イチゴ

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オランダイチゴ
水耕栽培で育つオランダイチゴ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
亜科 : バラ亜科 Rosoideae
: オランダイチゴ属 Fragaria
: オランダイチゴ F. × ananassa
学名
Fragaria × ananassa
Duchesne ex Rozier[1]
英名
Garden strawberry, pineapple strawberry, ananas strawberry
イチゴ(生)
100 gあたりの栄養価
エネルギー 136 kJ (33 kcal)
7.68 g
糖類 4.89 g
食物繊維 2 g
0.3 g
飽和脂肪酸 0.015 g
一価不飽和 0.043 g
多価不飽和 0.155 g
0.67 g
トリプトファン 0.008 g
トレオニン 0.02 g
イソロイシン 0.016 g
ロイシン 0.034 g
リシン 0.026 g
メチオニン 0.002 g
シスチン 0.006 g
フェニルアラニン 0.019 g
チロシン 0.022 g
バリン 0.019 g
アルギニン 0.028 g
ヒスチジン 0.012 g
アラニン 0.033 g
アスパラギン酸 0.149 g
グルタミン酸 0.098 g
グリシン 0.026 g
プロリン 0.02 g
セリン 0.025 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
1 µg
(0%)
7 µg
26 µg
チアミン (B1)
(2%)
0.024 mg
リボフラビン (B2)
(2%)
0.022 mg
ナイアシン (B3)
(3%)
0.386 mg
パントテン酸 (B5)
(3%)
0.125 mg
ビタミンB6
(4%)
0.047 mg
葉酸 (B9)
(6%)
24 µg
ビタミンB12
(0%)
0 µg
コリン
(1%)
5.7 mg
ビタミンC
(71%)
58.8 mg
ビタミンD
(0%)
0 IU
ビタミンE
(2%)
0.29 mg
ビタミンK
(2%)
2.2 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
1 mg
カリウム
(3%)
153 mg
カルシウム
(2%)
16 mg
マグネシウム
(4%)
13 mg
リン
(3%)
24 mg
鉄分
(3%)
0.41 mg
亜鉛
(1%)
0.14 mg
マンガン
(18%)
0.386 mg
セレン
(1%)
0.4 µg
他の成分
水分 90.95 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

イチゴFragaria)はバラ科多年草。食用として供されている部分は花托(花床ともいう)であり果実ではない。イチゴにとっての果実は一見して種子に見える一粒一粒であり、正確には痩果という。

甘みがあるため果物として位置づけられることが多いが、草本性の植物であるので野菜として扱われることもある[2]

本項では主に、最も一般的な栽培種であるオランダイチゴFragaria ×ananassa Duchesne ex Rozier)について解説する。

範囲

狭義には、オランダイチゴ属の栽培種オランダイチゴ学名Fragaria ×ananassa Duchesne ex Rozier) を意味する。イチゴとして流通しているものは、ほぼ全てオランダイチゴである。

広義にはオランダイチゴ属 (Fragaria) 全体を指す。英語圏でのストロベリーはこの範囲である。

さらに広義には、同じバラ亜科で似た実をつける、キイチゴ属 (Rubus) やヘビイチゴ属 (Duchesnea) を含める。これらを、ノイチゴ、と総称することもある。オランダイチゴ属の二倍体の種にも、この総称に含まれているものがある。

中国語では、オランダイチゴ属は「草莓 拼音: cǎoméi ツァオメイ」、ヘビイチゴ属は「蛇莓 拼音: shéméi ショーメイ」、キイチゴ属は「懸鈎子 拼音: xuángōuzi シュエンゴウズ」または「覆盆子 拼音: fùpénzi フーペンズ」と呼び分けているが、日本語では混同して「覆盆子」を熟字訓でイチゴと読む場合がある。

