ヨーグルト

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ヨーグルト(薔薇を浮かべたもの。2005年愛知万博のブルガリア館のヨーグルト)
2005年愛知万博のコーカサス共同館のヨーグルト
ヨーグルト(plain, whole milk, 8 grams protein per 8 ounce)
100 gあたりの栄養価
エネルギー 257 kJ (61 kcal)
4.66 g
糖類 4.66 g
食物繊維 0 g
3.25 g
飽和脂肪酸 2.096 g
一価不飽和 0.893 g
多価不飽和 0.092 g
3.47 g
トリプトファン 0.02 g
トレオニン 0.142 g
イソロイシン 0.189 g
ロイシン 0.35 g
リシン 0.311 g
メチオニン 0.102 g
シスチン 0.032 g
フェニルアラニン 0.189 g
チロシン 0.175 g
バリン 0.287 g
アルギニン 0.104 g
ヒスチジン 0.086 g
アラニン 0.148 g
アスパラギン酸 0.275 g
グルタミン酸 0.679 g
グリシン 0.084 g
プロリン 0.411 g
セリン 0.215 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(3%)
27 µg
(0%)
5 µg
0 µg
チアミン (B1)
(3%)
0.029 mg
リボフラビン (B2)
(12%)
0.142 mg
ナイアシン (B3)
(1%)
0.075 mg
パントテン酸 (B5)
(8%)
0.389 mg
ビタミンB6
(2%)
0.032 mg
葉酸 (B9)
(2%)
7 µg
ビタミンB12
(15%)
0.37 µg
コリン
(3%)
15.2 mg
ビタミンC
(1%)
0.5 mg
ビタミンD
(0%)
2 IU
ビタミンE
(0%)
0.06 mg
ビタミンK
(0%)
0.2 µg
ミネラル
ナトリウム
(3%)
46 mg
カリウム
(3%)
155 mg
カルシウム
(12%)
121 mg
マグネシウム
(3%)
12 mg
リン
(14%)
95 mg
鉄分
(0%)
0.05 mg
亜鉛
(6%)
0.59 mg
マンガン
(0%)
0.004 mg
セレン
(3%)
2.2 µg
他の成分
水分 87.9 g
コレステロール 13 mg
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

ヨーグルトトルコ語: yoğurt)は、乳酸菌酵母を混ぜて発酵させて作る発酵食品。使われる乳には牛乳のほか、水牛の乳、の乳、山羊の乳などがある。乳等省令では「発酵乳」のことである。

気温の高い地方では、生乳のままだと腐りやすいが、乳酸菌で乳を発酵させると保存性がよくなる。イランなどでは乳を醗酵させた後で乳脂肪分を分離し、バターを得ることも行われていた。

いわゆるヨーグルトに相当する食品は世界各国に存在し、それぞれの国で色々な名で呼ばれている。欧米日本でこの乳製品を指すのに用いられる「ヨーグルト」という言葉は、トルコ語でヨーグルトを意味する「ヨウルト(yoğurt)」に由来する。ヨウルトは「攪拌すること」を意味する動詞yoğurmak派生語で、トルコにおけるヨーグルトの製法を反映している。この名称が広まったのは、ロシア医学者イリヤ・メチニコフブルガリア(当時はロシアの支配下だが、直前までオスマン帝国領)訪問の際に、現地の伝統食のヨーグルトを長寿の秘訣として、世界中に広めたからである。

ヨーグルトにたまる上澄み液は乳清、英語ではホエイ、またはホエーという。

ヨーグルトの定義

FAOWHOによって1977年に定められたヨーグルトの厳密な定義によると、「ヨーグルトとは乳及び乳酸菌を原料とし、ブルガリア菌とサーモフィルス菌が大量に存在し、その発酵作用で作られた物」と定められている。

効果

乳酸菌は通常、腸内細菌として棲息しているが、ヨーグルトの乳酸菌は、内定着することはできない。ただし、その代謝物などが腸内のウェルシュ菌などを減少させ、在来乳酸菌を増殖させるという整腸作用をもつ。また、ウェルシュ菌減少によりその抗体を減少させ、アレルギーの発症を抑えるという効果が期待されている。

牛乳ビタミンCがほとんど含まれていないのは、子牛が自らビタミンCを合成できるので摂取する必要がないためである。逆に、ヒトの母乳にビタミンCが含まれているのは、ヒトの乳児がビタミンCを合成できないので摂取する必要があるためである[1]乳酸菌は発酵の際、ビタミンCも生成し、発酵前の生乳等のビタミンCよりも濃度が高くなる[2][3]。このため、ヨーグルトには若干のビタミンCが含まれている。

ヨーグルトなどの乳酸菌食品は、摂取することで花粉症に効果があると言われ、免疫力を高める働きがあるとも言われるが、脂肪が含まれる食品の共通の性質として、過度に摂取するとアレルギーを悪化させたりすることもある。

また、繊維を分解する効果があり、一晩程度漬け込むことによって肉が非常に柔らかくなる。

日本では、科学的根拠がある特定保健用食品(トクホ)には食品の機能の表示が認可されている。認可された食品はヨーグルトとして乳酸菌を含んでおり、食品の摂取によって便秘や下痢の改善、善玉菌に分類される菌が増殖し有機酸が増え、悪玉菌が減少しアンモニアが減ったため腸内環境が改善されたことを示す研究結果が多い[4]

