三江線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。60.40.195.167 (会話) による 2011年5月2日 (月) 13:45個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎SL江の川)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

JR西日本 三江線
石見川本駅に停車中の列車
石見川本駅に停車中の列車
石見川本駅に停車中の列車
路線総延長108.1 km
軌間1067 mm
最高速度85 km/h
三江線全通記念碑(浜原駅)

三江線(さんこうせん)は、島根県江津市江津駅から広島県三次市三次駅に至る西日本旅客鉄道(JR西日本)の鉄道路線地方交通線)。

概要

江津駅 - 三次駅間を江の川に沿って結ぶ陰陽連絡路線として、1930年代から長い期間をかけて建設されたが、全通はきわめて遅い1975年で、すでに地域間流動は道路利用に移行していた。

三江線は浜原ダムを回避する沢谷駅付近を除くと、北方が頂点となる「へ」の字状に流れる江の川に沿って狭い平地を縫うように建設された。そのため、大きく迂回するルート(全線108kmだが、直線距離なら60km足らずである)となり、両都市間の短絡路としては機能していない。また拠点都市間ルートとしても、島根県東部の主要都市である出雲市・松江方面、西部の主要都市である浜田方面と、広島県との連絡にはいずれも迂回路となってしまい、陰陽連絡路線としての機能を果たせるものではなかった。このため、優等列車の定期運転が行われたこともなく、全通前・全通後を通して、利用はもっぱら地域住民のローカルな移動需要のみで推移してきた。2008年度の1日平均利用客は前年比12%減の全区間合計で約370人(JR西日本米子支社による)に過ぎない。同じ県内の木次線出雲横田駅 - 備後落合駅間と並んで超閑散路線であるため、たびたび廃線話が上がるが、沿線の代替道路整備が進展していないことや、沿線の反対もあり、現状維持の状態である。しかしJR西日本の社長が2010年4月の会見で赤字ローカル線のバス転換を打ち出した[1]ことから今後の動向が注目される。

全線の中で江の川を7回渡る。そのうち、日本鉄道建設公団が高規格で直線的に建設した浜原駅 - 口羽駅間(1975年開通区間)には3回ある。江の川は宇都井駅付近から作木口駅南方にかけて遡る区間で左岸(南西側)の島根県(邑南町)と右岸(北東側)の広島県(三次市)の県境になっており、駅の前後で左岸に渡る橋がある伊賀和志駅は島根県に挟まれた広島県内の駅となっている。

宇都井駅は山に挟まれた山間部分にトンネルとトンネルを繋ぐ形で架けられた高架上、地上30mにホームがあるという特異な構造であり、時折テレビ番組などで「ホームが日本一高い場所にある駅」として紹介される。

路線データ

  • 管轄(事業種別):西日本旅客鉄道(第一種鉄道事業者
  • 区間(営業キロ):江津駅 - 三次駅間 108.1km
  • 軌間:1067mm
  • 駅数:35(起終点駅含む)
    • 三江線所属駅に限定した場合、起終点駅(江津駅は山陰本線、三次駅は芸備線の所属[2])が除外され、33駅となる。
  • 複線区間:なし(全線単線
  • 電化区間:なし(全線非電化
  • 閉塞方式
    • 江津駅 - 浜原駅間 特殊自動閉塞式(軌道回路検知式)
    • 浜原駅 - 三次駅間 自動閉塞式(特殊)
  • 最高速度:
    • 江津駅 - 浜原駅間 65km/h(旧三江北線)
    • 浜原駅 - 口羽駅間 85km/h(後年鉄道公団が建設した区間なので、最高速度が高い)
    • 口羽駅 - 三次駅間 65km/h(旧三江南線)
  • 指令所:江津CTCセンター

三次駅を除き米子支社浜田鉄道部の管轄である。三次駅は同広島支社三次鉄道部の管轄であり、下り場内信号機が米子支社との境界となっている。

運行形態

普通列車のみの運転で、江津駅 - 浜原駅間と口羽駅 - 三次駅間が5往復、浜原駅 - 口羽駅間が4往復で、5時間以上運行されない時間帯がある。全列車でワンマン運転を実施している。午前中の上り、午後の下り列車は長谷駅を通過する(時間帯は同駅基準)。

最終列車は江津発18時台・三次発19時台と早いが、以前は20時台や21時台に設定があった。

三次9時57分発石見川本行き(12時08分着)は運用上江津行きであるが、時刻表での扱いは石見川本止まりとなっている。これは、石見川本駅を出ると江津駅まで交換駅がなく、対向列車が石見川本駅に到着する13時50分まで長時間待つためで、石見川本駅に到着後は乗客をすべて降ろし、エンジンが切られ施錠されてホームに滞泊(その間、運転士は駅構内の詰所で休憩)した後に石見川本13時51分発江津行きとなる(時刻は2010年3月14日改正のもの)。