語誌

「いちご」の語源ははっきりしない。古くは『本草和名』(918年頃)や『倭名類聚抄』(934年頃)に「以知古」とある。日本書紀には『伊致寐姑(いちびこ)』、新撰字鏡には『一比古(いちびこ)』とあり、これが古形であるらしい。『本草和名』では、蓬虆の和名を「以知古」、覆盆子の和名を「加宇布利以知古」としており、近代にオランダイチゴが舶来するまでは「いちご」は野いちご全般を指していた[3]

漢字には「苺」と「莓」がある。これらは異字体で「苺」が本字である。辞典によっては「莓」が見出しになっていて「苺」は本字としていることがある。現代日本では「苺」、現代中国では「莓」を普通使う。

英語の strawberry(ストロベリー)は「 (straw) のベリー (berry)」と解釈できるが、そう呼ぶ理由ははっきりせず、「麦藁を敷いて育てた」「麦藁に包まれて売られていた」「匍匐枝が麦藁に似ている」という説があり、さらに、straw は藁ではなく、散らかす・一面を覆うを意味する strew の古語だという説もある。

特徴

好光性種子である。可食部は花托の発達したものであり、表面に分布する粒々がそれぞれ果実である。このような形態をとるものをイチゴ状果偽果)という。独特の芳香があり、属名の由来にもなっている。属名のFragariaラテン語で「香る」の意。ビタミンCが豊富である他、抗酸化物質として知られるポリフェノールの一種であるアントシアニンを含む。生食の他、ジャムに加工されることも多い。受精すると花托の肥大が始まるが、一部受精していない雌しべがあるとその部位の肥大が弱くなる。したがって形の整った果実をつくるためには、全ての雌しべが受粉するようにすることが大切である。最近の受粉の作業はビニールハウス内にミツバチを放して行わせる。流通しているイチゴの多くはハウス栽培によるものである。

また、粒の大きさを揃えるなどの見た目や収穫時期を考慮しなければ家庭菜園でも比較的に容易に栽培できる。地方によっては、自家用に畦道の脇に栽培していることもある。

成分など

一般的ないちごの可食部の成分は食品標準成分表によれば約90%が水分であり、糖質が約10%、タンパク質、繊維が約1%であり総カロリーは100gで35kcalである。いちごにはキシリトールが約350mgと豊富に含まれている。また、アスコルビン酸(ビタミンC)にも富む。

栽培

日本での生産量は年間約20万トンであり、そのほとんどは11 - 4月に生産される。5 - 10月の生産量は1万トン以下であって、5%にすぎない。冬から春に実をつける一季成りイチゴに対し、夏から秋にも実の成る品種は四季成りイチゴと呼ばれ、夏イチゴとも呼ばれている。一季成り性品種と四季成り性品種では、花芽分化に関する特性が異なる。

ハウスによる促成栽培と露地栽培があり収穫時期と期間が異なる。一季成り性品種の露地栽培の場合の収穫期は主に3 - 4月頃。連作障害があり1 - 4年で圃場を移動する。ハウスによる促成栽培の場合の収穫期は10月下旬 - 翌年5月頃。ハウス栽培では水耕栽培も行われる。通常は足下の高さの盛り土(畝)に作付けするが、屈んだ作業となり従事者へ肉体的負担が大きいため、置き台などを利用し苗の高さを腰まで上げ負担を軽減するなどの工夫もみられる。多くの場合、寒冷期に収穫するためハウス栽培は必須であり成長適温の20℃前後までの加温を行う。夏秋取り栽培の場合は、遮光栽培も行われる。

栽培の歴史

エゾヘビイチゴ

オランダイチゴ属で初めて栽培化されたのはエゾヘビイチゴ (Fragaria vesca) で、17世紀のことである。

オランダイチゴは、18世紀オランダの農園で、北米産のバージニアイチゴ (F. virginiana) とチリ産のチリイチゴ (F. chiloensis) の交雑によってつくられた[4]