基本的な作り方

単体でを入手し、牛乳から作ることもできるが、残ったヨーグルトに含まれる菌を使って作ることもできる。したがって、おいしいヨーグルトをとして取っておき、それを使うこともできる。ただし、菌も繰り返し使うと性質が変わってくる場合もある。

基本的な作り方は以下のとおりである。ヨーグルトメーカーを使うと作りやすい。

  1. 乳を沸騰させ、30度から45度程度(菌種によって異なる)に冷えるのを待つ。
  2. 古いヨーグルトを小量混ぜる。
    • 古いヨーグルト(出来合いのヨーグルト)を種と呼び、乳酸菌などの菌の母体にする。市販のヨーグルトを使うこともできるが、殺菌してあるものは使えない。
  3. 30度から45度程度(菌種によって異なる)で一晩置く(暖かい地方では単に放置する)。65℃の温度で23秒間加熱すれば乳酸菌殺菌できることが知られている[5]ため、乳が高温すぎると乳酸発酵が行われない。


ブルガリアでは伝統的なヨーグルトはセイヨウサンシュユにいる乳酸菌から作られているが[6]、日本にもあるサンシュユの木の枝を使ってもヨーグルト状のものを作ることができる[7](ただし、安全かは不明[6])。

世界のヨーグルト

地域やヨーグルトの歴史が違うと、種として使われるヨーグルトに含まれる菌の種類が違うので、できあがりも違ってくる。また、使う乳の種類により成分が異なるため、できあがりも違う。例えば、水牛乳は牛乳に比べて乳脂肪の割合が多いため、より濃厚なヨーグルトになる。また、表面にクリームの層ができ、その部分がまた好まれたりする。

世界初のヨーグルトはおよそ7000年前とされる。生乳の入った容器に乳酸菌が偶然入り込んだのがはじまり。

ブルガリアでは常時どの家庭でもヨーグルトを料理などに使っている。また、ヤギの乳を使ったヨーグルトなどいろいろなものが販売されている。

素焼きの入れ物に入れて作り、そのまま素焼きの器ごと販売する地域が多いのは、菌がバランスを崩さすに生きるのを助けるためである。この場合、常温のまま販売される。また、素焼きの器は多孔質なので、水分が適度に抜けてヨーグルトがほどよく濃縮されるという効果がある。

凡例
  • 地域名:ヨーグルトの名前 - 使われる乳のタイプ
    • 特徴など。


カルグルト

カルグルトは、皇室で食されるヨーグルトで、発酵には皇室専用の菌を使い、牛乳はジャージー種ホルスタイン種低温殺菌牛乳をミックスさせて作られ、水で割って飲まれている[8]

ヨーグルトを使用した料理・食品

欧米や東アジアではデザートとして食べることが多いが、南アジア中央アジアカフカース中東では塩味の料理に頻繁に用いられる。煮込み料理に加えたり、野菜と和えるほか、タンドリーチキンマリネケバブソースにも使われる。

世界各地には、インドのラッシーやトルコのアイランなど様々なヨーグルト飲料が存在する。欧米ではスムージーに加えたり、氷菓フローズンヨーグルト)の素材とすることもある。

イランの「カシュク(Kashk)」、アフガニスタンの「クルート(Qurūt)」、アラブ人の「ラバナ(Labanah)」など、ヨーグルトを脱水加工した保存食品もある。

ヨーグルトを使用した料理・食品

日本におけるヨーグルトの普及

日本では歴史的には「酪」(らく)と呼ばれ、仏教伝来とともに寺院の中などで伝えられていたが、寺院の外の庶民には広まらなかった。

19世紀末、ロシア医学者イリヤ・メチニコフブルガリア旅行した際、特定の地域に高齢者が多いことに注目。伝統食であるヨーグルトが長寿の秘訣と紹介したことから、欧州を中心に世界中に広まった。なお、日本の明治乳業は、メチニコフの誕生日の5月15日を「ヨーグルトの日」として宣伝している。

日本国内でも1915年広島市チチヤス乳業が日本初のヨーグルトを発売。しかし、一般に普及したのは戦後であり、1950年明治乳業から発売された「ハネーヨーグルト」(瓶入り)の発売によるものである。

ヨーグルトは、発売開始当初は牛乳パックと同じ容器に入れられて販売されていたが、消費者の目には「腐ったミルク」「固まったミルク」と見られてしまい、販売業者にクレームが出たことから、牛乳との誤解を避けるため、前述の「ハネーヨーグルト」を経て1975年以降は、徐々に現在の形状のプラスチック容器に入れて販売されるようになっていった。

2012年現在は、大型(400~500グラム前後)のプレーンタイプのものと、70~100グラム前後の個食用プラスチック容器に入った味付きタイプの2種類が主に流通している他、150~200グラムのタイプのものも。また、一部には往年の「ハネーヨーグルト」のようなガラス瓶(大雑把には牛乳瓶を太くして口を広げ、高さを縮めた形のもの)も、少数ながら販売されている。

脚注

関連項目