全列車が浜田鉄道部キハ120形気動車による1両編成での運転である。三江線にはキハ120形は1994年に投入された。ワンマン運転を開始した1989年当時はキハ40形で運転されていた。

車両の夜間滞泊は浜田鉄道部(鉄道部 - 江津駅間に毎日回送列車がある)と浜原駅(2本)、三次駅(1本)で行っている。

臨時列車

急行「江の川」

1988年から1994年まで臨時列車ではあるが、浜田駅 - 広島駅間を山陰本線・三江線・芸備線経由で運行する急行「江の川」(浜田駅 - 三次駅間は快速扱い)が運行された。紀行作家の宮脇俊三は三江線全通の前に、新幹線連絡列車として浜田駅 - 岡山駅間を山陰本線・三江線・芸備線福塩線山陽本線経由で運行する急行「ごうがわ」を構想しダイヤを作成したが、実際には急行どころか、全通後しばらくは全線を直通する列車すらなかった(『最長片道切符の旅』に記述あり)。「江の川」の運行は、ルートが違うものの宮脇の構想を現実のものとした。

SL江の川

1992年11月20日 - 22日には、臨時快速として江津駅 - 口羽駅間に「SL江の川」が3回運転されたことがある。三江線SL実行委員会が三江線沿線の自然のすばらしさと各町村観光のPRのために企画した列車で、蒸気機関車C56形160号機が牽引し、最後尾にディーゼル機関車DE10形)が連結されたこともあった。その後の年も何度か運行されたが、1997年の秋を最後に運転されていない。

三次花火観賞列車

毎年三次市で行われる三次市民納涼花火まつりでは、花火の打ち上げ会場に近い馬洗川橋梁で長時間停車し、花火を鑑賞する「花火鑑賞列車」が毎年運転されている[3]

歴史

三江線→三江北線

  • 1930年昭和5年)4月20日三江線 石見江津駅(現在の江津駅) - 川戸駅間 (13.9km) が開業。川平駅・川戸駅が開業。
  • 1931年(昭和6年)5月20日:川戸駅 - 石見川越駅間 (8.4km) が延伸開業。石見川越駅が開業。
  • 1934年(昭和9年)11月8日:石見川越駅 - 石見川本駅間 (10.3km) が延伸開業。因原駅・石見川本駅が開業。
  • 1935年(昭和10年)12月2日:石見川本駅 - 石見簗瀬駅間 (10.1km) が延伸開業。乙原駅・石見簗瀬駅が開業。
  • 1937年(昭和12年)10月20日:石見簗瀬駅 - 浜原駅間 (7.4km) が延伸開業。粕淵駅・浜原駅が開業。
  • 1949年(昭和24年)11月15日:田津駅・鹿賀駅が開業。
  • 1955年(昭和30年)3月31日:三江南線開業に伴い、三江北線に改称。
  • 1958年(昭和33年)7月14日:江津本町駅・千金駅・竹駅が開業。
  • 1962年(昭和37年)1月1日:木路原駅が開業。
  • 1967年(昭和42年)4月1日:明塚駅が開業。
  • 1970年(昭和45年)6月1日:石見江津駅を江津駅に改称。
  • 1972年(昭和47年)7月11日:明塚駅 - 浜原駅間が集中豪雨災害で不通に。
  • 1974年(昭和49年)12月29日:明塚駅 - 浜原駅間が復旧。

三江南線

  • 1955年(昭和30年)3月31日:三江南線 三次駅 - 式敷駅間 (14.7km) が開業(旅客営業のみ)。尾関山駅・粟屋駅・船佐駅・式敷駅が開業。
  • 1956年(昭和31年)7月10日:所木駅・信木駅が開業。
  • 1963年(昭和38年)6月30日:式敷駅 - 口羽駅間 (13.7km) が延伸開業(旅客営業のみ)。香淀駅・作木口駅・江平駅・口羽駅が開業。
  • 1969年(昭和44年)4月25日:長谷仮乗降場が開業。

