局の著作権があるため、窃用すると電波法以外にも著作権法違反となり罰せられることもあるほか、民事責任も問われることもあり得る。
  17. ^ 特に音質の面では、地方での視聴であっても、キー局での視聴と遜色のないものとなった。
  18. ^ デジタル信号エンコードデコード処理のため、約0.5秒のタイムラグが発生する。
  19. ^ 専用回線 - ネクシオン
  20. ^ NRNJRNJFNJFL各系列局専用の放送線等の回線。
  21. ^ AM・FM共用の光回線を使用。FM放送は当初、PCMデジタル回線を導入していた。

関連項目[編集]