オランダイチゴは、日本には江戸時代の終わり頃にオランダから輸入された。作物として栽培されるようになったのは200年前頃からで、本格的に栽培されたのは1872年(明治5年)からである。[5]

受粉

受粉が均一でない場合、果実の成長はいびつで商品価値の劣る実となってしまう。従って、露地栽培では自然環境中の生物による受粉だけでなく栽培者が育成するミツバチなどによって受粉が行われる。ハウス栽培ではミツバチだけでなく、ミツバチより低温でもより活動するマルハナバチによる授粉も行われる。

苗の生産育成

苗がウイルスに感染すると根の成長が阻害され「果実の大きさが小さくなる」等の障害を及ぼす為、茎頂培養(成長点培養)によるウイルスフリー苗(メリクロン苗)が種苗専門の生産業者により育成され、その苗を果実生産者が収穫用の圃場や培地に定植し実を収穫・出荷する。

一季成り性品種の苗は花芽分化後に低温と日長の休眠期を経ないと成長と開花が行われない。つまり、秋から春に収穫する為には夏に苗を「冷蔵庫に入れる」、「高原などの冷涼地で育てる」などの方法で低温処理(春化処理)と遮光で休眠(強制的にを)経験させる。この休眠打破処理により開花時期と収穫時期をずらす事が可能になる。この方法を経ないと一季成り性品種で10月下旬 - 翌年5月頃の収穫は行えない。また、新しい苗を毎年植え替えなければならない。促成栽培に最適な休眠温度条件や日長に対する感受性は品種により異り、土中の窒素分の条件でも変化する。

四季成り性品種では、人工的な休眠は行なわれない。

日本の主な商業栽培品種

2009年(平成21年)2月2日の時点では登録品種は157種[6]

日本の主な商業栽培品種
品種名
(一般名)
品種登録年 特徴 外部リンク
とよのか 1984年 この品種は、野菜試験場久留米支場(福岡県久留米市)において、昭和48年に「ひみこ」に「はるのか」を交配し、以後選抜を重ねて育成したものである。55年から3か年系統適応性検定試験及び特性検定試験を行い、58年5月農林水産省育成農作物新品種として登録された。なお、出願時の名称は「イチゴ久留米42号」であった。酸味が少なく大粒で甘い(粒が大きいほうが甘い)。九州を中心に広く栽培される。1980年代から1990年代後期までは『東の女峰、西のとよのか』と呼ばれるほどで、二大勢力の一つであった。2010年現在では売れ筋こそ後続のより大粒な品種に奪われているが、スーパー等でよく目にできる定番の品種である。 農水省
女峰
(にょほう)
1985年 栃木県農業試験場によって九州の「とよのか」に対抗して、「麗紅」に変わる品種を育成する目的で「はるのか」「ダナー」「麗紅」を交配。女峰山にちなんで名付けられた。糖度が極めて高く酸味も適度にあり、甘酸っぱい味が特徴。さらには色が鮮やかで外観がよいといった見栄えする点から、ショートケーキ等に向けた業務用イチゴとしても使われていた。日光連山の名にちなんで名づけられている。うどんこ病の耐性はやや高。主に東日本で栽培されている。 農水省
章姫
(あきひめ)
1992年 萩原章弘(静岡市)が、「女峰」と「久能早生」を交配。女峰の酸味、病害抵抗性などの問題点を解決するため改良された。品種名は、品種改良者の章の字にちなんで命名されている。女峰より大きく、細長い形をしている。糖度は高く(10度以上)、酸度は少ない(0.5-0.6程度)。休眠が浅く、暖地での施設栽培に向く。 農水省
雷峰
(らいほう)
1992年 円雷と女峰の自殖系。甘みと酸味のバランスがよく、食味良好で果肉が硬く日持ちがよい。洋菓子の加工用に多く用いられる。一年を通して栽培。主な産地は宮城県北海道山形県長野県など 農水省
レッドパール 1993年 愛媛県の生産者が「とよのか」と「アイベリー」を交配。両者の特徴に加えとちひめ同様中まで赤い。生産量が少ない種。ケーキ、高級菓子用。 農水省
アスカウェイブ 1994年 奈良県農業試験場が「久留米促成3号」「宝交早生」「ダナー」「神戸1号」交配。アスカルビーが開発されるまで、同県での主力品種。赤みが強く、甘みと酸味のバランスがよい。当初は「アスカエース」と呼ばれていた。 農水省
あかねっ娘
(ももいちご)
1994年 愛知県で「アイベリー」×「宝交早生」の選抜系に「とよのか」を交配し選抜したものを母系とし、別の「アイベリー」×「宝交早生」の選抜系を父系とする。出願時の名称は「愛知2号」。徳島県佐那河内村の30数軒の農家で主に栽培される品種。徳島と大阪の他、奈良県や愛知県等で手に入れることができる。ネット通販などで人気である。「ももいちご」の別称は大粒で桃の形に似ていることから名前が付いたとされる。栽培が広がる過程で「愛知2号」の名称だったため、奈良県の生産者達がそう呼びはじめたのが最初である。一季成。 農水省
ももいちご
目指せベジフルさん
越後姫
(えちごひめ)
1996年 新潟県園芸研究センターで「ベルルージュ」「女峰」「とよのか」を交配。糖度が高く、種子が果肉に埋もれることから美しい外観を持つ反面、果肉が柔らかいため輸送性に劣り、その大半が県内で消費される。新潟県内で生産される生食向けいちごの大半は越後姫である。 農水省