全通以後

  • 1975年(昭和50年)8月31日:浜原駅 - 口羽駅間 (29.6km) が延伸開業(旅客営業のみ)し全通。三江北線が新規開業区間と三江南線を編入し三江線に改称。沢谷駅・潮駅・石見松原駅・石見都賀駅・宇都井駅・伊賀和志駅が開業。ただし、新規開業区間から江津方面および三次方面への利用に関しては原則的に浜原駅および口羽駅での乗り換えが必要だった。
  • 1978年(昭和53年)3月30日:全線直通運転開始[4]
  • 1982年(昭和57年)11月7日:江津駅 - 浜原駅間の貨物営業廃止。
  • 1987年(昭和62年)
    • 3月31日:長谷仮乗降場を駅に変更し長谷駅開業。
    • 4月1日:国鉄分割民営化により西日本旅客鉄道が承継。
  • 1989年平成元年)12月16日:一部列車でワンマン運転開始。
  • 1994年(平成6年)6月1日:キハ120形気動車の運転開始。
  • 2006年(平成18年)
    • 7月19日:豪雨の影響により、沿線38か所で土砂崩れが発生し、江津駅 - 三次駅間全区間が運休[5]
    • 7月23日:バスとジャンボタクシーによる代替輸送を開始。
    • 12月15日:浜原駅 - 三次駅間で運転再開[6]
  • 2007年(平成19年)6月16日:全線復旧[7]

駅一覧

  • 全列車普通列車。基本的に全駅停車だが、一部の列車は長谷駅を通過する
  • 線路(全線単線) … ◇・∨・∧:列車交換可、|:列車交換不可
駅名 駅間営業キロ 累計営業キロ 接続路線 線路 所在地
江津駅 - 0.0 西日本旅客鉄道山陰本線 島根県 江津市
江津本町駅 1.1 1.1  
千金駅 2.3 3.4  
川平駅 3.6 7.0  
川戸駅 6.9 13.9  
田津駅 5.4 19.3  
石見川越駅 3.0 22.3  
鹿賀駅 3.5 25.8  
因原駅 3.1 28.9   邑智郡川本町
石見川本駅 3.7 32.6  
木路原駅 2.0 34.6  
竹駅 3.0 37.6   邑智郡美郷町
乙原駅 2.2 39.8  
石見簗瀬駅 2.9 42.7  
明塚駅 2.3 45.0  
粕淵駅 3.1 48.1  
浜原駅 2.0 50.1  
沢谷駅 3.7 53.8  
潮駅 5.8 59.6  
石見松原駅 3.2 62.8  
石見都賀駅 5.6 68.4  
宇都井駅 6.4 74.8   邑智郡邑南町
伊賀和志駅 3.4 78.2   広島県三次市
口羽駅 1.5 79.7   島根県
邑智郡邑南町
江平駅 3.6 83.2  
作木口駅 1.7 84.9  
香淀駅 4.8 89.7   広島県 三次市
式敷駅 3.5 93.3   安芸高田市
信木駅 1.8 95.1  
所木駅 1.9 97.0  
船佐駅 1.4 98.4  
長谷駅 2.2 100.6   三次市
粟屋駅 2.5 103.1  
尾関山駅 3.0 106.1  
三次駅 2.0 108.1 西日本旅客鉄道:芸備線福塩線[* 1]
  1. ^ 福塩線の正式な終点は芸備線塩町駅だが、全列車が三次駅に乗り入れる
  • 有人駅:江津駅(直営駅)・石見川本駅(委託駅)・粕淵駅(委託駅)・三次駅(直営駅)

廃止された駅

  • 野井仮乗降場(のいかりじょうこうじょう)[8]
    • 明塚駅 - 粕淵駅間に所在。1972年に水害により明塚駅 - 浜原駅間が不通になった際、粕淵駅手前(明塚駅側)、損傷した橋梁の手前に設置されていた。仮乗降場ではあったが、ちゃんとしたホームや駅名板まで設置されていた[9]。ホーム下から江の川を渡る無料渡舟が出ていた。代行バスの運行開始にあわせて廃止。開業日・廃止日ともはっきりしないが、1972年11月号から1973年11月号までの時刻表に掲載されている[8]

脚注

  1. ^ JR西、赤字線をバス転換 - SankeiBiz(フジサンケイ ビジネスアイ)2010年4月6日
  2. ^ 『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』JTB 1998年
  3. ^ 『第21回みよし市民納涼花火まつり』にあわせ三江線で臨時列車 - 『鉄道ファン交友社 railf.jp鉄道ニュース 2010年7月25日
  4. ^ 池田光雄『鉄道総合年表 1972-93』中央書院、1993年。
  5. ^ 三江線の運転状況について (PDF)インターネット・アーカイブ) - 西日本旅客鉄道 2006年9月26日
  6. ^ 三江線 浜原〜三次間の運転再開時期(インターネット・アーカイブ)- 西日本旅客鉄道プレスリリース 2006年11月27日
  7. ^ 三江線 江津〜浜原間の運転再開(インターネット・アーカイブ)- 西日本旅客鉄道プレスリリース 2007年5月16日
  8. ^ a b 『停車場変遷大事典 国鉄・JR編 2』 JTB、1998年、ISBN 4-533-02980-9
  9. ^ 郷土出版社刊行『石見の100年』より

関連項目

外部リンク