兜率天
兜率天(とそつてん、梵: Tuṣita、巴: Tusita)は、仏教の世界観における天界の一つであり、三界のうちの欲界における六欲天の第4の天である[1]。都率天、覩史多天などともいう[1]。兜率天には内院と外院がある[2]。
概略
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仏教の教義では、兜率天にいた釈迦は成道のため現世に降下することにし、釈迦は白象に化して母マーヤーの胎内に宿り、産みの苦しみを与えないためマーヤーの産道を通らず右の脇腹より生まれ出たとされる[3]。
サーリプッタが言った。 「私は未だ見たこともなく、また誰からも聞いたこともない。このように美わしき師、衆の主(釈迦)が兜率天から来りたもうたことを。
眼ある人(釈迦)は、天の神々と世人が見るように、一切の暗黒を除去して独りで法楽を受けられた。
上座部仏教では、釈迦は六道輪廻の中で善行を積み天界(兜率天)に転生していたが、成道のため現世に降下したと解釈する[5](詳しくは大乗非仏説参照)。
大乗仏教の教義では、仏は本来浄土に住んでいてそこで教化しているが、兜率天の内院は例外的に将来如来となるべき菩薩が住む所とされ、現在は弥勒菩薩が内院で説法をしているという[1]。兜率天は浄土の一つともされており[6]、弥勒信仰の発展とともに、兜率往生の思想も生じた[7]。外院には天の神々が住んでいるという[2]。
原語
[編集]サンスクリットの原語 Tuṣita は、上足、知足[1]、喜足[7]と訳し、都率(とそつ)、覩史多(とした)と音写する[1]。トゥシタ(tuṣita)は「満足せる」という意味[8]。
教義
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須弥山の頂上、12由旬の処にある天部にして、七宝の宮殿があり、無量の諸天が住している。これに内外の二院がある。外院は天衆の欲楽処にして、内院を弥勒菩薩の浄土兜率浄土とする。弥勒はここに在して説法し閻浮提に下生成仏する時の来るのを待っている。
この天は下部の四天王、忉利天、夜摩天の3つの天が欲情に沈み、また反対に上部の化楽天・他化自在天の2天に浮逸の心が多いのに対して、沈に非ず、浮に非ず、色・声・香・味・触の五欲の楽において喜足の心を生ずるから弥勒などの「補処の菩薩」の止住する処となるという。
しかして、天人の身長は2里、衣重は一銖半、寿命は4000歳であるという。ただし、人間の400年をこの天の1日1夜とする。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ a b c d e 「兜率天」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン。コトバンクより2019年10月29日閲覧。
- ^ a b 「兜率天」『デジタル大辞泉』小学館。コトバンクより2019年10月29日閲覧。
- ^ 梶山 2021, p. 31-35.
- ^ 中村 1984, p. 206.
- ^ “新興宗教からマンガまでを貫く心性とその出離|仏陀再誕はあり得ない ②”. 佐藤哲朗(日本テーラワーダ仏教協会編集局長). 2025年8月20日閲覧。
- ^ 藤田宏達「浄土」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。コトバンクより2019年10月29日閲覧。
- ^ a b 定方晟「兜率天」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。コトバンクより2019年10月29日閲覧。
- ^ 定方晟「兜率天」『改訂新版 世界大百科事典』平凡社。コトバンクより2019年10月29日閲覧。
参考文献
[編集]- 梶山雄一『大乗仏教の誕生 「さとり」と「廻向」』講談社、2021年。ISBN 978-4065237823。
- 梶山雄一ほか『完訳ブッダチャリタ』講談社、2019年。ISBN 978- 4065153420。
- 中村元『ブッダのことば スッタニパータ』岩波書店、1984年。ISBN 978-4003330111。