新潟県農林水産部

とちおとめ 1996年 栃木県農業試験場により「とよのか」と「女峰」を交配し、さらに「栃の峰」を交配。女峰より粒が大きく甘さも強い、日持ちが良い品種。従来の二大勢力であった「とよのか」や「女峰」に代わり、本記事の執筆版現在、日本一の生産量を誇る。 農水省
アスカルビー 2000年 奈良県農業試験場が「アスカウェイブ」と「女峰」を交配。果実は円錐形で赤く艶があり甘みも強い。宝石のように見えることからこの名が付いた。登録前の名称は「奈良7号」。奈良県内の他、近年は全国各地での生産も多いが、別のブランド名になっているものが多い。 農水省
さちのか 2000年 食品産業技術総合研究機構が「とよのか」と「アイベリー」を交配。糖度(平均糖度10度)が高くて、酸度は低い(平均酸度0.59)。果実は硬めで日持ちがよい。 農水省
さがほのか 2001年 佐賀県で「大錦」と「とよのか」の交配。佐賀県生産の9割のシェアを持つ。 農水省
とちひめ 2001年 栃木県で「栃の峰」と「久留米49号」を交配。中まで色が赤く甘さが強い、果実が軟らかいため観光イチゴ狩り用。 農水省
福岡S6号
(あまおう)
2003年 福岡県農業総合試験場園芸研究所で「久留米53号」に出願者所有の育成系統を交配。「あ」かい、「ま」るい、「お」おきい、「う」まいの頭文字をとって名づけられた品種。福岡では栽培品種がとよのかから急速にあまおうに置き換わっている。一粒40gにもなる。なお、「あまおう」は全国農業協同組合連合会登録商標である。 農水省

JA全農ふくれん

紅ほっぺ
(べにほっぺ)
2002年 静岡県が「章姫」と「さちのか」を交配。章姫と比較し、果心の色が淡赤・花房当たりの花数が少ない。さちのかと比較して、小葉が大きい・果実が大きい・花柄長が長い。 農水省
サマープリンセス 2003年 長野県で(「麗紅」×「夏芳」)の選抜系統に「女峰」を交配。色や光沢のよい夏イチゴ(四季成)。しかし、実が柔らかくて輸送に向かない。 農水省
エッチエス138
(夏実)
2004年 北海三共社の育成品種。実肉が硬く暑さに強い、日持ち性・輸送性に優れる夏イチゴ。四季成り性品種。 農水省

