自転車競技場
自転車競技場(じてんしゃきょうぎじょう、英: Velodrome, 蘭: Velodrome, 仏: Vélodrome, 独: Radrennbahn, 西: Velódromo)とは、自転車競技におけるトラックレースを行う施設である。ベロドローム(Velodrome, 「Velo」はラテン語語源のフランス語で自転車、「drome」はラテン語で競技場を意味する)とも呼ばれる。
概要
自転車競技場の走路(バンクまたはトラックともいう)は、板張り(木板を使用することが多い)[1]、コンクリート、ウォークトップ(軟らかいアスファルト)などで舗装されており、カーブは全速力でも速度を落とさず走れるよう走路に角度(カント)を付けている。角度がつけられている理由は、遠心力が質量(m)、角速度(ω)、回転の中心からの位置(r)に比例して発生するからである。自転車競技場では、正面、向正面側では比較的角度を緩くし、みなし直線と呼ばれる部分を設け、1~2コーナー(1センター)及び3~4コーナー(2センター)付近において、最大角度になるように設計されている[2]。
また、角度の設計にあたっては、緩和曲線が用いられる。自転車競技場で現在使用されている緩和曲線には、主として次の3つがある。
競輪場を含む日本の自転車競技場ではかつて、圧倒的にクロソイドを用いるケースが多かったが、直線から緩和曲線に入るときに、片勾配をつける関係で角速度の変化率(角加速度)が大きくなり、そのため、自転車が進行方向を軸にして回転する、ローリングという現象[3]が発生しやすくなることから、ハンドルがスムーズに切れない状態になりやすく、選手の間からはクロソイド緩和曲線は非常に乗りづらい、という声が上がっていた[4]。
そこで、ローリング現象を最大限抑制するように設計されたマッコーネル緩和曲線を導入する動きが大きくなり、現在では、日本のほとんどの競技場において、マッコーネル緩和曲線が導入されている。同緩和曲線については競輪選手の多くが、『マッコーネル緩和曲線はハンドルをさほど切らずに済むので、常に直線を走っている感覚でいられる。』と言明しており、また走路にクセがないという意味合いにおいても評価されている。但しマッコーネル緩和曲線は計算基準が難解なため設計が困難という問題を抱えている[5][6]。
周長(一周の長さ)について、オリンピック、世界選手権自転車競技大会を開催する会場については、室内の250m走路で行なわれることが通例となっている[7]。日本では400m走路が圧倒的に多いが、これは競輪の法律が影響している。他に333.3mの走路もあるが、これは3周で1000mの扱いとなっている。もっとも、日本でも現在、国内の自転車競技大会については、333.3m走路の会場で行なわれるケースが多い。また、500m走路もいくつか存在する。
日本における自転車競技場
日本における自転車競技場には、全国47箇所の競輪場があるほか、公営競技としての競輪の開催が行われないところもある。これは国民体育大会ではトラックレース種目が実施されることから、原則として一都道府県につき一箇所以上は必ず自転車競技場を設置しなければならないということに起因している。
本項ではそれ以外のところについて記す。競輪の開催が行われているところについては競輪場を参照のこと。
競輪場を除く日本の自転車競技場一覧
名称 | 所在地 | 周長(m) | Web |
八戸自転車競技場 | 青森県・八戸市 | 333 | [1] |
紫波自転車競技場 | 岩手県・紫波町 | 333 | [2] |
宮城自転車競技場 | 宮城県・仙台市 | 400 | [3] |
宮城県自転車競技場 | 宮城県・大和町 | 333 | [4] |
六郷自転車競技場 | 秋田県・美郷町 | 333 | [5] |
新庄サイクルスポーツセンター | 山形県・新庄市 | 400 | [6] |
泉崎国際サイクルスタジアム | 福島県・泉崎村 | 333 | [7] |
東京ドーム[8] | 東京都・文京区 | 400(室内) | [8] |
境川自転車競技場 | 山梨県・笛吹市 | 400 | [9] |
かりがね自転車競技場 | 長野県・松本市 | 333 | [10] |
日本サイクルスポーツセンター | 静岡県・伊豆市 | 400・333・250 | [11] |
伊豆ベロドローム | 静岡県・伊豆市 | 250(室内・木板走路) | [12] |
石川県立自転車競技場 | 石川県・内灘町 | 400 | |
関西サイクルスポーツセンター | 大阪府・河内長野市 | 400 | [13] |
明石公園自転車競技場[9] | 兵庫県・明石市 | 400 | [14] |
倉吉自転車競技場 | 鳥取県・倉吉市 | 333 | [15] |
大田自転車競技場 | 島根県・大田市 | 333 | [16] |
門司競輪場 [10] | 福岡県・北九州市 | 500 | |
宮崎県自転車競技場[11] | 宮崎県・宮崎市 | 400 | [17] |
根占自転車競技場 | 鹿児島県・南大隅町 | 400 | [18] |
沖縄県総合運動公園自転車競技場 | 沖縄県・沖縄市 | 333 | [19] |
海外の主な自転車競技場
欧州
- フランス・ルーベの自転車競技場…ロードレースのクラシックの中でも格式が高く、過酷なことで知られるパリ〜ルーベのゴールとして使用される。
- マンチェスター・ベロドローム…2002年開催の英連邦大会を機に建設。
アジア
オセアニア
- ハイセンス・アリーナ…もともとは全豪オープンのサブ会場であるが過去にUCIトラックワールドカップクラシックスや世界選手権トラック競技の開催実績を持つ。
脚注
- ^ 2002年3月の開催をもって廃止された西宮競輪場では、1949年から1966年まで木板、1966年から2002年まで鋼板が使用されていた。
- ^ これをバンク路ともいう。
- ^ バンク角ともいう。
- ^ このため、豊橋競輪場や高松競輪場のように、333m周長から400m周長に改修した例もある。
- ^ http://blog.goo.ne.jp/yoroshiku109/e/198dab62b4f122c23730ae7ef36430df
- ^ 使用例は競輪場等の自転車競技場や自動車のテスト試走走路等に限られているのが現状。
- ^ 6日間レースにおいては、200m以下の周長走路を使用するケースもある。
- ^ 地下にバンクが収納されている非常設競技場。
- ^ 1961年3月までは明石競輪場。球技場としての機能も持つ。
- ^ 2002年3月まで競輪の開催が行われていた。
- ^ ホッケー場としても使用される