北海道農政部

夏娘
(カレイニャ)
2004年 北海道の生産者による「みよし」と「サマーベリー」の交配種の実生選別種。糖度は高いが、表皮の色が斑で光沢が少なく軟らかい夏イチゴ(四季成)。酸度はやや低い。 農水省
やよいひめ 2005年 群馬県農業技術センターによって育成された品種。特長としては、果実が大果でかつ果肉がしっかりして日持ちが良いことが挙げられる。食味は酸味まろやかで、糖度は高くジューシーである。果色は明るく、高温期に黒ずむことが無い。 農水省
ペチカ
(ペチカプライム)
2007年品種登録出願 株式会社ホーブ(北海道)が「大石四季成2号」と「サマーベリー」を交配。甘みが控えめで見栄えのよい四季成りイチゴ。夏場の端境期に出荷され、香りが多くケーキ用として輸入品に対抗。 農水省
かおり野 2010年 三重県農業研究所が開発したイチゴ新品種。果実が大きく、酸味が低めで爽やかな甘さが特徴。イチゴの最重要病害「炭疽病」に対して抵抗性を持つという、全国のイチゴにない長所を持つ。 農水省
和田初こい
(初恋の香り)
2009年 果皮の色は淡紅。熟しても赤くならないイチゴ。品種改良時に偶然発見された。実は大きく、香り高いのが特徴。 農水省
初恋の香り
ダイアモンドベリー 2002年品種登録出願 福岡の生産者による、「さがほのか」と「久留米54号」の交配により育成。実は大きめで促成栽培に向いている。 農水省
咲姫
(サキヒメ)
2014年品種登録出願中 佐賀県のイチゴ農家が、「やよいひめ」と「さがほのか」の交配により育成。果実は大果で、糖度が高く酸味が少ないため、クランベリーのようなジューシーな味わいが特徴。「さがほのか」に代わる新たなブランド品種として期待されている。 農水省
咲姫.com
過去の商業栽培品種
宝交早生 不明 「八雲(幸玉)」と「タホー」を交配したものを、兵庫県農業試験場が1960年に発表。宝塚で生れたため「宝交」と命名された。新品種が登場する1980年代まで、イチゴを全国に普及させた代表的品種であった。寒冷地の露地栽培に向く。甘みが強く、果実が柔らかい。 宝交早生
アイベリー 不明 交配データ不明。愛知県の愛三種苗が作出。普通のイチゴの2、3倍の大きさがある。愛知県で育成されたことから、この名前が付いた。
ダナー種 関東地方を中心に広く栽培された。現在主流の品種に比較すると酸味があり甘みは弱く、小粒。終戦後アメリカより導入され、昭和50年代頃まで栽培されていたが新種に淘汰された。

利用

ショートケーキへの加工例

コンデンスミルク又はヨーグルトをかけた定番の生食以外に、イチゴジャム、イチゴジュースなどの材料としてよく利用され、アイスクリームに練りこまれることも多い。

他には、ショートケーキタルトなどの洋菓子の装飾や、いちご大福などの和菓子の材料としても用いられる。凍結乾燥させたものを、チョコレートなどでくるんだ菓子も作られている。

なお、かき氷シロップ牛乳キャンディーなどのいちご味のものの多くはイチゴの成分を全く含まず、酢酸アミルアネトールなどを配合して作ったイチゴ香料と赤い着色料で表現していることが多い。

缶詰などには製造過程において要する熱殺菌時にビタミンの崩壊とともに型崩れを起こすため不向きとされ、この理由から缶詰は造られてはいない。

日本での流通

本来は初夏(5 - 6月)が露地栽培品の旬であるが、1990年代以降はクリスマスケーキの材料としての需要が高まる12月から年末年始かけて出荷量が最も多くなる傾向がある。逆に、5月を過ぎると流通量と生産量は減る。秋口は露地栽培品とハウス栽培品は端境期であるため、生食用のイチゴはほぼ全量を輸入に頼っている。

日本の生鮮イチゴの主な輸入元はアメリカで、ついで韓国ニュージーランドオーストラリアである。冷凍イチゴの主な輸入元は中国で、ついで韓国、その他タイメキシコオランダチリなどから輸入されている。ちなみに生鮮イチゴ、冷凍イチゴの輸出国世界1位はポーランドであり、生鮮イチゴの1年の輸出量は20万トン、冷凍イチゴの輸出高は8400万ドルに及ぶ。

日本製イチゴ新品種の無断栽培問題

2008年現在、韓国でのイチゴ生産の多くは、日本で開発されたレッドパール、章姫などといった品種である[7]。これらの品種は植物新品種保護国際同盟(UPOV)により知的財産の概念が導入されており、栽培を行う際には品種を開発した者に対して栽培料を支払うこととなっている。しかし韓国の生産者は日本に対する栽培料の支払いを行わず、知的財産を侵害した上で日本に逆輸入させた[8]。いずれも韓国の一部の生産者に許諾が与えられたものが、無断で増殖されたものである[8]。日本政府のロイヤリティー問題に対する強い姿勢もあり、2006年の日本の韓国産イチゴの輸入量は2001年に比較して12%まで減少した[7]

2009年10月、韓国の聯合ニュースは「韓国で開発したイチゴ新品種の国内栽培比が日本品種を追い越した」とし、韓国は「ソルヒャンなど国内品種の栽培率が高まったのは、日本品種に比べておいしいうえに収穫量が多く、病害虫に強くて栽培技術も安定化されたため」と主張している[9]。なお、記事中の韓国産品種(Seol-hyang(雪香)・Mae-hyang(苺香)・Keum-hyang(錦香))はそれぞれ「章姫(アキヒメ)」×「レッドパール」「栃の峰(トチノミネ)」×「章姫(アキヒメ)」「章姫(アキヒメ)」×「とちおとめ」という、日本産品種同士の交配品種である[7]

参考画像

脚注

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Fragaria x ananassa Duchesne ex Rozier”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2013年10月25日閲覧。
  2. ^ 田中敬一. “キッズQ:イチゴは果物?野菜?”. くだもの・科学・健康ジャーナル. 2012年4月30日閲覧。
  3. ^ 嶋田英誠編 跡見群芳譜
  4. ^ George McMillan Darrow (1966). “chapter 5: Duchesne and His Work”. The Strawberry: History, breeding and physiology. New York: Holt, Rinehart and Winston. http://www.nal.usda.gov/pgdic/Strawberry/darpubs.htm 
  5. ^ 戦前のいちご狩のポスター(大津市歴史博物館所蔵)
  6. ^ 品種登録一覧  【写真画像付き一覧】”. 農林水産省 (2009年2月2日). 2009年2月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年4月30日閲覧。
  7. ^ a b c 松本和浩、李忠峴、千種弼、金泰日、田村文男、田辺賢二、黄龍洙「韓国産イチゴ新品種の特性と貯蔵性の品種間差異」(PDF)『園芸学研究』第7巻第2号、園芸学会、2008年、293-297頁、NAID 1100066497202015年9月22日閲覧 
  8. ^ a b 日本国 農林水産省 第2回 農林水産省・経済産業省知的財産連携推進連絡会議 配布資料3 農林水産省における平成20年度知的財産関連施策の概要(平成20年3月) (PDF)
  9. ^ 이은파 (2009年10月20日). 국산딸기 재배율 56.4%‥일본품종 추월 (韓国語). 聯合ニュース (Yonhapnews). http://www.yonhapnews.co.kr/economy/2009/10/20/0302000000AKR20091020110800063.HTML?template=2089 2012年4月30日閲覧。 

関連項目

外部リンク